「細かな要望にも応えてくれるレンズ」
井上浩輝氏×FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
写真家 井上浩輝 氏
「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS の登場で、これまで諦めていた望遠域の撮影が可能になったことは、僕の飛行機撮影の自由度を格段に向上させました。」と語る井上氏。
今回はカメラグランプリ2020にてレンズ賞を受賞したFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSで航空機を撮影してもらい、レンズの魅力について伺った。
井上 浩輝/写真家
1979年札幌市生まれ。札幌南高校、新潟大学卒業、東北学院大学法務研究科修了後、北海道に戻り、風景写真の撮影を開始。次第にキタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、2016年に米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』のネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。自然と人間社会のかかわりへの疑問に端を発した「A Wild Fox Chase」というキタキツネを追った作品群を制作、発表してきた。写真は国内のみならず海外の広告などでも使用されている。2019年には、代表作『Fox Chase』のプリントが英国フィリップスのオークションにおいて27,500ユーロで競落され、その動物写真がコンテンポラリーアートとして取引の対象にもなりはじめている。
写真集『ふゆのきつね』日経ナショナルジオグラフィック社
写真エッセイ集『北国からの手紙』アスコム
野生動物や風景を被写体に撮影することが多いのですが、航空会社と提携し飛行機を被写体とすることは少なくありません。FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの発表にあわせていち早くお借りし、 いつもの新千歳空港、そして“梅雨明けしているはず” の那覇空港へ飛びました。ですが、沖縄は雨でした・・・。
α9の能力を引き出す、性能の良さに驚いた
今回、FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSをα9と組み合わせて撮影しました。 初めて使用した際、ズーム時の‘シャキッとした’解像力やAF性能の高さに驚きました。 リアルタイムトラッキング機能との相性も大変良いなと感じましたね。 また光量次第ですが、テレコンバーターも‘使えるな’と思いました。
焦点域・サイズ共に撮影の幅を広げてくれる
200-600mmという焦点距離は、細かな要望にも対応できます。 例えば400mmよりもう少し寄って撮影したいとき。光量が十分に獲得できる昼間では、機体の機首から尾翼までをできるだけ被写界深度に入れて撮影したい。でも僕は、AFがしっかりと動作しそうな絞りのF8あたりを使って撮影することが多いので600mm F4までは求めない。そのような時に200-600mmという焦点距離は非常に便利です。また、僕は全国飛び回るため、カメラバッグやリュックに入れ、機内持ち込み可能な大きさであることも魅力的だと感じています。 飛行機に乗って全国の空港へ撮影して飛び回る際、できたらレンズを預けることなく手荷物として運びたいものです。318mmというレンズの全長は、400mmや600mmといった単焦点レンズのような大きさがないので、よくあるカメラバッグにもリュックにも入れやすく、その重量も2,115gと軽いのがうれしいです。また、ズームリングの軽さも快適でとっさの倍率変更がさっとできます。
本当にGレンズなのかと疑うほどの心地よさ
αのボディに超望遠域のレンズを手軽に装着できる日をずっと待っていました。撮影時は、あいにく湿気の多い日でしたが、200mmから600mmどの焦点域でも高い解像感で描写してくれました。
ピントがしっかりと合い、離陸する飛行機のエッジや飛行機胴体のリベット痕のひとつひとつがよく見え、これが本当にGレンズなのかとさえ思ってしまうくらい心地よいものです。また、600mmでの撮影となると、手ブレには慎重にならねばなりませんが、飛行機(旅客機)の撮影で使用することが多い1/1000秒前後の撮影では十分な補正が働いているように感じました。さらにはインナーズーム方式を採用し、防塵・防滴*に配慮した設計となると、多少の降水であれば撮影可能なとても心強いレンズと言えそうです。
次の作品では絞りがF13となる2倍テレコンをつけて撮影しました。 近づいてくる機体のコクピット周辺に「リアルタイムトラッキング機能」を動作させれば、機首を持ち上げて力強く上昇するときもしっかりとコクピット周辺にピントが合い続けます。α9の高速かつ正確なAF性能を十分に引き出してくれるレンズ性能の高さに驚きます。カメラとレンズがピントを合わせてくれるので、撮り手は飛行機を望みの画角に収めることだけに集中できるのです。
あらゆる環境下にも耐えうる性能
この作品は、夕陽を大胆に構図に入れて撮影してみました。このような極端な環境下でもフレアやゴーストが出ることがありませんでした。違和感なく、夕陽を見ながらの撮影ができたことにおどろきます。
暗所時でも描写力は衰えていないように感じました。
600mmの望遠端で撮影しようとするとF6.3まで絞られてしまい、暗い環境での撮影では感度を上げて撮影しなければならなくなりますが、ここは暗所ノイズに強いαのセンサーがよりノイズの少ないデータになります。
望遠端だからといって、描写力が甘くなることはなく、飛行機の外板の組み込みがよく見えます。200mmから600mmまでどの焦点域も自在に使うことができるのがうれしいレンズです。加えて、1.4倍テレコンとの相性が良く、テレコンを使用していることを感じさせないキリっとした描写が素敵です。
また、このレンズには横方向の手ぶれ補正機能をオフにする流し撮り用のMODE 2が搭載されているため、流し撮りがしやすいです。背景が雑然としているとき、さっと流し撮り用の設定をすることができれば、新しい一枚が生まれるかもしれません。
飛行機を撮影する際、離着陸をするために速度を落としているとはいえ、かなり高速で動いていますから、被写体となる機体の画角内の大きさは目まぐるしく変化します。ズームレンズでその大きさに対応しながら一度のチャンスに様々な画角で撮影できることは、作品を一枚でも多く残すチャンスをもたらしてくれることと思います。もう少しだけ望遠が欲しいけど、ズームレンズの恩恵も受けていたいと思われている方はぜひお試しください。
現行のα7シリーズの前身となるNEXシリーズを手に撮影をはじめた僕にとって望遠ズームレンズは憧れでした。E 55-210mm F4.5-6.3 OSS、FE 70-200mm F4 G OSS、FE 70-200mm F2.8 GM OSS、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSと徐々に素敵なレンズを揃えていく中で「もう少し望遠が欲しい」はいつも感じていることでした。ここにかゆいところに手が届くようなFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの登場は、おもわずニヤッとなるうれしさがあります。今後もこのような期待に応えてくださることを願いながら今日も撮りまわります。
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