僕が鉄道写真を撮り始めてから40年以上が経過し、気が付けば鉄道写真を撮ることが人生そのものになった。山あり谷あり、さまざまな苦難もあったが「鉄道を撮りたい!」という気持ちだけで乗り越えてきた。僕にとって鉄道写真とは自分の生涯を賭けた冒険なのだ。
新連載のタイトルには、そんな自分の思いを込めて「Adventure TRAIN」とさせてもらった。僕の最高の相棒であるソニー α1とともに繰り広げる冒険の成果を、毎月ご覧いただければと思っている。 第1回目のロケーションには、北海道新幹線が札幌まで延伸すれば、劇的に変化するであろう函館本線を選んだ。特に廃止の可能性が高い長万部〜小樽の通称「山線」と、国鉄時代から活躍するキハ40系気動車が最後の活躍を見せる函館〜長万部の区間を中心に焦点を当てた。 最初の見開きの作品は、道南の観光名所である大沼・小沼とキハ40を撮影したもの。駒ケ岳の大噴火によって誕生した大沼・小沼には、溶岩塊などでできた小島が点在しており、日本離れしたスケールの絶景と列車を撮影することができる。
撮影地となる日暮山展望台は、以前は車で行けたが現在は崖崩れのため30分ほどの登山が必要となる。万全の熊対策で登山したが、真の敵はヒグマではなく、見たこともない数の黄色い蚊だった。列車待ちのあいだ、蚊の大群に襲われ、蚊をつぶそうと絶えず足や手を叩く僕の姿は、まさに死のダンス。最高の1枚が撮れて大満足だったが、体じゅうが虫に刺されでボコボコに……。そう、鉄道写真は、リアルに冒険なのだ。
「山線」は深い山の中を走るため、撮影ポイントは道路と交差する跨線橋ばかり。なんとか山線らしい作品は撮れないか。悩んだ末にたどり着いたのがこの作品だ。超広角レンズの FE 14mm F1.8 GMのダイナミックなワイド感を最大限に生かすため、あえて画面の中心に列車を配置してパンした。列車は写し止めつつ、上下の森が弧を描くように流すことで、森林をゆく「山線」の魅力を表現することができた。
木ごしに流す「木流し」に挑戦 森の奥に線路が見え隠れしている場所を探すのがコツ。木が多いと透けないので、試し撮りで確認する 広角のパースを存分に生かす 列車の位置を変えながらテストし、パースの効果を見ながらこの位置に決定。四辺が引っ張られることで周辺がお椀のようにゆがむ 通過する列車の速度を予想する 同じシャッター速度でもカメラをパンするスピードによって効果は変わる。列車の速度を予想しながらテストを繰り返し、1/4秒に決めた。列車の速度感を予測する経験も必要になる
函館本線は北海道の函館駅から旭川駅を結ぶJR北海道の鉄道路線。ルートによって通称があり、長万部駅から札幌に接続するルートを「海線」、長万部駅から小樽駅の間を「山線」と呼んでいる。
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