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鉄道写真・映像表現の自由度を高めてくれるα6700

鉄道写真家 山下大祐 氏

α Universe editorial team

山下大祐氏/鉄道写真家 1987年兵庫県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。鉄道を制作活動の舞台としてスチル、ムービー問わず作品作りに注力している。広告、鉄道誌、カメラ誌等で活動。αアカデミー講師、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。

より使いやすく、頼れる1台になったα6700

これからα6700を使ってみての感想をさまざま書いていきますが、先に一点強調したいことがあります。α6600から新たに追加された機能や操作系が多いのが当機種です。しかし気になる先代との重量比は-2%。なんと先代より軽くなっているのです!バッテリー型式は同じですよ。これが実機に触れる前にすでに驚いたポイントであり、この先読み進めるにあたっての重要な前提になります。 実際に手にしてハッとしたのは、前ダイヤルの存在です。かねてからAPS-Cセンサーのαには前ダイヤルの設定がなく、α7シリーズ等のフルサイズαとの併用において大きな不安になっていたのは否めませんでした。今回その不安が払拭されたというわけです。また、普段“親指AF”を使う私としては、AF-ONボタンが押しやすく大型化されたのも心地よかったです。ボディサイズはキュッとコンパクトな割に、操作感覚の距離がグッと近づいたように感じました。 バリアングル化されて活用幅の広がった液晶モニターや、静止画/動画/S&Q切り換えダイヤルも含めて、フルサイズαとの垣根の低さを感じる要素が多く、その上先代より軽くなっているのですから不思議です。 まずはフルサイズのαが得意とするような、風景広め列車小さめのカットに挑戦しました。明暗差の少ない暗い緑をどこまで立体的に見せてくれるかというところと、コントラストの低い遠景の描写が見どころです。木の一本一本の輪郭に注目してください。ラインライトがわずかに入ったような濃淡が描写され、木が重なることでの奥行き感が表現できています。また遠景についても、コントラストが低い中で、流れる雲がしっかり描き分けられています。列車にも忘れず注目してください。ピンク色の車体帯はドットが整列して表現されているのですが、そこまでみごとに解像して情報を伝えることができています。

α6700,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 132mm相当,F7.1,1/250秒,ISO100

次の2枚は草花の緑やピンクを前ぼけに配置して撮影した作品です。FEレンズの大きなぼけが功を奏して、ピントの合った部分を邪魔することなく撮ることができています。特にフルサイズ換算でレンズの望遠端以上の望遠画角を使うときは、APS-Cサイズを使う意味がより大きくなってきます。フルサイズでは届かない画角ですからね。よく誤解されていますが、ぼけはカメラのセンサーサイズに比例するのではなく、レンズの口径に比例して大きくなります。APS-Cセンサーのカメラでも、FEレンズを使用することで大きなぼけ描写を楽しむことはできるわけです。

α6700,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 900mm相当,F6.3,1/160秒,ISO400
α6700,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 402mm相当,F5.6,1/250秒,ISO1250

コンパクトな機動力を生かし、様々な角度で車体を捉える

もちろん流し撮りも試してみました。しかも相対的に動きが速くなる、近い距離での新幹線撮影です。1/30というシャッター速度では、連写の速さはあまり意味をなさず、非常に成功率の低い条件といえます。ところが、H5系という本数の少ない車両でバチッと成功させることができました。ファインダーに飛び込んできた新幹線を、運転席の編成番号一点で動きを合わせつつ、全体もフレーミング。ここまでするのに手に掛かるウェイトは少ないほうが動きやすく、軽量化されたα6700なら成功率が上がってもおかしくはありません。ファインダーフレームレートは120fpsに設定しておくのがおすすめです。

α6700,FE 24-70mm F2.8 GM II 94mm相当,F11,1/30秒,ISO100

次は走っている電車の窓から、紫陽花が咲く沿線風景を流し撮りしたものです。ここではより小型の E PZ 10-20mm F4 G を装着。両手のひらで包み込むように扱える極小システムで、手ブレを最小限にとどめました。もちろんカメラ内手ブレ補正機能も効いていないと難しい場面です。急曲線を通過するタイミングと紫陽花の見え具合に集中できることも二次的な効果といえるでしょう。

α6700,E PZ 10-20mm F4 G 15mm相当,F8,1/30秒,ISO800
α6700,E 20mm F2.8 30mm相当,F6.3,1/4000秒,ISO2000

いつものフルサイズαよりさらにコンパクトなボディですので、その長所を生かして普段使いはEレンズがおすすめです。とくに全長の短い E 20mm F2.8 は、通勤カバンに忍ばせておくのにもベストです。レンズ前面の入光部が小さいことは工夫次第でメリットになります。作例はフェンス越しの撮影でしたが、網目の隙間からフェンスを写さずに撮ることができました。機材を充実させたい本格的な撮影行には、G MasterのFEレンズシステムとともに持っていきます。ボディが小さいので、フルサイズシステムの機材群に混ぜ込むことも容易ですし、メイン機としてならボディの収納容量分、ほぼそのままバッグをサイズダウンできます。

最新機能搭載でより信頼できる1台に

α6700,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS + 1.4X Teleconverter 1260mm相当,F9,1/640秒,ISO400

AIプロセッシングユニットは、先行のα7R Vと同様「車・列車」を選択することで、列車の正面や側面を合焦対象として認識してくれます。単純にこちらに向かってくる列車は、遠方にいる時点でピントを合わすべき箇所が画面内に入っているため、カメラにとっても撮り手にとってもAF撮影はむずかしいことではありません。ではどういう時にその能力の最も感じることができるのでしょうか。ここで1枚目の写真を見てください。鉄道に詳しい方なら、これが豪華寝台客車の「カシオペア」であることがわかると思います。そう客車ということは、列車の最後部を撮ったものということです。想像できると思いますが、その場合、ピントを合わすべき列車の最後部はシャッタータイミングの直前まで見えません。フレームに収まったと思うよりわずかに早く、カメラが被写体を列車だと認識してくれたからこそAFを活用しやすくなるのです。同様の理由で、フォーカスエリアを列車と重なるように置いてAFする方法にくらべても、格段にカメラに任せられる部分が増えるでしょう。

α6700,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 688mm相当,F6.3,1/250秒,ISO1600

2枚目はトンネルから飛び出した列車を瞬時にAF撮影したものです。トンネル外から見ていると、列車は最初、ライトの灯りとシルエットしか見えないんですね。それが外の光が届くところまでくると色や表記がスーッと見え始めます。その時にはもうAF-ONしてシャッターを押しています。そのくらいの速写性を求めても、カメラがきっちりピントを合わせてくれました。

動画でもAIプロセッシングユニットが活躍します。リアルタイム認識AFを[入]にしていると、列車を認識した時点でAFが追従してくれます。モニター上をタッチする必要はありません。列車の正面部が画面外に外れたあとAF動作が煩雑にならないよう、AFトランジション速度は2〜3などの低めに設定していました。この動画のうち1/3ほどのカットは手持ちで撮っています。紫陽花に寄ったものや、田んぼのクローズアップがそうです。もちろん三脚を立てて撮ることもできるのですが、機動性や着眼力に時間と頭をつかえるように、あえて手持ちを優先させました。手ブレ補正の「アクティブモード」を用いれば、歩きながらでもガタガタしないなめらかな動画が撮影可能です。お気に入りのシーンは、陽炎が立つ緑の奥から列車が立ち上ってくる超望遠のカットですね。 また、α6700ではバッテリーはフルサイズ機でお馴染みのNP-FZ100が採用されているということで、その安心感は言うまでもありません。どのような機種を使っていてもこのバッテリーのスタミナに不満を感じたことはありませんが、やはり今回もそうでした。モニター右上に残量をパーセンテージで知らせてくれますが、容量の低下を前もって認知できるだけでなく、その表示デザインがほかのαとも統一されていていることも使いやすさに寄与しています。バッテリーのモデルライフが長いことは、ユーザーとしても嬉しいですし、実際に不満がこないスタミナを発揮できていることは、フィールドカメラシステムとして高く評価されるべきことですね。最近ひそかにNP-FZ100はカメラ界の名バッテリーだと感じています。

自由度が高まるα6700でこだわりを詰め込み撮影を楽しむ

α6700,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 259mm相当,F4,1/4000秒,ISO1600
α6700,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 238mm相当,F4,1/4000秒,ISO2000

今回、基本としたクリエイティブルックは[VV]でした。鉄道写真には風景要素を含むことが多く、コントラストや彩度は高めに見せるのが一般的に良いと思います。そのほか車両の光沢感やカラーリングの印象を優先するような場合にも向いています。 [VV] のプリセットからコントラスト、シャドウをそれぞれ+6、-6程度に調整し、アンダー目の露出で撮影したのがこの2枚。次期山形新幹線のE8系新幹線試験列車と、現在同線で活躍するE3系新幹線です。2枚は同じ場所で、トンネルの暗部を背景に、高速で飛び出してくる列車のその瞬間を写し止めています。高速列車なのに物撮りしたような精悍さを表現できるのがこのルックの面白いところ。黒をちゃんと落とすことがポイントです。

α6700,FE 70-200mm F2.8 GM OSS II 126mm相当,F18,1/8秒,ISO100

ちょっと荒削りな写真ですが気に入っている作品です。列車の乗客である少女らしきシルエットがポイントです。なにやら手遊びをしながら外を見ている様子で、駅の紫陽花が目に入ってきっと「わぁ」となったことでしょう。じつは直前までこの列車を動画で撮影していました。駅に停まったところで写真モードに切り換え、発車していく列車は流し撮りをしようというねらいでした。短い時間で動画から写真にスイッチする欲張りっぷりでしたが、それも先頭車両を撮ったらたいていそこでやめてしまうでしょう。私はさらにもう一声欲張って2両目以降の車両もとりあえず撮りました。カメラを右へ左へ何度も往復させ、そうして生まれたのがこの作品というわけです。 AIプロセッシングユニットとリアルタイム認識AFを搭載し、バリアングル液晶モニターへとバージョンアップを果たしたα6700。重量が前モデルより軽くなるという驚きとともにデビューしました。その恩恵は大きく、首から下げていても楽に移動でき、手が届くところならどこからでもカメラを保持し構えることができます。撮影自由度の高さ、それはα6700の大きな武器になるでしょう。鉄道撮影には安全上、ルールや制約が様々ありますが、ならば少なくともカメラにできることは多い方がいいでしょう。今まで撮れなかった・撮らなかったアングルに挑戦できるかもしれません。

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