圧倒的進化『FE 16-35mm F2.8 GM II』は確かな撮影を約束する
写真家 福田健太郎 氏
――FE 16-35mm F2.8 GMの後継モデルとして登場したFE 16-35mm F2.8 GM IIですが、先代モデルもお使いいただいていた中、実際の撮影においてどのような変化がありましたか? 先代モデルの FE 16-35mm F2.8 GMとは明らかに大きさが違いますね。ひと回りほど小さくなった感覚で、大口径F2.8の広角ズームであるにもかかわらず、質量は約20%も減り、約547gしかありません。さらなる小型軽量化の恩恵を受けて、手持ち撮影が楽ですし、よりアクティブに動き回ることができます。
――これまで多くのG Masterをお使いいただいてきた福田さんにとって、 FE 16-35mm F2.8 GM IIの描写性能は如何でしたか? 描写性能にこだわった、最高峰レンズの「G Master」ですから、期待通り、すこぶる気持ちのよい写真、映像を生み出してくれました。自然のフィールドでいろいろ撮影してきましたので、進化を遂げたポイントを写真と合わせて紹介して行きたいと思います。まず始めに、自然風景の撮影では、細かなものが集まって形成されている風景にレンズを向けることが多くなり、それが下の写真です。
白い花を咲かせるソバ畑の風景で、太陽を背にした順光のライティングで撮影しています。被写体本来の色を出しやすい特徴があり、青空と白い雲を組み合わせて、爽やかな彩りを見事に再現してくれました。ここでは解放感に溢れるソバ畑の広がりを伝えたく、ワイド端の16mmを選択。ビシッと、画面全体にピントを合わせるため、F11まで絞り込みました。画面周辺部まで小さな白い花をきっちりと解像し、小さく写る奥の山腹のディテールまで克明に描写しています。
次に、森の中を撮影したこの写真は、太陽の強い光が差し込む前、柔らかな弱い光に包まれている状況です。同じ濃緑色の苔や小さな葉が画面のほとんどを占めていますが、わずかに現れている陰影をしっかりと描き分け、立体感が出ているのが分かりますよね。しっとりと濡れた繊細な森の質感を届け、解像性能の高さがリアルな描写を生み、静かな森の気配を誘い出しているのです。
足元に広がるシダ植物を地面スレスレから見上げると、放射状に広がる葉っぱの動きに勢いが出ました。焦点距離16mmの超広角ならではのダイナミックな表現で、葉っぱの間から強烈な太陽の光を取り入れていますが、ゴースト、フレアは抑えられていて、コントラストが高くクリアな描写で輝きを放っています。強力な手ブレ補正を搭載するα7R Vとの組み合わせも相まって、アクティブに自由度の高い撮影が行えるのはいいですね。
――今回、FE 16-35mm F2.8 GM IIでは近接撮影能力も向上しましたが、福田さんの表現に影響はありましたか? ズーム全域で最短撮影距離が0.22mと、被写体に寄れる近接撮影性能を誇るのは本レンズの魅力です。数値だけ聞いても、ちょっと分かりにくいかもしれませんね。広角域ならではの表現を一段と楽しむことができる大切なポイントで、実はとっても嬉しい進化なんです。
ヒマワリの花に近寄り、広角レンズの特性である「遠近感の強調」を活用した写真です。ピントを合わせた手前の花を大きく写し、存在感を強めると同時に、奥の風景は小さく、広範囲を写すことにより、広がり感も誘うことができます。ヒマワリの中心は筒状花と呼ばれ、小さな花の集合体なんです。その細かな部分を極めてシャープに写し出していて、オリジナルの画像データを拡大すると凄いですよ(笑)。ひとつひとつ、おしべ、めしべはもちろん、花粉や細かな毛まで極めてシャープに描き分けられています。開放であるF2.8で撮影すると、本当に一点しかピントが合いません。大きく滑らかにぼかしたいときは良いですが、ここでは花の細密描写を考えて、絞りF11で撮影しています。でも、奥のヒマワリ畑はいい感じのぼけ描写となっていますよね。
秋の七草である萩の花に近寄り、絞り開放F2.8で撮影した写真です。涼しげな秋の風を感じるぼけ描写で、気に入っている写真です。青空を背景に選び、日陰にある花にピントを合わせ、露出は意図的に明るく仕上がるように決めました。ご覧のように、広角ズームと言えども、近接撮影ではピントが合うのはごく一点です。焦点距離の長いレンズとは異なるアプローチでぼけ描写を楽しむことができ、花などの小さな被写体と周囲の環境をなんとなく知らせるとか、 FE 16-35mm F2.8 GM IIならではのぼけ描写を積極的に作画に取り入れたいなと思いました。
――今回は全てFE 16-35mm F2.8 GM IIとα7R Vで撮影されていますが、AF性能は如何でしたか? 撮影中、カメラのファインダーを覗いている私の耳には、AF駆動の音はまったく聞こえなく、素早く、正確にピント合わせを行ってくれました。FE 16-35mm F2.8 GM IIとα7R V、両方の性能の高さから、間違いなく撮れる領域は広がり、ピント合わせはほぼカメラに任せ、撮影者はフレーミングと被写体により集中することができます。まさにカメラの進化を実感できるところですね。
α7R Vに搭載されているリアルタイム認識AFを用いての撮影で、認識対象を「昆虫」に設定しています。この日は強い風が吹き続け、草花は揺れ動いている状況でした。風景撮影では通常、フォーカスモードはシングルAF(AF-S)を使いますが、チョウの動きに合わせるため、コンティニアスAF(AF-C)に切り替えています。先にお話ししましたとおり、近接撮影で絞り開放F2.8ではピントはすごく浅いわけですが、気持ち良いほどシャープにチョウの目にピントが合っています。AFが高速化されたFE 16-35mm F2.8 GM IIと、α7R Vの被写体認識、AF追従性能の高さによる賜物です。
――FE 16-35mm F2.8 GM IIの使い勝手は如何でしたか? レンズ前にPLフィルターやNDフィルターを装着することができますし、焦点距離16mmから35mmの間を自由に可変できる、王道と呼べる広角ズームはやはり扱いやすく、ズームリング、ピントリングの操作はすこぶる良好です。それから、新たに絞りリングもついていますので、直感的に絞りの操作を行えるのは良いと感じました。
焦点距離16mmは広範囲を写し出すことができ、星空の撮影にはこの画角が欠かせません。そして、大口径F2.8のズームレンズですから安心。なぜ明るいレンズを使うのか?と問われたら、このような低照度の場面でも快適に撮影することが叶い、高画質な写真を生み出せる点が大きな理由です。実際、肉眼で見えている感じはもっとぼんやりとしていて、暗い夜の世界だったんです。
夕焼け空を写したこの一枚。車を走らせていると、見る見るうちに空が赤く焼けました。駐車場に車を止め、カメラを取り出し撮影したのです。夕焼けの色が弱くなっているのが分かっていましたから、三脚の脚を伸ばし、カメラをセットする余裕はなく、軽快な手持ち撮影で臨みましたがまったく問題はなく、カメラぶれのない、安定した写真が撮れました。
――FE 16-35mm F2.8 GM IIの総評をお願いいたします 様々な角度から見ても、自然風景の撮影では持って行きたい、はずすことのできないレンズです。その理由はこれまで触れたとおり、小型軽量で抜群の機動力、圧倒的な描写力、操作性の高さ、静粛で高速・高精度なAFなど、すべてが高い次元にあり、どんなシーンでも対応できる安心感が違います。
最後に、朝の沼地で撮影した風景を見てください。水蒸気が沸き上がっていて、逆光による光のシャワーの出方や風景が刻々と移り変わり、瞬間、瞬間でいい場面が変わって行くのです。焦点距離35mmで印象的な光のシャワーを目立たせましたが、ゴースト、フレアは抑えられていて、ヌケの良いクリアな描写でドラマチックな風景を捉えてくれました。
同じ場面で、少し移動すると白い花にクモの糸が朝露をまとい、まるで宝石のように輝いている姿を発見しました。ズームリングを回して焦点距離16mm、近接撮影したのがこの写真です。遠近感を強調し、画面奥には光のシャワーが降り注ぐ風景を組み合わせ、絞りF2.8。美しいぼけ描写で滑らかに再現し、清々しい水辺の風景を表現できました。画角を変えてスピーディーに撮影が行える、ズームレンズの利便性が活きたシーンです。 G Masterの称号を与えられた大口径F2.8ズームレンズは、標準、望遠が第二世代で飛躍的な進化を遂げました。そして、この新しい広角ズームの登場です。一期一会の出合いの中で、瞬間の美を見極めて撮影するとき、FE 16-35mm F2.8 GM IIは確かな撮影を約束してくれる。そう確信しました。
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