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Adventure TRAIN

Adventure TRAIN 第5回 SL大樹
鉄道写真家 中井精也 氏
中井精也がαと旅する鉄道冒険記
デジタルカメラマガジンとの連動企画を
毎月コラム形式でお届けします

α Universe editorial team
α1,FE 85mm F1.4 GM 85mm,F2,1/13秒,ISO1600

東武鬼怒川線 大谷向〜大桑
ライトアップされている倉ケ崎SL花畑とは反対の田んぼ付近から、森の木を手前に流し撮り! イルミネーションの光が蒸気を照らし、映画『ポーラー・エクスプレス』のワンシーンのようなロマンチックな作品になった

幻想的な光に照らされて闇夜を疾走する
蒸気機関車「SL大樹」の姿を捉える

今回のターゲットは、東武鉄道が本気で手掛ける観光列車「SL大樹」号。運行距離はたったの12.4km、平坦な電化路線を走ることもあり、これまであまり撮影してこなかったのだが、今回訪れてみてそれは大きな間違いだと思い知った。観光客や撮影者がSLに求める「見せ場」をきちんと作り、沿線の人たちも巻き込んで地域の活性化にも役立っているSL大樹は、蒸気機関車を使った本物のエンターテインメントだったのだ。

最大の見せ場である「倉ケ崎SL花畑」は、列車の乗客や撮影者を楽しませようと地元の人たちが自ら開拓した展望スペース。季節ごとに花などが植えられるほか、11月から3月にかけては大規模なライトアップも施される。そう、今回の最大の撮影チャレンジは、幻想的な夜間のSL走行シーンを写し取ることなのだ。
「闇夜のカラス」ではないけれど、ライトアップされているとはいえ、暗闇を駆ける真っ黒なSLの撮影はかなり難易度が高い。最初の見開きの写真では、あえてイルミネーションから離れた位置から森ごしに流すことにした。開放絞りでピントが極端に浅いうえ、手前に木々があるものの、どこで流し撮りが成功しても良いようにピントは追従したい。そこで暗闇で一番目立つと思われるキャブ(運転室)の明かりに測距点を合わせ、α1のトラッキングAFで追従しながら、1/13秒の低速シャッターで流し撮り!
α1の背面モニターに浮かび上がったのは、まるで銀河鉄道のような幻想的なシーン。極寒の雪景色の中、地元の人たちの思いを帯びたSLは、青白いのになぜかとても暖かく感じられた。

<PHOTO TECHNIQUE>
夜間撮影時の露出アンダーに注意

夜間撮影時にEVFで適正露出と感じる値で撮影して、あとでパソコンで確認したら露出アンダーだったという経験のある人は多いだろう。それを避けるためには、EVF内でちょっと明る過ぎるかな?くらいの露出で撮るのがコツ。また「ファインダーの明るさ」設定を「オート」にするのも有効だ。EVFは露出決定の絶対基準と考え、日中は撮影地の明るさによって見え方が変わる「オート」を選択しないが、夜間撮影のときだけは別なのだ。

モニターであるEVFは、夜間だとどうしても明るく見えてしまう。そんなときは「ファインダーの明るさ」をオートにすれば思わぬミスを防げる
α1,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 344mm,F6.3,1/200秒,ISO1600

東武鬼怒川線 大桑〜新高徳
平坦な路線だが、観光客や撮影者がいる場所では煙を出して見せ場を作ってくれる。α7R Xが生み出すやさしいぼけと、高精細な機関車の描写が奥行きを強調してくれた

α1,FE 24mm F1.4 GM 24mm,F1.6,1/500秒,ISO12800

東武鬼怒川線 大谷向〜大桑
少ない光量でも美しい描写力を誇るα1とFE 24mm F1.4 GMの組み合わせだからこそ撮れた夜の走行シーン。この場所だけ車両に掛からない電柱に変更した東武鉄道の熱意にも感動!

α1,FE 14mm F1.8 GM 14mm,F14,1/4秒,ISO200

東武鬼怒川線 大谷向〜大桑
日光の杉林を走るSLを流し撮り。超広角のFE 14mm F1.8 GMだからこそ生み出せるダイナミックな木の流れが、幻想的な世界を生み出した

α1,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 200mm,F4,1/1000秒,ISO1600

東武鬼怒川線 大谷向〜大桑
鉄道マンも、沿線の人たちも、SL大樹を囲む人たちはとにかくフレンドリー。このやさしい雰囲気が、SLの旅をより豊かにしている

α1,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 481mm,F8,1/640秒,ISO800

東武日光線 新高徳〜小佐越
α1のAF-C+トラッキングAFで、機関車が現れてからドアップになるまでピント追従。ピントはカメラまかせで、構図づくりに専念できるのは強みだ

<ADVENTURE EPISODE>
夜間撮影では単焦点レンズが威力を発揮する

夜間撮影がありそうなときは、いつものズームレンズに、大口径単焦点レンズをプラスするのが中井流。今回はともに開放F値がF1.4の24mmと85mmを用いることで、速いシャッター速度を選択できた。

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