特集:CP+で届けたかった思い
「魅せるための花写真 〜使って初めて実感できるα7R IVの価値〜」
写真家 並木隆 氏
残念ながら中止になってしまったカメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+ 2020」。ここでは、ソニーブースのスペシャルセミナーで講師のみなさんが伝えたかった思いとともに、セミナーのために撮り下ろした珠玉の作品群をご紹介します。今回は、いつも印象的な花の作品を魅せてくれる写真家の並木隆氏が、「α7R IV」で撮る花写真の魅力について語ります。
並木 隆/写真家 1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。心に響く花をテーマに、各種雑誌誌面で作品を発表。 公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人 日本写真協会、日本自然科学写真協会会員
〜Special Message〜
並木氏がスペシャルセミナーで伝えたかった思いとは
6000万画素超えでも手持ちで撮れる。 操作性もよくなったα7R IV
スペシャルセミナーでは、実際に使ってみて想像以上に良かったα7R IVとマクロレンズの組み合わせについてお話しようと思っていました。正直、α7R IVが発売された当初は「6000万画素まではいらないかもな」と思わずにはいられませんでした(笑)。でも使ってみると、画素数以外のスペックも底上げされていて、とても使い勝手が良くなっていてびっくりしました。 まずは6000万画素オーバーのカメラが手持ちで普通に使えてしまうこと。通常、5000万画素クラスのカメラは、4×5(シノゴ)の大判カメラで使うようながっちりとした三脚で撮らないとブレが目立つのが当たり前だと思っているのですが、それが小型軽量なボディや手ブレ補正のおかげで、手持ちで普通に撮れるのは、実はとてつもなくすごいことなのです。 さらに操作系。ボタンの配置や形がとても使いやすくなりましたね。α7R IIIも十分に使いやすかったですが、α7R IVになってさらに良くなりました。ツーアクションのボタン操作がなくなったので、背面のボタンを操作することがほぼなくなり、直感的に撮れるようになったのは使ってみて初めてわかること。ユーザーの声をきちんと反映して設計を考えてくれていることを実感しましたね。
ピーキングの精度が向上し
ピントがシビアなマクロ撮影を強力サポート
ここからは作品を紹介しながらカメラやレンズの性能の話をしていきましょう。まずは「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」で撮った作品です。このレンズは「G Master」ではなくGレンズなので「6000万画素超えでも耐えられるのかな」と思っていましたが、まったく問題なし。逆に α7R IIIよりもα7R IVとの相性がいいのではないかと思うくらいレンズのポテンシャルの高さを感じました。 撮っていてまず思ったのが、画面のどこにピントが合っているのかがひと目でわかる「ピーキング」機能の精度が向上していること。α7R IIIでも十分満足できるレベルでしたが、やはりマクロを使うとシビアな状況の時もありました。EVFで見るとピントの合っている部分に色がつきますが、マクロ撮影時は慎重に、多少ずらしながら複数枚撮っておいて当たりを見る、ということが多かった。でもα7R IVは、微細なズレすらなくなり、本当にピントの合っているところしか色が変わらなくなっています。
例えば上のような黄色い花は色が飛びやすく、ピントを合わせるのが難しい被写体です。でもマニュアルフォーカスでピーキングを使うと、ピントが合っている部分に色がつき、ピント位置がしっかり見えるのです。
上のように、シクラメンの花びらからしたたる水滴を撮る時もピーキングが役立ちます。水滴を撮る時は必ず水滴の中に写り込んでいるものにフォーカスしなければいけないので、ピント合わせはさらにシビア。こんなシーンでも、水滴部分にきちんとピーキングの色がつき、ピントもピーキングの部分にしっかり合ってくれます。 下の花は花芯にピントを合わせましたが、本当にピントが合っている部分しかピーキングの色が変わらなかった。画像処理エンジンの処理能力が上がった結果ですが、α7R IVで撮る上で僕にとって最大のメリットとなったのはこのピーキングの精度の高さですね。
さらに有効約6100万画素になったことで、クロップしても約2600万画素を維持できます。上の作品とは少し違いますが、同じ被写体をAPS-Cモードでクロップ撮影したのが下の作品です。
正直「これで十分でしょ!」と思うくらいの画質ですからね。本当はこれをCP+2020のソニーブースの巨大モニターで大きく見せたかった! クロップしてもこれだけのものが撮れる、ということをお伝えできなかったのはとても残念です。 僕は本来、クロップはあまり使いませんが、マクロ撮影の場合は「等倍で撮ったけどもう少し寄りたい」というシーンが多くあります。そんな時に使えるのがAPS-Cモードのクロップ撮影です。これまでの画素数が低いカメラだと、クロップ撮影モードを使った場合、画素数がそこからさらに減ってしまうので、クオリティーが十分と思えるものがなく、僕の中でクロップするという選択はなかったですが、α7R IVの高画素であれば、実際に使える機能になってきたという印象。このメリットはとても大きいと思いますよ。
「FE 135mm F1.8 GM」の最大の魅力は
ふんわりと柔らかなぼけ味
次は僕のお気に入りのレンズ、「FE 135mm F1.8 GM」の作品です。今回は全体的に引いた画を多く撮影しました。このレンズは70cmまで寄れるのでアップでも撮れますが、引いても背景をぼかすことができるすぐれものです。 最短撮影距離から撮影してもピント面の解像度が高いので、これは花を撮る人にはぜひ持ってほしい1本です。自分が近づいたり離れたりできる地面に咲いている花などは、これ1本で多彩な作品を撮ることができます。ズームレンズに比べると軽いですし、開放も明るいし、AFも速い、いいレンズです。
上の作品、赤いのはアロエの花ですが、近くで見ると残念ながらかわいくない(笑)。だから遠景にして花を小さく写したわけです。そうすると格段にかわいく見える。花に近づき、手前の花にピントを合わせて撮影する人が多いので、あえて15mくらい離れたところから前ぼけの花を入れ、遠くの被写体にピントを合わせて撮りました。青空で雲もきれいだったから「じゃあ景色も入れてあげよう」という感じで、どうしたら花がかわいく、素敵に見えるかを考え抜いて撮った1枚です。
上の作品は、背景のぼけが非常にきれい。光でキラキラした部分も、このレンズはふんわりと柔らかくぼけるのがいいですね。下の菜の花も、前ぼけの美しさが際立ちます。
みんな前ぼけをつくる時は前ぼけさせたい花に近寄ればいいと思いがちですが、寄りすぎてしまうとぼけすぎてスケスケになってしまいます。このレンズの場合は、前ぼけにする被写体とレンズの先端が80cmくらい離れていれば、ぼけのコントロールがしやすくなりますよ。
「FE 20mm F1.8 G」は近寄れる。
きれいな前ぼけを表現できる
「FE 20mm F1.8 G」は最短撮影距離がMF時で18cm(AF時は19cm)と短く、被写体にグッと寄って撮れることとAFの速さが魅力です。このクラスのレンズは花撮影においてピントを移動させることがあまりないのでAFスピードはあまり重要視されませんが、ここまで寄れるレンズですから速いに越したことはありません。描写力も含めて、この実力からすれば「G Master」レンズでもおかしくないくらいです。
開放F1.8と明るく、自然なぼけ味もいいですよね。特に下の作品のようなきれいな前ぼけがつくれるのは、このレンズの真骨頂。ただし、ここまで近づくとフードの影が写ってしまうので、フードを外して撮影すること。写真を上達したいという人には、広角の練習用レンズとして最適な1本です。
花の撮影で大切なのは背景を考えながら
きれいだと思う部分を切り取ること
マクロは自分が「きれいだな」と思う部分を切り取るレンズです。例えば下の作品、何の花だかわかりますか?
これはランの花の先の部分だけを切り取った作品です。全体像が下の写真。ランの花ってよく見ると気味が悪いですよね(笑)。なので僕はきれいだと思う部分のみをクローズアップして切り取ったわけです。
なんでもかんでも写せばいいというわけではなく、きれいな部分だけを見せればいいのです。切り取る部分は個人の好みやセンスによって違いますから、いろいろな角度から花を観察して自分が「きれいだな」と思うところを探して撮ればいいだけ。それができるのがマクロレンズの最大の魅力です。
また、マクロ撮影では撮る位置をほんの数cm変えるだけで、作品の印象がガラリと変わります。でも被写体だけに注目してしまい、背景を見ていない人が多い。かっこいい人でも汚い服を着ていたらかっこよく見えないのと一緒で、花の写真も背景ありきです。花がきれいで、なおかつ背景がきれいだと、相乗効果で輪をかけてきれいに見えます。 下の写真は背景が地味で、いまひとつ花がパッとしませんよね。
でも撮影位置をほんの少しずらしただけでこんなにカラフルな背景になり、花の印象も格段に良くなります。
よりいい作品、美しい花の写真を撮るためには、自分がいいと思う部分を見つけ、背景も考えながら撮ることが大切です。
完成度を極めた第4世代。
使えば使うほどその価値がわかる
第4世代となるα7R IVの完成度の高さは使えば使うほど実感できるものです。解像感やダイナミックレンジなどの画質面だけでなく、道具としての使いやすさも向上し、「よくここまで写る、使い勝手のいいカメラをつくったものだ」と思いますね。正直に言うと、一般の人がα7R IVを使ってしまったら、もう他のカメラは使えなくなりますよ。そのくらい操作が楽で、隅々まですべてがきれいに写りますからね。 さらに、α7R IVのポテンシャルをフルに発揮させるなら、純正レンズが不可欠です。特にAFの精度や速さは純正レンズに勝るものはないと思います。αはレンズを含め、システムとしての完成度も高いですから、ぜひ合わせて使って最高のポテンシャルで撮影に臨みましょう。 これだけカメラやレンズが進化すると、今後もいろいろと期待をしてしまいますね。EVFもより肉眼に近づいていくでしょうし、細かなストレスもどんどん解消されてより快適に撮影ができるようになるはず。ミラーレスの先駆けとして一歩先を行くαには、革新的な進化を期待しています。 花を撮影するにはこれからがいい季節です。人から聞いたり、記事を読んだりするだけでなく、ぜひ自分自身でα7R IVや純正マクロレンズの実力を体感してほしいと思います。
CP+2020で披露頂くはずだった作品の一部をご紹介
この記事で紹介された写真は、ソニーのAndroid TV ブラビアでご覧いただけます。
閲覧無料、迫力の大画面・高精細で、珠玉の作品をお楽しみください。
※期間終了しました
※期間:4/30(木)〜6/17(水)
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