小さなボディで何でもこなす!ソニー「α6700」を徹底チェック
高画質/認識AF/動画性能をじっくり検証
ソニーからAPS-Cセンサー搭載のミラーレスカメラ「α6700」が登場した。前モデルとなる「α6600」の発売が2019年11月発売なので、約3年8カ月ぶりのニューモデルとなる。 「α6700」は歴代α6000シリーズのコンセプトを継承したコンパクトなボディに、フルサイズαシリーズで培った最新技術を取り込んだ意欲的なカメラ。筆者自身これまでAPS-Cセンサー搭載のカメラを好んで使ってきたが、「α6700」もAPS-Cモデルならではの魅力に溢れたカメラだと感じる。 さっそく本機の魅力をレポートしてみたいと思う。
進化が見られる操作系/ボディデザイン
「α6700」の最大の進化点は画像処理エンジンに「α7R V」と同じ「BIONZ XR」と 「AIプロセッシングユニット」を採用している点だ。α7R Vのリアルタイム認識AFの凄まじい性能については読者諸氏はよく理解していると思うが、そのリアルタイム認識AFがα6000シリーズに入った、という事実だけでも驚愕である。 イメージセンサーも新しくなり、有効約2600万画素の裏面照射型Exmor R CMOSセンサーを搭載した。意外にもソニーAPS-C機種では本機が初めての裏面照射型CMOSセンサー採用機種となる。
デザインはこれまでのα6000シリーズと同様フラットトップボディを踏襲しつつも、よく見ると実はゼロから作り込まれていることがわかる。
デザイン上で一番大きく感じる違いは、ボディ上面が斜めにカットされた形状に変更されたことで、全体的にシャープな印象が増していること。
ボディサイズは122×69×75.1mmで、数値上は「α6600」とほとんど変化がない。ただし、実際に見比べてみると変更点がかなりある。 まず背面モニターがバリアングル液晶モニターになった。「α6600」のチルト可動式液晶モニターとは使い勝手が異なるが、静止画・動画のハイブリッドモデルとしては一般的な仕様といえる。どちらかといえばチルト式が好きな筆者ではあるが、バリアングル式にも十分にメリットがあるので、結局は慣れの問題とは思う。 地味にうれしいのが、背面モニターのタッチ操作がメニュー画面にも対応した点。また、メニュー画面が縦並び配列になり、メニュー項目自体も刷新されているので見やすくわかりやすくなった。
バリアングルモニターの採用のためか、グリップを含まないボディの奥行きが増した。 「α6600」が約32.6mmで「α6700」が約37.1mmと、約4.5mmも厚くなっている(実測値)。 しかし、実際に持ってみると厚みが気になるようなことはなく、素直に良い握り心地になっている。グリップ形状の変更もあるが、それ以上にサムレストのサイズアップと、母指球(親指の付け根)があたるボディエッジの形状がかなり丸みを増していることが握りやすさに影響しているようだ。ボディ上面の斜めカットも親指の腹がフィットする。 筆者は比較的手は大きい方だが、握り心地はこのサイズ感のカメラにしてはかなり良い方だと感じた。小指まで握り込もうとするとやや窮屈さもあり、撮影中はよく小指はグリップから外れていることも多いが、それでも比較的疲れにくいグリップに仕上がっていると感じた。 なお、ボディの厚みは増したものの重量は「α6600」の503gに対して、「α6700」が493gと10g軽量化されている(バッテリー・メモリーカード込み)。
ボタンやダイヤル類も変更が見られる。使用上もっとも違いを感じるのはフロントダイヤルの追加だろう。これまでソニーは「α7C」を含むフラットトップボディタイプにフロントダイヤルを搭載してこなかったが、「α6700」でついに採用された。これによりセンターファインダータイプのα7シリーズと使い勝手がかなり近づいた印象だ。 さらに、マルチセレクターは非搭載だが、リアルタイム認識AF時には使わないし、それ以外のときには背面モニターのタッチAFも使えるしで、案外なくてもいけるかも、と感じたりもする。
新たに「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」を採用したのもトピックだろう。これまでモードダイヤル内に動画モードとS&Qモードが入っていたが、別ダイヤルで用意されたことで、より直感的でスムーズな静止画/動画の切り換えが可能になった。動画ではマニュアル露出をよく使うが、モードダイヤルが別になっているので露出制御も容易だ。S&Qはスロー&クイックモーションの略。
ファインダーは約236万ドットXGA OLEDと、「α6600」から解像度の変化はない。ただし輝度が約2倍となり見やすくなった。また、布地などをファインダーで見た際のモアレが 「α6600」では気になったが、「α6700」ではそれが軽減されているように感じた。
メモリーカードスロットはSDカード対応のシングルタイプ。「α6600」から変更はないが、カードスロットがバッテリーボックスから独立、ボディ左側面へ移動した。利便性の向上はもちろんだが、それ以上にカメラとしての高級度がまったく異なって感じられる。 SDカードはUHS-I/II対応。USBはType-C端子となりUSB Power Delivery(PD)が利用できる。
バッテリーはフルサイズのα7シリーズと同じ大容量の「NP-FZ100」。バッテリーひとつあたりの撮影可能枚数が「α6600」の約720枚から約550枚に減ってしまっている(ファインダー使用時)。新エンジンやAIプロセッシングユニットなど高負荷なシステムによるものだろうか。 とはいえ、実際の撮影ではその倍以上は撮れるので、平均的な静止画撮影ならバッテリー1~2個あれば1日十分に撮れるだろう。
シーン(1)……風景撮影の現場では?
新型の有効約2600万画素の裏面照射型Exmor R CMOSセンサーを採用した「α6700」。この超高画素時代、有効約2600万画素というと少なく聞こえてしまうこともあるかもしれないが、実用として考えたら十分といえる。 「α6700」の描写は無理のない解像感で扱いやすい。遠景を撮ったときには超高画素フルサイズ機のようなゾワッとするような解像力はとくに感じられないが、中景や近景では完全に必要十分なバシッとした解像力を感じられる。 また風景の現場では、高画素のフルサイズ機でパンフォーカス表現をする場合、ある程度絞って撮影する。その後、撮影画像をつい等倍で拡大してしまい、想像よりも背景がぼけていて悩む、なんてことがある。対してAPS-Cセンサーならそれほどシビアに被写界深度を考えなくても、パンフォーカス表現ができるのでとても扱いやすいのだ。
豊富な水量で流れ落ちる竜返しの滝を周りの木々や岩肌とともに描いてみた。被写体とそれなりに距離があったので深く考えずF8に設定したが、APS-Cセンサーの特有の適度な被写界深度のお陰でしっかりパンフォーカスに描くことができた。
APS-Cセンサーなのでぼけないかというと、そんなことはもちろんない。最新の 「FE 50mm F1.4 GM」は、非常にキレのあるピント面とやわらかいぼけ味が共存しているレンズだ。レンズサイズもフルサイズ用にしては抑え気味なので「α6700」ともいいバランスだった。
風景撮影におけるAPS-Cセンサーモデルの最大のメリットは、レンズを含めたシステム全体が小型軽量にできるという点だ。 今回、「α6700」とともに使った主なレンズが、よく写るのに約178gとありえない軽さの超広角ズームレンズ「E PZ 10-20mm F4 G」。幅広いズーム域と想像以上にきれいなぼけ表現もできる約325gのキットズームレンズ「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」。安心感のある堅牢な作りと満足の描写が特徴の超望遠ズームレンズ「E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS」が約625g。このズーム3本と「α6700」を足してもたったの約1,621gにしかならないのだ。 この軽さはフィールドカメラマンにとっては絶対的な正義でとにかく疲れにくい。もちろんザックにはまだ余裕があるので、それ以外にお気に入りの単焦点レンズなどを追加するのも良いだろう。 「ソニーα=フルサイズミラーレス」のイメージが強いが、APS-Cセンサー用のレンズも数多くラインアップされている。具体的にはズームレンズが11本、単焦点レンズが7本。そこに加えて、最近はかなり小型化が進められているフルサイズEマウントレンズも選べるのだから、撮影の楽しさも倍増するというものだ。
志賀草津道路にニッコウキスゲが咲いていた。雲を生んでいる眼下の山々や草津の街までを超広角ズームレンズ「E PZ 10-20mm F4 G」で描いた。 超広角ズームレンズなのに軽すぎるし小さすぎるし電動ズームだしということで、はじめはそれほど描写に期待していなかったが、完全に騙された(笑)。めちゃくちゃいい描写で「α6700」と最高のコンビだ。
未成熟のシオカラトンボ。美しくとろけるぼけの「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」を「α6700」に付けて撮影してみた。APS-Cセンサーでは焦点距離が1.5倍の150mm相当となるので、トンボをかなり大きく写すことができた。 「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」は最大撮影倍率が0.25倍(マクロ切り換えリング「0.57m-1.0m」時)なのでAPS-Cでは約0.38倍となり、ハーフマクロとはいかないまでもけっこう寄れるのが楽しい。
α6000シリーズとして初めて「フォーカスブラケット機能」も搭載。カメラが自動的にピントを一定間隔で移動しながら連続撮影してくれる機能で、その連続撮影データを元に、手前から奥までピントのあった深度合成画像が作成できる。パンフォーカス表現が求められるシーンなどで活用したい機能だ。
志賀高原の蓮池でヒツジグサを撮影した。フォーカスブラケット機能で15枚撮影し、PCで深度合成処理を行った。1枚の撮影では到底不可能なパンフォーカス表現を手軽に作り出せるのは面白いし、とても実用的だ。
シーン(2)……ネイチャーフォトの現場では?
「α6700」はα7R Vと同じ「BIONZ XR」と「AIプロセッシングユニット」を搭載しているため、認識できる被写体が従来の[人物]、[動物]に加えて、[鳥]、[昆虫]、[車/列車]、[飛行機]と大幅に増えた。風景写真を撮りつつも、たまに生き物写真、たまに鉄道写真、といったなんでも撮りたいという筆者のようなタイプにはとってもうれしい。
今回は昆虫認識モードで飛んでいるトンボを撮ってみたが、なかなかの認識精度だった。もちろん被写体としてはとても小さい部類なので、簡単に認識するわけではなく、ある程度の技術と慣れが必要とはなるが、クセが分かってくると思った以上にAFが食いついてくれた。
池の上をチョウトンボがぐるぐると飛び回っていた。被写体としては小さいし、背景がうるさい場合は大抵背景にピントが持っていかれる。しかし、トンボが飛んで来そうな空間を予測し、そこに近づいて来たタイミングでAFをオンにすると、リアルタイム認識AFが食いついてくれた。一度認識してしまえば被写体が小さくなりすぎたり、フレーミングから外れない限り、高い確率で認識し続けてくれた。
池の上をコシアキトンボが2匹飛んでいる様子をリアルタイム認識AFで撮影。木々の陰にある薄暗い池だったので、日中とはいえ高感度のISO12800で撮影したが、背景がスッキリしている分、上記のチョウトンボよりも認識精度が良く撮りやすかった。
シーン(3)……スポーツシーンでは?
昆虫などの被写体の認識は、それなりに難しさがある、と記載したが、人物撮影においてはそういった難しさは皆無だ。正直、フレーミング内におおむね人物が入っていたらピントを外すことのほうが難しい、というレベルで被写体を認識する。 今回は、最近野球を始めたばかりの甥っ子の練習姿を撮らせてもらった。「α6700」のリアルタイム認識AFは、人数が多く、さらに動き回っているようなシーンでも、一度認識した人物への追従性が非常に高く、新たに画面内に入ってきた人物へのAFの移り変わりなども少ないため、終始落ち着いて撮影することができた。 ただし、カメラに向かって全速力で走ってくるようなシーンで、縦位置の全身大写しなどで撮影しているとたまに認識AFが外れてぼけることがある。が、そのまましっかりフレーミングを維持して追い続ければすぐに被写体を再認識してAFが食いついてくれた。 高速連写は最高約11コマ/秒で十分な性能だ。画質をロスレス圧縮RAW+JPEGという一番重たいデータで撮影していたため、連続撮影可能枚数は18枚と少なめではあったが、今回の撮影で実際に18枚も連続で撮るようなことはない。次のシャッタータイミングまでのバッファ開放時間がかなり速く、断続的に連写を行う中でスローダウンやシャッターが切れなくなることは一度もなかった。
守備練習で球を追いかける甥っ子。画面内に人が何名かいるシーンでも一度認識した被写体への追従性がとてもいいのでフレーミングの自由度も高くなる。
なお、ファインダーフレームレートを120fpsにも設定してみると、たしかにファインダー内の動きはスムーズになり被写体を追いやすくなった。ただ、その代わりにファインダー解像度はけっこう下がる印象で、生身の人間が行うスポーツくらいのスピードでは、撮っているときの心地良さ的にノーマルの60fpsで十分に感じた。 筆者も野球場内に入らせてもらい3時間半ほど動き回って撮影したが、「α6700」はグリップもしっかりしているし、カメラ本体が軽いので疲労は最小限に収まった。 それにAPS-Cセンサーは、焦点距離が35mmフルサイズセンサーの1.5倍になるため、望遠域での撮影も得意だ。 例えば「E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS」は35mm判換算で最長約525mm相当の超望遠レンズとなる。500mmのレンズが片手で軽々と扱える合計重量約1.1kgというのは控えめに言って最高だ。スポーツに限らず、カメラマン自身が動き回って撮影するような場面では「α6700」のハンドリングの良さが光ってきそうだ。
人物へのリアルタイム認識AFはとにかく強力で、帽子やミットで顔が多少隠れていてもしっかり認識しつづけた。これだけ認識AFが強いと、フレーミングと表情に意識を集中できるので撮影がとても快適に感じた。
シーン(4)……動画性能も充実
「α6700」は静止画/動画切り替えダイヤルが独立して採用されたことからもわかる通り、動画性能にも力を入れている。 6Kオーバーサンプリングによる解像力と階調豊かな4K映像はそのままに、60p、120pのハイフレームレート記録に対応。リアルタイム認識AFは動画撮影においても動作するので[人物]、[動物]、[鳥]、[昆虫]、[車/列車]、[飛行機]といった被写体を自由度高く撮影することができる。
木漏れ日がきらきらと光る小川を4K 60pで撮影した。解像感は非常に高く、風に揺れる葉の動きや木漏れ日がフレームレート60fpsで滑らかに描き出された。
α6700,E 18-135mm F3.5-5.6 OSS
「オートフレーミング」も本機のユニークかつ実用的な機能だ。三脚などでカメラを固定した状態でも、リアルタイム認識AFが人物を検出すると4K映像から自動的に画角がクロップされて被写体を追従したフレーミングで記録してくれる機能だ。他にカメラマンがいない状態での料理系や作業系の動画、ライブ配信などで重宝しそうだ。
リアルタイム認識AFを人物に設定し、オートフレーミング機能で撮影した。画面内に人物が入ってくるとカメラが自動でクロップとフレーミングを追尾してくれる。クロップの範囲は「小」「中」「大」の3段階から、追従速度は5段階で選べる。この動画ではクロップは中に、追従速度は4に設定した。
α6700,FE 50mm F1.4 GM
なお、上位モデルに搭載されている動画撮影時の高精度な手ブレ補正機能「アクティブモード」も利用できる。手持ち撮影時のブレを大幅に低減してくれるので、旅行や日常で撮影するVlogなどで活用することだろう。
まとめ:画質/AF/動画がすべて強力。何でもできる"リトルα7R V"
「α6700」はトップクラスのAF性能を備えた優れた1台だ。フルサイズαの先進技術がほとんどそのまま体験できるリトルα7R Vのようだ。 またそれがAPS-C機らしい小さなボディに収まっているという点にとても好感が持てる。フラットトップボディの無駄のないデザインや、小さなボディからは意外なほどしっくりくるグリップなど、撮影を進めていくうちにどんどん自分に馴染んでくるのが実感としてあった。 パワフルなエンジンによるサクサクとした動作や、メニュー階層の刷新などもあり、使っていてストレスの少ないカメラに仕上がっている。 ミスしようがないほど精度の高い人物認識AFは、ファミリー層はもちろん、ポートレート、スポーツなどもでも活躍できるだろう。ネイチャーカメラマンも動物や野鳥、昆虫など多くの被写体で新たなチャレンジができそうだ。 どんな撮影であっても、基本的に機材が小さく軽量であるということは圧倒的メリットであり、APS-Cであることが強い存在価値である。そんな風に思わせてくれるのが「α6700」というカメラだ。
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