広角20mmからの魅力とは?ソニーの新標準ズーム「FE 20-70mm F4 G」の実力を福田健太郎さんに聞いた小型軽量で画質も良好 コンセプトが光る逸品
写真家 福田健太郎 氏
前回のもろんのんさんへのインタビューに続く、ソニーの新レンズ「FE 20-70mm F4 G」をテーマにしたインタビュー。今回は風景写真家の福田健太郎さんに登場いただきます。 「広角レンズが大好き」という福田さんは、「FE 14mm F1.8 GM」をはじめとしたαレンズの使い手。今回の「FE 20-70mm F4 G」についても熱い思いが感じられるインタビューとなりました。 いち早く「FE 20-70mm F4 G」で作品を撮ってこられた福田さんは、このレンズについてどのような感想をいだいたのでしょうか。
福田健太郎 1973年埼玉県生まれ。 幼少期から自然に魅かれ、自然、風景、人に出会いたく、写真家を志す。 1994年日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信氏のアシスタントを経て独立。 日本を主なフィールドに、「森は魚を育てる」をキーワードとした生命の循環を見つめ続けている。
初代「α100」からソニーを愛用
――福田さんとソニーαの出会いは?
初号機の「α100」から今までかなりの台数を使ってきました。「NEX」シリーズも使いましたし、ほとんどの機種を触っています。思えば、10年ちょっとで劇的に変化したカメラと一緒に歩いて来られたわけで、すごく幸せです。ソニーαは今ではたくさんの方が使うブランドになり、とても嬉しく思っています。特にレンズは当時から良かったですね。
――現在使用しているαを教えてください。
メインは高画素機の「α7R V」。加えて動画や高感度域が優れている「α7S III」の両方で撮影しています。どちらも1台ずつです。予備として同じカメラを持っていくよりも、個性の異なるカメラを2台持って行った方が私の場合は撮影領域を広げてくれるのです。より踏み込めるというか、現場に対応しやすくなります。そのチョイスができるのがソニーの強みですね。
――普段の撮影スタイルは?
車で全国各地を移動して、降りたらそこからひたすら歩きます。山に登ったり、渓谷を歩いたり。多いときは10〜15km歩くこともありますね。 そのため自分で背負える範囲の機材を厳選しています。機材が重くなると歩くのもつらくなるし、撮影の意欲も失われます。だから軽量コンパクトなカメラとレンズが必須になっています。一日中撮影することも多いですからね。
G Masterに引けを取らない質感と操作感
――よく使うEマウントレンズは何ですか?
一人で歩いて撮影しますから、軽さやコンパクトさを求めています。その上で画質も妥協したくない。と考えると、G Masterのズームレンズ、すなわち大三元、「FE 16-35mm F2.8 GM」「FE 24-70mm F2.8 GM II」「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」になりますね。それに超広角の単焦点レンズ「FE 14mm F1.8 GM」を加えた4本が、今現在、私の基本セットです。 中でも「FE 16-35mm F2.8 GM」はよく使います。「FE 24-70mm F2.8 GM II」の望遠側でちょっとアップを狙うこともありますが、自分としては望遠レンズで切り取るよりも、自然の中に飛び込んで行くというイメージを大切にしています。広角レンズでその場の気配を捉えるというか、自分の目で見て、感じたものをてらいなく写すことを大切にしています。
――「FE 20-70mm F4 G」を見ての第一印象は?
「小さくて軽いな」「バランスも良くてすごく使いやすそうだな」と思いました。20mmからなのに前玉がこれだけ小さい。ソニーの最新の設計から生み出されたのだと感心しています。
カメラに装着して、左手を添えるとズームリングが自然に触れます。鏡胴もスリムで扱いやく、手に馴染む感じがあります。高級感もG Masterと区別が付かないくらいです。完成度が高いと感じました。 広角端から望遠端までズームリングがちょうど良い回転角なのも気に入っています。撮影しているとここはよく触るので、操作に違和感があるとストレスになります。決めたところにピタッと止まってくれるのが理想で、それが実現されていました。 絞りリングがあるのもうれしいです。写真でも使いますが、特に動画では便利ですね。どの絞り値なのかがパッと目視できるのが良いんです。そして、カメラがどんどんシンプルになる中、操る楽しみという点もあると思います。
高さ方向に広がりが生まれる「20mm」
――焦点距離20mmの画角についてはどうお考えですか?
20mmから始まるのは自分にとって夢のズームレンズです。アシスタント時代、最初に使ったレンズが20-35mmでした。それが当時の広角ズームで、標準ズームは28-80mmでした。それが、まさか20mmから始まる標準ズームレンズが世に出てくるとは……。「あったらいいな」という希望が叶った気持ちです。
――標準ズームレンズの広角側といえば24mmが一般的ですが、自然や風景の撮影では、
20mmと24mmでは結構違うものでしょうか。
広角側の焦点距離4mmの差は相当違いますね。感覚的にはひと回り広く写せる感じでしょうか。「ここまで写したいのに」というときに24mmでは写らなかったのが、20mmなら写るというのがメリットですね。
――20mmならではの表現や使いこなすポイントを教えてください。
横位置の場合、24mmだと横方向の広がり感は出ますが、高さ方向の広がりが表しにくいんですね。その点、20mmだと横の広がり感に加えて、空や樹木、滝といった高さ方向を強調する被写体や、それを含む構図をダイナミックに表現できます。自然や風景の撮影では、
20mmと24mmの表現の差がここに出てきますね。
この写真だと前景の船の部分は20mmでも24mmでも同じですが、空の広がり感というか抜けた高さのスケール感が24mmでは表現しにくい。なので24mmのときは仕方なく縦位置で収めますが、そうすると横の広がりは出せませんね。
結局、レンズ交換して広角ズームを付けたりと面倒なんです。そうしたレンズ交換がなくて済むので、この違いは大きいと思います。 使う上でのポイントですが、写真に迫力を出すなら前景、中景、遠景をどう入れるかを考えることでしょう。手前から奥に向かって風景をどのように構成するかがテクニックと言えます。 それから、20mmは動画でも広々した感じが出せます。動画だと風景を16:9で切り取るわけですが、やはり20mmが生きてきますよね。 「広い風景が撮りたい」と思ったときに、このレンズなら叶えられるという幸福感を味わってほしいですね。
6,000万画素オーバーでも問題無い解像力
――G MasterではなくGレンズですが、描写力の印象は?
自然風景撮影をしているとよりシビアに画質を見てしまうので、以前はワイド端の周辺がビシッとせず、あまく感じるレンズもありました。でもこのレンズはそんなことが全くない。有効約6,100万画素のα7R Vを使っていてもきちっとした画質で写る素晴らしいレンズですね。
しかも周辺まで解像しています。隅々まできっちり写ってくれる。枝の細い線や岩のディテールなどもしっかり見せてくれるんです。 ずっとG Masterを使ってきましたが、描写力は遜色無いのではないでしょうか。撮り比べた写真を見せられても分からないかもしれない。線が細くて程よいコントラストが付いています。発色も素晴らしいときているので、「これはもうG Masterでしょ」といってしまうくらいです。
――広角レンズということで逆光耐性が気になりますが……
ゴーストやフレアを気にされる方もいると思いますが、ほとんど現れないですね。この写真は月を逆光で撮影しています。このように撮ると、レンズによってはゴーストやフレアが目立ってでることもあります。このレンズは今回の撮影ではそういうことはほぼ無く安心して使用できました。
――開放F値がF4という点に関してはどうでしょうか?
F2.8のG Masterよりは1段暗くなるので、薄暗いときなど本当にシビアな時に差が出るでしょう。G Masterで1/60秒のときにこのレンズだと1/30秒になるという微妙なところに1段の差が現れてきますね。 あとはぼけの大きさでしょうか。ですが自然風景の場合は背景を大きくぼかさないことが多いため、私の使い方でF4で困るということはあまり無いですね。そして、ぼかそうと思えばF4でも意外とぼけますから。
――歪曲収差や周辺減光はどうでしょうか?
風景に直線はないので、もともと気にならないですね。歪みも周辺減光も何らネガティブな思いはありません。RAW撮影なら現像ソフトで補正できますしね。多くの人が楽しまれる自然風景の撮影で気になることはないと思います。
扱いやすい望遠端70mm、近接撮影も
――望遠端が70mmですね。
自分が使っている「FE 24-70mm F2.8 GM II」などの標準ズームレンズと同じなので、すごくありがたいですね。しかも望遠ズームレンズは70mmから始まるのがほとんどなので、焦点域の抜けがなく繋がるように揃えられているのが助かります。 それにAPS-Cサイズにクロップしても「α7R V」なら十分な画素数があるので、70mmで足りなければ105mm相当として実用的に使えます。そういった使い方も検討してほしいですね。
――このレンズは接写にも強くなっていますね。
花のアップの写真が70mmで接写したものです。最短撮影距離が25cmなので、被写体がレンズ直前にくるというくらいすごく寄れる。簡易マクロ的な撮影ができてしまうんです。そしてテレ側のぼけが非常に綺麗です。
赤い実の写真を見るとわかりますが、ふわーっととろけるように自然なぼけなので望遠側側でぼかすのもオススメの使い方です。
まとめ:写真を本格的に始める方に
――AFの速度と精度はいかがでしたか。
風景撮影に関しては、スパーンスパーンと合ってくれてストレスなく快適ですね。それに静粛性が高いのも気に入っています。この辺りも普段使っているG Masterと変わらない感覚です。
――このレンズで新しい作品が期待できそうですか?
本気でこのレンズを使いたいと思いますね。体力勝負の撮影場所でしっかり撮らなければならないという場合は、カメラ1台にこのレンズを付けていればある程度対応できるわけで、旅の撮影でも使ってみたいですね。
――広角ズームの出番が無くなりそうですね(笑)
もうこれ1本で済む人が多いんじゃないですかね(笑)。ズームのどこでも変わらないキリッとしたシャープ感があります。解像力を上げるために1段絞るといった事はしなくても、絞り開放からガシガシ使えるということです。 20mmでは足りないとしたら、私だったら軽くするためにこのレンズと「FE 14mm F1.8 GM」を加えて持っていきます。これからFE 20-70mm F4 Gを手に入れてから次のレンズを探す方はぜひ、明るい単焦点レンズで楽しみを広げていくことをお勧めします。 本当に欠点の無いレンズですね。写真を仕事にしている身としても十分すぎる描写力を提供してくれます。このレンズからスタートするのは、自然風景分野に限らずオールジャンルで理想かなと思います。
――ソニー純正レンズならではの魅力もありますね。
まず高い性能ですね。まるでソニーが「これを標準レンズのメインにするぞ」という意気込みが感じられます。「ここがもうちょっと……」というところがない。 それからボディとの親和性の高さでしょう。AFの速さや精度も快適な撮影に繋がります。 動画撮影での「アクティブ手ブレ補正」もありますから、歩きながら手持ちで撮影しても安定した映像が撮れることが純正ならではの強みでしょう。 αに最良な設定でソニーが出しているわけだから、そこは安心感になりますね。将来ボディを買い換えても、レンズは心配無く使い続けられるのも純正ならではだと思います。
記事で紹介された商品はこちら
ワンクリックアンケートにご協力ください
αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると最新記事の情報を随時お知らせします。