風景写真家 萩原れいこ氏から見たα7R Vの魅力
風景写真家 萩原れいこ 氏
萩原れいこ/写真家 沖縄県出身。学生時代にカメラ片手に海外を放浪した後、日本の風景写真に魅了されていく。車内泊用に改造した軽ワゴンで日本縦断を敢行。隔月刊「風景写真」の若手風景写真家育成プロジェクトにより、長野県志賀高原での写真修行を経て独立。永久的な"自然の営み"をテーマに、嬬恋村、志賀高原、沖縄県をメインに活動中。個展「Heart of Nature」、「地獄」、「羽衣〜Hagoromo〜」などを開催。写真集「Heart of Nature」(風景写真出版)、「風景写真まるわかり教室」(玄光社)、「極上の風景写真フィルターブック」(日本写真企画)などを執筆。撮影のほか、撮影指導、写真雑誌への寄稿、セミナー講師などを行う。石の湯ロッジ撮影会プラス講師、アカデミーX講師、カメラグランプリ審査員、嬬恋村キャベツ大使(観光大使)。
―― α7R Vの高解像性能はいかがでしたか。また、α7R IVとの違いは感じられましたか? α7R IVの有効約6100万画素の高解像性能に満足しており、α7R Vも同じ解像度ということで描写について大きな進化を期待していなかったのですが、表現力が非常に向上していて驚きました。高解像ならではの精密さはもちろんのこと、被写体の立体感や空気感の表現がずば抜けて良く、まるで手が届くような臨場感と光の表現が秀逸です。 こちらの作品は霧氷の森に川の湯気が立ちあがった瞬間を狙ったものですが、画面全体がワントーンの色合いでも、手前から奥への立体感、湯気の湿度を感じるような臨場感に感嘆しました。
―― 高感度時の低ノイズ性能や広いダイナミックレンジを、高解像度と両立しているのもまた、α7R Vの強みでもあります。高感度時の撮影について、いかがでしたか? α7R Vは輝度差の強い朝夕の場面において、白トビや黒つぶれを防ぐだけでなく美しい階調を再現してくれるので、目の前の絶景に安心して挑むことができます。
こちらの作品は、日陰の山肌や木々の造形をしっかり描き、なおかつ雪原のオレンジからブルーへの繊細なグラデーションが再現されることによって魅力的な作品となりました。
こちらの作品は、夕日が沈んで30分以上経った暗い時間帯での撮影でした。このような時間帯だと月が白トビしてしまうのですが、ほんのり輝く黄金色を見事に描いてくれました。高感度での撮影でしたが、湖面の薄氷や山肌など暗部の表情もしっかりと滑らかに描かれており、撮影の幅が広がりました。
―― フォーカスブラケット機能を使って撮影いただいた作品がございますが、こちらの機能を使用いただいた感想をお聞かせください。 風景写真を撮影するにあたり、絞り込んでパンフォーカスしたい場面が多々あります。しかし、絞り込みすぎると“回折現象”が起こるため、被写体の繊細な美しさが損なわれてしまいます。今までは解像感をとるか、表現をとるか、悩ましい決断をしなければならない場面がありましたが、それを解決してくれたのがこの機能です。最も美しい描写を得られるF5.6〜8に設定して複数枚撮影し、合成して出来上がった写真を見たときはため息が出ました。α7R Vの高解像性能を余すことなく発揮できる素晴らしい機能だと思います。
―― 手ブレ補正の性能はいかがでしたか? α7R Vは有効約6100万画素という中判カメラ並みの高解像が魅力ですが、その描写力がフルサイズの大きさで実現しているという点が気に入っています。私はロケハン時など三脚を持たずに身軽に歩くのですが、そのときに不意に出合った絶景がいくつもあります。手持ち撮影でも強力な手ブレ補正のおかげで、作品としてしっかり残すことができました。動画も手ブレを気にせず、以前より気軽に撮影できるようになりました。気持ちが軽くなることでフットワークが軽くなり、もう少し歩こう、あそこへ行ってみよう、という好奇心も刺激されます。新しい表現も生まれるのではと期待しています。
―― α7R Vはα7R IVに比べ液晶モニターやファインダーも進化していますが、使用されてみていかがでしたか? 私は液晶モニターを見ながら撮影することが多いので、サイズが大きくなってさらに快適になりました。また、4軸マルチアングル液晶モニターは非常に画期的な機能だと思っています。素早く撮影したいときはチルトのように使い、高いアングルで縦位置撮影などをするときはバリアングルのように使用しています。構図をしっかり見極めるため、液晶モニターを必ず顔と正対して見たいので、全方向自由に動きを変えられるようになって撮影のストレスがなくなり楽しくなりました。
―― 長時間の屋外撮影が多い中で、α7R Vのスタミナ性能はいかがでしたか? 風景写真は気温の厳しい屋外での撮影が多く、マイナス20℃ほどの厳冬地で撮影することもあります。被写体検出や追従性能を使用せず撮影することが多いので、設定や撮影枚数にもよりますが、一つのバッテリーで8時間ほど撮影をしています。一日中撮影する日も、予備バッテリー一つで充分だと感じています。
―― α7R Vで動画作品を撮影いただきましたが、性能面で驚いたことや便利だった機能などございますか? シンプルな点ですが、静止画と動画の切り替えダイヤルが新しく搭載されて、とても使いやすくなりました。同じ現場で静止画と動画共に撮影するのですが、画面の比率が違うためダイヤルで素早く切り替えて、構図を整えてから録画ボタンを押しています。4K60pで撮影できるのでより滑らかになり、8Kにも対応してα7R IVよりさらに臨場感あふれる映像が撮れるようになりました。新しいレンズが静止画、動画共に対応してくれるので、ますます動画撮影が楽しくなることと期待しています。
―― 新開発AIプロセッシングユニット搭載によるリアルタイム認識AFがα7R Vの大きな特長の一つですが、撮影時にこの性能を感じられた場面はありましたか? 自宅の周辺が森に囲まれているので、散歩しながら野鳥の観察をしています。枝先にとまった鳥の姿を素早く認識し、目にピントを合わせて撮影できるようになりました。α7R Vは認識感度やトラッキング維持特性など、被写体に合わせて多様に細かく設定を変えられます。さまざまな鳥や動物の種類に対応できるようになったので、より積極的に撮影を楽しめるようになりました。
―― 今回、撮影の際に使用されたレンズを作品と共に教えてください。 今回、主に使用したレンズはFE 24-70mm F2.8 GM IIです。標準ズームレンズでありながら単焦点レンズのようなシャープな解像感とぼけ味に魅了されています。最短撮影距離がワイド端21cmと非常に短く、小さな花なども撮影することができ、マクロ的な世界も楽しめるようになりました。質量も軽くなり、標準レンズながら万能なレンズで気に入っています。
こちらの作品は、シャープで繊細なさざ波の表情、反射した夕暮れの光をクリアに美しく捉えていて驚きました。ささやかなシーンほどカメラの描写力が試されるのですが、性能の実力を感じさせる作品です。
小指の爪ほどの小さな葉を主役にし、デザイン的に撮影しました。思い切って接近できるので、ストレスなく構図を追い込むことができます。
―― 以下3点の作品について、撮影時の状況や便利だったと感じる機能、作品へのこだわりなどをお聞かせください。
こちらは一本のモミジを撮影した作品ですが、ホワイトバランスを太陽光とオートで比べながら撮影しました。太陽光で撮影すると、画面全体がモミジのオレンジ色一色になります。オートで撮影すると、背景の森の日陰を画面に入れることにより、前ぼけの色と重なり全体がピンク色に染まりました。オートは日向と日陰の色を忠実に再現してくれるため、その特性を活かしつつ応用して撮影しています。遊び心を刺激し、美しく幻想的な色合いを楽しむことができました。
こちらの作品は、遠くにある水仙の花を狙ったのですが、前ぼけに手前の葉をあしらっています。地面すれすれの低い位置からの撮影ですが、4軸マルチアングルモニターを左手首にのせるように上に向け、快適に撮影ができました。前ぼけを大胆にあしらってもピント面の解像感が損なわれることがなく、シャープさと柔らかさが両立しているところが気に入っている作品です。
こちらの作品を撮影した日は桜の見物客がとても多く、三脚を立てるのがはばかられるような場所でした。手持ちでしたが、ブレることなく美しい桜の姿を撮影することができました。また、このように淡い桜は色の再現が難しく、春霞でぼんやりしがちですが、自然で優しいピンク色と爽やかな春の空気を演出できて嬉しく思います。
―― 最後になりますが、α7R Vをご使用いただいて気に入った点や感じたことなど、コメントいただけますと幸いです。 新世代の画像処理エンジンや新開発AIプロセッシングユニットの搭載により、臨場感あふれる描写力と、豊かで忠実な色再現性が素晴らしく虜になりました。また操作性や手ブレ補正機能も高まり、高解像と機動力を高い次元で両立している点が気に入っています。 画素数や質量など一見α7R IVと違いがわかりにくいですが、使えば使うほど進化を実感できるカメラです。αの中でピカイチの描写力は風景写真にとって心強いものですし、被写体と出会ったときの感動を今まで以上に写真や映像に残すことができるようになりました。撮影に出かけることがますます楽しくなるカメラだと思います。
記事で紹介された商品はこちら
ワンクリックアンケートにご協力ください
αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると最新記事の情報を随時お知らせします。