「新たな表現力を風景撮影に加える超望遠とαシステムの総合力」高橋良典×FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
高橋 良典/写真家
1970年、奈良県生まれ。「自分が生まれ育った奈良を写真に残し、その魅力を数多くの人に知ってほしい」との想いから、大阪のフォトライブラリーで勤務する傍ら撮影に励む。2000年よりフリーの写真家として独立、写真事務所「フォト春日」を設立。風景写真を中心とした作品をパンフレット・カレンダー・観光ポスター等へ提供。また、写真雑誌や出版物への写真提供及び原稿執筆を行う。奈良県の撮影と併行して国内各地にて自然の織りなす旋律をテーマに撮影を続けている。
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・写覧会所属
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格段に広がる表現領域と圧縮効果
まずは200-600mmという焦点域についてだが、私は非常に使いやすいと感じている。風景撮影では16-35mm・24-70mm・70-200mmの焦点域のレンズ3本を中心に構成を考えている方は多いと思うが、私も例にもれず上記のレンズは、必ずと言っていいほど、カメラバッグに入っている。
そこに本レンズを加えることで超広角16mm〜超望遠600mmまでを効率よくカバーすることができる。風景撮影にはあまり縁がない、と思われがちな超望遠だが、実際に使ってみると表現領域が格段に広がることに気づくはずだ。
わかりやすいところでは、遠くにあるものを引き寄せる効果。これは風景に限らず誰もが想像できるだろう。従来、遠すぎて撮影を諦めていた、または構図がまとまらなかった被写体にまで視覚を超えて迫ることができ、これだけでも超望遠レンズの魅力を十分感じることができる。3倍のズーム比も使いやすさのポイントで、200mmからの画角をカバーしているので通常の望遠域の撮影もスムーズだ。
しかし超望遠の魅力は、それだけではない。それは「圧縮効果」である。同じ被写体を同じような大きさで捉えたとしても、超望遠域の「圧縮効果」はやはり300mmや400mmとは別次元であり、それらを構図に意識することで本レンズをさらに使いこなすことができる。
さらに0.2倍の最大撮影倍率を生かして望遠マクロ的な使い方をすれば、肉眼で見えていて「届きそうで届かない」そんな距離感の被写体をも大きく捉えられる。実際に使用してみるとむしろ、その部分に面白さを感じる方も多いだろうし、私自身もそうであったことを付け加えておきたい。
空気感、奥行き感まで表現できる
私の撮影テーマの1つでもある自然の旋律をリアリティ豊かに表現するには、やはりシャープさとぼけ味の両立が重要。本レンズもそのあたり、しっかりとおさえており、その描写性能は、十分期待に応えてくれるものであった。
3倍のズーム比を持ちながらズーム全域を通して開放から使える高画質は、剛柔併せ持つと言い表せるだろう。絞りこんで画面全域に被写界深度を確保するような撮影では、しっかりとした解像感があり、それでいて、出てくる絵柄は不思議と固くなりすぎない。そして絞りを開け気味にしての撮影では柔らか、かつ滑らかなぼけ表現ができる。特に7R系の高解像モデルとの相乗効果では、目に見えない空気感や風景の奥行き感までを描くことが可能だと感じた。
ナノARコ−ティングのおかげで逆光でも、不安を感じることなくカメラを向けることができる。画面内に太陽を大きくフレーミングするような超望遠ならではの撮影の際にもフレアやゴーストは抑えられている。ドラマティックなシーンが展開する逆光状態でもクリアな描写を得られることは風景写真家にとって心強い味方だと言える。
超望遠でも軽快に撮影できる
重量や操作性についてだが、超望遠レンズとしては非常に軽量にまとめられていると感じた。取り回しも良く強力な手ブレ補正との相乗効果で手持ちでも軽快に撮影ができる。とはいえ、2115gという重量は一般的にはそれなりに負荷を感じても不思議ではない。ズーミング時にレンズが伸縮すると、さらに負荷がかかるものだが、本レンズはインナーズーム式であり、焦点距離を変えても重量バランスの変化がない。これは手持ち撮影時において大きなメリットであると感じた。
超望遠レンズとなると最短撮影距離から無限遠までのピント移動量がどうしても大きくなるのだが、フォーカスレンジリミッターのおかげでそれを制限することができる。私の場合は望遠マクロ的な近距離撮影において特に2.4-10mを使用することが多い。ズームリングの回転角が小さく設定されていることからスピーディーに画角変更ができるのもよい。
また、風景撮影ではCPLフィルターを使用することが多いのだが、フィルター径が95mmに抑えられているおかげで通常に販売されているフィルター類を使うことができる点もありがたく感じた。
αシステムとしての全体的な総合力
600mmという焦点距離で気負いなく撮影ができるというのは、良い時代になったものだと思う。αと本レンズを組み合わせて使ってみるとそれが実感できる。
本レンズやαのボディに搭載されている手ブレ補正はより強力にブレを抑えてくれるが、その恩恵はシャッタースピードが遅い場合だけではない。超望遠域となれば、わずかにカメラが動いただけで画面が大きく揺れる。それを防いでくれることは、手持ちでフレーミングする際の安定感につながる。
AFはスピード、レスポンス共に快適の一言だが、さらに感じたのは、MF時の快適さである。最短撮影距離付近で望遠マクロ的な使い方をする場合、被写界深度の浅さからどうしてもピントにはシビアにならざるを得ない。そんな時にはMFを使用するのだが、ピントリングを回した時のリニアな反応によって繊細な操作時でもストレスを感じることは全くなかった。また、三脚使用時には、ワイヤレスリモートコマンダーRMT-P1BT(別売)を併用してピント操作ができるのでレンズに触れることなく、つまり画面を全く揺らさずにピント合わせができる。MFで集中力を要する撮影時にこれは大きなメリットである。
さらに、ブレに神経を使う場合にはカメラ側のサイレントシャッターが有効である等、600mmという焦点距離を使うことで、アクセサリー類等を含めてαシステム全体を通しての総合力を改めて感じることになった。
風景撮影×α
私自身は、風景写真家として現在「奈良の風景」と「自然の旋律」この2つのテーマでの作品作りに力を入れている。FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSは特にその後者において力を発揮してくれた。
以上を踏まえて、風景撮影に新たな表現力を加えたいと考えている方にこそ本レンズを手に取ってもらいたいと思う。風景といっても、いわゆる絶景等、広がりがあるものだけではなく、足元や頭上の小さな自然も風景の一部であると普段から考えて撮影している。また、そのような目線で見渡すことで見えてくるものがある。そういった表現においても本レンズは力になってくれるはずだ。
α7初号機から始まったαフルサイズミラーレスは、瞬く間に進化を遂げてきた。そのテクノロジーによって、今まで撮れなかったものが撮れるようになり、新たな発想が生まれた。私の作品への影響は計り知れない。
しかし、カメラがどんなに良くなっても最終的には撮り手次第であることも事実。ソニーというカメラメーカーにはさらに高みを目指して、進化したカメラやレンズを見せてもらいたい。今までになかったもので我々をさらにワクワクさせてほしい。そして、それらを生かして、自分自身も受け手に何かを訴えかけるような作品をこれからも生み出していきたいと思う。
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