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異次元のレベルで最高の一瞬を捉える
解像もスピードもソニー最高峰の「α1」

野生動物写真家 野口純一 氏

α Universe editorial team

国内外で生命力に満ち溢れた野生動物を撮り続けている野口純一さん。CP+2022ソニーブースにてご紹介いただいた、ソニーのフラッグシップモデル「α1」で撮影した地元・北海道の作品をもとに新たにインタビューを実施。 しばらく使い続けたことでわかった「α1」の魅力や動物撮影で活躍する機能、連写性能の実力などについて語っていただいた。

野口純一/野生動物写真家 1968年、埼玉県生まれ。北海道在住。2輪、4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道に惹かれ、2000年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに、2002年より写真家として活動を開始。北海道を中心に国内外の野生動物を撮影し、雑誌やカレンダー等の各種媒体に作品を提供。野生動物に関する深い知識と豊富な経験に基づく的確で粘り強い撮影スタイルから生み出される、力強く美しい作品には定評がある。公益財団法人日本写真家協会(JPS)会員。

厳しい環境下でも限界まで攻め込める
高性能を詰め込んだ、小さく軽く堅牢なボディ

――野口さんはαシリーズを使い続けていますが、フラッグシップモデルの「α1」を手にした時の印象を聞かせてください。 スペックを見ただけでも素晴らしいカメラだと思っていましたが、実際に手にすると今までのαシリーズとほぼ変わらないサイズ感と軽さに驚きました。この小さくて軽いボディに、本当にハイスペックな性能が詰まっているのか信じられない感じでしたね。すぐに家の近くの裏山で試し撮りをしましたが、今までの常識を超えるようなものすごいカメラだとすぐに体感できました。

――使い始めて時間が経っていると思いますが、しばらく使用しての感想や気付きがあれば教えてください。 優れたAF性能と連写性能、さらにミラーレスの堅牢さが小さくて軽いボディに備わっているということは、厳しい環境の現場においては非常に有効だということを改めて実感しました。どんなに高機能でも大きかったり重たかったりすると、厳しい地形や環境の中では撮影者のポテンシャルを阻害する要因になります。

エサを求めて川にヒグマが来るのを崖の上で待機する野口さん
いかに過酷な環境で撮影しているかがわかる

私の場合、上の写真のように何かにつかまったり足でしっかり踏ん張ったりしないと滑り落ちてしまうような崖で待機することもあるので、大きく重いカメラは持って行くことすら躊躇してしまいますから。積極的に自分の限界まで突っ込んでいくことができ、自分の能力をフルに発揮できるという意味でも「α1」はとても頼もしい存在です。

最高約30コマ/秒の高速連写で
肉眼では見えないシーンまで捉える

――下の作品はどちらも空中を羽ばたく鳥を撮ったものですね。

α1,FE 600mm F4 GM OSS+1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/3200秒,ISO800
α1,FE 600mm F4 GM OSS+1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/2500秒,ISO800

飛びながら激しく争っているシーンなので、最高約30コマ/秒の高速連写が大活躍でした。2羽の位置関係や翼の形など、一番良い瞬間を選べるのは「α1」の大きな強みです。10コマ/秒と30コマ/秒では選択の自由度が大きく変わってきますからね。「もうちょっと翼が開いていたらなぁ」と思うことがほとんどなくなったので、安心感も増しました。 30コマ/秒も撮れると、動きが速すぎて自分では見えていない瞬間も撮れてしまいます。例えば下のヒグマの作品。

α1,FE 600mm F4 GM OSS+1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/3200秒,ISO6400

この水の形は自分では見えていません。でも30コマ/秒なら水がS字にうねる美しい瞬間も捉えることができる。「こんな形になっているのか」と写した後に気付かせてもらった感じです。もちろん美しい瞬間を狙っていますが、これは「α1」に撮らせてもらった自分でも納得の1枚です。 「α1」クラスになるとAFも連写もほとんどカメラ任せでいい写真が撮れるので、自分がその場所にさえ行けば誰でも撮れるという感じになってきていますね。

――誰でも撮れるとなると、プロとして重きを置かなければならない部分や意識しなければならないこともありますよね? 「α1」は、高性能でもセッティングを詰めなければ撮れない「熟練者のもの」ではなく、「誰にでも使えるもの」だと思います。ただ、野生動物を撮るとなると、動物と同じ環境下で同じように行動しないと撮ることができません。私の場合は撮影技術や構図以前にその部分に特化して時間をかけて自分のスタイルを築き上げてきたので、そこでプロとしてのオリジナリティを出すことができていると思っています。

激しく動いていても暗くても的確に瞳を捉える
鳥・動物対応のリアルタイム瞳AF

――AF性能について、率直な感想を聞かせてください。 「α1」には鳥や動物に対応したリアルタイム瞳AFが搭載されているので、野生動物や野鳥の撮影ではかなり有効だと感じました。 下の作品はオオワシが上空から着地する瞬間で、翼は雪原に接しているのですが体はまだ空中にあります。

α1,FE 600mm F4 GM OSS+1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/2500秒,ISO800

こういった瞬間的な撮影でも、鳥対応の瞳AFがしっかりと瞳にピントを合わせてくれました。羽ばたいているシーンでは動きの激しい翼にピントを持っていかれてしまうことが多いのですが、瞬時に瞳に合わせてくれてとても助かりました。以前は自分でAFの測距点を手動で調整していましたが、「α1」はほとんど調整せずに済んでいます。そのため私も楽にいい写真が撮れるようになりました。

α1,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 433mm,F6.3,1/320秒,ISO6400

上の鹿を撮影した時はかなり暗い状況でしたが、「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」を使っても動物対応の瞳AFが効いて瞳の輝きを捉えてくれました。肉眼ではまわりの笹もはっきりとわからないほど暗かったので、「α1はすごいな」と思いましたね。悪条件でも瞳AFなどの各機能がしっかりと作用してくれるのも「α1」の魅力です。 下の作品はヒグマの兄弟を撮ったものです。兄弟が水の中でじゃれ合っていて水しぶきが上がっています。

α1,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 318mm,F6.3,1/1600秒,ISO8000

動きが激しいのでフォーカスポイントに迷いが出そうなシーンですが、右側のヒグマの顔にきちんとフォーカスが来ています。足場の悪い崖の上から手持ちで撮影しましたが、そういった状況でも瞳AFやレンズの手ブレ補正機能が効いてくれたので、αだからこそ撮れた1枚だと思います。

卓越した質感描写と豊かな階調。
羽毛の質感の違いまで精細に表現

――画質についてはいかがでしたか? 下の作品はオオワシが飛んでいるシーンです。オオワシの羽毛は翼のほうは硬く、胴体は柔らかいのですが、飛んでいる状態で写しても質感の違いが手に取るようにわかります。これだけ高い解像感が得られるのは「α1」の大きな特長の一つです。

α1,FE 600mm F4 GM OSS+1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/2000秒,ISO320

解像感というとシャープでパキッとしたイメージが強いと思いますが、下に広がる雪原を見ると白のグラデーションも階調豊かで白飛びもなく、雪の質感まで伝わりますよね。「α1」というとスピード感を強く打ち出しているイメージですが、 画質も非常に優れています。 次の作品は天然記念物のシマフクロウを撮ったものですが、こちらも羽毛の質感を見事に表現してくれました。

α1,FE 600mm F4 GM OSS+1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/250秒,ISO2500

かなり暗い状況で、「FE 600mm F4 GM OSS」に1.4倍のテレコンバーターを装着して撮っているのですが、それでも優れた解像感と質感描写を訴求できるところが素晴らしい。光が届いていない奥の葉の部分は肉眼では見えないほど暗かったのですが、それでもきっちり写せるG Masterとテレコンバーターの組み合わせは圧巻です。

――専用設計のレンズについてはどのような印象をお持ちですか? 現状、12mmから600mmまで幅広い焦点距離が揃っていますし、単焦点もズームもあるので自分の撮影コンセプトに応じて最適なチョイスができる十分なラインアップだと思います。特にG Masterは、優れた描写にもかかわらず軽いものが多いという印象です。今までの常識を超えるような軽さで、重量バランスも非常にいい。過酷な場所でも持って行くことを諦めずに済むので、撮りたいレンズを持って好きなところに行けるようになったと感じます。

超望遠のFE 600mm F4 GM OSSを装着しても重量のバランスがよく撮影しやすいと野口さん

「α1」のようなフラッグシップモデルを使っても、専用設計のレンズでなければボディの性能をフルに発揮できません。AFのスピードや精度などを落とさないためにもαシステムで揃えるのが必須といえますね。

動物たちのしなやかな動きを動画で撮影。
自然環境を含めた視野の広い映像も撮影したい

――最近は動画も撮影していると聞きましたが、どのようなシーンで動画を活用しているのですか? 動画では、動物の一連の動きの美しさを意識して撮影するようにしています。「α1」は
4K120pでの撮影が可能で、野生の動物たちをスローで見せることで動きのしなやかさを表現できるのが魅力。精細な自然風景などを写す時には8K撮影もできるので、動画機材としても非常に優れたカメラだと思います。 「α1」に限らず、αシリーズはダイヤルひとつで静止画から動画に切り換えられるものがあり、最新の機種はレバーひとつで切り換えられるので、現場で「ここは動画が欲しいな」と思ったときに簡単に切り換えられてとても使いやすいですね。「α1」は動画と静止画で感度やシャッタースピードなどの設定を別々に保存できるのもいいところ。動画と静止画を切り換えるたびに設定し直さなければならないと、どうしてもワンテンポ遅れてしまいますが、「α1」ならタイムラグが短く、瞬時に動画撮影に移れます。

――今後、動画で撮ってみたいシーンはありますか? 今までは動物の姿にフォーカスした撮影が多かったのですが、今後は動物が生息している自然環境や刻一刻と変化する光など、多様性も含めて少し広い視点での撮影にも取り組んでいきたいと思っています。 動画を撮るようになってからは、「FE 24-70mm F2.8 GM」の使用頻度が格段に増えました。これから超広角の「FE 12-24mm F2.8 GM」も手に入れる予定なので、積極的に使っていきたいと考えています。大型の野生動物や鳥以外の生物も視野に入れたいと思っているので、近づいて撮影できる被写体はグッと寄って、まわりの環境とともに撮影もできるのではないかと今から楽しみです。

動体に対しては驚異的なAF性能。
「α1」でなければ反応できない世界がある

――「α1」に続いて「α7R V」が登場しましたが、「α7R V」を使ったことはありますか? 「α7R V」でも撮影したことがありますが、野生動物の撮影ではやはり「α1」を選びますね。個人的な意見になりますが、さすがはフラッグシップモデルだけあってスピード性能には歴然とした差があるように感じます。「α7R V」は AI認識が非常に優れていますが、そこから先のAFの追随性や連写速度、瞬間を切り取るという部分では異次元のレベルです。

α1,FE 600mm F4 GM OSS + 1.4× Teleconverter 840mm,F5.6,1/2000秒,ISO1000

鳥の飛び立ちなどを撮影するとAFの能力、特に反応の速さは「α1」の方が優れている。データをとって比較したわけではないのであくまで感覚の話になりますが、「α1でなければ反応できない世界」がまだまだたくさんあると思います。ですから、私のように極限の状況で狙った瞬間を撮るスタイルならば絶対に「α1」がおすすめです。 連写時のブラックアウトフリーも慣れてしまうと必須になってしまいますね。おそらく「α1」や「α9」を使ったことがない人は「必要なの?」と思うかもしれませんが、一度使うとブラックアウトがストレスになるので、もう戻れません。

――最後に、今後、αに期待することがあれば教えてください。 「α1」の登場により連写スピードが格段に速くなりましたが、今後もAFの性能や精度、連写性能などはさらに高めていってほしいと思っています。初めて写真撮影に取り組む人でもすぐに有効に使えるような形に発展していくといいですね。まったく経験がない人でも、「自分でもきれいに撮れるんだ」と思えば楽しくなってどんどん撮影してくれると思いますから。より多くの人に写真の素晴らしさを体験してもらえるカメラをこれからも期待しています。

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