卓越したAF性能で瞬間を逃さない
α6600はスナップにベストマッチ〜「E 16-55mm F2.8 G」と描く、人と街〜
ストリートフォトグラファー 川音真矢 氏
国内外のさまざまなコンペティションで入賞し、今、若手の有望株として注目されているストリートフォトグラファーの川音真矢さん。ストリートスナップではスピード感と機動性を重視したいので、最近はα9ではなくα6600も持って出掛けることが多いという。そんな川音さんが感じたスナップでのα6600の魅力をはじめ、風景や人々の捉えかたなど、新しい視点で撮るポイントを語ってもらった。
川音 真矢/ストリートフォトグラファー 1980年、神奈川県生まれ。2016年頃より東京の都市を中心にストリート写真を撮り始める。都会に暮らす人々の表情を通して、その街の移り変わりを記録すべく日々撮影。「ソニーワールドフォトグラフィーアワード2017」一般公募部門ストリート・カテゴリー・ショートリスト、「レンズカルチャーマグナムフォトグラフィーアワード2017」ファイナリストなど、海外を中心にさまざまなコンペティションに入賞。2018年3月、東京での個展「Scrap of Build」を開催。世界約40カ国で販売している東京のストリート写真誌『Void Tokyo』のメンバーでもある。
軽量かつ高い機動性がAPS-Cサイズの利点。
視野が広がり、いつもと違う写真が撮れる
――川音さんは普段からα9を使っているそうですが、フルサイズであるα9とAPS-Cサイズのα6600をどのように使い分けているのですか?
まず、僕がα9で撮る時は、被写体との距離を統一するために焦点距離を35mmに固定しています。その縛りの中でストリートスナップを撮っているので、当然撮れないものも出てきますよね。でもα6600に「E 16-55mm F2.8 G」のレンズを装着すると被写体との距離感が変わり、いつもとは違う視点が生まれます。ですから、じっくり構えて撮る時にはフルサイズ、対照的にフットワーク軽く、普段撮れないものにもアンテナを張り巡らせて撮影に臨みたい時はAPS-Cサイズ、というように「撮る感覚」によって使い分けています。
α6600では何でも撮れてしまうので、普段は行かないところに行ったり、いつもは撮らない視点で撮ったり、より広い目線で撮ることができました。だから大きな発見もありましたし、考えさせられることも多かった。このカメラを持つことで、自然といつもと違う行動をとっていたくらいですからね。
――APS-Cサイズのカメラはフルサイズのサブ機というイメージが強いですが、川音さんにとっては撮る感覚の違いによりα6600がメイン機にもなることもあるのですか?
その通りです。α6600の強みは小型軽量で、AFも速くて、バッテリーの持ちもいいところ。そうすると、普段撮らないものを撮りたくなるので、自然とバリエーションが増えます。広くアンテナを張り巡らせて、いろいろなものに目を向けて写真を撮っていくなら、α6600をメイン機として出掛けます。
35mm固定で集中的に撮るパターン、バリエーションを広げるパターン、どちらも大事な手法です。テーマを絞ることで見えてくるものもありますし、アンテナに引っかかったものに目を向け、追い込んで撮っていくスタイルもある。このような使い分けは、実際にα6600を手にして一番意識した部分ですね。
突然やって来るシャッターチャンスにも
即座に対応できる圧巻のAF性能
――ストリートスナップを撮る上で、カメラに求める一番重要な機能は何ですか?
一点挙げるとすれば、AFの速度です。ストリートスナップでは、いきなりシャッターチャンスがやって来るものです。油断している時でも、その瞬間は容赦なく訪れます。そんな時は、いかに速く撮れるかが勝負になります。ちょっと遅れただけで失敗作になってしまうので、早く正確に撮ることが非常に重要です。あとはバランス。軽量で持ち歩きやすく、バッテリーの持ちもいい。これらがバランスよく、高性能なものがスナップ撮影に求められる部分です。
その点、α6600は「僕のためにつくってくれたのかな」と思うくらいスナップに最適なカメラでした。僕がカメラに求める条件を、すべてと言っていいくらいクリアしていましたから。街に出ると、カメラを絶えず構えて液晶を見ながら撮る、というのが僕の撮影スタイルです。被写体を見つけてはカメラを構えて、フォーカスして、シャッターを切る。1回の撮影でこれだけのステップを踏むことになります。僕は1回の撮影で1000枚以上撮るので、これを1000回繰り返すと一つ一つの細かい動作にもストレスを感じて疲れてしまいます。それは集中力の低下にも繋がります。だからこそ、コンパクト、軽量で動き回っても疲れないこと、AFが速くシンプルな動作で的確に捉えられることが大事なのです。
――では、AF性能が一番活きた作品を挙げるとしたら、どの作品ですか?
ほとんどの作品でAF性能の恩恵を受けていますが、1枚挙げるとしたら大雨が降った日に渋谷のスクランブル交差点で撮った下の作品です。ゲリラ豪雨のようなタイミングだったので、僕は傘を差しています。片手が傘でふさがっているので、当然カメラは片手での操作になり、もうシャッターを押すことしかできません。
そんな状態で歩き回ったら何かおもしろい作品が撮れるだろうと思って街に出ると、いいタイミングで傘を持った被写体がやってきてくれました。局地的な大雨だったので、実は後ろのほうは晴れているんです。おそらく年に数回ほどしか見られない珍しい現象。夕方だったので、うまく逆光になるようにカメラを向けて撮影しました。こんな貴重な現象だからこそ、作品になるような瞬間を逃したくありません。そんな時に、僕の前方に傘を差す人がいて、その手前にチェックの傘を差した女性が小走りで入ってきたんです。絶好のタイミングでシャッターを押したら、正確に手前の女性にピントを合わせてくれて、逃さずに撮ることができました。
この時はα6600のAF性能の素晴らしさを実感しましたね。前の人も後ろの人も、1歩ずれるだけで仕上がりに影響しますから、本当にこのタイミングしか作品になりえなかった。その瞬間を逃さず捉えてくれたのは、α6600のおかげですね。
「E 16-55mm F2.8 G」はα6600との相性も良く、逆光気味に強い光が射し込んでいてもきちんと階調を残すことができました。コントラストが強いシーンはモノクロ写真でもレンズ的には難しいところですが、きれいな階調で表現できて本当に満足です。
――こちらもコントラストが強いシーンですね。
実はこれもAFの反応速度がものを言った作品です。僕も相手も歩いていますからね。渋谷駅でたまたまこの人を見つけて。左から光が射し込んでいるこのタイミングで、なんとか端に寄って傘がシルエットになってくれないかなと狙って撮った1枚です。
ほんの1秒にも満たない時間なので、そのタイミングで撮る時はやはりAFの速さと精度がものを言います。僕はタイミングを合わせることだけに集中できるし、集中できれば撮れる確率も上がる。撮影者にとってピント合わせは、できれば無意識に済ませたいステップです。α6600は自動で被写体を捉えて、しっかり撮ってくれて感動しました。
――今回はモノクロとカラーの両方で撮影していますが、モノクロで撮る意図をお聞かせください。
被写体にインパクトを出したい場合はモノクロで撮ります。僕は東京で撮影することが多いのですが、東京の街は背景の色に統一性がないことが多いんです。派手な色の看板や大安売りののぼりなど、余計なものが入るとどうしても被写体のインパクトが薄れてしまうので、背景と統一する意味でモノクロにしています。逆に、背景も含めて色の統一が図れるときはカラーで撮ります。
取り回しが良く、長時間撮影でも疲れ知らず。
最後の「ひと粘り」ができるカメラ
――下の作品は渋谷のスクランブル交差点ですよね?
俯瞰(ふかん)で交差点を見ることができる撮影スポットから撮ったものです。この撮影では軽さや高い機動性が実力を発揮しました。思い切り背伸びをして手を伸ばさないと俯瞰で撮れない状況だったのです。しかもこの場所は観光客が入り乱れて動いているので、多少ぶつかりながら撮影しなければなりません。そんな撮りづらい不安定な状況でも、軽く、グリップもホールドしやすいので、思い切り手を伸ばして撮ることができました。
僕がこの写真を撮影しているところを後ろから見たら、おそらく足をプルプルさせて生まれたての子鹿みたいな滑稽(こっけい)な姿だったと思います(笑)。それでもしっかり固定して撮ることができる。もちろん手ブレ補正は常にオンの状態。このようなシーンでは、優秀な5軸ボディ内手ブレ補正が頼りになります。交差点を歩く人々を繊細に、シャープに描写できたのは「E 16-55mm F2.8 G」の表現力のおかげですね。
実は、この作品は他の場所で集中的に撮影した後、影が伸びる方向などを計算して夕方から撮り始めました。α6600は軽くて長時間撮影でも疲れないので「もう少し撮ってみよう」という気持ちになる。最後にもうひと粘りができるところもα6600の強みです。そういった時に、最高の1枚が撮れることも多いですからね。
難しい状況でも被写体を捉えて離さない
トラッキング性能に感謝
――下の作品はとても不思議な世界観ですが、どのような状況を撮影したものですか?
この夏、Ginza Sony Parkに設置されていた大水槽を撮影した1枚です。沖縄の美ら海水族館からやってきた美しい魚たちが泳いでいたので、水槽のガラスに映り込んだ銀座のビル群を入れ込んで「都市を泳ぐ魚」を表現しました。
ピントが合ってしまいそうなポイントが多く、AFが迷ってしまいそうな状況ですが、α6600は主役にしたい魚にタッチパネルでフォーカスを一度合わせれば、あとは自動で追随してくれます。ずっとフォーカスが食いついてくれるので、僕は構図を整えていいタイミングで撮るだけでした。
α6600は作品を撮ることだけに集中させてくれるような機能が充実しています。そこを追求してくれているのは、撮影者にとってありがたいことです。
被写体がどんなに動いていても
片目になっても判別するリアルタイム瞳AF
――ポートレート撮影では、α6600のどのような機能が役立ちましたか?
やはり、「リアルタイム瞳AF」に尽きます。下の作品も「リアルタイム瞳AF」が活躍した1枚です。
少し動きを出したかったので、モデルに頭を絶えず左右に振ってもらって撮影しました。両目が見えている状態で一度ピントを合わせてしまえば、片目が隠れてもピントを外すことはありません。
「こんなに簡単に撮れていいのかな」と僕自身も思ったほど瞳AFは優秀です。「絶対に外れない」とわかったので、途中からはピントのことは意識せず、絶対的な信頼感を持って撮影に臨めました。
ポートレート撮影では、構図、表情、顔や体の角度、髪の動きなど、作品として成立させるために重要な要素がたくさんあります。ピント合わせはカメラに任せて、そこに集中できることはいい作品づくりにも繋がる、ということです。
フルサイズとは違う世界観を持つα6600。
ワンマウントでレンズを共有できるのも魅力
――下の作品は、人が入っておらず、街を切り取るように望遠で撮っていて、川音さんがあまり撮ることのない作品のように思いますが。
たしかに、普段はこういう撮りかたはしませんね。今回は「街の変化、そこで暮らす人の営み」がテーマだったので、人がいなくてもそう感じさせるような作品を多く撮影しました。上の作品もそのひとつです。
先ほども申し上げたように、僕はいつもα9を使うときは35mmの画角で撮ることにしているので、望遠で撮ることがありません。でも、この作品では不安定な場所でカメラを持ち上げながら望遠で撮影しました。強いインパクトを感じた信号機と、人の気配や暮らしを想像させるマンションの組み合わせがおもしろいと思ったのです。信号機の下には、たくさん車が通っているのだろう、マンションにはどんな人が住んでいるんだろう、とイメージをかき立てる作品に仕上げられたと思います。
軽量で取り回しが良く、望遠でも手ブレ補正が効く。さらに高感度でありながら描写力が高い。α6600の魅力をフルに活かすならこういう撮りかたもしてみたいと思ったので、そういう意味では表現の幅を広げてくれたカメラといえますね。
――川音さんのようにフルサイズのαユーザーでも、α6600を持つ意義があるわけですね。
α6600とフルサイズ機では、撮影スタイルが違うと僕は思っています。α6600を使ったからこそ見えてくる風景もあるはずだと。さらに言えば、αの場合はフルサイズもAPS-Cサイズもマウントが同じで、レンズ資産を共有できるのは大きな強みです。しかもα9などと同じ高容量バッテリー(NP-FZ100)も共通で使える。コストをかけずに世界観の違うカメラを手にすることができるシステムですから、フルサイズ機ユーザーにもぜひおすすめしたいカメラです。
ストリートスナップにはベストマッチ!
ひとつの街に絞って、とことん撮り続けよう
――α6600はどのようなユーザーにおすすめのカメラだと思いますか?
僕のようなストリートスナップを撮る人には、非常におすすめのカメラです。「専用につくってくれたのでは?」と思うほどスナップにマッチしています。α6600と「E 16-55mm F2.8 G」の組み合わせは、街を歩き、歩いた先で自分の興味があるものにカメラを向けてシャッターを切る、という撮りかたに非常に適していると感じます。それがストリートスナップの醍醐味(だいごみ)ですからね。あらゆる環境、天候にしっかり対応してくれるところもスナップに向いています。
それに、僕自身は撮影に出ると、だいたい4〜5時間、RAWとJPEGで最大1500枚ぐらい撮っていますが、バッテリーが切れたことは一度もありません。何度も試してみましたが、電源を入れっぱなしでもバッテリー切れになったことはないので、「スナップを撮るにはスタミナは十分」と自信を持って断言できます。
――川音さんのような写真を撮りたいと思っているユーザーにアドバイスをお願いします。
ひとつの街をとことん撮り続けることをおすすめします。自分が撮りたいものに、とにかくこだわり続けて撮る、ということですね。僕は渋谷のスクランブル交差点に、ざっくり計算しただけでも5000回以上は横断して撮影をしています。何回もしつこく足を運ぶことで見えてくるものがあるし、自分なりのこだわりが出てくると思うので、自分の好きな街をこだわって撮り続けてください。あとはとにかく粘ること。粘った先に、想像を超えた傑作が撮れるものです。
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