写真家 清家 道子 氏 × α7R IV
特集:先進画質×俊敏性。新しい表現領域へ
〜圧倒的解像力が、「写真」を「作品」に押し上げる〜
繊細に自然のさまざまな表情を捉える、写真家の清家道子氏。色表現の進化や、高解像だからこそ得られた表現力など、α7R IVでの撮影で実感したことをはじめ、撮影で気づいた新たな発見についてもお聞きしました。
清家 道子/写真家 日本写真家協会会員。福岡県生まれ。1987年よりカラーコーディネーターとして福岡で起業。20年以上、カラーデザインやカラーマーケティングなどの仕事を手がける。2009年より趣味だった写真を本格的にはじめ、地元九州を中心に日本全国で日本の美しい風景を撮影。2012年より企業カレンダーを手がけるほか、写真雑誌への寄稿、講演、撮影会などを行なっている。2016年にリコーイメージングスクエア新宿にて「またまの宇宙」写真展を開催。同写真集を出版(日本写真企画)。
素朴な被写体も「作品」にしてしまう
6100万画素の圧倒的な解像感
――清家さんは歴代のα7Rシリーズを使われていますが、α7R IVを使った率直な感想を聞かせてください。
個人的にはα7R IIIでも画素数や解像感は十分に満足していたので、6000万画素も必要ないかな、と思っていたというのが正直なところです。でも、実際に撮影してみると、超高解像であるからこそ見えるもの、撮れるものがあると実感しました。 まずは、高解像が生かせるような海岸の岩場などで撮影。アップにすると質感がとてもリアルで、ザラザラした岩に触れることができるのではないかと思うくらいです。最近は視力が落ちてきたと感じますが、子どものころは視力がよくて両目とも2.0。とても目が良かったのです。撮影した映像を見た時、「子どものころはこんな風に見えていたな」と思うくらい覆われていたものが1枚なくなったような感じがありましたね。 そして、ディテールの表現力が素晴らしいので、普段は撮ろうと思わないものにも目を向けて「撮ってみようかな」と思うようになりました。このカメラならいい写真が撮れるかもしれない、という気持ちにさせてくれますし、実際に撮ってみるとびっくりするほどの解像感です。例えば、この後に紹介する葉の写真。これを見た時、シンプルな被写体になればなるほど、解像力の高さがわかると感じました。きれいな風景は写真にしてもきれいなので、どんなカメラで撮ってもきれいに写るものですが、高解像で撮るとシンプルで素朴な被写体でさえも作品にできる、ということを、α7R IVを使って初めて知りました。素材そのものを写そうと思ったら、カメラのクオリティーが問われる、ということですね。一度α7R IVを使ってこの解像感を知ってしまうと、正直、α7R IIIには戻れないかも、と思うくらいです。
ダイナミックレンジが広く、階調も豊か。
質感や空気感まで写し撮る卓越した表現力
――ここからは作品を見ながら話をお聞かせください。下の葉の作品は、先ほどの話に登場した、「シンプルな被写体ほど解像感がわかる」と実感した作品ですね。
そうです。まるで目の前に葉っぱがあるかのように、リアルに見えますよね。これが6100万画素の実力です。撮影時は雨が降っていたので葉が濡れていて、「きれいだな」と思いカメラを向けました。大分県にある波当津(はとうづ)海岸近くの駐車場の脇にある、なんてことはない葉っぱです。でも、濡れているところと濡れてないところ、光と影、そして葉脈まできれいに表現できている。高解像らしい表現力で、何気ない風景でも人を惹きつけるような作品に仕上げることができるのですから驚きです。
6100万画素にもなると、同じ緑でも微妙な色の違いまで表現できます。この作品にもたくさんの緑が存在していますが、忠実に美しく色の違いを再現していますからね。高画素機になるとここまで表現できるのかと、いろいろと思う写真に撮影することができたと思います。 何気ない風景も作品になりますが、印象的な風景を撮ると、高解像の実力も本領発揮です。下の作品は宮崎県の「いるか岬」で撮ったもの。波が荒い時に訪れ、足元まで波をかぶりながら寄せては引く波をスローシャッターで撮影しました。
スローシャッターで撮ることで靄(もや)がかかったような感じになります。さらに濡れている岩に昇り始めた太陽が当たり、それがオレンジ色に輝いている。逆光で影になっている岩も黒潰れしていませんし、太陽が当たっている部分の光のグラデーションも階調豊かに描写できました。画素数が上がっても広いダイナミックレンジを維持しているところは本当に見事です。
宮崎の海岸らしいザラザラした岩の模様がとてもおもしろいのですが、アップにすると小さな岩の粒子まで写し撮っているのがわかります。
こうした土地の特徴となる細かな部分まで捉えることができるのも高画素ならでは。素材の質感やディテールまで、高解像でしっかり表現できます。
上の作品は大分県にある「黄牛(あめうし)の滝」です。周辺一帯が洞窟のような雰囲気で、ひとりで行くには少し怖い感じのところですが、「α7R IVならかっこいい作品が撮れそう」と思い撮影に出かけました。雨の中で、濡れながら撮った一枚ですね。 水の流れや迫力を表現できるようにシャッター速度を調整し、いろいろ変えてみた結果、2秒で撮影。PLフィルターを装着し、苔の緑を深くしっとりと見せるようにしました。フィルターをつけることで水しぶきによる白い流れも強調されます。白飛びしやすい状況ですが、ダイナミックレンジが広いおかげで白飛びもありません。高解像で表現力も豊か。湿度を帯びた空気感まで捉えて、想像通りのかっこいい写真に仕上げることができました。
カメラ設定を反映するEVFが進化し、
撮影が効率良く進められるようになった
――画質以外にα7R IIIからの進化を感じた部分はありますか?
EVFの解像力が1.6倍、576万ドットになり、とても見やすくなりました。私は夕暮れや夜に撮影することが多いので、そういった暗いシーンでは特に実感します。真っ暗な中ではLEDを照らしてピントを合わせていますが、ピント合わせが本当に簡単にできてしまう。ピントを合わせてシャッターを押すまでの時間が短縮できるわけです。無駄な時間をかけずに、効率良くきちんと撮ることができるEVFに進化した、という印象です。 6100万画素になって容量が重くなり、パソコンでの作業が大変だと思っているかたが多いと思いますが、EVFが見やすくなったことで的確に被写体を捉えることができ、多く撮る必要がなくなります。カメラ設定が反映された高画質なEVFの画像で確認できるため、失敗がほとんどないのです。下の作品も、実は2枚しか撮影していません。
足元で見つけた水引草という花を「ぼかして撮影したらおもしろいかな」と思い、三脚を一番低くして撮影しました。αはぼけ具合までEVFに反映されるので、その利便性も大きいですね。EVFで自分が思い描いた画をつくり込めるので、本当に最低限の撮影枚数で済んでしまう。撮影後、拡大してピントが合っていればそれでOK。枚数が少なくても、自分のビジョンさえしっかりしていれば、数枚しか撮らなくてもまったく問題ないのです。
――数ある高画素モデルの中で、αの強みはどのようなところにあると思いますか?
先ほども言ったように、カメラの設定やぼけ味、つまり撮影する画像そのままをEVFで見ることができるのは大きな強みです。それができるカメラは、現状αだけですからね。私の場合は光をつくり込んでいく作品も多いので、そういった撮影でもかなり有効です。さらに、「このようにぼけるのか」という気づきや発見にも繋がり、発想をそのままカタチにすることができる。そのメリットはとても大きいと思います。
現場の空気感まで写し撮り、
クリアに描くミラーレス専用設計レンズ
――下の星景写真も美しいですね。
大分県の真玉海岸を「FE 24mm F1.4 GM」との組み合わせで撮影した1枚ですね。「FE 24mm F1.4 GM」はとにかく明るく、色を美しく表現してくれるお気に入りのレンズです。星がにじみなく点像で写りますしコマ収差も気にならないので、星景写真を撮るようなかたにはもってこい。しかもF1.4でも軽くてコンパクトなので、持ち運びも苦になりません。 実際に使ってみて、「これはすごいぞ」と思いましたね。色が美しく透明感があり、その場の温度感や湿度まで写し撮ってくれるので、星景写真だけでなく朝の風景や夕景などにも向いているはず。このスッキリとした表現で朝や夕方の風景がどのように写るのか、すぐに試してみたいと思うほどです。 実は以前、同じF1.4の違うレンズで星景写真を撮ったことがありますが、それと比べると色味がまったく違います。ミラーレス専用設計だからこそカメラの性能や表現力をフルに発揮できるのだと、つくづく思いましたね。決して、明るければ「いいレンズ」というわけではないのです。 下の写真もミラーレス専用設計レンズならではの作品です。「FE 24-105mm F4 G OSS」の広角端で撮影したものですが、こういった強い逆光でもフレアやゴーストが出にくいので、安心して太陽を入れて撮ることができます。
朝日が昇り始めると彼岸花に朝露が付き出すので、花のガクにピントを合わせて撮影しました。拡大して見るとわかりますが、朝露だけでなく、極細のクモの糸まで見ることができます。肉眼では確認できず、後で確認してびっくり。こういった繊細なものまで描写できるのは6100万の高画素のおかげです。
巧みな色表現と高い解像感で
表現力がアップし、撮影が楽しくなる
――6100万画素もあることで、撮影スタイルなどの変化はありますか?
高解像で撮れば、質感やディテールをそのままに表現でき、それが見る人にとってのインパクトになります。そうすると、今までは目を向けなかった被写体にも目を向けるようになるわけですよ。撮影対象の被写体が増えるため、視野が広がる。α7R IVを手にすることで、自分の中での撮影の振り幅というか、バリエーションが増えるように思います。 私は風景写真を撮る時、現場の湿度や空気の透明感まで写し撮りたいと考えています。解像感の高いカメラ、そして専用のレンズを使えば、こういった目に見えないものまで表現できます。だからこそ、どのようなシーンでも、どのような被写体でも、きれいに撮れる。そうすると、撮影がより楽しくなる。「今日も撮影に出かけちゃおう!」と、写欲をかき立ててくれるのが、6100万画素なのだと思います。
――αが進化することで、風景写真のジャンルにどのような変化、可能性をもたらすと考えていますか?
α7R IIIからα7R IVになって巧みな色表現を実感するシーンが多くありました。私は色にこだわって作品づくりをしているので、とくに敏感に感じたのかもしれません。例えば波当津海岸で撮影した砂浜の写真は、今までは「地味な写真」で終わっていたところですが、きれいに、印象的に砂浜の模様を表現できましたし、画面いっぱいに茂った葉を写した作品も、同じ緑でも微妙な色の違いを写し撮ることでみなさんにお見せできるくらいレベルアップした作品になりました。 これまでならボツになりそうな写真でも、生命力を感じる、素材感まで描き出せる写真になったのはαの進化のおかげです。画質が上がる、画素数が上がるということは、今までと違った高い表現力を身につける、ということ。風景写真では表現力が非常に重要ですから、α7R IVを使うことで今までと違う写真が撮れるようになり、写真がより楽しくなると思いますよ。
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