街から郊外まで自由自在。気ままなスナップシーンに応えてくれるFE 16-35mm F2.8 GM II
写真家 桃井一至 氏
桃井一至/写真家 1968年、京都生まれ。 写真家アシスタントを経て、フリーランス。 撮影をはじめ、カメラ関係書籍の執筆やWebレポート、カメラ関連イベントなどを多数。 主な撮影ジャンルは人物・海外風景など。 写真展「VORIES TIME」 公益社団法人日本写真家協会会員(JPS)。 Youtube 「gizmomofreaks」 https://www.youtube.com/@Gizmomofreaks
16-35mmの焦点距離は広角ズームとして、カメラファンのあいだで長年親しまれてきた定番レンズ。その中でも、F2.8の開放F値とG Masterの称号が示すとおり、最大級の明るさと最高峰の描写性能を目指して作り込まれたFE 16-35mm F2.8 GM IIは、ソニーの威信が掛かったレンズだ。 このクラスの人気が高いのは、16-35mm、24-70mm、70-200mmの3本を「F2.8」で揃えれば、超広角から望遠まで常用域の焦点距離がスムーズに繋がり、露出設定にもゆとりが生まれるメリットがあるからだ。 一方で、大口径ズームレンズは本体ボリュームや最短撮影距離がウィークポイントとされてきた。多くの光を取り込まねばならないレンズはどうしても大きく重くなってしまいがち。また最短撮影距離の短縮も難易度が高く、停滞気味であると感じてきた。このようにウィークポイントを強いられながら使う側面を持っていたのも事実で、筆者自身も車移動の時や、とびきりの描写性能が必要なとき、暗所撮影時に持ち出す特別な存在だった。 そんなウィークポイントに一石を投じ、第二世代では大幅に進化。時代に合わせたアップデートを施して生まれ変わったのが、FE 16-35mm F2.8 GM IIだ。 全長約111.5mm、質量約547g、従来モデル(FE 16-35mm F2.8 GM)より約20パーセントもの軽量化に成功。軽量化は体力的に助かる面もあるが、近年特に厳しくなった飛行機の機内持ち込みの重量制限には大きい。 オートフォーカスも近年では動画需要の高まりに合わせて、滑らかさや静音性、画角変動なども視野に入れたものになり、昔のようにスピード重視だけではなくなっている印象を受ける。たとえばAF作動音にしても、耳をレンズにつけてようやくかすかに聞こえる程度。動画撮影での恩恵は特に大きいが、静止画でも無音のまま、被写体が浮かび上がってくるのは心地いい。 ズーム操作にしてもトルク変動はなく、至ってスムーズ。任意で機能を割り当てられるフォーカスホールドボタンなど、高級レンズらしいもてなしで快適だ。ほかにも操作部材の質感や触感、レンズフードやレンズ脱着時のフィーリングに至るまで、綿密に手が入っているのも印象的だ。 キットレンズのような製品からすれば、小型軽量と呼ぶのは憚れるが、このように細部まで入念に作り込まれているのもあって、サイズを感じさせないボリュームに仕上がっている。ちょっと背伸びをする感覚で、このレンズに秘められた極上のポテンシャルを試してみてはいかがだろう。画質などの詳細については、以下のコメントを参考にご覧頂ければ幸いだ。
街を散策中に入ったカフェ。静かな店内では先代(FE 16-35mm F2.8 GM)よりもさらに静音化されたと感じたオートフォーカスが、ほぼ無音のまま、スッとピントを合わせてくれる。くっきり浮き立つシャープなグラス模様を中心に、テーブル手前の前ぼけから背景まで、柔らかなぼけの変化が、ゆったり流れる時間を表すようだ。
滝は広角で近づくほどダイナミックな表情を見せてくれる。当然、水の飛沫が豪快に飛んでくるが、防塵防滴に配慮した構造に加えて、最前面レンズには汚れを落としやすいフッ素コーティングを塗布。時折拭う程度で、安心して撮影に集中できる。
夏の陽も傾きはじめ、右上には月も見える。夕暮れはうっかりすると手ブレの発生しやすい時間帯。ここではISOオートを選択。露出モードは絞り優先なので、シャッタースピードとISO感度はカメラまかせだ。本レンズに手ブレ補正は搭載されていないが、わずかなブレもしっかりボディ内手ブレ補正が吸収してくれる。フルサイズカメラの持つ豊かな階調表現が、雲や山なみのグラデーションを再現してくれた。
遠近による引き離し効果の力強さは広角レンズの醍醐味。水平や垂直をあわせた部屋やビルなど、直線基調の対象では、一般的に周辺部の歪みが見られるが、本レンズではほとんど感じない。カメラ内の画像処理で歪み補正を行っているのもあるが、メニューよりレンズ補正(歪曲収差補正)を「切」にしても、その違いは広角側、望遠側ともにわずかでしかなく、素性の良さが伺い知れる。
新旧入り交じった街の表情を低めのカメラ位置から狙う。拡大再生すれば、街路樹の葉っぱや壁面タイルの一枚、一枚の細部まで目にすることができる。この圧倒的な被写体の情報量をくまなく画像センサーまで届けるのがレンズの役割。解像感が心地よい。
冒頭に書いたように、接写能力が大口径レンズのネックだと感じてきたが、本レンズではポストカードの半分程度の面積まで、画面いっぱいに撮影可能。(最短撮影距離0.22m、最大撮影倍率0.32倍)ぼけ形状も周辺近くまで丸く、理想的な状態をキープしているのがわかる。
35mmまでの焦点距離だが、メニューより「APS-C S35撮影」に切り替えれば、35mm判換算で52.5mm相当の標準域にシフト。守備範囲が広がり、さらに使いやすくなることうけあいだ。
ワンクリックアンケートにご協力ください
αUniverseの公式Facebookページに「いいね!」をすると最新記事の情報を随時お知らせします。