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α7R IVで表現する南インドの様々な
「光」と「色彩」<前編>
写真家 山元 彩香 氏

α Universe editorial team

山元氏が南インドで撮影された作品をご紹介。作品の撮影風景や、込められた思い、カメラ・レンズの魅力などを存分に語っていただいた。

©Takao Iwasawa

山元 彩香/写真家 1983年神戸生まれ。2004年California College of the Artsに留学。2006年京都精華大学芸術学部造形学科洋画コースを卒業。2018年に写真集『We are Made of Grass, Soil, and Trees』を発表し、タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて同作品の個展を開催した。

αを持って南インドへ

今回、α7R IVとDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAを持って、南インドのチェンナイとポンディシェリで撮影しました。10年間、滞在制作で東欧諸国に通ってきましたが、土着的な文化が強く残っている土地に惹かれて、南インドを選びました。世界の国々を旅する中で、当たり前かもしれませんが、その土地に生きる人間は現地の植物や光など、あらゆる風景を反映させているように思いました。北から南へ向かうことで、人々が内包しているものの違いや幅を感じたかったことも理由の一つにあります。 レンズについては、元々使用していた中判カメラの80mmレンズと画角が近しいDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAを選びました。いつも自然光のみのポートレート撮影で、シチュエーションも薄暗いので、F1.4の明るさはとても頼もしく思いました。ツァイスレンズは、特有の美しいぼけと青色の表現が絵画のような写真を撮るのに大変適していて、私の表現に欠かせないレンズです。

感じた空気感をそのままに写しとめる

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F11,1/20秒,ISO200

ポンディシェリに向かう途中のオーロヴィルで撮影しました。オーロヴィルは世界各国の人々が国籍や民族を越えて、調和した生活を送ることが目指されている理想都市だそうです。マトリマンディルという瞑想のためのホールまで歩く途中の道で撮影したのですが、まるで楽園のような木漏れ日が続いていました。この1枚は植物の光と影と人間が混じり合って良いバランスで保たれていて、その平和的なムードを象徴しているような気がして撮影しました。葉っぱの1枚1枚の解像度が素晴らしく、木陰でも黒つぶれしにくいので、森の木々が立体的に浮かび上がります。木陰に座る女性の肌の質感も手で触れるかのように伝わります。

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F5,1/1250秒,ISO100

こちらは、チェンナイの通りで見た洗濯物を干している風景です。それぞれの布の模様と後ろの壁の色彩溢れる1枚の中で、絵画のパレットのように多層的なレイヤーを作り出していて、とても魅力的だと思いました。家の壁も日本では考えられないほどに色彩豊か。隣り合う家の壁の色も様々で、どのように決めているのか不思議でした。鮮やかな赤とピンクの花柄も、豊かな階調性のお陰で十分なコントラストを保ちながら、色潰れすることなく表現できています。

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F5.6,1/20秒,ISO200

南インドでは、アフリカ、マラウイでの時間をデジャブかのようによく思い出しました。コントラストの強い木漏れ日で植物の影がくっきりと壁や地面に焼き付けられる様子や、街を漂っている匂いや湿度も含めた空気感が似ていたからです。木漏れ日が揺れ動いている様を眺めるのが好きで、動画でもよく撮るのですが、揺らいでいるものをあえて静止画で捉えることもよくしています。ダイナミックレンジの広さにより、暗い部分も明るい部分も表現でき、木々の影の柔らかな質感と揺れ動く様を伝えることができます。

思い描いた1枚を残す

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F2.2,1/8000秒,ISO250

基本的には時間をかけてのポートレート撮影が多いのですが、旅に出ると、撮らずにはいられない素晴らしい瞬間に立ち会うことがよくあります。この鳥の写真もそうですが、飛んでいる鳥は、人物よりもはるかにスピードが速く、コントロールができません。完璧なイメージを作りにくいという難しさがありますが、そこに私は魅力を感じています。 スナップショットに慣れてないので、シャッターチャンスを逃す経験も多いのですが、α7R IVはAF性能が高く瞬時にピントを合わせてくれるので、構図や被写体の動きに集中することができます。

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F1.6,1/250秒,ISO125

こちらは、車のボンネットの上にハラハラと落ちてきた1枚の黄色い葉と、そこに差す光の美しさを収めました。メタリックのキラキラとした塗装と映り込む木々の緑色も生かしたかったので、撮影しながら彩度やコントラストを調整しました。撮影しながら調整することが多い項目は、あらかじめファンクションボタンに割り当てをしていたので、シャッターチャンスを逃すことなくスムーズに思い描いた画に近づけることができました。

α7R IVとDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAだからこそ撮れた1枚

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F1.6,1/640秒,ISO400

Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAは、柔らかく滑らかなぼけ描写がとても気に入っています。周辺減光も被写体を浮き上がらせてくれますし、フィルムカメラのような雰囲気の写真を撮ることができると感じます。開放でも、ピント部分の解像感が素晴らしく、実際に被写体に触れているかのような錯覚を覚えることもあります。ツァイスの青色の描写は本当に美しく、他のレンズでは代え難い特徴の1つです。日が暮れかける頃や、朝のうっすら青い光が差す時間帯が好きなのですが、こちらも夕方の光の中、青みを帯びた葉と葉に滴る雨粒を撮影しました。目で見ていても美しかったですが、何も狙わずラフにシャッターを押しただけでも想像以上のイメージとしてカメラが捉えていて、興奮したことを覚えています。この1枚はみずみずしい透明感のある葉の色彩と、葉脈と背景の暗さのコントラストを出したくて構図にこだわりながら撮影しました。

様々な環境での撮影にも対応できる

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F8,1/250秒,ISO200

α7R IVのボディはコンパクトでとても軽いと感じます。重たいレンズを付けても全体の重量が軽いので、移動しながらの撮影ではとても助かります。カメラを構えた時のホールド感も良く、女性の手でも5本の指でしっかりと握ることができます。各ボタンが硬めに押し込む操作感になっているお陰で、誤操作も防ぐことができています。アフリカの乾燥した土埃の舞う場所や、小雨の降る屋外でも不具合が無く撮影できています。 普段の作品撮影ではフィルムカメラを使うことが多いですが、デジタルの機動力や瞬発力、撮れる作品の幅の広さが必要になることも多くあります。海外の過酷な環境でも安心して使えますし、操作性が良いので頭の中でイメージした画や色味にすぐに近づけることができます。ツァイスのレンズが使用できることも私の中では大きなポイントで、ボディとレンズ共に妥協することなく作品制作に向き合うことができます。 また、この10月にTaka Ishii Gallery Photography/Filmにてアフリカ、マラウイで撮影してきた作品の個展を開催し、11月からは東京都写真美術館にて東欧とアフリカと日本で撮影した写真作品とα7R IIIで撮影した4K動画を展示する予定です。また、同時期にアフリカと日本で撮影した写真を収載している写真集も刊行予定です。こちらも是非お楽しみください。

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F11,1/500秒,ISO250

街は色や模様で溢れかえっていたので、彩度の高いサリーを纏う女性たちも風景に馴染んでいました。海と空というシンプルなものを背景にすると、それらのコントラストや見えてくる色彩や細部の美しさと共に、開放感溢れる彼女たちに惹き込まれました。

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F4.5,1/640秒,ISO100

鮮やかな色彩に差し込む真っ黒な影のコントラストを捉えたくて撮影しました。

α7R IV,Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA 35mm,F2.2,1/640秒,ISO200

生い茂る木々が作り出す自然のスポットライトが、作り込まれた舞台のように幻想的でした。

山元彩香氏ギャラリー開催案内

「We are Made of Grass, Soil, Trees, and Flowers」 開催期間: 2021年10月16日(土) 〜 11月13日(土) 会場: Taka Ishii Gallery Photography / Film (タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム) URL: https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/25659/

「日本の新進作家 vol. 18(仮称)」 開催期間:2021年11月6日(土) 〜 2022年1月23日(日) 会場:東京都写真美術館 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4033.html

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