αで撮る風景写真
写真家 高橋真澄 氏
2023年2月23日から26日まで開催されたCP+2023。ソニーブースで行われたスペシャルセミナーの内容をα Universe記事用に再構成しました。虹やサンピラー、ダイヤモンドダスト撮影の第一人者として知られる高橋真澄さんが、αで撮影してきた写真と共に、風景写真の新しい切り口と可能性について語ります。
高橋 真澄/風景写真家 1959年北海道生まれ。1995年より、上富良野町在住。大学時代から北海道の山を中心に撮影を始める。北海道の美瑛・富良野を中心に広大で清涼な自然風景を独自の感性で撮りつづけ、これまでに出版した写真集は70冊以上。最近人気を集めている青い池(美瑛)を1997年に発見し、写真集『blue river』(青菁社刊)を出版。また、虹、サンピラー、ダイヤモンドダストの撮影の第一人者としても広く知られている。
新たな撮影の切り口を求めて。その為の道具の選択。
私にとって、常に新しく切り口を変えていくことは作家の命題であり、その切り口を変えるにあたって後押ししてくれる道具が最高のカメラだと認識しています。歴代のα7Rシリーズはだいぶそれを後押ししてくれました。
これはα7R IVで撮った写真です。ミラーレスになってこれまでとは全く違った切り口で風景写真を撮れるようになりました。暗いところを明るく。あるいは、明るいところを暗くして見えるって、それまでは考えられなかったんです。例えばこの彩雲のようにこれだけ明るく眩惑される景色であっても、暗くすれば見える。今まで気づきもしなかったものに気づくと。逆光の向こう側の絶景みたいなものですね。そういうのをだいぶα7R IVで撮影することが出来ました。 今回、α7R Vを使うにあたり、ホワイトバランスやシャッタースピード、枚数が撮れること、AFのすごさ、いいだとか、色々なところがバージョンアップしたのはお聞きしていたんですけど、風景写真家の私にとってどうか、あまりピンとこなかったんです。それで今回は-30℃近く、かつ夜という本当に過酷な条件で、毎日2時、3時に起きて撮影をしました。多分見たことのない景色をお見せできると思います。
誰も撮っていない、新しい夜の風景と出合う
最初に、夜の丘の景色です。夜行動物が見ているであろう丘の景色。街の明かりですよね。露光時間は10秒ぐらいかけています。目で見てもほんのりわかるかどうかの明るさ。当然寒いです。今までは赤外線リモコンを使って撮影していたんですけど、α7R VではBluetoothリモコンを使いました。これが機敏に動きました。 もう1枚続けてお見せします。サンピラーというものがあります。サンピラーは、空気中の水分が結晶化してパラパラ落ちたところに光が当たり光が伸びる現象です。それと同じようにライトをベースにして上がる現象をライトピラーと言います。先ほどの景色にライトピラーを立てたものです。
分かりますでしょうか、ライトピラー。実際はうっすら何かあるかなぐらいのレベルです。かっこいいでしょう。あまり見たことないと思います。皆さんが住んでいる日本でこういう風景が見られる。おそらく夜行動物が実際に見ているのがこういう景色であろうと思うんです。よくある星空の真っ暗な風景ではない。新しい切り口として、こういった夜の風景を撮れるというのはすごいですよね。
こちらのたおやかな丘の光は、街や信号などの明かりです。実際の風景は、素通りしてしまうような、目を凝らしてゆっくり見ないとわからない景色です。車で夜ライトをつけて見ていると全く見つけられない。車の光に眩惑されちゃいますから。誰も撮っていない風景。そういう世界の撮影が可能になっているという話です。
α7R Vはこれまでと別次元のカメラ
多くのひとが狙うのはこういう星空です。「晴れて星が出ている、じゃあ夜景を撮ろう」という。でも、これもよく見ていただくと赤いと言うか、オレンジの光、青い光がうっすらちょっと。ライトピラーも上がっています。
これは旭川の明かりです。オーロラは見たことがないですけれど、オーロラみたいに上がっていますよね。みんな街の明かりのライトピラーです。これは-24℃ぐらいの時でしょうか。天気の状況、寒さであったり、結晶があったり、曇りで雲に反射したり、色んな条件がありますから面白いです。
これは彩雲です。寒ければ寒いほど空気中の水分、雲が結晶化し、回析、プリズム現象になりやすいので、3月ぐらいにかけて彩雲は撮りやすいシーズンです。αは実絞りが見え、フレアも見えるので狙って撮れます。なおかつシャッターはBluetoothリモコンで触らずにばんばん切っていけます。
レンズの選択によって表現の幅は大きく変わる
これは新しいFE 70-200mm F2.8 GM OSS IIで撮った写真です。これぐらい端っこに太陽を入れてもフレアが本当に出づらくなりました。これだけ太陽があって、本当にすっきり写る。日輪の方は、太陽があって、日輪の導線上の四隅が七色になりやすいんで、それにぶつけると虹色が撮りやすい。その理屈がわかると全てに応用ができます。
これはα7R IVですが、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIで撮影した写真です。秋のころですね。薄くハーフもかけています。やっぱり本当にフレアが出づらいんで、光を真ん中に入れるんじゃなくて、 端っこにもってきたり色々な形でバリエーションが作れるレンズになっています。
去年、一昨年とずっと別の視点で追っているのは波です。これは黄金色の朝日が昇った時の波。波の場合はシャッタースピードをある程度速くします。この写真自体はそこまで速くないんですけど、速いシャッタースピード、なおかつ絞り込んでピンを全部にくるようにしたいんで、感度を上げての撮影が多くなっていきます。
彩氷ですね、最近色んな人が撮るようになったんですけど、こういった部類の彩氷はなかなか皆さん撮られていないと思います。これもF22まで絞り、川の波を速いシャッタースピードで止めてという感じです。PLフィルターで、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSの距離感で400mmぐらい。最短距離が短いレンズ、1m弱の距離感じゃないと無理です。マクロレンズでも難しい。FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIでも足りないですね。400mmぐらいでなおかつ最短距離が短いレンズじゃないと、角度も含めてこういう風には撮れないです。
別な彩氷ですね。逆光で撮っています。これも距離感がとても重要で、マクロでは撮れないです。ある程度の距離感と角度とで見ないとなかなか色が抽出できない。これも最高に絞っていて、F40ぐらいに絞ってもまだちょっと甘い感じ。こういうのは深度合成すればいいんでしょうけど。α7R Vだと深度補正というか、たくさんピントをずらして撮ることも可能ですから、それでちょっとできるかなと思っています。 α7R Xの売りであるオートフォーカスだとか、ピントが合うだとか、何連写できるかというのは、私はあまり使わない機能なので関係ないんじゃないかと考えていたんですが、全体的な動作がはっきり言って別物になりました。体感的には2000CCの車が4000CCになったみたいに安定度が違うというのが使ってみての実感です。α7R IVからα7R Xに代えた方かいいか?という問いに関しては、代えた方が圧倒的に歩留まりも上がって発見も良くなるかなと思います。
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