特集:CP+で届けたかった思い
「αで磨く、ヒコーキ写真テクニック」
写真家 佐々木 豊 氏
残念ながら中止になってしまったカメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2020」。ここでは、ソニーブースのスペシャルセミナーで講師のみなさんが伝えたかった思いとともに、セミナーのための撮り下ろした珠玉の作品群をご紹介します。今回は、光と影をテーマに航空機の作品を撮りつづけている佐々木豊氏が登場。高解像の「α7R IV」で捉えた印象的な作品を披露しながら、撮影時の状況やカメラとレンズの魅力について語ります。
佐々木 豊/写真家 1966年京都府生まれ。これまでモータースポーツやさまざまなスポーツ競技を撮影。雑誌などに作品を発表。その経験を生かし、現在は航空機撮影を主に行う。どんなシーンでも自分独自の視点とエッセンスをちりばめることに主眼を置いて撮影に挑む。伊丹空港を中心に全国各地の空港で活動。日本航空写真家協会(JAAP)準会員。ソニープロサポート会員。
〜Special Message〜
佐々木氏がスペシャルセミナーで伝えたかった思いとは
リアリティーに繋がる高解像や精細感が
航空機撮影には必要不可欠
今回はすべてα7R IVで撮影した作品を用意しました。飛行機を撮影する場合、高精細に写せるカメラであることがとても重要です。高精細さはリアリティーにつながりますからね。実際にすぐそこにあるように写すことができるので、有効約6100万画素という圧倒的な解像感が飛行機をどのように表現するのか、「CP+2020」ではソニーブースの巨大モニターで見ていただきたかったのです。
残念ながらその機会は失われてしまったので、今回はその片鱗(へんりん)を少しでもご紹介できればと思います。あとはレンズを含めた機材。このシーンではこの機材が撮りやすい、映えやすい、というところまでお伝えしたいと思います。
では、さっそくα7R IVで撮影した作品をご覧ください。
下の作品は今年の1月に撮影した旅客機、ボーイング767です。私はこのようなアップのショットが大好きでよく撮影します。主翼とエンジンを入れて、機体の前だけをアップで撮影した写真ですね。
まず注目してほしいのが、解像度の高さです。α7R IVで撮ると、左側のドアの文字からエンジンに書かれている文字まですべて読めてしまうほど精細に解像してくれます。
基本的に高解像ではピントやブレがシビアになりますが、それがまったくない状態で撮れているのが素晴らしい。この作品はシャッタースピード1/1000秒で撮っているので止まっているように見えますが、動きが速いところを撮影しています。それでもフォーカスがしっかり合って、しっかり追うことができる。だからこそ、圧巻の解像感で表現することができるのです。
上の作品も解像感が際立つ1枚ですね。11月、紅葉の時期を狙って旭川空港の近くで撮影しました。旭川空港は便数が非常に少なく、太陽が当たっている順光の時間帯に飛ぶのは2便しかありません。その中の1便を狙って撮ったのが上の作品になります。 この時は条件が悪く、奥に見えるはずの山々が厚い雲に覆われていましたが、太陽が差し込んでいたので下に広がる色づいた広葉樹をきれいに撮ることができました。撮影後にパソコンで開き、27インチの4Kモニターで見てみると、広葉樹の葉が1枚1枚しっかりと解像していて、「これはすごい!」と驚きましたね。以前にも同等の画素数を持つカメラを使ったことがありますが、それ以上の「何か」が際立っている感じがしたのです。 画素数以上に解像しているというか、ベールが1枚取れたような感じ。これまでのカメラでは撮影した写真を現像する時に少しシャープネスをかけていましたが、α7R IVで撮るとシャープネスをかける必要がありません。優秀なセンサーがしっかり解像してくれるので、シャープネスかけてしまうと逆にカリカリになり過ぎてしまいます。それだけ解像していてシャープさを最初から表現しているのには驚きでした。 上の作品は明らかに今までのカメラより密度が高く、画素数だけでは語りきれない、α7R IVのセンサーの精細感が際立った写真だと思います。私の好きな解像感やリアリティーが非常によく出ていますし、小さく写した機体もディテールまで写してくれて、想像以上の作品に仕上げることができました。
リアルタイムトラッキングを使えば
思い通りのフレーミングで撮影できる
α7R IVの高解像を生かすためには高精度なフォーカスが必須です。航空機は動きの速い瞬間に撮ることもありますから、ピントが外れてしまうと完全にアウト。飛行機自体が巨大なので、モータースポーツのように動体の予測性能や技術精度はさほど問われませんが、動きの速さはスポーツとほぼ変わりません。レンズを大きく振らないと撮れないほどの速さですが、α7R IVならAFでも被写体をしっかりと追って捉えてくれます。 なかでも、被写体をフォーカスし続けてくれる「リアルタイムトラッキング」はかなり優秀です。下の作品はリアルタイムトラッキングでコックピットの窓にピントを合わせて撮影していますが、この機能があったからこそ余裕を持って、思い通りのフレーミングで撮れた作品といえます。
今までのカメラではフォーカスエリアを固定すると主役の飛行機を真ん中に置かなければならず、追いかけているうちに滑走路が入らなくなってしまうこともあります。でも私は同じくらいの比率で滑走路を入れたい。そうするには通常、フォーカスエリアを移動していかなければなりませんが、α7R IVでリアルタイムトラッキングを使えばそんな面倒な作業は不要です。機体に一度ピントを食いつかせてしまえば、カメラを引きながら構図を変えてもピントが外れることはありませんし、自分が思い描いたフレーミングの中でも機体をしっかり追ってくれますからね。非常に便利で楽に撮れて、画づくりに集中できる、ありがたい機能です。 上の作品は冬の早朝に伊丹空港で撮影した、羽田行きの1番機です。この時期は7時から8時ごろまで太陽が画面左から上がってくる逆光になります。飛行機はどちらかというと順光の写真が好まれますが、このシーンは逆光がかっこいい。飛行機はシャドーになっていますが、放射冷却によって飛行機の翼についた露が飛び散って霧のように見えますよね。さらに大阪の街並みが太陽に照らされてシャドーになっている。このシーンを撮るために、条件が揃う朝を狙って撮った作品です。 機体が少し浮いた離陸時の撮影ですが、このようなシーンでは風向きも重要です。飛行機は風に向かって飛んでいきますから、滑走路の右から左に風が吹いている状態では、飛行機の頭が右を向いてしまいます。つまり飛んだ瞬間に正面から撮れなくなってしまうのです。1番機にアサインされているボーイング787は翼が長く、飛び立つと「しなる」ので、正面から撮るとかっこよさが際立ちます。風の状態が良くないと正面から撮ることができず、自分のイメージとはまったく違う写真になってしまうので、そんな時は撮影をやめますね。 思い通りの作品を撮るためには、当日の天候だけでなく、放射冷却での冷え込み、風の強さや向きも見極めなければなりません。本当に条件がいい時にしか撮影に行かないのでチャンスは少なくなりますが、α7R IVは「確実にいい作品が撮れる」という信頼感があるので心強いです。
機体をグッと引き寄せるテレコンバーター。
高画質を維持してより魅力的な作品に
私は「FE 600mm F4 GM OSS」をメインに使っていますが、空を飛ぶ航空機を撮る場合はそれでも足りないシーンが多くあります。そんな時に便利なのがテレコンバーターです。テレコンバーターを使うと画質が劣化するものもありますが、ソニーのテレコンバーターはそれを感じさせず「もう少し寄りたい」という時は、ためらいなく使うことができます。非常にコンパクトなので、気軽に持って行けるのも魅力です。
関西国際空港では600mmに2倍のテレコンバーターをつけて、離陸した飛行機を夕日とともに撮影しました。ここは夕日を絡めて飛行機を撮ることができる有名な撮影ポイントですが、太陽の位置と飛行機の高さが合わないと撮ることができません。沈みゆく太陽と、高度を上げていく飛行機。どちらも動いているものですから、撮影するには正しい先読みや運が必要です。 私は絶好のタイミングで撮ることができました。太陽が画面に入っていてもフレアやゴーストが出ていませんし、AFも強い太陽の光に惑わされることなくきちんと飛行機を追ってくれたことからもテレコンバーターの性能がわかりますよね。エンジンの熱で太陽の光が引っ張られ、太陽の光とブラストの帯がクロスした、いい瞬間を撮影できたと思います。 私は有効約6100万画素の解像感を優先したいので、もう少し寄りたい時にはテレコンバーターを使いますが、α7R IVはこれだけ解像度が高いのでクロップするという方法もあります。
新千歳空港ではクロップ撮影を試してみました。それが上の作品です。早朝に降っていた雪が止み、晴れてきたタイミングで国際線ターミナルから滑走路に向かう旅客機を捉えました。雪が降った後なので「エンジンの後ろの雪が舞い飛ぶだろう」と思い、ジャンボ機の正面にポジショニング。600mmでは少し広めだったので、クロップしてジャンボ機の迫力を強調してみました。家に帰ってからパソコンで見ても、クロップによって作品性が落ちた、ということはまったく感じなかったですね。正直「クロップも全然使えるな」と思いました。 よく見ると機体の顔の部分にも雪が積もっているので、クロップによってそこも強調できた感じですね。雪が降った後に晴れると雪がすぐに溶けてしまうので、このようなシーンは貴重です。逆にフレームの部分は雪が溶けているのでフォルムがしっかりわかる。飛行機好きのみなさんが喜びそうな作品で、ジャンボ機が好きな私にとっても良い感じに撮れたので大満足です。 飛行機の撮影は空港の外周から撮影することが多く、どうしても望遠レンズを使う機会が多くなります。でも、そこまで長い望遠レンズは持っていない、という人も少なくないはず。そんな人にはクロップ撮影が非常に有効です。α7R IVならクロップしても約2600万画素を担保できるので、そこまで画質が落ちませんからね。遠くにある被写体を引き寄せて撮るシーンにおいては非常に使い勝手がいいので、使ったことがない人はぜひ一度試していただきたいですね。
使い勝手も描写力も満足度が高い
シーンによって選べる望遠レンズ
αのレンズラインアップには望遠系レンズも複数あり、好みの描写、焦点距離を選べるのも魅力です。「FE 600mm F4 GM OSS」をメインに使っている私も、当然、それ一辺倒ではありません。こんな時にはこんなレンズが活躍した、というシーンがありますので、ここからは作品とともにレンズの魅力をご紹介したいと思います。
これは羽田空港の駐機場で撮った機体です。私は画質や解像感にこだわっているので、単焦点レンズで撮りたい気持ちはありましたが、600mmでは上にのびる尾翼が切れてしまう状況でした。400mmに変えてみたら、今度は機体が小さすぎる。そこで登場したのが「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」です。ズームレンズなのでその場から動くことなく、自分好みの画角に合わせることができました。 正直なところ、私はずっと単焦点レンズで撮ってきたので、言いかたが悪いかもしれませんがズームレンズの画質はあまり信用していないところがありました。特に200-600mmは「G Master」レンズではなかったので、「とりあえず写っていればいいかな」とあなどっていたのです。 でも家に帰って画像をモニターで確認したら、想像以上にしっかり撮れていて驚きました。結果的に485mmで撮っていますから、単焦点では無理な画角。焦点距離を選べるズームレンズだからこそ思い通りの画角で撮れたわけです。「ズームレンズで、しかもGレンズでこれだけ撮れてしまうのか」と実感した1枚でした。 滑らかな階調が生み出す立体感のある映像は、リアリティーを求めている私にとって好印象でした。特にボディの後方に映り込んだ光の階調は非常にきれいで、金属的な質感もしっかり表現しています。この作品を撮影してレンズの実力がわかったので、遠征などで機材が制限される状況では、「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」という選択肢があると心強いかもしれません。
上の作品は「FE 400mm F2.8 GM OSS」で撮影しました。このレンズも私のお気に入りの1本です。驚くほど解像度が高く、α7R IVとの相性も抜群。撮るたびにレンズの潜在能力を見せつけられている感じです。 この時は風が弱かったので、「FE 400mm F2.8 GM OSS」を三脚につけてバルブの20秒露光で撮影しました。ターミナルから出てプッシュバックし、車を外した出発寸前の状況です。飛行機は止まった状態ですが、いつ動き出すかわからない。高画質で撮るために感度は上げたくなかった。最初はISO100で撮ろうとしましたが30秒の露光時間が必要になってしまうので「長すぎて無理だ」と思い、ISO200の20秒露光を選択。途中で飛行機が一度動いてしまったので、結果的にしっかり撮れたのはこの1枚だけでした。でも、工場の夜景と飛行機のコラボレーションというおもしろい作品をしっかり描くことができたと思います。 このレンズは汎用性が高く、あらゆるシーンで使うことができます。相性のいいテレコンバーターを使えば、400mmに加えて1.4倍の560mm、2倍の800mmと3つの焦点距離から選択できる。だから最初は600mmではなく、「FE 400mm F2.8 GM OSS」とテレコンバーターの組み合わせをメインで使うことも考えましたが、私の体には600 mm の画角が染み付いているので、メインはやはり「FE 600mm F4 GM OSS」だろう、という結果になりました。でも最後の最後まで悩むほど、私にとっては魅力的なレンズでしたね。
光から影への階調を美しく描き出し
色の再現性にも優れたα7R IV
α7R IVは、高解像だからこそ得られる階調の美しさや色の再現性も特筆すべきところです。下の作品は羽田空港第1ターミナルから国際線ターミナルに向かって撮影し、逆光で輝くジャンボ機を捉えました。出発に備え、自らの動力で地上を移動しているところですね。
冬の夕方、後方からの太陽に照らされた飛行機を、シルエットのように写した作品です。600mmの望遠で撮っていますが、飛行機のディテールや輪郭は精細に表現されていますよね。さらに光の階調性も素晴らしい。ノーズに向かうにつれて暗くなっていく滑らかな光の出かたにもα7R IVの良さが出ています。 私は光と影をテーマに航空機を撮影しているので、αのカメラとレンズによるコントラストの高さにも魅力を感じています。シャドー部が変に起きてきたりすることもなく、光から影までをすべてきれいに描いてくれる。優れた描写性能で、私好みの画を撮影できるのもαを選んだ理由のひとつです。 このようなシーンでは陽炎の影響も考えて撮らなければなりません。600mmはかなりロングなので陽炎の影響が出やすいレンズといえます。さらに手前に別の機体がスポットインしていたので、その機体から出てくる熱も影響する可能性がある。大きく引き伸ばした時に陽炎や機体の熱が見えてしまうのは、私の中ではNGです。あらゆる条件がすべて揃わないと撮れないシーンですが、この時は本当に条件が良くて、風が陽炎を吹き飛ばしてくれました。羽田の風はかなり強烈なので、厳しい環境下で撮った1枚といえます。 写真からは想像できないかもしれませんが、撮影時は過酷な状況も多々あります。羽田空港の強風や新千歳空港の冬の寒さ、真夏の炎天下に耐えながら、必死で撮影しているのです。冬場は寒さ対策でかなり着込むので、移動などで体が温まると頭から湯気が出ますからね。この前は新千歳空港で、スノーシューをはいているにもかかわらず腰まで雪に埋もれて出られなくなってしまいました。非常に低い気温の中でもα7R IVはしっかり動いてくれましたから、耐久性には信頼を置いています。
上の作品は伊丹空港近くで撮ったものです。この日は強い低気圧が来ていて空が真っ黒になっていたので「何かおもしろいものが撮れそうだ」と撮影に出かけました。最初は黒い雲をバックに飛行機を撮ろうと思っていましたが、急に太陽が出てくるという予想外の展開に。「もしかしたら虹が出るかな」と思っていたら、左下の隅にある白い建物あたりに虹が出始めました。その後、どんどん虹が伸びて、最終的に左右が繋がり半円形の虹になったのです。その時、ちょうど羽田行きの大型旅客機ボーイング777(トリプルセブン)が飛んでくれました。1、2分後には虹が消えていたので、きれいに虹が出た一瞬にタイミングよく撮れた1枚です。 α7R IVが虹の色を鮮明に描いてくれましたね。αは全般的に色の出かたがとても鮮やかなところも気に入っています。とくにクリエイティブスタイルの「風景モード」で撮ると私の好きな色味に仕上げてくれるので、このモードで撮ることが多いです。私は基本的にRAWデータで撮影して画像処理をしますが、撮った時の画が自分的にぴったりきてほしいので、撮影時にある程度はつくり込みます。ですから画像処理でいじるのは最低限です。レタッチした最終形が撮った時とまったく違う画になるのが嫌なので、撮影時に出てくる画を大切にしているのです。
信頼感があり自信を与えてくれるカメラで
自分のイメージを凌駕する作品に
私は撮影でさまざまな空港に行きますが、飛行機を撮影している人を見るとαユーザーは確実に増えているという印象です。レンズは、「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」や「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」を使っている人が多いですね。飛行機を撮るハイアマチュアは単焦点レンズを使う人が多いですが、入門者にはズームレンズがおすすめです。最近はソニーのレンズも飛行機に対して使いやすい焦点距離のものが増えているので、予算や好みに合わせてレンズを選択できるところもαに乗り換える人が増えている要因でしょう。 飛行機撮影に限ったことではありませんが、撮影にはいい機材を使うことが、いい写真を撮る自信につながり、撮るための気合いや心構えにまで影響すると思っています。「この機材だから仕方ない」と思って撮ると、そういう写真になってしまいますし、それを言い訳にしたくありません。やはり、信頼のおけるものでなければ、自分の思い描いた画を撮る「道具」にはならないのです。 そういう意味でも、私が今、メインに使っているα7R IVは信頼感抜群で、自分が思い描いた、さらにそれ以上の解像感で表現してくれる最高のカメラだとえいます。みなさんにもαの優れたイメージセンサーが表現する高い解像感を飛行機撮影で、ぜひ味わっていただきたいですね。「G Master」レンズやGレンズなど、描写力に優れた高性能のレンズを使えば、きっと自分のイメージを超える写真が撮れますよ。
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※期間終了しました
※期間:7/2(木)〜8/12(水)
※期間:7/16(木)〜8/26(水)
※期間:7/30(木)〜9/9(水)
※期間:8/13(木)〜9/23(水)
※期間:8/27(木)〜10/7(水)
※期間:9/10(木)〜10/21(水)
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