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特集:CP+で届けたかった思い
「α7R IVで撮る、愛する九州の風景」
写真家 清家道子 氏

α Universe editorial team

残念ながら中止になってしまったカメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2020」。ここでは、ソニーブースのスペシャルセミナーで講師のみなさんが伝えたかった思いとともに、セミナーのために撮り下ろした珠玉の作品群をご紹介します。今回は、拠点である九州の風景を感性豊かに切り取る清家道子さんが「α7R IV」で撮影した作品を披露。自然風景をより印象的に写し撮るαの実力についても語ります。

清家 道子/写真家 福岡生まれ。JPS 日本写真家協会会員。 カラーコーディネーターを経て風景写真家となる。 地元九州の風景を独自の色彩感覚と視点で撮影している。 2011年より企業カレンダーを手がける他、写真雑誌への寄稿、カメラメーカーでの講演、撮影会などを行なっている。 2016年に写真展「またまの宇宙」をリコーイメージングスクエアで開催。 同写真集(日本写真企画)を出版。2017年フランスのプロバンス地方の写真集『The Gift Of Ranunculus』(風景写真出版)のすべての撮影を担当している。

〜Special Message〜
清家氏がスペシャルセミナーで伝えたかった思いとは

地元・九州の感動的な自然風景を
多くの人に発信することをテーマに

私は九州を中心に撮影をしていますが、九州にはまだまだ知られていない素晴らしい風景がたくさんあります。地元の私だからこそ感じることができる印象的な風景もたくさんあるので、九州の風土や環境が描き出すあらゆる風景をみなさんに発信していきたい。そのような思いで、今回はα7R IVを片手に撮影に出かけました。優れた描写で描く豊かな自然や、時間や季節とともに変わりゆく幻想的な風景をみなさんにご紹介できればと思います。

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM 16mm,F2.8,25秒,ISO1600

上は夜明け前、宮崎の日南海岸で撮影した作品です。日が昇る寸前、光が残る星空とともに造形豊かな海岸を撮影しました。レンズは「FE 16-35mm F2.8 GM」を使っていますが、このレンズは非常に優秀です。一般的なレンズだとこのようなシーンでは、四隅が暗くなってしまうことがありますが、α7R IVと「G Master」レンズなら隅から隅まで美しい描写で表現することができます。 この時は波を白く表現するためにスローシャッターにしていますが、25秒もの露光時間になるとレンズによっては周辺が流れてしまうことがあります。しかし、このレンズは周辺も星の点像がきれいに止まっていて、「もうすぐ夜が明けて朝が来る」ことを物語る色の階調性が本当に素晴らしい。これは有効約6100万画素の描写力と優れたレンズ性能があったからこそ写し撮れた風景と言えますね。 16-35mmの焦点距離では、「G Master」レンズのほかに「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」も好んで使っています。それぞれに個性があるので、シーンによって使い分けている感じですね。夜明けや日暮れといった描写がデリケートなシーンは「G Master」レンズを使いますが、アクティブに動き回って撮るような時は、軽くて取り回しのいいツァイスレンズを使います。同じ焦点距離のズームレンズでも状況によって最適な1本を選ぶことができるのは、ミラーレス専用設計レンズが豊富に揃うαならではですね。

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM 16mm,F16,1/25秒,ISO200

「輝くような太陽の光条を表現するなら「FE 16-35mm F2.8 GM」が最適。フレアが抑えられて逆光に強いところや、岩のザラッとした質感をリアルに表現できる優れた描写力は『G Master』レンズの実力ですね」と、清家さん。

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM 16mm,F16,1/125秒,ISO500

水彩画のように、にじむぼけ表現と
シャープな解像が秀逸な「STFレンズ」

次は「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」で撮影した作品をご紹介したいと思います。 ピントが合った部分のシャープさと、とろけるようなぼけ味を両立しているのがこのレンズの特徴。風景を違った角度から切り取れるだけでなく、繊細な表現も得意としている、私のお気に入りのレンズです。

α7R IV,FE 100mm F2.8 STF GM OSS 100mm,F9,1/25秒,ISO500

これは自宅から車で1時間ほど走ったところにある、何気ない道路脇の雑草です。冬のある日、珍しく冷え込んでいて雑草にうっすらと霜がついていました。私はこれを見た時、「フランスのレースみたい」と思い、その美しい造形を捉えようとカメラを構えました。早朝、光が入り込む前に撮影したので、全体が青みがかっています。周囲には温泉の湯気が上がっているので色が全体的に青っぽくなっていて、それがまたいい雰囲気を醸し出していますよね。 ホワイトバランスを太陽光に設定し、三脚をつけてシャッタースピードは1/25秒で撮影しています。このレンズはディテールまで解像感豊かに写してくれるのが魅力です。決してきれいではない被写体も個性的な作品に仕上げることができるレンズと言っていいでしょう。大分県は日本有数の温泉地なので、あらゆる場所で湯気が出ています。冷え込むとこのようなドラマを見せてくれます。冷え込んだ朝に一瞬だけ見せてくれる、夢のような光景ですよね。このような発見ができるのも写真を撮る醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか。

α7R IV,FE 100mm F2.8 STF GM OSS 100mm,F5.6,1/160秒,ISO640

上の作品は、早咲きの河津桜です。大分の日田で撮影したのですが、行ってみたら枯れ始めていて「さあ、どうしよう」と思いましたね。そこで「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」を使うことにしました。このレンズは手前と奥が水彩画のようにきれいにぼけてくれるので、唯一、花がきれいに残っていた部分にピントを合わせ、枯れている部分はぼけるように撮影しています。時期を過ぎてしまった桜でも、このレンズを使えばきれいな部分だけをクローズアップできるので、とてもありがたいです。 とろけるようなぼけが素晴らしく、STFレンズの実力をあらためて感じた1枚でした。水彩画のにじみのような美しい描写は、STFレンズでしか得られませんからね。

α7R IVの広いダイナミックレンジと
豊かな階調がリアルな風景を描き出す

今回の撮影で使ったα7R IVは、軽くて操作性が良く、EVFも高解像になり見やすくなっていましたね。ファインダーの中で自分のアイデアや発想を形にでき、その思いをしっかり叶えてくれるのでとても満足しています。私は夜明け前や夕暮れなど、薄暗い中での撮影が多いのですが、そのような状況でもカメラ設定が反映されるEVFを見て構図をしっかり決められるので、このカメラにかなり助けられているな、と感じますね。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 200mm,F11,1/30秒,ISO320

上の作品は宮崎県にある滝を写したものです。とても狭い中に七色の虹が見えますよね。虹は光の色が無数に入っている現象ですが、紫から赤までの階調が、狭い虹の中に入っていることをうまく表現できました。α7R IVと「G Master」レンズが描き出す、美しい色と豊かな階調が際立った1枚です。 この時は崖に登り、三脚をつけ、シャッタースピードを調整しながら撮影しました。飛沫を写す場合は高速シャッターにすると色が出にくいですし、低速にしすぎてもいい感じに仕上がりませんから、いろいろ試して最適なところを探りました。PLフィルターを回しながら虹の色がきれいに出るところを見つけて、EVFで虹の色を確認しながら撮っています。

α7R IV,FE 24-105mm F4 G OSS 37mm,F16,10秒,ISO50

今年の冬、九州は1回しか雪が降りませんでした。雪が山に残っている限られた時間を狙い、九重連山に行って撮ったのが上の作品です。ごく普通の、ありふれた風景ですが、光量が1/400になるNDフィルターをつけることでひと工夫しています。NDフィルターをつけると晴れた日でもシャッタースピードを遅く設定できるので、雲の動きをドラマチックに見せることができるのです。 RAWとJPEGを同時記録しましたが、撮影時は太陽の光が強く当たっていたので、JPEGの画像は雲が白飛びしていました。でも、RAWデータを現像してみたら、このように白の描写がきっちり出てきたのです。α7R IVはダイナミックレンジが広く、白の表現も多彩なので、このカメラでなければ雲をここまで印象的に写すことができなかったと思います。白飛びしそうなところや黒潰れしそうなところもきちんとデータが残っているからこそ、ディテールまで忠実に風景を描くことができるのです。 私は長い間「FE 24-105mm F4 G OSS」を使っていますが、α7R IVと組み合わせると、このレンズの良さが際立つように感じます。特に上の作品は、今までは体験したことがなかった表現力を見せてくれました。 「FE 24-105mm F4 G OSS」は、私がαを使うようになって最初に買ったレンズです。このレンズのほか、「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」、「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」の3本でスタートしています。24-105mmと焦点域が広いので、いろいろ構図を変えて撮る時には非常に便利です。上の作品を撮った日はこのレンズ1本だけを持って撮影に出かけました。こんな風に「今日はこのレンズにしよう」と決めて、それ以外のレンズを使わない日がよくあります。私は撮影中にレンズを換えないタイプなので、「あなたに決めた」とその日のレンズを選ぶわけです。

α7R IV,FE 24-105mm F4 G OSS 56mm,F10,30秒,ISO250

福岡のダムに沈んだ枯れ木を撮影。スローシャッターで水面に映っている枯れ木を強調し、霧とともに水墨画のような雰囲気を演出している。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 70mm,F11,1/8秒,ISO320

上の作品も宮崎の滝です。α7R IVになってとてもいいなと思ったのは、防塵・防滴機能が上がったことです。滝を撮る時は、水しぶきがかかってしまうことも多くあります。私はカメラにタオルをかけて撮影をしていますが、それでも濡れてしまうことがある。そんな時でも安心して撮れるようになりましたからね。 九州は高温多湿で、苔がむしたような滝がたくさんあります。苔の細かい表情や差し込む光の美しさまで、しっかり表現できたのはα7R IVの表現力や解像感のおかげです。αはEVFや背面モニターにカメラの設定が反映されるので画づくりが楽で、思い通りに撮れるのが魅力です。このシーンもシャッター速度の設定に迷うところですよね。スローシャッターにすると平面的に写ってしまうし、高速シャッターにすると光が粒になって光芒が出にくくなってしまう。でもEVFで仕上がりを見ながら調整できるので、迷うことなく感覚的に撮ることができます。 EVFやモニターで仕上がりが見えると、好奇心を掻き立てられますし、冒険もできる。撮る前に「こんな風になるんだ」ということがわかるので、画づくりの可能性も、表現の幅もぐっと広がりましたね。

画づくりにひと工夫することで
何気ないシーンでも立派な作品になる

α7R IVはどんな被写体でもきれいに撮れてしまうので、何気ないシーンも「撮ってみようかな」という気持ちにさせてくれます。心に響いた風景でも画にならないことがよくありますが、撮影を諦めずに「このカメラで撮影したらどうなるんだろう」と好奇心を持ってカメラを向けてみてください。 実際に、私もα7R IVを使うようになって撮影スタイルが変わりました。例えば下の作品。これは水たまりのようなところで撮っていますが、この葉を撮るだけで30分もの時間をかけていますからね。

α7R IV,FE 100mm F2.8 STF GM OSS 100mm,F13,1/30秒,ISO50

足元の水たまりや小さな川の流れはどこにでもあるものです。そんな何気ない場所でも、アイデア次第で自分の画づくりができるのがαです。「足元で見つけた何か」も作品になる、ということみなさんに伝えたいと思い、この1枚セレクトしました。 この時もEVFで仕上がりを見ながら、絞りやシャッタースピードを調整しました。とても天気がよかったのでF13まで絞って撮っていますが、絞ることで葉の下に映り込んでいる太陽のキラキラを強調できる。それもすべてEVFで確認できますから、作画がとても楽です。

α7R IV,FE 16-35mm F2.8 GM 35mm,F16,1.3秒,ISO100

滝の撮影では水しぶきがレンズにつかないよう、2秒に設定したセルフタイマーを使うという。シャッターが切れる寸前までレンズをタオルで保護し、2秒のタイミングでタオルを取る。これを5回ほど繰り返せば水しぶきのついていない写真が撮れるそう。

α7R IV,FE 100mm F2.8 STF GM OSS 100mm,F11,1/160秒,ISO250

冷え込んだ日は、温泉の湯気を生かした風景を狙えるのが九州のいいところ。湯気は冷え込むと霜になるので、その風景を狙って撮影に出かけました。九州は冬らしい風景がなかなか撮れないエリアなので、自分のアイデアと工夫、そしてレンズの性能に頼りながら撮ることが多いです。 ここは絶景を望むような場所ではなく、後ろは大型トラックがひっきりなしに通るような普通の道路です。昇り始めた太陽を、両脇の木の枝が手のように支えているイメージで構図をつくりました。この日は「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」で朝の霜や湯気の感じを捉えよう、と決めて撮影に出発。ズームレンズのほうが画角を変えることができて便利かもしれませんが、単焦点でも動けば画角を変えられるので、私は苦ではありません。この時は手持ちで撮影しましたが、α7R IV はボディ内5軸手ブレ補正が搭載されているので、逆光でも安心して手持ちで撮ることができます。

大胆なぼけ描写でドラマチックに魅せる
70-200mmの「G Master」レンズ

ぼけがとてもきれいな「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」は、ダイナミックに、大胆にぼけ描写を楽しめるのが魅力です。幅広い焦点距離から構図を調整でき、風景を切り取りやすいところも気に入っています。高解像で細かな部分までしっかり表現してくれるので、普段は撮らないものまで撮ってみたくなる写欲をくすぐるレンズです。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 164mm,F2.8,1/160秒,ISO400

上は紅梅を撮影した作品です。春はロマンチックになる季節ですから、春めいた、ときめく感じを表現したいと思い撮影に挑みました。白くぼけているのは白梅です。白い梅を手前に入れ、一番遠くの紅梅にピントを合わせることで水玉のようなぼけをつくりました。白い梅がきれいに丸くぼけて、思い通りの表現ができたと思います。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 80mm,F7.1,1/3秒,ISO500

自宅の近所で撮影したというレンコン畑。冬、寒さが増してポキッと折れた茎を、影絵のように美しく表現した作品。構図はかなり慎重に決めたため、70-200mmの幅広い焦点域が役に立ったという。

α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 200mm,F3.5,1/2000秒,ISO250
α7R IV,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 70mm,F14,1/40秒,ISO800

作品づくりに必要な独自の視点や発想力。
そこに繋がるヒントをくれるのがαの強み

α7R IVを使い続けていると、被写体の素材感や手触りまで表現してくれるカメラだということを、あらためて実感します。特に私が好きな雨降りでは、その表現力を遺憾なく発揮してくれますね。素材感が生きる条件下では、「何気ない被写体も作品になってしまう」ということを体感できるはずですから、ぜひ自分らしい視点で写真表現をしてほしいと思います。自分が「きれい」、「かわいい」と思ったシーンを1枚の作品にできるのは本当に素晴らしいことなので、ぜひチャレンジしてみてください。 風景写真を撮る上でαの一番の魅力は、カメラ設定が反映されるEVFで思いのままに画づくりができることです。まるでファインダーの中で絵を描くような感覚ですからね。絞りも反映されてぼけ具合まで確認できるので、そこから新たな発想やアイデアにも繋がっていく。そこがαの最大の強みだと思います。 風景写真は、みんなと同じ場所に三脚を立てて、同じ構図で撮ることも多いですが、これからは独自の視点と、アイデア、何気ない草花でも作品にできるような発想力を持つべきだと考えています。これは私自身も大事にしている部分なのですが、外出を自粛していた時期も発想力が衰えないように花を買ってきて家の中で撮影したり、水の中に浮かべて撮ったりしていました。独自の視点で作品を作るという事は大切な要素なのです。 だから、美しい景色を求めて遠出するだけが風景写真ではありません。「身近な場所で個性を生かしながら、自分らしい風景を撮る」という時代が来ています。個性とは自分の視点やアイデアであり、それを手助けしてくれるのがαとミラーレス専用設計のレンズです。みなさんもαを使いながら、ぜひ自分だけの風景を撮っていただきたいと思います。

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