COLORS −鉄道彩美−
鉄道写真家 中井精也 氏 Vol.5
中井氏が“α”で描く美しき色彩の鉄道風景!
デジタルカメラマガジンとの連動企画を
毎月コラム形式でお届けします
みなさんこんにちは。鉄道写真家の中井精也です。
第5回目のテーマカラーは琥珀(こはく)色です。琥珀とは天然樹脂の化石であり、宝石としても価値がある鉱石です。あの有名な恐竜映画を見た人であれば、思い出す人もいるかもしれませんね。
それから僕は飲めませんが、お酒が好きな人であれば、
ウイスキーを思い浮かべる人もいるかもしれません。透明感がある黄色みを帯びた茶色です。今回はそんな琥珀色を探す旅です!
さて僕が向かったのは、福島県を走る磐越西線の一ノ戸川橋梁。
被写体はその美しさから「貴婦人」と呼ばれるC57形蒸気機関車が牽引する「SLばんえつ物語号」です。
それでは1枚目の写真をご覧ください。
現地に着いた初日に撮ったものです。晴天に恵まれて、青空から徐々に夕日によって色合いが変化を遂げ、空が美しい色に染まってくれました。あとはSLが来てくれればシャッターをきるだけという状況だったのですが、予定時刻になってもSLが到着しません。そして定刻から13分遅れでSLが来た時には、夕日はすっかり山に沈んでしまったのです。ですので、この写真はSLが来る直前の鈍行列車を写したものになります。残念ながらSLを写すことはできませんでしたが、夕日の光で車両の側面がギラリと輝き、ドラマチックな写真にはなりました。 そして翌日、また同じ場所に向かって撮影したのがトップにもした、こちら2枚目の写真になります。
やはりSLを撮りたいと思って赴いただけに、前日のリベンジをするべく、初日と同じ夕刻で待機しました。この日も快晴で絶好のロケーション!さらに初日は無かった印象的な雲が、空にはたなびき、あとはSLが来てくれることを願うばかりの状況です。
太陽が傾いて、川面と橋脚を照らし出したころ、蒸気機関車ならではのレール音を響かせて貴婦人(C57)が走ってきました。
この日は、ほぼ定刻どおり。太陽が半分ほど隠れて、印象的な光と色を放ってくれています。まさに美しく透明感のある“琥珀”色の世界の中を、SLが通過していく素晴らしい瞬間を捉えることができました。
そしてα7R IVは有効画素数約6,100万画素を誇るカメラだけに、こんなふうに大胆に風景を入れて機関車を小さく写した構図でも、高精細に描写してくれます。普通のカメラじゃ、なかなかここまで列車を小さく撮る勇気が出ませんからね(笑)。
続いて3枚目は、同じ鉄橋の反対側から撮影したものです。
一ノ戸川橋梁からの撮影という意味では同じですが、同じ時刻、同じ列車でも、立ち位置やアングルを変えることで、写真の印象を大きく変えることができます。現場に着くと、ついつい周りの人たちと同じ場所に三脚を立てたくなりますが、あちこち移動しながら試し撮りでチェックして、自分ならではのアングルや光線の具合を見つける楽しさを味わってみてはいかがでしょうか。 この写真で僕がこだわったのは、空の広さを表現することです。横に4分割して、思いきって下4分の1ぐらいのところに橋梁を配置しています。このように空の面積を広くすることで、迫力のある写真に仕上げることができるのです。それからこのように空を広く取り入れる時には、なるべく雲が出ている時の方が、より表現がしやすいんじゃないかなぁと思います。 4枚目は場所も時間も変えて、会津の山々を背にして走るSLの姿を捉えました。
まだわずかに色を残している紅葉と、葉をすっかり落とした木々が初冬ならではの季節を感じさせてくれます。そんな独特の色彩が阿賀野川の水面に写り込み、とても美しい光景を見せてくれました。風が吹くと水鏡が崩れてしまうので少しドキドキしながらSLが来るのを待ちましたが、その心配は杞憂に終わって、綺麗な水鏡のままに写すことができました。 この場所は、SLがまったく煙を出さない時もあるのですが、今回はC57の白煙が美しい風景をさらに印象的にしてくれました。葉っぱの1枚1枚や煙の質感まで、すべてを克明に描いてくれたので、その場の雰囲気をそのまま写真に閉じ込めてくれたような気分になりました。 5枚目になります。
朝霧に包み込まれた、とても幻想的な世界。しかし、このままでは列車が見えないほどの霧の濃さです。温度が上昇して霧が晴れることを祈りながら、慌てず少し待つことにしました。 しばらくして太陽が顔を出すと、その温度によって、だんだんと霧が晴れてくるのが分かります。目を懲らすと背景にうっすらと一ノ戸川橋梁が姿を現しました。たわわに実る柿と、霧にうかぶ列車のシルエット。初冬を迎えた会津路ならではの旅情を感じる1枚を撮ることができました。 それでは今回ご覧いただく最後の写真になります。
会津若松から新潟に戻る復路の「SLばんえつ物語号」です。
新潟県に入る頃には日が沈み、暗闇の中をSLが走ります。観光用のSL列車が夜に走るのはとても珍しいので、夜のSLを撮影できる貴重なチャンスです。ただし辺りは真っ暗闇。そこで踏切の灯りで動輪が浮かび上がる場所を選んで流し撮りで疾走感を出して躍動感のある表現をしてみました。川面にもSLと煙が映り、とてもお気に入りの1枚となりました。
琥珀色を探す旅。如何だったでしょうか?
空も川も、SLも鉄橋も、目の前の景色が、まさに美しく透明感にあふれた琥珀色に染まる世界を堪能した旅路でした。
さて、次の旅ではどんな“色”と出会えるでしょう?
来月もこの場所でお会いしましょう。中井精也でした。
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