10月1日、2011年の豪雨災害により一部区間の運休が続いていた只見線が、11年ぶりに復旧した。沿線住民や自治体の努力が実を結び、90億円といわれる復旧費用は、国と福島県および沿線市町村、JR東日本が1/3ずつを負担。復旧後の維持管理は福島県、運行はJRが担当する「上下分離方式」も決まり、まさに奇跡のような復活劇となった。 復旧した会津川口〜只見の27.6kmの区間には、僕がずっと待ち望んでいた憧れの撮影地があった。標高828mの頂上付近から、第八只見川橋りょうを望める蒲生岳だ。「会津のマッターホルン」とも呼ばれる蒲生岳頂上までの所要時間は約75分、それならば楽勝だと挑んだ僕は完全に見誤っていた。機材はミラーレスで軽くなったのだが、自分自身の体重の重さを……。
登山道はほぼ直登コースで、ザイルや鎖を掴んで岩場をトラバースする箇所もあり、結局頂上まで約100分、到着時には両足が同時に痙攣する始末。なんとか撮影をこなして下山するも、なんと行程の半分で日が暮れて真っ暗になってしまった。ここで焦ると滑落するので、一歩ずつ丁寧に下山し、命からがら生還することができた。そんな過酷な行程だったが、まさに自分の足で勝ち取った作品は、何にもかえがたい宝物になった。 11年ぶりに列車が走る風景は、どこもキラキラ輝いて見えた。復旧後に見込まれる鉄道収入よりも、只見線が存続することによる経済効果を重視した、まさに奇跡的とも言える只見線の復旧作業。これが、日本全国で奮闘する赤字路線のモデルケースとなることを期待したい。
稲干しの風景と列車を撮る場合、左のように列車を写し止めると、どうしても列車に目が向いてしまう。そこで低速シャッターで列車をぶらして列車の存在感を薄めることで、主題である稲干しが際立ってくるのだ。右ページの横断幕と列車の写真も、ぶらさないと珍しい列車ばかりが目立ち、メッセージが弱まってしまうと考えた。鉄道写真の主役はあくまでも列車だが、ときには自分の伝えたいことを強調するために、あえて列車の存在感を薄めることも必要なのだ。
キャンピングカーで車中泊をしながら撮影をする場合は、自炊になることも多い。只見線沿線の山奥では、糖質オフのパスタを作ってご満悦。夜は地元食材を使って鍋をしたり、おいしくヘルシーに撮影を楽しんでいる。
記事で紹介された商品はこちら
ワンクリックアンケートにご協力ください
αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると最新記事の情報を随時お知らせします。