特集「そのレンズが、世界を一変する。」
天体写真家 沼澤茂美氏 × FE 12-24mm F2.8 GM
革新的レンズの登場、
間違いないだろうという期待感
このレンズが発表された時期はちょうど夏の天の川のシーズンで、その長大な光の帯と地上風景とのかかわりを表現するには最適なレンズが誕生したと感じました。何しろ12mm〜24mm超広角ズームレンズでは世界初*の開放F値2.8ですし、GMとして発売されるわけですから、開放からのパフォーマンスは間違いないだろうという期待感がありました。
このスペックですから、前玉は相当大きくレンズの質量も1kg近くても仕方ないと思っていました。しかし、実際に手に取った感じは、ずっしりとした密度の高さは感じるものの質量は約850gで全長は短く、コンパクトにまとめられているというものでした。最前面の大口径非球面レンズの曲率もそれほど大きくなく、突出感がないので使用中の安心感があります。
強力なパースペクティブと開放からの高い画質
撮影してみての第一印象ですが、最大の魅力はなんといっても強力なパースペクティブと、開放からの圧倒的な画質ですね。身の回りの何気ない景観も非日常的な空間のように見せてくれ、作品性を高めてくれる。とにかく星が緻密に写るので、天の川の微星もびっしりと再現してくれます。この素晴らしい結像性能をフルに生かすためにはやはりα7R IVのような高画素機が必要だと実感しました。
レンズを手にしたのが梅雨のまっただ中で、初日に晴れた以外はほとんど雲に覆われた日が続きました。晴れないと撮影できない星空と違って、風景撮影は時と場所を選びません。超広角レンズの特徴を利用した放射状に収束する雲や稲が伸び始めた水田の1点透視の表現は、その空間の広がりを強烈に印象づける方法として定番ですが、このレンズはかなりの近接撮影も可能なため、今までとは一風異なる対象の表情が見えてきて驚かされます。
私は梅雨時の雨や曇天の下での撮影が好きですね。植物の表情がとても生き生きしていて、こういうときは全方向から柔らかな光につつまれる「環境光」の作用で、対象の持つ精緻な形、テクスチャー表現が絶妙です。このレンズとα7R IVで再現される風景は、圧倒的なリアリティーと感じました。
星空撮影のあたらしい表現を求めて
夏の空は、明るく長大な天の川が輝いていますが、12mmの画角は対角で122度あり、夏の主立った星座と共に天の川の迫力を余すことなく再現してくれると言って良いでしょう。今までこれだけの画角を表現するには対角線魚眼レンズを使わなければなりませんでした。
しかし、魚眼レンズを使うと直線状の天の川は、画角中心を通る配置にしなければ必ず湾曲して写ります。それがこの12mmではどのように配置しても天の川の直線状の姿は失われません。しかも淡い天の川の輝きを明瞭に生々しく表現するためにこの開放F値2.8はとても心強いですね。その威力は上の画像①を見ていただきたいのですが、これは、夏の天の川から連なるとても淡い秋の天の川を撮ったものです。その淡い光の連なりもきらびやかな星の帯として表現できるのが素晴らしいですね。
12mmによる表現はとにかく、肉眼では見えない視点の表現で面白いのですが、奇抜さだけに頼ってしまうと何を表現したいかといった主題がおろそかになりがちです。それを補ってくれるのがやはり星空撮影に欠かせない「ブライトモニタリング」機能になります。この機能によって天の川の配置、地上風景の変化もしっかり把握でき、正確なフレーミングが可能となります。これらの組み合わせはまさに充実したαのシステムの強みを象徴していると言え、新たな表現に挑戦する意欲が沸いてきます。
また国内のような多湿な環境では夜露にさらされながら撮影するため、特に防塵防滴性能が重要です。海外では乾燥地帯での撮影が多く、ひじょうに細かな塵に悩まされることがあります。そのようなさまざまな悪条件での撮影ではGMの耐環境特性は本当に頼りになります。本レンズでは、リア部分にシートフィルターホルダーが装備されました。星空の撮影ではソフトフィルターを常用するため、この配慮はとても助かります。脱着も容易で外れにくく、現場での使用が良く考慮されています。
何気ない日常の景観が
印象深い作品へと変貌するレンズ
FE 12-24mm F2.8 GMの肉眼では見えない視点の表現は星空の新しい表現を可能にしてくれるのは確かですが、何気ない日常の景観をも強烈な印象を与える世界へと変貌させてくれるレンズと言っても良いでしょう。stay homeといわれる今日ですが、身の回りに新しい発見をもたらすという点では、このレンズはとても魅力的です。快晴の星空ではない環境、街の中で、そして雲のある夜にも、実に印象深い作品を生み出してくれますので、ぜひ様々な方に試して頂きたいレンズですね。
私達はさまざまな光学系を使用しますので、カメラが持つ基本的な特性にはすごく敏感です。ミラーレスのEマウントは、それまでの一眼レフが持っていたさまざまな呪縛から解放してくれたという点が最大の恩恵でしょうね。具体的にはミラーボックスのケラレが無くなったこと、そしてフランジバックの短縮化です。これによって魅力的なレンズ、たとえば私達が多用する大口径広角レンズが実にコンパクトに実現できたわけです。
星空の撮影ではとにかく明るいレンズであることが最大の力となります。Eマウントのラインアップは実に豊富ですが、これからも開放性能の優れた、描写力の高い大口径レンズが開発されることを心から願っています。
ソニーオープンフォトコン 星空フォトコンテスト×AstroArts
本コンテストは、スマートフォンも含めて撮影機材の制限を設けない、オープンフォトコン形式で行います。審査員は天体写真家 沼澤茂美さんです。奮ってご応募ください。
※募集終了しました
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