特集:CP+で届けたかった思い
「α7R IVで撮る風景写真、新しい表現領域へ」
風景写真家 高橋真澄 氏
残念ながら中止になってしまったカメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+ 2020」。ここでは、ソニーブースのスペシャルセミナーで講師のみなさんが伝えたかった思いとともに、セミナーのために撮り下ろした珠玉の作品群をご紹介します。今回は、彩雲や彩氷など、光の現象を写した幻想的な作品を撮りつづけている高橋真澄氏が登場。αの機能により撮影の手法が変わったと語る高橋氏が、ソニーのカメラの優位性や独自の撮影法について語ります。
高橋 真澄/風景写真家 1959年北海道生まれ。1995年より、上富良野町在住。大学時代から北海道の山を中心に撮影を始める。北海道の美瑛・富良野を中心に広大で清涼な自然風景を独自の感性で撮りつづけ、これまでに出版した写真集は70冊以上。最近人気を集めている青い池(美瑛)を1997年に発見し、写真集『blue river』(青菁社刊)を出版。また、虹、サンピラー、ダイヤモンドダストの撮影の第一人者としても広く知られている。
〜Special Message〜
高橋氏がスペシャルセミナーで伝えたかった思いとは
EVFで仕上がりが見えるからこそ
感覚的に芸術性の高い作品が撮れる
「ソニーのミラーレスカメラはEVFで仕上がりの画を見ることができる」。このことはαについて語る際、私がみなさんに常に伝えてきたことです。αユーザーの人はご存じかもしれませんが、まだこの事実を知らずに使っている人も少なくないと聞きます。ですからセミナーでも、まずはこのことをお話するつもりでいました。 αは“絞りの違い”もEVFで見ることができます。例えば下の4枚の写真。あえて同じ被写体、構図で絞りだけを変えて撮ったものです。他のカメラでは、絞りはEVFに反映されないものもあり、被写界深度もある程度操作しなければ見えないものです。この単純なことが、どれだけ革新的なことか、わかっていない人が意外と多い。
絞りの違いがEVFで目に見えてわかれば、簡単に自分の好みの絞りを選ぶことができますからね。撮って、画像を確認して、違うと思ったら、また絞りを変えて……という面倒な作業をすることなく、パパッと好みの絞りを選べるのは本当に素晴らしいことです。
上の4枚の写真も先ほどと同じように絞りだけを変えて撮っています。こちらは輝線の見えかたが違うのでわかりやすいかもしれません。F16ではギザギザが強く、開放に近ければ近いほど丸く見えますよね。これがEVFで見えるのは驚くべきことなのです。今までは経験と勘で撮るしかなかったのですが、撮る前に仕上がりの画を確認できることで感覚的に撮影ができるようになったのですから。
そして、感覚的に撮ることができた1枚が上の作品です。これまでは最初にシャッタースピードや絞りを決めて撮るのが当たり前でしたが、αはEVFで仕上がりが見えるので、自分好みの設定に感覚で仕上げることができるわけですよ。この作品はF7.1で撮影していますが、写真を撮っている人からするとなぜこのシチュエーションでここまで絞るのか?と不思議に思われるでしょう。私が気持ちよく見えたのが、この数値だった。ただそれだけのことですが、風景写真においてはそれが本質です。 この本質が今までのカメラではすべて無視されていました。絞りなどの数値ありきでカメラという機械を媒介し、そこから好き嫌いを選択していく。それが今までの撮りかたでしたが、αは感覚的な好き嫌いを軸に撮ることができます。私がよく撮影しているキラキラした被写体も、ミラーレスでなければ気づくことすらできません。そういう意味でもソニーはカメラの新しい表現領域をつくってくれた、と実感します。感覚的に撮れるということは芸術の領域ですからね。絞りやシャッタースピードなど、数値で設定すべきところをすべて捨て去り、撮影者のセンスで撮る。EVFを見て「ただ気持ちがいいから」と撮るわけですから、αのおかげでようやく風景写真も芸術として表現できるようになったということです。
グラデーションがなめらかで美しい。
カメラの性能も格段に上がった感覚
EVFで仕上がりが見えることで、彩雲の撮影も驚くほど歩留まりよく撮影できるようになりました。上の作品は太陽とともに彩雲を撮ったものです。彩雲はPLフィルターの角度によって色のつきかたが変わりますし、反射のカーブなども状況によって変わりますが、EVFを見ればダイレクトに確認できる。さらに照度や露出も仕上がりの状態で確認できるので、自分好みの画をスピーディーに突き詰めることができます。
これは今季撮影した七色の彩雲ですが、α7R IVで撮ると七色に変化していくグラデーションのバランスが非常に良いです。α7R IIIでも特に問題はありませんでしたが、このような彩雲をα7R IVで撮ると、赤から紫に変わる部分がとてもなめらかで今までにはない感じでした。α7R IVはグラデーションの表現も進化していて、バンディングせずになめらかに見せてくれます。拡大した時に破綻しないのも素晴らしいところ。とにかく描写が美しいので、その被写体をどう写したいかだけに集中できる濃密な世界、時間を過ごすことができます。
上の光のカーテンもα7R IVのグラデーションの素晴らしさが際立つ作品ですね。α7R IVはα7R IIIより解像度が上がったにも関わらず、最大約15ストップのダイナミックレンジを確保しています。この解像感と広いダイナミックレンジのおかげで明部から暗部までの美しいトーンで絹のようになめらかに表現することができました。セミナーではこの作品を巨大モニターに映し出して説明したかったのですが、それが叶わず残念です。このような仕上がりを見ると、カメラの性能が1つ、2つ階段を上がっていると実感しますね。
α7R IVになり素材の力強さがアップ。
気持ちをより入れて撮れるようになった
グラデーションに関してもそうですが、α7R IVは撮影した“素材そのもの”がしっかりしている、という印象です。だからこそ後で現像した時にも軸がブレない。カメラが進化して基礎的な素材の力強さが上がったことは、つくり手にとって非常に大きな変化です。 操作面では、グリップが深くなり、撮る時のフィーリングも良くなりました。被写体を見て、気持ちを入れていく時に違和感が少しずつ減っていくような感覚ですから、やはり感覚を表現できる道具になってくれているように思います。
上の作品を撮影したのは、この冬の初雪の時です。α7R IVになって解像度が有効約6100万画素に上がり、風景をより精細に表現できるようになりました。この解像感は大判カメラの4×5(シノゴ)のような素晴らしさです。α7R IVは手軽に撮れてしまいますが、これだけ精細な作品が撮れると「大事に撮ろう」という気持ちになりますね。
上の作品はサンピラーを撮ったものですが、ソニーのレンズは円形絞りが多いところも画期的です。サンピラーは光なのでリングぼけが写りますが、絞り込むとぼけが角張ってしまうため開放で撮るのが鉄則でした。この時は左の木にピントを合わせましたが、開放で撮るとピントが甘くなり、どうしても厚みを出すことができません。でもこのレンズは円形絞りなので、ある程度絞ってもリングぼけを丸く表現してくれる。これはサンピラーを撮る時に強力な武器になります。 絞り込んで撮ることで厚みが出て、立体感を表現できます。サンピラーだけでなく、このようなキラキラした被写体を撮るなら、ピントの位置がわかり、被写界深度がわかるαのEVFが必須です。α7R IVでさらにEVFが見やすくなったので、被写体とより濃密に向き合えるようになったように思います。
これは水面に映っている紅葉ですが、通常ならばどう表現するか悩む被写体です。水面に映っている虚像と、水面に浮かんでいる実像、どちらにピントを合わせるのか、開放にするのか、絞り込むのか。いろいろ悩んでしまうところですが、αを使えばそんなことを考えずに感覚的に撮ることができます。EVFを見ながら自分が「いいな」と思うところがダイレクトにわかりますからね。
画像処理前提ではなく撮影時に絞り込む。
αだからこそ可能な私の撮影スタイル
こちらは積もった雪とともに睡蓮を撮ったものですが、このように白と黒のコントラストが強いシーンではアンダー気味に撮ってRAW現像の時に持ち上げる、というのが以前のやりかたでした。でもαの場合は、露出をある程度絞り込めるので、後で画像処理の必要がなく、画像をきれいなままで残すことができます。この時は、雪を表現しようとするとグレーがかって画が汚くなってしまうと思い、雪の質感は捨て、白さだけで雪を表現しようと判断。そのようなことを頭でイメージしながら、EVFで仕上がりを確認し、画をつくり込んでいきました。 次も、どちらかというと撮影後にRAW現像で調整するタイプの作品です。
PLフィルターで水面の反射を取り除き、漆黒の闇に浮かび上がるような睡蓮を表現したものですが、これもはじめから絞り込んでいけますからね。絞りも色もEVFで確認できるので、構図などの作画に集中できます。
下の作品は彩氷ですが、これもEVFで仕上がりの画が見えています。とても派手ですが、αではこのような自然現象も見えてしまうのだから仕方ないですよね。何かを加えたり、合成したり、ということは一切なく、そのままを写し取っています。
この作品でも使用した「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」はマクロ的にも撮ることができる非常に万能なレンズです。北海道は広大な風景が多いので広角レンズで撮るイメージがあるかもしれませんが、それはまったく違います。「広い風景を切り取って広く見せる」というのが本質なので、実は望遠系レンズの使用頻度も高いのです。 今までは、どのような設定にしたらいいか、どのような工夫をしたらいいか、どのレンズを使えばいいか、というところから撮影に入らなければなりませんでしたが、αを使えばそんなことを考えなくても「こう撮りたい」という思いを追求するだけです。ソニーはカメラもレンズも道具としての進化を遂げ、感覚的に撮れる域に達しました。いい筆になってくれたので、あとは思いのままに描くだけです。
撮影の本質を考えながら風景と向き合い
同じ場所でも動いて見ることが大切
照度差がある被写体について語る際、暗い部分の表現力は取り上げられても明るい部分の話はあまり表に出てきません。ミラーレスにすれば明るいところも暗くするだけで見えてくる。単純なことですが、それだけで撮影領域が増えるということです。被写界深度を含めた輝線や細かい描写などをEVFで確認できるαは唯一無二の存在と言えます。このような新しいことに挑戦し、開拓していけるのもαの強みです。
いい作品を撮るには、同じ場所でも上下左右、いろいろ動いて見てみることが大切です。与えられた風景をただ撮るのではなく「どこをどう引き出して撮るか」という部分に本質があると思います。ですから「何時くらいにここに行って、こういう作品を撮る」と凝り固まった目的を持たずに、現地でどう撮って、どう見せたいかを考えて撮ってみてください。本質的なことを見つめて自然風景と向き合えば、きっと新しい発見があるはずです。
CP+2020で披露頂くはずだった作品の一部をご紹介
この記事で紹介された写真は、ソニーのAndroid TV ブラビアでご覧いただけます。
閲覧無料、迫力の大画面・高精細で、珠玉の作品をお楽しみください。
※期間終了しました
※期間:4/30(木)〜6/17(水)
※期間:5/21(木)〜7/1(水)
※期間:6/4(木)〜7/15(水)
※期間:6/18(木)〜7/29(水)
※期間:7/2(木)〜8/12(水)
※期間:7/16(木)〜8/26(水)
※期間:7/30(木)〜9/9(水)
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