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一眼動画との共存と脱却。Cinema Line「FX6」の真価 〜「Inter BEE 2020」オンラインセミナーを紐解く〜

α Universe editorial team

毎年秋に幕張メッセで行われていた、日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展「Inter BEE」。2020年はオンラインでの開催となり、ソニーからも多数のセミナーが配信された。FX6の真価について語ったのは、ソニーのミラーレス一眼カメラにも初期から精通し、FX9やα7シリーズ、α6400などをフレキシブルに使いこなしている映像作家の鈴木佑介氏。ここではセミナーを通して伝えたかったことや、FX6の魅力、FX6とα7S IIIの使い分けなどについてお聞きした。

鈴木 佑介 氏/映像作家 1979年神奈川県逗子市生まれ、逗子在住。日本大学芸術学部映画科 演技コース卒業。在学中に撮られる方(俳優)から興味がシフトし、映像制作の世界へ。TV-CF制作の撮影スタジオ勤務、ロケーションコーディネートを経て、2004年からフリーランスの映像作家として活動。企画・演出・撮影・編集・カラーグレーディングまでワンストップで行い、プロジェクトごとに必要なスペシャリストをスタッフィングして映像制作を行う。専門分野は「人を描くこと」。特に女性の撮影や美容系の撮影の評価が高い。
現在はWeb-CFやイベント映像制作業を中心にソニー主催「αアカデミー for Professional」にて映像制作の講師やセミナー登壇のほか、映像コンサルタントとしても活動。Webマガジン「PRONEWS」、玄光社「月刊ビデオサロン」など各種メディアで執筆。 オフィシャルサイト
https://www.yusuke-suzuki.jp/

αでキャリアを積んだ人の進むべき先。
より「美しい映像」を撮るならFX6

――今回のセミナーでは、どのようなことを伝えたいと思っていましたか?

動画軸で「αがすごい」と盛り上がったのが約5年前のことです。そのころにαで動画を撮り始める人が増えてきましたが、キャリアを積んだ後の「行き先」に適したカメラが僕の中では見当たりませんでした。でもFX6が登場したことで、その受け入れ先が決まった、と僕自身が感じたんです。より自分の理想通りに、美しい映像を撮りたい人が手に入れるべきカメラはFX6なのではないか。映像クリエイターとしては最低限でもここに向かうべきでは、ということをテーマにお話したいと思っていました。

――セミナーのサブタイトルに「きれいな“動画”の先の美しい“映像”とは」とありましたが、具体的に「きれいな動画」と「美しい映像」の違いは何でしょうか?

動画は字の如く「動く画」であり、画が動いているだけのもの。人が何かについて話をして発信しているものも動画の一種です。それでもαを使えば「きれいな動画」として写すことができます。でも、「美しい映像」となると概念が違います。「像」、つまりイメージを写し出すものなので「つくる」という工程が絶対に生まれるものです。「つくる」という行為はイメージの具現化なので、光やコンセプトなどのあらゆる事をしっかりと決めなければいけません。コミュニケーションツールではなく仕事となれば当然のことですよね。きちんと形として出さなければいけないので、そこに費やす時間や労力はまったくベクトルが違います。つくり手の表現が伝わる「美しい映像」に仕上げるなら、それに適したカメラはもちろん、つくるための時間と労力も必要、ということですね。

「チープをディープに見せる」をテーマに
S-LogとS-Cinetoneを使い分けて作品を制作

――今回のセミナーのためにFX6で撮影した映像作品のテーマやコンセプトを教えてください。

今回はハンドメイドジュエリーの広告映像を2つの違う手法で撮影しました。前半は「ダイアログベースのコンセプト映像」。後半は「メイクしたビジュアルベースの映像」となっています。 制作のテーマは「チープをディープに」です。ハンドメイドジュエリーの広告は手作り感や温かみを打ち出し過ぎるがゆえに、どうしてもチープなイメージから抜け出せないことが多い。ですから今回はハンドメイドにはとらわれず、予算がなくても見せ方を考えれば「ここまでチープをディープにできる」ということをFX6でお見せしたいと思いました。

FX6で撮影した映像作品

前半の作品は、抜けがいい屋上で撮影することを考えていたのでCine EIモード/S-Log3で撮影しました。FX6は10bit 4:2:2で収録できますし、S-Log3で逆光でもシャドウ部分の階調を残してしっかり持ち上げてくれますからね。屋外の撮影ではフルサイズに対応した電子式可変 NDフィルターも大活躍。僕の大好きなFE 12-24mm F2.8 GMで撮影しましたが、このレンズは前玉が出ていて通常のNDフィルターを使うことができません。だから、内蔵のNDフィルターがないと撮影が非常に難しいのです。でもFX6ならそれが可能。しかも、このレンズ特有の歪みのない美しい描写で撮ることができ、広角の効果で中央にいる人物の手足も長く見せることもできる。このレンズを気持ちよく使えることが、僕の中では大きな喜びでした。

上のような逆光のシーンでも情報がしっかり残っていますよね。人物も黒潰れしてないし、紫色の服のディテールも出ている、その上で空の雲の階調も描写されている。きちんとS-Log3が使えるカメラですし、広角レンズでも ND フィルターを使える、そしてジンバルに乗せてスローモーション4K120fpsで、しかも顔検出やリアルタイム瞳AFで撮影できる。屋上では、FX6のあらゆる魅力を詰め込んだ映像を撮ることができたと思います。

上はライティングをして室内で撮影したシーンですが、明るい部分の肌の質感から髪の毛の奥行きまで「飛ばす、潰れず」を意識してつくりました。これが楽にできるようになったのは階調豊かに表現できる10bit 4:2:2のおかげです。


撮影の裏側(前半)

後半の作品は、スタイリッシュなジュエリーフィルムにしたかったので、シンプルに「ライティングと被写体と僕で勝負」という感じで撮影にのぞみました。こちらはS-Log3ではなく、VENICEの開発を通じて得られた知見を元に作られたビデオガンマ「S-Cinetone」で撮影。白ホリゾントでグレイバックにした時に、どんな感じに階調が残るかを試したのですが、「S-Cinetone」でも欲しい情報は全部残っていました。

引きの画では白い服も飛んでいませんし、すべての階調が残っていますよね。寄りの画も肌にかかる影がしっかり残っていて肌の発色もいい感じです。「S-Cinetone」で撮ると、みんなが思う「きれい」を表現してくれます。僕は女性を撮影することが多いので、スキントーンがアップしているのもうれしいところです。 「S-Cinetone」はビデオガンマですから、ルックがしっかりつくられているわけですよ。だから仕事の場合、タレントをはじめ関係者への確認の時にも便利です。画を見せて、あとは少し青みを入れよう、肌をきれいにしよう、といった合意だけで済みますから。判断がしやすいので、すべてがクイック。結果、ほとんどセカンダリーグレーディング(プライマリーグレーディングの次の工程。画面の特定の部分だけの色や明るさを変えること)だけで済むので、撮影現場だけでなく、編集も楽ですし時短にも繋がります。

後半の映像は4人のモデルに出演してもらいましたが、準備から撤収まで、撮影は12時間で済みました。カメラの性能により撮影時間を短縮でき、コストダウンにもつなげることができるのはありがたいことです。正直なところ、FX6でなければ12時間では終わらなかったと思います。僕は広告業界でキャリアを積んできて、「もっとクイックに、楽に撮れる現場だったらいいのに」と思ったことがたくさんあります。それをFX6で実現できたことも、作品を通して伝えられれば、と思っていました。

撮影の裏側(後半)

フルサイズの表現力とαで培ったAF性能。
技術の進歩により楽に撮影できるようになった

――FX6を手にした時、撮影した時の印象を聞かせてください。

とにかく好印象でした。正直、「もっと早く出してよ」と心から思いましたね。普段から使っているα7S IIIとの親和性もとても良いので、僕はFX6を2台にα7S IIIを1台という組み合わせで使うことを想定しています。もちろん、仕事の流れ次第ですが、かなりマルチカムが組みやすくなっているので「仲の良い兄弟」みたいな感じ。FX6を使えば絶対にスキルアップにつながると思いましたし、α7S IIIともいい組み合わせになると実感しました。 FX6の魅力は多々ありますが、なかでも僕が気に入っているのは35mmフルサイズセンサーを搭載しているところ。他にもフルサイズのカメラはありますが、価格が桁違いですからね。シネマカメラでフルサイズの表現力を見せることができるのは、最大の喜びです。あと、S-Log3のノーマライズ時(カラーグレーディングにおいて映像全体の適正な明るさ、色のコントラストをつくっていく工程)のすっきり感も好感触。今までのカメラと比べると、より色彩におけるチューンナップの整合性がとれてきた印象です。 また、αのAF性能を受け継いでいるところもFX6を語る上では外せないところ。AFの時もピーキングが表示されるのでとても楽でしたし、リアルタイム瞳AFも使えるので、動き回る人物を撮る時も非常に便利でした。特に引きの画はほぼAF任せにしてしまったくらいですから、その性能はお墨付きです。

――今回の作品の中で、撮影時や編集時にテンションが上がったシーンはありますか?

全部ですよ(笑)。だって、本当に楽に撮影できましたから。前半の作品の屋上で撮影したシーンはAF任せでしたし、電子式可変NDフィルターもオートにすればシーンに合わせて濃度をカメラ任せで調整してくれるので、人物の動きに合わせてカメラで追うだけ。

ほぼ画面を見ずに動いてもこれだけ撮れてしまうわけですよ。機動性のあるシネマカメラなので、AF任せで手持ちに加えて、ジンバルに乗せても楽に撮れるのは素晴らしいこと。今回の撮影では「技術の進化って本当にすごいな」と実感するシーンがたくさんありました。

自分の表現を形にするならFX6が必須。
手持ちでガンガン撮るならα7S IIIがおすすめ

――FX6とα7S IIIは、それぞれどのようなユーザーに向いていると思いますか?

映像に本気で取り組んで、自分の表現を形にしたいと思うなら FX6 をおすすめします。やはり映像制作という面ではデジタル一眼カメラはシネマカメラに勝てませんし、映像を撮るのに写真機の形をしている必要はないと思っていますからね。特にずっとデジタル一眼カメラαを使っていて、さらなるステップアップを目指している人はFX6を選ぶべきです。 でも動画初心者や、キャリアがまだ浅い人には間違いなくα7S IIIのほうがいいですね。ソニーの最新テクノロジーによって、動画が楽しい、編集や撮影が面白いと思えるので、まずはここから入って続けていくことが大事だと思います。あとはボディ内手ブレ補正が搭載されているので「手持ちでガンガン撮影したい」という人や、ウェブに掲載するスチールもきちんと撮りたいという人にもα7S IIIのほうが合っていると思います。

――FX6はαの遺伝子を受け継ぐCinema Line カメラですが、この点についてはどのように感じていますか?

きちんとαの機能が落とし込まれていますし、メニュー画面はFX9など業務用カムコーダーと同じメニュー構造で使いやすくなっているので、いい感じにシネマカメラとαをクロスオーバーさせている、という印象です。しかもEマウントでデジタル一眼カメラαと同じレンズが使えますから、撮影現場にFX6とα7S IIIを持って行ってもコンパクトに収納できる。これは大きな魅力です。 FX6とα7S III、両方を持っていくとあらゆる撮影に対応できますからね。例えばインタビューではFX6に三脚をつけて長回しをし、α7S IIIは手持ちで追ってBロールを撮ることもできる。状況や撮影する人物によっては一眼カメラのほうが適している場合があるので、シネマカメラから一眼カメラへ素早くスイッチできるのもいいところです。また、同じレンズを使えば2カメにできるのも便利。数値やパラメーターを合わせれば多少の調整だけで色合わせができますから。それぞれの特性を生かした使い分けができ、しかも同じαなので撮影も編集もスムーズにできます。

FX6は映像職人を育ててくれるカメラ。
便利な機能を使いこなして表現の幅を広げよう

――FX6の登場により、どのような可能性が広がると感じましたか?

「ものを作る」ということは、すべて自己表現です。今は映画をつくりたいという人がとても増えていますが、ある意味自主映画ならクイックにつくれると思うんです。今はLogで撮影して、カラーグレーディングをして、という風潮がありますが、便利なものはどんどん使えばいいのです。進化したテクノロジーによってあらゆることが簡単にできるようになっていますから、そういう意味では自主映画をつくるというハードルは低くなっていると思いますし、便利な機能を使いこなすことで表現の幅も広がっていくはずです。 単なる動画は「写す」または「伝える」といったものですが、美しい映像は「紡ぐ」もの。「編集」も「編み集める」という意味で、まずはストーリーラインを作り、それに沿って美しい映像で語っていくもの。そう考えると、つくり手は「職人」のようなものです。FX6というシネマカメラは、映像を生業とする「職人」を育ててくれるカメラになるのではないかと思っています。

――鈴木さんのような映像作品をつくりたい、と思っている人に向けてメッセージをお願いします。

αを使っている映像クリエイターやこれから本格的に映像制作を仕事として始めようと思っている方には、早くFX6を触ってみることをおすすめします。もちろん、一眼カメラが悪いわけではありませんが、FX6は一眼カメラではできなかったことがたくさんできるようになっていますからね。カメラは使い分けなので、映像を撮影するなら間違いなくビデオカメラのほうが有利です。しかもFX6はαの称号を持つ正当な後継者。ステップアップへの道筋ができたのですから、そのまま船に乗り込めばいいのです。Eマウントでレンズ資産も活用できますから、一緒にFX6という名の船に乗り込みましょう!

【Inter BEE 2020 オンラインセミナー アーカイブ配信中】 Inter BEE 2020会期中に開催していた多彩なオンラインセミナーを期間限定でアーカイブ配信しています。FX6特別企画のセミナーもアーカイブ配信していますので、ぜひこの機会にご覧ください。

※オンラインセミナー アーカイブ配信の視聴には登録が必要となります。 ※2020年11月18日(水)〜2020年11月20日(金)開催のオンラインセミナーにお申し込みいただいた方は登録不要です。

◇Inter BEE 2020 オンラインセミナー アーカイブ配信の視聴はこちら Inter BEE 2020 スペシャルサイト https://www.sony.jp/professional/inter-bee/2020/ ◇配信期間 2021年2月26日(金)まで

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