ベーシックモデルでありながらも高水準の表現力を備えたα7 IVの魅力
野鳥写真家 山田芳文 氏
"当たり前のことを手を抜かず、丁寧に"
野鳥撮影においては、ブラインドを使用したり、カメラを遠隔操作して被写体から離れて撮影するなど、被写体である野鳥に警戒されないよう心がけている。 さらに、合わせるべき位置にピントを合わせること。特別な意図がない場合はブレないように撮ること。これらは当たり前であり、分かり切ったことだが、このような当たり前で分かり切ったことを、手を抜かずに丁寧に実行することを、作品づくりでは大切にしている。 そう話すのは、野鳥写真家 山田芳文氏。 αと山田氏の関係は、山田氏が5年前にα9を手に取ったことから始まった。 山田氏は、5年前にα9の確かなAF性能に驚いたことが今もなお昨日のことのように思い出されるという。 そして、それ以来、いまでもαのAF性能と解像感や色再現性を含めた総合的な画質に魅せられ、αを使い続けている。 今回はそんな山田氏に、ベーシックモデルでありながらも高水準の表現力を備えたα7 IVの魅力について、α7 IVで撮影された作品とともに感想をお伺いした。
山田芳文/野鳥写真家 「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。 野鳥の周囲の風景も大きく取り入れた鳥がいる風景写真をライフワークとする。 『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)、『写真は「構図」でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディエヌコーポレーション)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)など著書多数。
"十分に信頼できるAF性能"
――普段はどのような環境設定で撮影されますか? 撮影時はRAW+JPEGの設定にして、Hi+で連写することがほとんどです。
こちらは獲物にアタックする直前のコサギを寄りで切り取り、想像力をかきたてる作品にしました。足を踏ん張っているところを連写して、水紋が自分のイメージに近いカットを選びました。 連写で撮影するという観点では、α7 IVは連続撮影可能枚数が多い*ので、バッファフルになるまで必要にして十分な時間があり、躊躇なくHi+モードで連写をすることができるので満足しています。
――α7 IVのAF性能はいかがでしたか? ベーシックモデルのα7 IVであっても、高い精度のAF性能を備えているので、信頼しきって使っています。 特にα1同様、α7 IVでも「リアルタイム瞳AF」で鳥の瞳の検出にも対応したことは個人的にとても有り難く思っています。動画撮影時も活躍するので、はなまるです。 設定方法も簡単で、フォーカスモードをAF-Cにして、鳥の全身が入るフォーカスエリアを選択。顔/瞳検出対象を鳥にします。これだけで、ほとんど全ての場合、OKです。
"すこぶるシャープで気持ちがいいぐらいの表現力"
上の作品では「私たちのすぐ近くでも鳥たちは暮らしています」を伝えるために、背景に人を取り入れました。 首と足が長いプロポーションのアオサギの場合、瞳を認識するかどうか少し不安でしたが、瞳を認識して枠を表示、フォーカスを合わせてくれました。そして、その瞳はすこぶるシャープで、気持ちがいいぐらい解像しています。 ――アオサギの横顔が一段と凛々しく映っていますね。 野鳥撮影では警戒されないよう、離れた場所からカメラを遠隔操作することもあるということでしたが、作品づくりにおいてトリミングなどはされますでしょうか。 僕は基本的にトリミングはしません。 ですが、トリミングする場合もα7 IVは有効約3300万画素なので、それなりに大きくトリミングしても問題ありません。
上の作品は観察を繰り返すと、モズの行動パターンが読めるようになったので、カメラを置きっぱなしにして、遠隔操作でモズを隠し撮りした1枚です。35mmの画角で背景に桜と雪柳を取り入れて、モズがいる春の風景として撮影した作品です。 どれぐらいトリミングできるかの参考になるかもしれないので、拡大写真と併せてご覧ください。
いかがでしょうか。個人的にはこれぐらいは何の問題もないように思います。
上の作品は「獲物を狙って、ササゴイは長い時間ずっと待っています」を伝えるために、NDフィルターをつけて、スローシャッターで撮影しました。 こちらの作品はトリミングしていませんが、α7 IVの有効約3300万という画素数に加え、豊富な階調で水のトーンも白飛びせずに再現されているので、写真展でB0のように大きなサイズで展示しても十分に満足できる解像感だと思います。 撮影後のトリミングではありませんが、今回APS-C/Super 35mm記録モードでも撮影してみました。 結果、予想していたよりもはるかに良好な結果になりました。
水浴びをするために、水辺に降りてきたシジュウカラ。暗くて、シジュウカラまでの距離が遠く、通常は撮影しない条件ですが、APS-C/Super 35mm記録モードのテストの意味合いで撮影しました。ISO1600の画像がクロップされていますが、ノイジーではない結果に驚きました。全倍ぐらいのサイズに出力して、近くから見ても余裕をもって耐えられる画質だと思います。 ――α7 IVのAPS-C/Super 35mm記録モードの利点が生かされ、すぐ近くにシジュウカラがいるかのような描写力ですね。クリエイティブルックはご活用いただきましたでしょうか。 僕は通常、RAW現像をするのですが、JPEG撮って出しのデータを使うこともあるので、その時はクリエイティブルックを変えて撮影します。晴天でそれなりに明暗差がある時はST、曇天でフラットなライティングの時はVVかVV2に、など、撮影条件によって変えることが多いです。また、写真で伝えたい内容が伝わりやすくなるように、イメージに合わせてクリエイティブルックを選択するのもひとつの方法です。クリエイティブルックは10種類用意されていますので、JPEG撮って出し派の人はいろいろと試してみてください。
上の作品は、シャッターをきっている間に首を動かして欲しかったので、それを期待して何回もトライした末、なんとかその瞬間をとらえた1枚です。これによって、「ササゴイは獲物の動きに合わせて首を振っています」を伝えることができます。日本画のようなイメージにしたかったので、クリエイティブルックをBWに設定してモノクロにしました。 ――ササゴイの素早い動きがモノクロにすることでより強調された作品ですね。α7 IVの操作感についてはいかがでしたか? メニュー画面がα7S IIIやα1と同様のものになり、非常にシステマティックで、見やすく、使いやすくできています。また、グリップが深いので、手になじんで、ホールディングしやすく、手持ち撮影しやすいです。
上の作品の撮影時は、当初ササゴイが来る場所を予想して、三脚をフル開脚していちばん低い位置にスタンバイしました。しかし、予想した場所と少し違ったところにやってきました。そのままの高さで撮ると足がちょんぎれてしまうので、レンズを三脚座から外して少し高い位置から手持ちで撮影しました。α7 IVのグリップは握りやすいため、今回のようなとっさの手持ち撮影の時に有り難いです。 ――お気に入りのレンズやアクセサリーがあれば教えてください。 純正のレンズやアクセサリーで気に入ったものはたくさんありますが、最近はリニューアルされた2本のレンズ、FE 24-70mm F2.8 GM IIとFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIが特に気に入って、使用頻度が高くなっています。2本ともこれまででは考えられないほど軽くなり、AFについても体感できるほど早くなり、持ち出すのにワクワクします。
上の作品は人は写っていませんが、画面上に建物を取り入れることで、人の存在を暗示し、鳥と人との共存を表現した作品です。蓮の葉の緑と画面右上の緑との濃淡、ピンクの花の色調、スズメがとまっている松の木の濃淡、など全てがナチュラルに再現されています。今回みていただく作品の中で、このカットがいちばんα7 IVの特徴が出ていると思います。 この日もたくさんのレンズを持っていきましたが、FE 24-70mm F2.8 GM IIは軽いので、重さによる身体的な負担が少なく、カメラバッグを背負うとそれが実感できます。
観察の結果、シロハラがよく止まるところがわかったので、背景が桜になるように事前にフレーミングして、来るのを待って撮影しました。フォーカスポイントの目はキリリと描写されて、そこから離れていくにつれて、ぼけは柔らかくなっていくFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIはG MasterらしいG Masterと言えます。カメラ位置を低く固定するために、ミニ三脚につけて撮影しましたが、レンズが軽いので、ミニ三脚とレンズとの重量バランスも良好です。
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