星空アーティスト KAGAYA 氏 × α7R IV
特集:先進画質×俊敏性。新しい表現領域へ
〜光と闇が描く星空を高精細に捉える
「一期一会」の神秘の世界〜
幻想的で美しい星景写真を撮影しているKAGAYA氏に「私のベストカメラ」と言わしめたα7R IV。星や月、オーロラなど、夜空を彩るものたちを6100万画素の高解像がどのように表現したのか、撮影した作品を見ながら語ってもらった。
KAGAYA/星空アーティスト 豊富な天文知識で世界の星空を追う、写真家・映像作家・イラストレーター。 写真集『星月夜への招待』『天空讃歌』『悠久の宙』『星と海の楽園』、フォトエッセイ集『一瞬の宇宙』を刊行。星空写真は小学校理科の教科書にも採用される。写真を投稿発表するTwitterのフォロワーは70万人を超える。 宇宙と神話の世界を描く作家でもあり、画集が刊行されている他、プラネタリウム番組「銀河鉄道の夜」が全国で上映され観覧者数100万人を超える大ヒット。 天文普及とアーティストとしての功績をたたえられ、小惑星11949番はKagayayutaka(カガヤユタカ)と命名されている。
写真では表現するのが難しかった星空。
デジタルカメラの登場で大きく変化
――KAGAYAさんは幻想的な星景写真を数多く撮影していますが、写真撮影はいつごろから始めたのですか?
写真は小学生のころから撮っていました。中学生になってからは自分のカメラを買い、フィルムを現像したり、プリントして引き伸ばしたりして楽しんでいましたね。同時に星空の絵を描くのも好きでした。幼いながらも大好きな星空をさまざまな形で表現していたわけです。
趣味として写真はずっと続けていたのですが、フィルムカメラでは自分の表現したい星の世界を描くのは難しかった。そのため、最初はイラストで表現することが多かったですね。
デジタルカメラになってからはカメラの性能が良くなり、写真でも思い通りに表現することができるようになりました。
私が表現するのは夜の世界なので、高感度の性能、撮影したものを現場でチェックできる、ということがとても大事。設定の幅が広いというか、適正露出を探り当てることが非常に難しい世界ですからね。でもデジタル化が進むと、それが簡単にできるようになりました。デジタルカメラが出始めてすぐのころは画素数が少なく、高感度で撮影するとノイズがひどい状態でしたが、次第に性能が良くなり、目的のものが撮れるようになってきたと感じたのは2000年代後半。そのころからカメラを使って星空の作品を撮り始め、絵から写真に表現方法が移っていきました。
――デジタルになって、思い通りの作品が撮れるようになったのですね。
デジタル化が進んだおかげで、今ではSNSでの情報発信も簡単にできます。私は「すごいな」と思ったものをSNSで公開していますが、そう思えるシーンに出あうにはいろいろな苦労が伴うものです。私は星に関することはどんな苦労も楽しいと思えるので、皆さんの足となり目となり出かけて行って撮影し、多くの写真を共有したいと思っています。その写真に対して「いいね」と言ってもらえればうれしいですし、それがSNSを続けるモチベーションにも繋がるものです。今、目の前にある星空を何十万の人に見てもらえるのは、とてもワクワクします!
撮影は常に約60kgの重装備。
だからこそ小さくて軽いαに注目した
――星空を撮影する時の基本装備を教えてください。
カメラは3〜4台、レンズは超広角や対角魚眼レンズを中心に、10本ほど持って行きます。さらに頑丈な三脚もカメラ数だけ持って行きますから相当な重さです。私の場合は目的地まで飛行機で行き、レンタカーで移動するパターンが多いので、飛行機に載せられる23kgのスーツケースが2つとバックパック、というのが基本スタイル。そうなると総重量は60kgくらいになってしまいます。 その重さが悩みだったこともあり、少しでも軽量でコンパクトに収納できるαに注目しました。さらに高感度に強く、高画素のカメラを求めていたので、その性能もαを選んだ理由のひとつです。現場では貴重なチャンスを捉えるためにカメラを複数台用意しなければなりません。天体は常に動いていて刻一刻と姿を変えていきますし、目的の現象が現れる瞬間は本当にわずかで、やり直しが利きませんからね。 いざ撮影となったら、1台は自分主導で自由に動かせるようにしておいて、残りのカメラ2、3台は自動的にシャッターを切って連写する設定にして、その時を待ちます。そうすることで現象の瞬間を捉える時に、慌てずに済むわけです。ほとんど1人で撮影に出かけるので、カメラは軽ければ軽いほどベター。カメラを軽くすれば、それに合わせて三脚もレンズも小型で済みますからね。そのような理由で最初にα7R IIを購入しました。撮影したところ写りも非常に良かったので、それまで使っていたカメラを全部αに変え、それ以来ずっとαユーザーです。
ダイナミックレンジが広く
階調豊かに光と闇を表現できる
――α7R IVで撮影した率直な感想を聞かせてください。
私はα7R II、α7R III、α7R IVと歴代のシリーズを使ってきましたが、α7R IVは期待以上のカメラだったので、うれしくて最近2台目を購入したところです。なぜここまで気に入っているかは、撮影した作品を見ながら紹介していきたいと思います。 まずは、6100万画素という圧倒的な高解像でもダイナミックレンジが広いところ。下の作品は秩父の雲海を細く輝く二十八夜の月とともに撮影した1枚ですが、月の暗部までしっかり写し出していますよね。
地球の光が月に届いて暗部を照らしているため、肉眼でも月がうっすらと丸く見えます。明け方の細い月と秩父の夜景を撮りたいと、何度か出かけて狙っていた被写体です。この時は薄い雲が出ていて、地上と空が別世界のような印象的な作品を撮ることができました。 雲の下は地上の夜景が照らしている世界で、雲の上はうっすらとした月明かりに照らされている世界、ちょうど2つに分かれているような感じですよね。この雲は「層雲(そううん)」と言いますが、後に自分のところまでやってきて、あたり一帯が雲に包まれて何も見えなくなってしまいました。月が昇ってから雲に包まれるまで10〜15分。限られた時間の中でも、広いダイナミックレンジで夜空や層雲、月の姿まで階調豊かに表現してくれて、本当に頼りになるカメラです。
上の作品はα7R IVが手元に届いてすぐに、私のスタジオのベランダから撮影したものです。雷が遠くで鳴っていたので「もしかしたら撮れるかも」と思い、動体を検知する装置をαに装着し、画面に動きがあった時にシャッターが切れるように準備しました。 光る稲妻と暗雲を入れ込むため、ダイナミックレンジが広くないと、どちらもしっかり表現することができません。α7R IVは優れた描写力で白飛びも黒潰れもなく、荒ぶる空の迫力を見たままに再現してくれました。
トリミングも可能な高解像。
星やオーロラの色も忠実に写し出す
――下の作品はオーロラを撮影したものですね。
アイスランドでオーロラを待っていて、明け方、空が青くなりかけた時に撮ったものです。通常はグリーンのオーロラの上に赤いオーロラが出るものですが、夜明けのため赤い部分に太陽の光が当たっています。地上はまだ夜が明けていませんが、空には太陽の光が地上より先に届きますからね。オーロラに太陽の光が当たると「共鳴散乱」という現象が起こり、赤がピンクや紫に色が変化します。その微妙な色合いを階調豊かに捉え、私が撮ったオーロラの中で最もカラフルな1枚に仕上げることができました。 撮影中はオーロラに夢中で、背景にはほとんど目を向けませんでしたが、撮影した画像を拡大して見るとアンドロメダ大星雲まで写っていました。さらに左上にはスバルが写っている。ここまで細かく星を表現できるのは6100万画素の高解像ならではです。
秋田県で撮影した下の作品も、高解像が描き出した1枚です。対岸の樹木のディテール、地上に立ちこめる霧、オリオンをはじめとした無数の星まで、しっかり表現してくれました。それぞれ微妙に違う星の色まで忠実に捉えています。
ベストのタイミングはいつなのか、現場でも判断ができなかったため、連写で最高の瞬間を切り出しました。オリオンが昇ってくる時間を狙っていたので、その方向にセッティングして構図を決め、1時間ほど連写しています。15秒露光なので、1分間に4枚、1時間で240枚撮影した、ということですね。この時は風が手前に向かって吹いていたので、星が水面にきれいに映るタイミングも後から選ぶことができました。
上の作品は望遠鏡にカメラを取り付けて撮影したものですが、右上の小さな星を拡大して驚きました。土星の輪まで見えました。大気の揺らぎで少し歪んで見えましたが、6100万 画素でなければここまで写しとれなかったでしょう。 さらに、月の明るい部分の模様と影になった地球照の部分、両方を捉えるのはなかなか難しいこと。表面の模様を出そうとすると、地球照の部分が写らなくなってしまうし、逆にこの部分を出そうとすると月の光が真っ白になってしまう。そう考えるとこの作品は、α7R IVの性能があるからこそ撮れた1枚だと感じます。高画素で土星の輪まで表現できているし、広いダイナミックレンジで月もうまく撮れていますからね。 6100万画素もあれば、トリミングしても高画質を担保できます。私は出版物に掲載する写真を撮ることがありますが、その場合、写真に文字を乗せることもありますし、横構図で撮ったけど縦構図で使いたいなど、いろいろなケースがあるわけです。もちろんそれを想定してたくさんのカットを撮りますが、時間がない場合は後からトリミングできる構図で撮っておけば安心です。「トリミングも可能」という保険があることは、仕事として使う上でもありがたいことです。
ブライトモニタリング機能を使えば
暗闇の中でも構図に迷わない
――星空を撮影する時に、便利だと思った機能はありますか?
ブライトモニタリングは1番重宝している機能です。これを使えば、周囲が暗くてもモニター内の画像が何倍にも明るく見えます。この機能がなかった時は、どのカメラを使っても構図の中の星は見えないし、薄暗い地上の風景はもっと見えませんでした。「大体このくらいかな」と予測して撮影し、画像を確認して修正、という作業を繰り返さなければ構図を決めることができなかったのです。でもブライトモニタリングを使えば暗い星まで見えますし、真っ暗でも地上の風景が見えてくる。暗闇でも構図を素早く、的確に決められるわけです。この機能は、カスタムボタンに割り当てなければ使うことができません。
上の作品を撮る時もブライトモニタリング機能が役立ちました。アイスランドのキルキュフェトルフォスという山を撮ったものですが、現場では左側の滝が暗くて見えにくい状況でした。構図の中に滝がどこまで入っているかわかりませんでしたが、ブライトモニタリングを使えば滝までしっかり見えて、構図を一発で決めることができます。 オーロラの緑はポピュラーな色ですが、とてもきれいに出ていますよね。α7R IVは色の表現が非常に私好みです。夜空の色がきれいに出ますし、露出不足になっても色をしっかり出してくれるところもいい。上の作品も、水面に反射したオーロラの色までいい感じに出ています。
上の作品もブライトモニタリングが構図づくりに生きた1枚です。小笠原諸島の父島で撮影した天の川ですが、右側の葉がどこまで、どのように入っているかはブライトモニタリングがなければ真っ暗でまったくわかりませんでした。肉眼では見えますが、光学式ファインダーでは見えませんし、EVFもブライトモニタリングのスイッチを押す前は見えづらいです。 湾に向かって流れている川の河口で、空に広がる天の川と、川に映った天の川が繋がるように意識して撮影しました。昼間にロケハンして、この時刻になれば天の川が垂直に立ち、それが川に映るはずだ、と予測。夜になると撮影場所を探せないほど真っ暗なので、こういった撮影では明るいうちのロケハンは必須です。
一生に一度しか出あわない星空を共有し
たくさんの感動を届けたい
――写真を撮る上で大切にしていること、意識していることはありますか?
その時の星空や、その時に起こる天体現象は「一期一会」です。星空はいつ見ても同じような感じがしますが、実は星や月の位置、惑星の位置、その日の天候や場所を考えると、その組み合わせは二度とやって来ません。永遠に続くけれど、二度と同じ繰り返しはない世界です。ですから、「一生のうちに一度しか巡りあえない星空」だということは常に意識し、その一瞬を逃さないよう全力を尽くしています。
――「一期一会」の星空を撮影するのに、選んだカメラがα7R IVだったわけですね。
α7R IVは、今の私のベストカメラです。星空撮影では、感度を上げても広いダイナミックレンジが保たれていることが一番大事。それをクリアしていて、さらに高画素ですからね。後からトリミングできますし、高画素であることによってノイズも目立たなくなる。星景撮影で必要な機能が詰め込まれていて、とても気に入っています。 今後もα7R IVを相棒に素晴らしい星空をたくさん撮影し、SNSでみなさんに共有したいと考えています。「一期一会」の夜空とともに、私が感じた「すごい」という気持ちや、感動を少しでも多くの人にお届けできればうれしいです。
記事で紹介された機能の詳細はこちら
記事で紹介された商品はこちら
ワンクリックアンケートにご協力ください
αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると最新記事の情報を随時お知らせします。