α Universe editorial team
三陸鉄道リアス線 十府ヶ浦海岸駅付近
まだまだ添え木がないと自立できないか弱い並木だが、かつてがれきで覆われていた土地に咲く、希望の桜だ。地面にゴロンと寝転んで、FE 16-35mm F2.8 GMのワイド側で伸びやかにパチリ
がれきが広がる風景だった場所に咲く
希望に満ちた桜の風景
青空に映えるピンク色の桜。豪華絢爛に咲き誇る桜の名所に比べると、なんとも頼りない桜並木だが、まさにこの風景こそ、僕がずっと待ち続けていた風景なのだ。
ここは三陸鉄道リアス線の十府ヶ浦海岸駅付近。駅がある野田村は震災で壊滅的な被害を受けた。
2012年4月には三陸鉄道が復旧、2017年には高台への住宅の移転計画の1つとして、十府ヶ浦海岸駅が新駅として開業することになった。そこで見つけたのが、新しく造られた防潮堤に植えられた桜だった。この桜並木は住民の心を癒そうとボランティアの団体から寄贈されたもので、駅の開業当時はまだ苗木。でもそのか細い幹を見た瞬間、僕の心の中に新たな夢が生まれた。
「いつかこの桜並木が大きくなったら、三陸鉄道の列車と一緒に撮影したい!」
あれから約7年の歳月がたち、か細かった苗木はすっかり桜並木らしい姿に育っていた。夢にまでみた風景を、α1とα7R Vとともに記録できたことを写真家として、いち鉄道ファンとしてとても幸せに感じている。
繊細さと淡く優しい表現が重要になる桜の撮影。より精緻に表現したいときはα7R X。より階調豊かに表現したいときはα1と使い分けている。もう1つ重要なのがレンズ。僕はG Masterを使っているが、レンズの描写力が劣っていると花びらがつぶれてベタッとしてしまう。だから僕は大切な風景を撮るときにαとG Masterを使うのだ。
来年はもっと幹が太く、もっと力強く咲き誇るのだろうか。これからもα1、α7R Xと一緒に見守り続けていきたい。
<PHOTO TECHNIQUE>
シーンに合わせてクリエイティブルックを選ぶ
クリエイティブルックは、天気などの状況に合わせてこまめに変更するのが中井流。写真左のような晴れの日は彩度とコントラストが高く、鮮やかな表現になる「VV」で決まりだが、右のような曇空でもきれいに見せようと「VV」に設定しがち。でもこの場合は、コントラストを抑えた「ST」の方が、やわらかい光を受けた桜の優しい色合いを見事に表現できる。なんでも派手に鮮やかにするのではなく、シーンに合わせてモードを試し、理想の表現を模索したい。
三陸鉄道リアス線 吉里吉里駅
前々から訪ねてみたかった吉里吉里駅の桜。地面に寝転んで手前にスイセンを入れ、FE 16-35mm F2.8 GMの16mmでダイナミックな構図に。春色が映える、ぜいたくな風景になった
三陸鉄道リアス線 十府ヶ浦海岸駅付近
約6,100万画素を誇るα7R Xならではの柔らかいボケ味と、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIの優れた描写性能で桜並木を優しく表現。開業時から走りつづける古参の車両もうれしそう
三陸鉄道リアス線 吉里吉里駅
吉里吉里駅の夜の桜をFE 14mm F1.8 GMで伸びやかに撮影。ISO 6400で撮影しているが、ノイズは皆無。まるで日本画のような美しさだ
三陸鉄道リアス線 島越駅付近
約17.9mという大津波に襲われた島越駅付近。ここにも桜が植樹され、過去の風景が想像できないほど、おだやかな春の風景を見せてくれる
三陸鉄道リアス線 吉里吉里駅
まるで黄色い炎のように、線路脇で咲き誇るレンギョウ。FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSが生み出す美しいぼけが列車の存在感を際立たせる
<ADVENTURE EPISODE>
ワンダーな世界を求めて今日もゴロン!
地面からニョキニョキ生えるツクシの力強さを出そうと、地面に寝転んで撮影した。こうしたゆる鉄を生み出す極意は、視点の自由さと、服が汚れることを気にしない大雑把さなのだ(笑)
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