今回の舞台は飯田線。愛知県の豊橋から、険しい山岳地帯を貫き長野県の辰野に至る路線で、その総延長は195.7kmにも及ぶ。驚くことに直通の鈍行列車があり、その所要時間はなんと約7時間! 鉄道写真家としては絶好の被写体だが、限られたページで見どころを全部紹介するにはさすがに長過ぎるので、今回は長野県側の区間に絞って撮影した。 飯田線の長野県側のハイライトは、天竜峡駅から大嵐駅にかけての天竜川の渓谷に沿って走る絶景区間と、中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷を走る区間。どちらもまさに新緑に輝く季節を迎えており、伊那谷では中央アルプスと水田のコラボが生み出す、息を呑むような絶景を撮影することができた。
そんな中、僕がメインカットに選んだのは、秘境駅として知られる中井侍駅付近の山中で撮影した作品。険しい渓谷に沿った山岳地帯を電車が恐る恐る走る光景が実に飯田線らしいと言えよう。 この作品はα1で撮影したが、僕が見せたかった森の木々や渓谷の水面の風紋などの細かい部分の描写が本当に素晴らしいと感じた。拡大してみると細部までかなり繊細に描写されているのだが、高画素機に特有のカリッとし過ぎた感じがなく、どこか柔らかさというか優しさがあるところが実に良い。この柔らかさが臨場感を高めているのだろう。僕がどうしてもα1を選んでしまう理由は、ここにあるのかもしれない。 今回は派手な写真はないが、この路線の個性と日没が迫る谷を抜ける風まで表現できたような気がして、お気に入りの作品群になった。
鉄道風景写真では、線路位置に測距点を置き、列車が来るまで頻繁にAFでピント合わせをするが、何度も合わせ直していると、まれにピントがわずかに甘くなることがある。それを避けるためには「ピント拡大」機能を利用し、本番前に確実にピントが合っているかどうか確認したい。僕はAF-ONボタンに「ピント拡大」を割り当て、ピントを合わせたあとは最大の8.5倍まで拡大、まるで顕微鏡でピントをチェックするように確認している。
今回は絶景ポイントをご紹介。三遠南信自動車道の天竜峡大橋に併設された「そらさんぽ天竜峡」。ここからは、天竜峡と飯田線の絶景(右上の作品)を手軽に撮影できておすすめの場所だ
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