今回のターゲットは、東武鉄道が本気で手掛ける観光列車「SL大樹」号。運行距離はたったの12.4km、平坦な電化路線を走ることもあり、これまであまり撮影してこなかったのだが、今回訪れてみてそれは大きな間違いだと思い知った。観光客や撮影者がSLに求める「見せ場」をきちんと作り、沿線の人たちも巻き込んで地域の活性化にも役立っているSL大樹は、蒸気機関車を使った本物のエンターテインメントだったのだ。
最大の見せ場である「倉ケ崎SL花畑」は、列車の乗客や撮影者を楽しませようと地元の人たちが自ら開拓した展望スペース。季節ごとに花などが植えられるほか、11月から3月にかけては大規模なライトアップも施される。そう、今回の最大の撮影チャレンジは、幻想的な夜間のSL走行シーンを写し取ることなのだ。
「闇夜のカラス」ではないけれど、ライトアップされているとはいえ、暗闇を駆ける真っ黒なSLの撮影はかなり難易度が高い。最初の見開きの写真では、あえてイルミネーションから離れた位置から森ごしに流すことにした。開放絞りでピントが極端に浅いうえ、手前に木々があるものの、どこで流し撮りが成功しても良いようにピントは追従したい。そこで暗闇で一番目立つと思われるキャブ(運転室)の明かりに測距点を合わせ、α1のトラッキングAFで追従しながら、1/13秒の低速シャッターで流し撮り!
α1の背面モニターに浮かび上がったのは、まるで銀河鉄道のような幻想的なシーン。極寒の雪景色の中、地元の人たちの思いを帯びたSLは、青白いのになぜかとても暖かく感じられた。
夜間撮影時にEVFで適正露出と感じる値で撮影して、あとでパソコンで確認したら露出アンダーだったという経験のある人は多いだろう。それを避けるためには、EVF内でちょっと明る過ぎるかな?くらいの露出で撮るのがコツ。また「ファインダーの明るさ」設定を「オート」にするのも有効だ。EVFは露出決定の絶対基準と考え、日中は撮影地の明るさによって見え方が変わる「オート」を選択しないが、夜間撮影のときだけは別なのだ。
夜間撮影がありそうなときは、いつものズームレンズに、大口径単焦点レンズをプラスするのが中井流。今回はともに開放F値がF1.4の24mmと85mmを用いることで、速いシャッター速度を選択できた。
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