業界に押し寄せる変化の波。
αシステムが実現する自社での映像制作
トレジャーデータ株式会社 堀内 健后 氏
Story Design house株式会社 細越 一平 氏
映像をつくる時はプロに依頼するのが常識だったが、時代とともにその常識は変わりつつある。プロ仕様の機材を使わずとも高精細な映像が撮れるようになり、自分たちが扱える機材を選びさえすれば、映像制作も難しいことではなくなったからだ。デジタルトランスフォーメーションの「基盤」となるカスタマーデータプラットフォームを提供するトレジャーデータ株式会社も、自社での映像制作を実現。社内にスタジオをつくり、撮影から編集まで、すべてを自社で行っている。そして、そのために選ばれた撮影機材はソニーαシリーズだった。今回は、自社で映像制作ができるよう指揮をとったトレジャーデータ株式会社の堀内健后氏と、その一端を担ったStory Design house株式会社の細越一平氏に、自社で映像制作を始めた経緯やαシリーズを選んだ理由について話をお聞きした。
堀内 健后/トレジャーデータ株式会社 マーケティングディレクター トレジャーデータ日本法人設立当初の2013年より日本の事業展開に従事。デジタルマーケティング領域やIoT領域のソリューション開発に精通し、PRからマーケティングまでを担当。BtoBマーケティングにもデジタルを積極的に持ち込み、マーケティングオートメーション、イベント・セミナーなどのオフライン・オンラインを活用したマーケティングも実施している。
細越 一平/Story Design house株式会社 Story Designer・Content Strategist スタートアップ企業から大企業の新規事業部、また公共団体のコミュニケーション戦略パートナーとして広報・PRを担当するStory Design house株式会社に所属。主にBtoBマーケティングにおける最新の知見を元に、コミュニケーションツールとしてのコンテンツ戦略策定からWeb・紙媒体・写真・動画などの制作までを担当。
自社で映像制作できるよう準備を始めたのは
オフラインの必要性に疑問を感じたから
――おふたりは普段、どのようなお仕事をしているのか聞かせてください。
堀内 トレジャーデータ株式会社はクラウドでデータベースを提供している会社です。Webやアプリのログを収集し、それを蓄積・分析して企業経営や顧客体験に生かす提案をしています。例えば、ウェブサイトにはどんな人たちが見に来ているのか、どれくらい滞在したのかなど、あらゆるデータを集めて分析し、顧客の理解を深めるためのツール、ITサービスを提供しています。
堀内 僕はマーケティング担当なので、我が社のサービスを使ってくれそうな顧客の発見や獲得を目的とした業務を行っています。BtoB、つまり企業間の取引におけるマーケティングの場合は展示会への出展やセミナーへの登壇なども行い、サービスや事例の紹介を行います。それに伴い、映像コンテンツをつくったり、ウェブサイトに記事をアップしたり、パンフレットを制作する必要が生じます。2018年からは、クライアント企業の担当者に登場いただき、「トレジャーデータの提供するサービスを活用すると、こんなことが可能だ」という事例をご紹介いただく自社イベントもある程度の規模感をもって開催していたのですが、「デジタルテクノロジーでサービスを提供している会社が、大きい会場を借りて、物理的に人を集めてイベントを開催する必要があるのだろうか」という課題意識は常に持っていました。ITのサービスですのでハードウェア製品のように「モノ」があるわけではありませんし、会場を借りればそれなりの予算がかかりますからね。ですので、「いつかはすべてオンラインでの開催に切り替えたい」とは考えていました。 自社イベントの開催に併せて、自社で映像制作ができるように準備を進めていました。撮影用のカメラ、三脚など機材を購入し、映像制作に必要な勉強も開始。そんな折に新型コロナウイルスの感染拡大により外出がままならない事態になったので、体制が整った段階で100%オンラインに切り替えました。今では、自社のスタジオやロケ先で撮影し編集、制作した映像コンテンツをオンライン配信することが、マーケティング業務で効果を発揮するようになっています。
細越 僕が所属しているStory Design house株式会社は、主に広報PRを行う会社です。クライアントは上場企業から外資系企業、スタートアップ、公共団体と幅広く、そのコミュニケーション戦略パートナーとして活動しています。僕はその中でコンテンツ戦略の立案から制作までを担当しています。とりわけ力を入れているのがオウンドメディアの構築です。自社コンテンツはお客様の資産であり、コミュニケーション戦略の強みにもなりますからね。トレジャーデータさんとは2017年からイベント開催やオウンドメディアの企画制作をサポートしています。
誰でも簡単に、きれいに撮影でき、
連続録画時間が長いのがαを選んだ理由
――映像のプロではない「トレジャーデータ」のスタッフ自らが撮影するとなると、機材選びも迷ったところではないですか?
堀内 いろいろ試してαに辿り着いた感じですね。最初はコンシューマー用のビデオカメラからスタートして、その後は今もαと併用しているソニーの業務用カムコーダー「HXR-NX80」を購入しました。撮影を重ねていくうちにカメラに求めるものが変わってきて、今はαをメインに、複数台活用しています。操作がしやすく、あらかじめ設定さえしておけば誰でも同じ画が簡単に撮れますからね。
細越 α6400から30分以上の連続録画が可能になったこともαへ移行した大きな要因でした。あとは音と解像度。音質も解像度も、高ければ高いほどメッセージが伝わりやすいと考えています。ミラーレス一眼カメラを使えばレンズ選択によって「ぼけ」も美しく表現できるので目線を誘導できますし、解像度が高ければそれだけ伝えたいメッセージを迷いなく見せることができる。 ソニーは業務用カムコーダーからミラーレス一眼カメラまで、映像制作機器が幅広く揃っているのも魅力ですね。思想が同じなので出てくる画が同じですし、元々ソニー製品を使っていたので、αを導入する際も映像表現への不安はまったくありませんでした。
――撮影ではαシリーズのどのモデルを使っていますか?
細越 ロケではα7 IIIを、自社スタジオではα6400を使っています。スタジオでは僕以外のスタッフも撮影するので、誰でもきれいに撮れるようにセッティングをしています。配線もカメラ設定も済ませて、レンズは55 mmの単焦点「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」を使用。ズームがないので、「どの画角がいいのかな」と迷うこともありません。しかもコンパクトなので機動性が高く、撮りたいと思った時にパッと撮れるのもありがたいところです。 しかしフルサイズになると少し技術的な部分が必要になってきますからね。正直、「僕たちの用途でフルサイズの性能が必要なのか」という議論もありますが、僕はその性能でより印象的な映像をつくることも必要だと思っています。シンプルに伝えるべき作品はα6400で十分ですが、「もう少し深い部分まで伝えたい」と思うと、フルサイズのα7 IIIで撮りたくなります。
堀内 αはレンタルですぐに借りられるのもいいですね。もっとカメラが必要だと思ったら手軽に借りることができるし、実際に今、3台借りています。
細越 まったく同じ機材が借りられるので設定も迷わずスムーズにできるので助かっています。
――撮影で使用している主なレンズを教えてください。
細越 スタジオで使用している「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」は、α6400に装着すると焦点距離が80mmくらいになって、狭すぎず、広すぎず、ここのスタジオの奥行にはちょうどいいのです。個人的にもツァイスレンズのシャープな写りは大好きですし、絞りをF4くらいにしておけば、滑らかなぼけ感がありつつもピントがシビアにならないので、誰でも失敗なくきれいに撮れるのが魅力です。 ロケでは「FE 70-200mm F4 G OSS」も使っています。以前は規模感のあるイベント会場でセミナーをやっていたりしたので望遠レンズもかなり活用していましたが、スタジオで70mm以上はなかなか使いません。でもロケでは遠くのものを寄りで撮りたい時や、望遠レンズを使って物撮りをするような使いかたでも描写力の高さを発揮してくれます。
そのままでも質の高いαの映像が
制作で重要な「スピード感」を実現している
――自社で映像制作を始める時、最低限必要な機材は?
細越 BtoBにおける映像制作の一例になりますが、トレジャーデータの場合はカメラ、レンズ、マイク、マイクスタンド、照明機材、ミキサー、スイッチャー兼リレーキャプチャー、そして編集と配信を行うPCを揃えました。もちろんセットに配置するデスクやイスなども必要ですが、このあたりはどの会社にもあるものなので、「買い足すべきもの」を前提とするとこんな感じですね。どのアイテムも家電量販店で買うことができる、手軽なものばかりです。
堀内 1人でサービスを説明するコンテンツの場合はカメラ1台でいいけれど、対談で2人を撮るならカメラ2台は必要です。自社につくったメインのスタジオは5m×5mくらいのスペースにセットも機材も置いているので、そのくらいの広さも確保しないといけませんね。
細越 機材は「価格が高ければいい」というわけではありません。マイクはスタジオの環境に合わせて選ぶべきですし、映像に関連する機材はPCとの相性がありますので、そこも考慮しなければなりません。堀内さんは「ハイレゾで撮れるし、評価も高かったから」と相談もせずにコンデンサーマイクをネット購入してムダにしましたからね(笑)。
堀内 楽器用だったらしく、これで録音すると音を拾いすぎてオフィスにいる全員が黙らなければならなかったみたいです(笑)。
細越 どのアイテムもいろいろな種類が揃っているので、自分の使い勝手や撮影状況に合ったものを選ぶのがおすすめです。
――撮影・編集の際に大切にしていることはありますか?
細越 やはりスピード感です。僕たちがつくるコンテンツは「今、伝えなければならない」といった鮮度が重視されるものも多いので。例えば制作会社に依頼する場合、2週間後にスケジュールをアサインして、出来上がりまでまた2週間となると、結局その間に鮮度が落ちてしまう。制作のスピード感を考慮した場合にも、制作機能を自社で持つことは大切と考えています。
堀内 実際に「クオリティーよりもスピード」という案件も多いですからね。プロに頼むと「クオリティーはそこそこでいいから早く仕上げて」とは恐縮して言えないですが、自社でつくれば重視すべきところを重視できる。そこも自社で制作する利点です。
細越 スピーディーに進めるためにも、映像はカメラ側である程度つくり込むようにしています。メインスタジオではカメラを4台使っているので、ピクチャープロファイルとホワイトバランスの設定をすべて揃えて、色の調整を最低限で済ませるというスタイルです。編集ソフトは「Adobe Premiere Pro(アドビ プレミア プロ)」を使っていますが、αはカメラ設定さえしっかりしておけばカラーグレーディングをしなくても映像がきれいなので、音を整えて、同期させて、カット編集する程度。そのままでも美しいαの映像は、我々が大切にしている「スピード感」にも一役買ってくれています。
堀内 この1ヵ月で、イベントで流すための映像を80本くらいつくりましたからね。効率化を考えないと、この量をこなすのは我々規模では、絶対に無理でしょう。
細越 撮りながら編集し、配信していく、という形であらゆる作業を同時進行しないと間に合わない。でも撮影の初心者からスタートする自社制作においては「こなした回数」が「学び」になりますからね。そこはスタッフ全員堀内さんに鍛えられている感じです(笑)。なるべくミスが少なく、誰でもできるように標準化できるαのシステムにはずいぶん助けられています。
堀内 配信までを自社でできるわけですから、テレビ局がつくるものと比べれば撮影コストは1/100くらいですし、人員も1/10くらいで済みます。家電量販店で買った機材でプロに近づくためには、どんどん試して、どんどん使っていくことが大切。何をするにしてもトライ&エラーはつきものですからね。
――ピクチャープロファイルやホワイトバランスの設定はどのように決めていますか?
細越 ピクチャープロファイルは出したい色によって設定を変えています。色をいじらずにそのまま使いたい時はPP3の「ITU709」、色に少し特徴をつけたい時はPP6の「Cine2」にすることが多いです。ホワイトバランスは色温度を設定しています。スタジオで撮る時は照明に合わせて3900Kくらいに設定しますが、状況により変えていく感じですね。カメラ内での色づくりに関しては、まだまだやりながら学んでいかなければならないと思っています。
好奇心を持って貪欲に学ぶことが
自社で映像コンテンツをつくる第一歩
――自社で映像コンテンツをつくるようになり、周囲の反応はいかがですか?
堀内 出演していただくお客様には、スタジオがある我が社に来てもらうのですが、スタジオを見るとみんな喜んでくれるんですよね。出演者にとって、以前はかっこいいステージでたくさんの人に向かって話せることがモチベーションになっていたと思うのですが、今はそれが用意できない状態です。でもここに来て、「いい雰囲気の中、いい機材で撮ってもらえて、出てよかった」と言っていただける。「スタジオを見学したい」「この撮影スタイルを真似したい」といった声も増えていますので、自社での映像制作を目指している人は意外と多いと思いますよ。
――それだけ「自社で映像コンテンツをつくりたい」というニーズがあるのですね。
堀内 少なくとも僕らの同業者は、会社のスタジオを見るといろいろなことを知りたがりますからね。ニッチかもしれませんが、このマーケットに関しては需要が大きいのではないかと思います。僕らの業界だけでなく、「今まではパソコン付属の小さなカメラで何とかしていたけれど、クオリティーを上げるためにちょっとした機材投資をしたい」と思っている会社は少なくないと思います。トレジャーデータは映像制作が本業ではないので、「これを使うと良いよ」、「このぐらいの予算でできるよ」と、聞かれたことには包み隠さずお答えしています。
細越 今はカメラの性能が良くなり、手ごろな価格で購入できるおかげで、プロシューマーとコンシューマーの境目がなくなっていますからね。初心者でも背景をぼかした映像が簡単に撮れますし、レンズ交換をすれば自分の目指している表現もできる。それが可能な今、映像制作の一般化が一気に加速しそうな気がします。
――イベントやセミナーのオンライン化を先駆けて進めてきて、今、思うことはありますか?
細越 オフラインでのイベントやセミナーができなくなって半年以上経ちますが、今思うのは、業種を問わず「準備をしていた人は、より先に進めている」ということです。例えば、飲食店にしても「通販の対応を考えていた」「加工品をつくる準備をしていた」というところは変化に対して柔軟に切り替えることができたのではないでしょうか。今の状況に甘んじることなく、常に先を見て準備をしつづけること、新たに何を始めるか考えることはとても重要だと実感しています。
――最後に、自分たちも自社でビジネス用の映像制作を始めたいと思っている人にアドバイスをお願いします。
堀内 実際に自主的に映像をつくっている人に話を聞いたり、機材を借りて使ってみることから始めるといいと思います。自撮りやYouTubeの作品を撮るためのHow toはネット上にあふれていますが、BtoBのマーケティング活動での映像コンテンツのつくりかたはあまり紹介されていませんから。自分で情報を集めて、試しに撮って編集してみることが第一歩です。
細越 僕も同じ意見です。やると決めたらやるかしかないですから。試してみて「やはり出来ない」ではなく、好奇心を持って学ぶことが大切。αは静止画だけでなく動画性能も最先端の機能が詰め込まれているので、きっと「こんなに簡単に、きれいに撮れるのか」と思うはず。動画を撮影した経験がない人も撮ることが楽しくなって、好奇心や撮影意欲がどんどん湧いてくると思いますよ。
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