写真家 並木隆 氏から見たα7R Vの魅力
写真家 並木隆 氏
並木隆/写真家 1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。心に響く花をテーマに、各種雑誌誌面で作品を発表。 公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人 日本写真協会、日本自然科学写真協会会員
――αを使い始めたきっかけや理由を教えてください フランジバックの短さによるレンズ性能の向上、軽量化などのメリットがミラーレスにあると考えました。一眼レフ用レンズをアダプターを介して装着する、もしくはフランジバックの厚みを調整しているメーカーが多い中で、ミラーレス専用設計レンズのラインアップが豊富で、単焦点レンズのも数多くそろえていること、初代α7から続くコンパクトなボディサイズの継承、それに自社開発のフルサイズセンサーを採用している点がαを選択した理由です。
――プロフェッショナルとして大事にしているポリシーを教えてください。 フイルムで撮影しているときと同じスタンスで、ないものを付け加えたり、あるものを削除したりしないというのをポリシーですかね。屋外では被写体や光線状態だけじゃなく、前後の被写体や背景などイメージを形にできる、条件を満たした場所を見つけられるかどうかがプロだと思っています。ひとつでも欠けていたら作品になりませんし、欠けている部分を加工で補ったら文明の利器(デジタル)に負けた気がするので(笑)
――作品を撮るにあたり、機材に求める機能、性能は何でしょうか?
一生懸命開発している方々には本当に申し訳ないのですが、機能は正直求めていません。機能はあったら楽になるようなという程度で、その機能がないとイメージした作品が撮れないようじゃプロじゃないなって思っているからです。なので、ボディは絞りとシャッターとISO感度が調整できればいいと思っています。
反対に、性能に関しては求めている部分は沢山あります。ビューファインダーのクオリティをもっと上げてほしいなというのはミラーレスを使い始めてからずっと思っていることですね。使い始めた当時と比べたらとても綺麗に見えるようになり、現状不満な点はありません。ただ、日陰の薄暗いところが見えにくかったりして、現場で大丈夫だと思ってもパソコンの大画面で見ると、余計なものが入っていたりとかがたまにあるので。高ISO感度域の画質も重要なポイントです。ノイズが目立たなくなってきれいに見えるのに上限はありませんし、そのぶん高画質で撮影できる領域が広がりますからね。αのさらなる進化に期待します。
――ここからはα7R Vの使用感について質問させていただきます。どのような場面で高解像性能の向上を感じられましたか? 全体的に解像性能が上がった実感はありますね。前ぼけと重なった花の輪郭などは従来モデルでは、もやっとしていましたが、α7R Vではもやっとした中でも輪郭がハッキリするようになりました。画像処理で同じことをしようとすると前ぼけの雰囲気が消えてしまうので、細かい部分ですが「おぉ!」と驚きましたね。
――新開発の処理エンジン搭載により従来モデル(α7R IV)と比べて露出制御と色再現性能の精度が向上しております。お使いになられて、性能の向上を実感した場面などはございますか。 CP+2023のセミナーでもお話したのですが、極端なオーバー露出で撮影しても色が残るようになりましたね。センサーが同じ従来モデルの画像処理エンジンでは、記録されているハイライト・シャドー部分の情報が十分に反映されていなかったと感じますが、α7R Vの画像処理エンジンでは、しっかりと記録された情報がいかされた画が撮れるようになりました。これによって極端なオーバー露出を取り入れることが非常に増え、作品の幅が広がりました。
――カメラ前面に搭載した「可視光+IRセンサー」に加え、AIプロセッシングユニットにより、AWB性能が進化しましたが、いかがでしたか? 従来のモデルで曇りの時に撮影する際は、太陽光のホワイトバランスで撮影することがほとんどでした。くもりのホワイトバランスにすると赤味が強くなりすぎて私の好みではないのでのと、少し青味が残っている方が、くもりらしい天候を表現できるという理由からです。でもα7R VのAWBは太陽光ほど青味が強くなく、くもりほど赤みが強くないという絶妙な調整をしてくるので、雰囲気を優先するなら太陽光でいいですが色を優先するならAWBもありだなと思いました。もちろん、全ての条件で満足いく結果になるわけではありませんが、これまでいくつかの光源が混ざっているようなときにしか設定することがなかったAWBが選択枠のひとつになったのは大きいですね。
――手ブレ補正の効果についてはどのように感じましたか? 手ブレ補正は常に効いているので実感することが難しいですが、望遠もしくはマクロレンズを装着して、最短撮影距離付近で手ブレ補正をON・OFFにして撮り比べてみると違いがわかりやすいですね。ISOオート・絞り優先AEでの撮影時ですと1/(焦点距離)秒くらいのシャッタースピードに設定されているときにOFFだと確実にブレてしまいます。これは解像力が高いからこそ、細かな手ブレまでも捉えてしまうということですね。なので、手ブレ補正をONにするだけじゃなく、シャッタースピードは最低でも1/250秒、余裕があるなら1/500秒になるようにISO感度の設定で調整して撮影しています。
――今回α7R Vで動画の撮影をいただきましたが、いかがでしたか?
花を動画で撮影することが初だったのでとても新鮮でしたし、静止画のように瞬間ではなく、わずかな時間でも流れやストーリーを見せないと垂れ流しの平凡な動画になってしまうので表現方法が全く違って面白かったです。カメラを動かすなど、いろいろと試行錯誤した結果、ジンバルやら動画用の三脚雲台など必要なものがどんどん増えていきました(笑)ハイスピードシャッターでのスローモーション撮影などいろいろ試してみたいイメージが膨らみますが、静止画と動画を同時に撮るのは頭の切り換えをするのは、まだまだ難しいですね。
――α7R IVからのモニターやファインダーについてはいかがでしたか?
α7R IVの液晶モニターにそもそも一切不満がなかったのですが、α7R Vは更に良く見えるようになったな、と感じました。ファインダーもより高精細になったと感じます。合焦している部分や、ピーキングの見え方もよりクリアになりました。マクロレンズのクローズアップ撮影による浅い被写界深度域でもより精細に見えるようになったことと、撮影後の細かい確認なども全てファインダーで行っているので、嬉しい進化点です。
また、4軸マルチアングル液晶モニターになったので縦位置でも見やすい位置に調整できるようになったことが嬉しかったですね。バリアングル液晶だとレンズの光軸から視点がずれてしまうので、液晶モニターを見ながら被写体を探すのは慣れもありますが結構大変でした。縦位置だと更に難しくなるので、個人的にはチルト液晶の方が好きなのですが、今回のモデルはその問題が解消されましたし、動画撮影でハイアングルから撮影するときもチルトでは下方向に向けるのは限界がありましたが、バリアングルなら真下も可能ですから状況によって調整出来るのでとても素晴らしいと思いました。
――そのほか 上記以外の点でもα7R Vに関してお気に召した点や、総括コメントをいただけますと幸いです。
α7R Vの新しい画像処理エンジンによる画質の向上が、私の中では一番満足度の高い部分です。ハイライト部ばかり述べましたが、シャドー部の階調再現性もかなり向上していると感じます。作品だけではわかりにくい部分ですが、露出をアンダー気味にして潰さずに残した部分の情報量の多さには関心しました。シャドー部の再現性が豊かなプリンターと組み合わせるときれいなプリントができあがるだろうなというデータでした。
また、画質の向上によってG Masterの解像力の高さなどもしっかり描写できるカメラになっているので、よりレンズの描写性能への依存度が高くなり、G Masterの存在意義が明確になったなという感じです。今回はFE 135mm F1.8 GMを主に使用して撮影しましたが、FE 50mm F1.4 GMや、FE 12-24mm F2.8 GMも一緒に使ってみたいと感じました。
本記事で紹介しきれなかった並木氏の作品はα7R V スペシャルコンテンツ内 ‘プロフェッショナルギャラリー’にて公開中 こちらも合わせてご覧ください https://www.sony.jp/ichigan/a-universe/special_a7RM5/04/
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