コンパクトなα6700で自然な表情を写していく
写真家 萩原和幸 氏
萩原和幸/写真家 静岡生まれ。横浜在住。写真家。 静岡大学人文学部法学科、及び東京工芸大学写真技術科卒業。 写真家故・今井友一氏に師事。 主に広告写真にてファッション撮影を学ぶ。独立後、広告・雑誌にてポートレート撮影を中心に活動。ライフワークとして故郷静岡のスナップ撮影を行い、行政にも作品を提供。昨今はナチュラル系ポートレートムービーにも注力、積極的に発表。 人物撮影やスナップ撮影のワークショップ講師や芸術祭・コンテスト審査員も数多くつとめる。個展多数。 −写真集− 「記憶 Memorial Films(モデル:藤江れいな)」(玄光社) 「プロが現場で疎かにしないポートレート撮影の三原則」(秀和システム) 「ポートレート撮影プロセスレシピ」(玄光社) 公益社団法人 日本写真家協会会員 静岡デザイン専門学校講師
サイズもスペックもとにかく「使いやすい」
α6400ユーザーなので慣れたサイズと感じながらも、手にフィットしたグリップ感からすでに撮影意欲を掻き立ててくれ、でもこのサイズからくるコンパクトさが担保する機動性の高さは、何よりカメラを持ち出したくなる気持ちにつながりました。動画と静止画のどちらも撮影する私にとって、動きやすくなるコンパクトさは大切。[静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル]の搭載も、ひと目見てから撮影時の使いやすさを直感しました。持ち出してこそ撮影できる…その点では機材が大きくなりがちなフルサイズ機よりもライトで、撮影機会がグッと増える予感がするカメラです。 このカットは約100年前に建てられた建物にて撮影したものですが、歴史を感じさせる外観、特に風合いを失うことなく細やかに描写された木目、古いガラスの質感の描写はフルサイズセンサーのそれと言われてもわからないほど。また外観のツタをはじめとする緑の色合いとモデルの人肌の色再現性も、とても自然です。 このカットはハイライトとシャドウが複雑に深く混ざり合っているのですが、とてもナチュラルで最適な明るさ表現がされ、撮影そのものが快適でした。
このカットはモデルさんと共に走りながら撮影しました。動きの中に見える素の表情がほしかったので、並走して撮り続けました。α6700はコンパクトなので、走りながらの撮影も楽でした。並走しているとはいえ、当然ですがモデルさんとの距離は変りますし、そもそも撮影者・被写体の双方が動きっ放しなわけです。ですが、そのような撮影環境でも瞳AFでしっかりと瞳を捉え続けてくれたので、私はバリアングル液晶モニターでモデルの姿を見ながら安心して走り続けシャッターを切り続けられました。
今回の撮影はスナップポートレートを主眼に撮影したので、焦点距離の長さが欲しい場面にはなかなか出会わなかったのですが、撮影で標準域をカバーするために多用したFE 35mm F1.4 GMは、モデルさんとの距離が絶妙で、この組み合わせはすごく撮影しやすかったです。レンズそのものもコンパクトなので、モデルさんに威圧感を与えることなくススッと距離を詰められるところも良い。システムの小型化はモデルさんとの空気を良くする…今回はそれを改めて感じました。最短撮影距離も短く(AF時0.27m)、フルサイズ機ではなかなか味わえない標準域での寄りカットも可能でした。このカットもそんな柔らかな雰囲気の中で撮影しました。
機動力を生かした表現に挑戦
フルサイズ機に比べ圧倒的にコンパクトなので、その分私の動きも機敏になります。こちらのカットは、水の煌めきと、まるで水面を歩いているかのような画を目指し、水面ギリギリでカメラを構えています。α6700はバリアングル液晶モニターですが、とはいえこれだけ低いと自分の身も低くなります。ですが、そうした時でもα6700は軽量ですから、もっと自由に…とポジションを取ることが出来ます。ポートレートにおいて、カメラポジションはモデルさんのスタイルに関わるだけでなく、写真に現れる双方の関係性なども表現につなげられる、大事な要素です。またモデルさんの動きに合わせてこちらも動くことも多いです。そうした時でも機動性が高いほど、状況に合わせた対応能力は上がります。その点ではα6700のアドバンテージはとても高かったです。
こちらはモデルさんがゼリーを頬張るシーンを撮影しましたが、一瞬の表情を捉えることができました。即座に構え、シャッターを切る…これに応えてくれる機動性があってこそ撮れたカットです。
実はこのカット、見た目以上に建物内の入り込んだ暗い場所で撮影したのですが、AFは全く迷いなくモデルを追い続けてくれました。ここではISO100でシャッターを切ったのでノイズそのものを気にする必要はありませんでしたが、別シーンでISO感度を2000や3000に上げる状況に。ですが、いわゆるザラつき云々もそうですがポートレートにおける腹の色再現性や、肌の質感表現に対しては好印象でした。高感度でも安心して撮影できると確信できました。
私自身の使い方では、バッテリーの持ちは全く問題ありませんでした。自身のα6400とバッテリーが違うこともありますが、動画も含めた撮影を目一杯行ったのですが、日中は一度バッテリーを交換しただけで、それもバッテリーを使い切ったわけではなく、安心で交換しただけですから、実感として持ちは良いと思いました。ちなみに撮影のほとんどはバリアングル液晶モニターを見ながらで行っています。 動画においては[静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル]の搭載が本当に嬉しい。動画の撮影は普段α7 IVで行っていますが、同様に動画/静止画をシームレスに切り換えられるのはストレスフリーです。それと動画時の手ブレ補正「アクティブモード」の効果は絶大。今回の動画はいっさいジンバルを使っておりませんが、これだけ補正してくれるのなら、手持ちでガンガン行ける!という印象です。これはすごく大事なことで、手軽に、即座に動画を撮影できる・しかも綺麗に、となれば動画撮影のハードルが下がります。 その分外へと持っていきやすくなるわけで、仕事でもプライベートでも出番でいっぱいになるな、と思いました。
クリエイティブルックやレンズ交換でポートレート撮影を楽しむ
こちらはクリエイティブルック[SH]を使って撮影しました。撮影場所が学校の廊下、イメージとしてはかつて通った母校を思い出しながら、淡いあの頃の日々と重ね合わせている…このような感じでしたので、淡く透明感が得られるSHを選択しました。思い通りの眩しさ感じるクリアな雰囲気が出せたと思います。
もう一枚は[VV2]を選択しました。明るく色鮮やかな発色となるVV2、コントラストも高くなることを承知で、このシーンで使ってみました。ただでさえサイド光でコントラストがつきやすい状況ですが、深く飛び込んでくるような、パンチの効いたカットにフックとしての効果を期待して撮影しました。ポートレートではなかなか選びにくい設定ですが、いい仕上がりになりました。
今回の撮影はポートレートということもあり、静止画は単焦点レンズを中心に使用しました。先に述べたFE 35mm F1.4 GMとFE 20mm F1.8 Gとの組み合わせが自分としてはしっくりきました。このカットは FE 35mm F1.4 GMで撮影。α6700ですとフルサイズ換算で約52.5mmの標準レンズとなります。派手さはありませんが、プレーンな画角でモデルさんとの距離感をストレートに表現できる大好きな画角です。α6700の素早く強力な瞳AFの恩恵を受け、モデルさんと気持ちよく対峙できました。
こちらはFE 20mm F1.8 Gで撮影。α6700に装着することで約30mmに。絶妙な、でも新鮮な広角域で、気がつけばチョイスした場面が多かったです。なだらかな広がりに中で、時に寄りのカット、時に引きのカットと、一連の撮影の中で動きをつけるカットを撮影するのにピッタリでした。
AF精度の高さには目を見張るものがありました。特に瞳AFは認識精度・スピード共に撮影の負担を軽減してくれ、モデルさんの表情や仕草などに安心して集中できました。このカットはモデルさんに歩いてもらいつつも時折振り返ってもらって撮影しましたが、背を向けた状態でもモデルさんを捉え続け、こちらを向くと瞬時に瞳を認識してくれました。正確に認識し続ける・追随し続ける様子は、AFの動画作例で十分お分かりかと思います。α7R Vに引けをとらない正確さという実感です。今回は顔の登録まで行っていませんが、人が大勢いるシーンなどで活躍しそう。ポートレート撮影において、AFの高精度な被写体認識は撮影の大きなサポート。常に瞳にジャスピンなカットが並ぶことも嬉しいですが、正確なAFが担保されることでピント合わせはα6700に任せ、構図や露出・モデルの表情などなど、ピント以外の項目に意識を回すことができるのは、ポートレート撮影を行う全員が抱くありがたさではないでしょうか。
撮影意欲を掻き立ててくれる1台
こちらは今回の撮影で特に気に入っている1枚です。実はとても足元が不安定で風も強い状況での撮影だったのですが、シャッターを切った時、緑に覆われながらも岩肌が露出する自然、そこに沿うように佇む無垢な彼女、通り過ぎる風が乱れる髪からうかがえ、その場の空気感を捉えた!と感じました。不安定な場所でも持ち出せるコンパクトなα6700の機動性の高さが生き、フルサイズ機に引けをとらない繊細な描写でこのカットを撮影することができました。緑の色再現性はもちろん、肌の忠実性も高く、その場にいるような立体的なカットとして表現できました。
バリアングル液晶モニター・AF性能の高さ、切り換えダイヤルによるシームレスな動画への移行、これらで既に旅やお出かけカメラとしてすぐに持ち出したくなる。フルサイズ機では大きさが気になる場面で、ポートレートも動画もどちらも撮りたい時に最適なカメラだと思います。とにかく持ち出したくなる・撮りたくなる…こんな感覚は久しぶりです。直感的にそうさせる超万能カメラだと思います。このカメラにはG MasterやGレンズなどの高い描写力のレンズで撮影したい。高い解像性能を引っ張り出して使ってこそ、α6700を使い切ることになるでしょう。
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