COLORS −鉄道彩美−
鉄道写真家 中井精也 氏 Vol.2
中井氏が“α”で描く美しき色彩の鉄道風景!
デジタルカメラマガジンとの連動企画を
毎月コラム形式でお届けします
みなさんこんにちは。鉄道写真家の中井精也です。
第2回目となる今回のテーマカラーは“紫”です。
さて皆さんは“紫”と聞いて自然界で何を思い浮かべますか?
僕が“紫”と聞いて思い浮かべたのは、夜明け前や日没時にわずかな時間だけ見られる空色でした。僕はこの紫色に染まる空を見ると、なぜか寂しさと旅情が入り混じった不思議な気持ちになります。どこか寂しいその色彩が、自分が旅の途中にいることを強く意識させ、人恋しい気持ちにさせます。
今回の撮影では話題の新製品α7S IIIで臨んだのですがテーマカラーの“紫”の空色を、本当に美しく描写してくれました。薄紫の空色の簿妙な諧調表現が本当に綺麗で、驚くほどでした。
最初にご覧いただく写真ですが、その美しい諧調表現を存分に感じていただける1枚じゃないかと思います。
次にご覧いただく写真は、秩父鉄道を走る普通列車です。 もと都営三田線で活躍していた懐かしい電車が、夕日の残照を受けてキラリと輝く瞬間を撮影しました。あえて先頭車両を入れずに側面だけをパンフォーカスで見せることで、ダイナミックに仕上げています。使い込まれたステンレスの質感と共に、少しずつ夏が終わってゆく名残惜しさを表現してみました。 この写真でも紫の空色が、本当に美しく描写されています。それからα7S IIIはAFもとても優秀で、僕が思い描いていた構図のままに捉えることができました。
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3枚目になります。この写真の舞台となったのは、荒川橋りょうです。花崗岩とレンガ積みによって大正3年に作られたこの鉄橋は、重厚でとても絵になります。
この列車が鉄橋を渡るのは、1日にたった2回だけなんですが空色を反射して紫に染まる荒川がとても綺麗だったのでなんとか川をバックに撮れないかと考え、山中から見下ろせるこの撮影ポイントにたどり着きました。
今年は残暑が厳しく気温35℃という状況の中、山登りをすること30分・・・。空色が紫になると、それを映した荒川の川面も紫に染まりました。その淡い紫をバックに浮かび上がる機関車は、印象的なワンシーンとなりました。
4枚目となるこの写真。是非じっくりとご覧ください! 実はこの作品はISO 25600という超高感度で撮影しています。月明かりだけだったので、肉眼ではほぼ真っ暗な状況です。 しかし、α7S IIIで撮影して写し出された画像を見て本当に驚きました。今までならば、おそらく撮影することを諦めてしまっていたようなこんなシーンでも、作品級のクオリティーで撮影ができるこのカメラの登場に、僕は現場でワクワクが止まりませんでした! きっと多くの鉄道写真ファンが、一度は撮ってみたいと思う1枚なんじゃないかなって思います。
5枚目は、趣向を変えて自然界の“紫”ではなく、機関庫に停車中の機関車が、街の灯りを受けてその側面が淡い紫色に輝いている瞬間を撮影したものです。使い込まれた機関車の質感が闇夜に見事に浮かび上がりました。 ちなみに肉眼ではかなり暗い状況だったにも関わらず、AFでピピッと瞬時にピントを合わせてくれました。α7S IIIの低照度下でのAF性能、恐るべしです。
そして最後を飾る“紫”は、花の“紫”になります。
今回、空色にこだわって撮影に臨みましたが、実は、紫色の花も探しながら撮影していました。
この写真は水路に沿ってヤブランやカキツバタが咲く土手で撮影したものです。土手に寝そべって花を前ぼけさせると、とろけるようなぼけが、画面全体を淡い紫色に染めてくれてメルヘンチックな世界がファインダーに広がり、とても幻想的な1枚を撮ることができました。
そうそう、トップの機関車の写真を撮影した場所の線路脇の畑で農作業をされていたおばあちゃんが、僕に「良い写真が撮れたかい?」と言いながら、採れたての美しい紫色に輝く茄子をくれました!
ハッピーな紫色に包まれた、とても素敵な旅となりました。
さて“紫”を探す旅は如何だったでしょうか?
次の旅でも、きっとまた美しい色彩に出会えることを願いつつ
それでは来月もこの場所で。中井精也でした。
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