自然写真家 嶋田 忠が語る
「デジタル一眼カメラ“α”の魅力」
自然写真家 嶋田忠 氏
2022年9月18日(日)にソニーストア札幌で行われたスペシャルトークショーをα Universe記事用に再構成しました。野鳥撮影の巨匠、嶋田忠さんがこれまでαで撮影してきた作品とともに、αを手にしたきっかけや野鳥の上手な撮影法について語ります。
嶋田 忠/自然写真家 1949年、埼玉県大井村(現ふじみ野市)に生まれる。武蔵野の自然の中で野鳥とともに過ごす。日本大学農獣医学部卒業後、動物雑誌「アニマ」(平凡社)創刊に参加。以後、野鳥を中心に独自の世界を開拓している。1980年、北海道千歳市へ移住。1993年より7年間、テレビ朝日・ニュースステーション特集「嶋田忠の野生の瞬間」シリーズのため、海外で映像作品を制作。2000年より、NHKの自然番組をハイビジョンにて制作。最近は北海道を中心に、海外の極楽鳥など、熱帯雨林の生きものもデジタルカメラで撮影している。2014年12月、千歳市蘭越に常設ギャラリー、嶋田忠ネイチャーフォトギャラリーをオープン。 写真集・写真絵本『カワセミ清流に翔ぶ』『火の鳥アカショウビン』『炎のカムイ』『鳥 野生の瞬間』など多数。 受賞歴:太陽賞、日本写真協会新人賞、日本鳥学会特別表彰、日本写真協会年度賞、日本絵本賞大賞、IBA国際放送広告賞、アメリカ国際映像フェスティバル自然部門グランプリ、アジア・テレビ祭自然番組部門最優秀賞など。
「瞬間を止めて見てみたい」を追い求めて 辿りついたのが連写性能に優れた“α”だった
今回は私の地元である北海道の千歳近郊で撮影した野鳥の写真をご紹介しながら話を進めていきたいと思います。 その前に、僕の撮影スタイルをお話しましょう。僕は自分の姿を晒して鳥を追いかけ回す撮影はしません。いつも軍隊が使うようなカモフラージュネットを被せた特注テントに隠れて、野鳥が現れるのをひたすら待ちます。
この方法で撮影するためには、鳥の行動を十分に把握していなければなりません。普段から観察してどこに隠れればいいか、どんな場所・時間に鳥が来るのか知っておくことが大切。このようにカモフラージュすれば目の前まで鳥が来ますし、周りが布で囲まれているので発想力が豊かになり、集中力も高まります。 僕がαシリーズを使い始めたのは、当時としては最高となる約20コマ/秒の連写性能が優れていたからです。最初に購入したのは「α9」です。
子どもの頃からずっと「瞬間を止めて鳥を見てみたい」という好奇心を持っていたので、コマ速は速いほうがいい。速ければ速いほど確実にいい瞬間を撮影できるので「α9」に飛びつきました。それ以来αを使い続け、今は「α1」をメインに撮影しています。
ピント合わせや構図のつくりかたなど 野鳥撮影のコツを伝授
動きの素早い野鳥の撮影ではピント合わせが難しいもの。僕の場合、動きを予測して置きピンにするのが基本です。人間と機械、両方のタイムラグがあるので飛んだ瞬間にシャッターを押しては遅いですからね。飛びそうだなと思ったらシャッターを押し始めるのがうまく捉えるコツと言えます。
上の作品はアオジで、右下にメス、左上にオスが写っています。二輪草が咲いている場所に来たところを撮影しましたが、動いているところを撮りたいと思い連写。手前ではなく向こうに飛んでしまいましたが、置きピンでも何とかギリギリ耐えてくれました。鳥はあらゆる方向に飛びますから、少しピントをずらす技術があるとよりいい作品が撮れると思います。鳥をよく見て、どんな時にどんなことをしたら飛ぶのか意識することが大事なので、しっかり観察してから撮影にのぞみましょう。 次は構図の話をしたいと思います。皆さんの作品を見ると、鳥が画面の中央に写っていることが多くあります。でもカメラのAF精度はかなり上がっているので、鳥にピントが合ったらシャッターを半押しのままずらして「構図」を意識して欲しいところです。
上の作品も構図を意識して、鳥が見ている方向を広く空けました。一番楽なのは鳥を中心に1対2、もしくは1対3の空間をつくること。枝の造形を生かしながら、構図を少し動かすことを覚えると写真の印象がガラリと変わり、「写真」が「作品」になります。
上の作品は茂みの中でシメが羽繕いをしているところです。これも鳥を真ん中に置いて撮ってしまうとただの生態写真になってしまいますが、ぼけた枝などに目を向けると形をスッとつくることができる。まわりを意識することで季節感やその日の透明感も表現できるわけです。 下の作品も枝ぶりがどう入るかを考えて構図を決めています。冬になると雪が降って風景も美しくなりますから枝の造形や背景にも目を向け、一度ピントを合わせたらまわりを見て鳥が映える構図で撮影しましょう。
日本には昔から自然に影響を受けて表現した優れた日本画がたくさんあるので、そういったものを構図の参考にするのもおすすめです。ちなみに僕が一番影響を受けたのは剣豪・宮本武蔵が描いた日本画で、彼の作品を見て構図の勉強をしていました。
最高約30コマ/秒という連写性能を備えた フラッグシップ機「α1」が成せる技
次は、「α」の連写性能についてお話しします。α9 IIやα1は驚異的な連写性能を備えているので、飛びそうになったらシャッターを押すだけ。下の作品は枝から飛び立った瞬間ですが、枝にいる時にピントを合わせ、真横しか見ていなかったので「真横に飛ぶ」と予測してフォーカスはそのままでシャッターを押しました。
次の作品は正面から捉えた1枚です。右端の枝から飛び立ちましたが、枝から10cmほどしか離れていませんよね。
「α1」で連写すると翼の形が全部違います。こういった写真を撮る場合、シャッタースピードは最低1/3200秒です。この時は1/8000秒で撮っていますが、1/3200秒ぐらいで撮れば咄嗟の時でも動きを止めることができると思います。ブレも気になるので、感度を調整しながらなるべく速いシャッタースピードで撮るようにしましょう。
30コマ/秒の連写ができれば、上の作品のような闘争シーンも撮ることができます。右のシメと左のイカルの異種格闘技戦ですが、この後、シメのくちばしをイカルがくわえ、振り回して投げ飛ばしました。それも30コマ/秒で連写しましたが、圧巻の表現力でした。 「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」で撮影していますが、絞り値が明るいほうが背景をきれいに見せることができます。そのため僕は開放でしか撮りません。「開放で高速シャッター」が野鳥撮影の基本です。
上の3枚の写真はヤマセミのハンティングシーンです。1枚目は水中へのダイビング、2枚目は飛び込んだ後の美しい水の造形、3枚目はヤマメを捕らえて飛び上がったシーン。飛び込んで出るまでが1秒もありませんが、それでも30枚近く撮ることができるのでα1の連写性能は驚異的です。
人気のメジロやシマエナガは 四季の彩りを加えると印象的な作品に
秋になると札幌市内の公園ではツリバナが赤い実を付けます。これはメジロやシマエナガの好物ですから、ツリバナで鳥が来るのを待ち、赤とグリーンの美しい背景で撮影するのもおすすめです。実をついばんでいる時は時間があるので、構図も工夫するように心掛けましょう。
メジロは真っ直ぐ飛び立つことはせず、一度下に入ってからどちらかに飛んでいきます。上の作品も実をくわえ取る時に鳥にピントを合わせただけで、後はシャッターボタンを押し続けて連写しました。数打てば必ず当たりますからね。ところが、せっかく1秒間で20枚も30枚も撮れるカメラを持っているのに、すぐにシャッターボタンを離してしまう人もいます。もったいないので、最低1秒は押し続けてくださいね。
11月に入るとシマエナガの季節です。札幌ではどの公園でも見ることができますが、なかなか高い所から降りてきてくれませんよね。上の作品は自宅の庭で撮影したものです。鳥を真ん中に置きたくなる気持ちを抑えて構図を動かせば、雪が降っている様子もわかり季節感のある作品に変わります。
これは真正面から飛んでくるところを狙って撮影しました。枝から飛び出して30cmほど進んだあたりで撮影し、枝が写り込まないようにしています。ですから30cmぐらいの前に置きピンをして撮りました。正面から撮ると鳥もレンズを見ているので、カメラ目線で飛んでくる写真が撮れますよ。 構図を変えてみることは今すぐにでもやれることなので、ぜひ意識しながら撮影してみてください。AF性能や連写性能など、カメラの機能はどんどん進化していますから、構図づくりを含めていろいろなことにチャレンジして「いい作品」を目指しましょう。
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