みなさんこんにちは。鉄道写真家の中井精也です。 今回は桜と鉄道のコラボレーションが美しい、宮城県の「一目千本桜」を訪れました。 白石川の築堤に沿って、全長約8.5kmに渡り約1,200本の桜が植えられています。さらに近くには船岡城址公園があり、そちらにも約1,000本の桜が植えられているというのですから驚きです。 船岡城址公園の中にある展望台から一望すると、まさに圧巻。 背後には蔵王連山が雪の薄化粧をして雄大にそびえ、白石川の両脇に桜並木が並び、その手前に東北本線が走っています。これほど贅沢な場所は他に思い当たりません。 実は、2016年にグランドオープンした「しばた千桜橋」から撮影するのは今回が初めてになります。どんな写真が撮れるのか、ワクワクしながら現地を訪れました。 1枚目はその「しばた千桜橋」から写した1枚です。
2016年に完成した「しばた千桜橋」は船岡城址と白石川堤を結ぶものですが、東北本線の線路を跨いでいるため、東北本線を俯瞰して写すことができます。春の季節であれば、桜並木と並走するように最高のアングルで列車を写すことができます。 もちろん橋を通行する方の邪魔にならないよう配慮することは忘れてはいけませんが、階段の踊り場や橋の中央部が大きな円形になっているので、多くの方が同時にこの絶景を見ることができるよう配慮された設計になっています。 この場所は午後になれば順光となりますが、この写真は逆光になる早朝の時間帯で撮った1枚です。順光であれば列車の色や形をキレイに表現できますが、桜は順光により均一な光が当たることで平坦な感じの描写になりがちです。そこで早朝の逆光で、桜が立体的に表現できるようにしました。
2枚目も同じく「しばた千桜橋」から写したものです。 1枚目とはシンメトリーの関係にある逆側を写したものです。 先ほどの写真では船岡駅側を向いて早朝に撮影をしましたが、こちらは大河原駅側を撮影しました。 同じ撮影場所から両側を、これほど美しい構図で撮れる場所なんてなかなかありません。 ちなみに東北本線は高い頻度で貨物列車も通るので、桜の季節以外でも撮影が楽しめそうだと思いました。 この写真の撮影時間は夕方の16時頃。1枚目と同じ理由で、逆光となる時間帯で撮っています。夕暮れ時の橙色の光を帯びて輝く壮大な桜並木は、まるで回廊のように列車を飾ってくれました。 1枚目は少し寒色系、2枚目は暖色系で色味も変えています。 その違いによる桜の色も楽しんでいただければと思います。
3枚目も「しばた千桜橋」からの1枚になります。 こちらは列車よりも満開に咲き誇る桜をメインに、画面右半分を桜で埋め尽くしてみました。望遠レンズで適度な圧縮感を加味することで、より桜のボリューム感を表現してみましたがいかがでしょう? 奥を見てもらえると、線路が左に曲がっているのが分かると思います。その効果で、まるで列車が桜に包み込まれているように見えると思います。さらに臨時快速として運行されていた特急車両が、ノスタルジックな雰囲気を醸し出してくれました。 今年の一目千本桜は急に暖かくなったせいもあって、あっという間に満開となり、そして翌日には雨で散り始めてしまったので、晴れた日の満開状態で撮影できたのは、この日がラストとなりました。 その翌日の雨の様子を、実は静止画ではなく動画で撮ってきましたので、静止画とはまた違った情緒をお楽しみください!
4枚目は雨天の日没後に撮った1枚です。 雨が降っていたので、その雨を上手く生かした撮影ができないかと考え、濡れないように気をつけながらフラッシュを使ってみました。 雨粒にフラッシュの光が当たって、空からも花びらが舞い落ちてきたかのような幻想的な1枚になったんじゃないかなと思います。 同じテクニックは雪でも使えますが、天気が悪いと諦めずにこうして写真想像力を膨らませてみると、また新しい発見と思いがけない素敵なシーンを捉えることができます。
5枚目は趣向を変えて、流し撮りに挑んだ1枚です。 このテクニックを僕は「木流し」と呼んでいます。撮影のコツは、木の奥に列車が程よく透けて見える場所を探すことと、手前の木が流れて見えなくなる低速シャッターを選択すること。 列車の速度にもよりますが、1/30秒以下のシャッター速度がベストです。この写真では、僕は1/15秒で流すことで、桜のピンクとレンギョウの黄色がまるで水彩画の絵筆で絵の具を引いたかのような表現を狙ってみました。 そしてこのシーンも、動画でも撮ってきました。静止画は流し撮りでスピード感を表現しましたが、動画では5倍のスローモーションで、静謐な世界観を表現してみました。ほぼ同じ構図を静止画と動画で撮り分けて、まるで異なる表現で捉えてみることも、こうしてやってみると楽しいですね!
今回ご覧いただく最後の写真になります。
船岡城址公園にある「樅(もみ)ノ木は残った展望デッキ」の付近から撮影しました。白石川に沿って三重に連なる桜並木の奥には、蔵王連峰が雄大にそびえます。 かつて東北本線は、L特急「ひばり」号や「やまびこ」号、「はつかり」号が行き交う花形路線でした。 新幹線が開業してからは鈍行列車が中心となりましたが、往時の記憶が残る僕としては少し寂しさも感じていました。しかし今回の撮影で蔵王連山と千本桜という絶景の中に、往時を思い起こさせる特急カラーの車両が現れた時、思わず胸が熱くなりました。 そしてα1の高解像は、そんな僕の想いを見事に高精細に描写してくれました。 さて今回の東北本線はいかがだったでしょうか? それでは来月もこの場所で、皆さんに鉄道絶景を紹介できることを楽しみにしています! 中井精也でした。
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