ソニーが産学連携プロジェクトの一環で協力した「バンタン卒業修了展2024」リポート
クリエイティブ分野に特化して人材の育成を行っている専門スクール「バンタン」。今回、ソニーが産業連携プロジェクトとして協力したのは、「バンタンクリエイターアカデミー」の映像制作専攻の学生たちによる卒業制作です。ここでは、2024年2月12日(月・祝)に東京ビッグサイトで行われた「バンタン卒業修了展2024」に向けて、学生たちにどのようなサポートをしたのかをご紹介します。
ソニーの機材を使用して、卒業動画制作を実施
ソニーがコラボレーションした映像制作専攻は、動画クリエイターを目指した学生が集まる学科。卒業制作の課題は、「ソニーの最新デジタル一眼カメラや、スマートフォン Xperiaなどを使用し、機材を最大限に生かしたVlog風の映像作品の制作とプレゼンテーション」です。ソニーは東京校・大阪校、約80名の学生に向けて、卒業制作で使用するための「Cinema Line FX30」「α7 IV」「VLOGCAM ZV-E1」などのカメラボディやレンズなど、機材貸し出しを実施。さらに制作した動画に対するフィードバック講座を行い、学内選考や最終審査にも協力しました。
卒業修了展では学内選考を突破した8組それぞれが、制作したVlog風動画をプレゼンテーションし、作品を上映。その中から最優秀賞を決定します。審査員は、ソニーの機材を使って数多くの作品を制作している映像クリエイターのUssiy氏とDIN氏、さらにソニーマーケティング株式会社 デジタルイメージングビジネス部 統括部長 岡祐介の3名です。 審査項目には企画や映像の完成度だけでなく、独創性や社会に対する価値として収益性や共感性なども含まれ、各学生のプレゼンテーションを、クリエイティブ、ビジネス、コミュニケーションの3つの項目で評価します。
卒業修了展では、ノミネートされた8組が、最優秀賞を目指して、プレゼンテーションと作品上映を実施。どの組も熱の入ったプレゼンで、それぞれに創意工夫が見られます。作品は、個性が光るものが多く、スクールで学んできたことの集大成だと感じられる作品ばかりでした。
8組すべての発表が終わり、審査が終わると最優秀作品の発表と表彰式が行われました。グランプリに輝いたのは、「白昼夢」という作品を制作した3年制映像制作専攻3年次の福田圭佑さん、根岸魁斗さん、照沼サラさん、山田真友紀さんの4人組。「働き盛りで“忙しい”が当たり前の若者を主人公にして『休息』の大切さを感じてもらえたら、と思い制作しました。ワークフローは仕事として成り立つようにクライアントを意識して構築しています」と、作品のテーマや制作過程のこだわりを伝えていました。
壇上では賞状が授与され、撮影を担当した福田さんは「率直にうれしいです。副賞でいただいたソニーポイントを使って新しい機材を買いたいと思います」と満面の笑顔。 その後、審査員を代表してソニーマーケティングの岡が、「私どもソニーは、『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。』というパーパスを掲げていますが、みなさんのクリエイティビティが私たちのテクノロジーと融合して、また新しい感動が生み出されたと思っております。卒業されても世界に羽ばたいてクリエイターとして成長していただきたいと思いますし、皆さんの夢と探究心を私たちもテクノロジーの観点で応援させていただければと思っております」とコメント。
表彰式後は、審査員とコンペに参加した8組が、各作品のパネルが飾られたソニーブースで交流。プロのクリエイターと話し、アドバイスをもらう有意義な時間を過ごし、卒業修了展は幕を閉じました。
あこがれのCinema Line FX30で、効果的な表現を実現できた
卒業修了展終了後、最優秀賞を獲得した3年制映像制作専攻3年次の福田圭佑さん、根岸魁斗さん、照沼サラさん、山田真友紀さんに話を聞きました。
――改めて、最優秀賞を受賞した感想を聞かせてください。 学生生活3年間の集大成であり、この作品に費やしてきた努力が報われた感じがして本当にうれしいです。昨年10月から制作を始めて、撮影の日を決めて、逆算して企画をして、という形で取り組んでいきました。就職も間近でインターンに行っているメンバーもいたので、4人のスケジュールを合わせるがとても難しく、企画も編集も、今日のプレゼンも、すべてがギリギリの状態で。でも、4人みんなのこだわりを詰め込むことができましたし、複数人で制作する、という経験ができたのはとても良かったと思います。
――今回の作品は「Cinema Line FX30」で撮影していますが、この機材を選んだ理由は? 「α7 III」を持っているメンバーがいたので、より映像制作に特化したCinema Lineの「FX30」を使ってみたいと思いました。とくに使いたかった機能は120フレームでのスローモーション撮影。「α7 III」でも、今回貸し出していた「α7 IV」でも60フレームまでしか撮れませんが、FX30なら120フレームで撮影できる。スロー映像を印象的に見せるために「FX30」を選んだ、という感じです。
――作品の中でこだわった部分はありますか? 見ている人が飽きないような工夫を散りばめました。作品の中で、「白昼夢」を見ているシーンでは、いろいろな温泉地にロケに行っているんですよ。時間がない中で、移動距離も長くて大変でしたが、きちんと画変わりして違う雰囲気になるように複数のロケ地を巡りました。120フレームで撮影したスロー映像を入れたのも、作品にメリハリをつけて、見飽きないようにするためです。
――受賞のコメントで「贈呈されたソニーポイントで新しい機材を買いたい」と言っていましたが、今、欲しい機材は? 「FE 24-70mm F2.8 GM II」です。今回の作品では「FE 20-70mm F4 G」をお借りして撮影しましたが、正直F4では少し物足りないところがあって。最新のテクノロジーが詰め込まれたF2.8のぼけ感や映像美を体感できるレンズは、ぜひ使ってみたいです。
個性を強みとして、いつまでも楽しく作品づくりをしてほしい
最後に、今回の審査員を務めただけでなく、学内審査でも多くの作品を見てきたUssiyさんとDINさんにも話を聞きました。
――最優秀賞を受賞した作品「白昼夢」について、感想や印象を聞かせてください。 Ussiy氏(以下、敬称略):一番良かったところは企画力です。もちろん映像も素晴らしかったのですが、今回はどの作品もソニーのカメラで撮影しているので、映像のクオリティとしての差はあまりなかったように感じました。今後も撮影機材の進化によって「映像の美しさ」としての差はなくなっていくと思うので、クリエイターとして勝負していくために必要なのは企画力や発想力です。今回、最優秀賞を受賞したチームは企画がとても面白くて、映像を見てもやはり面白いと思えたところが良かったと思います。 DIN氏(以下、敬称略):僕も映像が完成する前の準備段階を高く評価しました。プレゼンでワークフローなどを聞いてから作品を見たので、頑張ってきた裏の努力が映像からもよく伝わってきたと思います。映像自体もきちんとグレーディングしていましたし、ストーリー構成もよく考えられていて最後まで飽きずに見ることができました。作品に興味を持って先が見たくなるような工夫があったところも好印象です。
――今後の活躍が期待される映像制作学科の学生に向けてメッセージをお願いします。 Ussiy:校内選考を含めて多くの作品を見させてもらいましたが、やはりつくる人それぞれに個性があるなと実感しました。今の時代はSNSも流行っているので「他が羨ましい」「そっちをやらなくちゃいけないのかな」と思うこともあると思います。でも、個性こそがクリエイターとしての一番の強みだと思うので、そこはブレることなく芯を貫いて作品をつくり続けてほしいと思います。 DIN:今回、みなさんの作品を見て「勢い」や「がむしゃらさ」に刺激を受けました。僕が映像を始めた頃に似ていると思いましたし、そこがルーツだと実感して懐かしく、またうれしく思いました。映像制作のモチベーションは「映像を作るのが楽しい」「次はもっといい作品をつくるぞ」という思いにあります。僕らもそのパッションがあるからこそここまで続けられているので、学生の皆さんも今回の卒展の作品で終わりではなく、映像に対する情熱を持って、今後も楽しく映像制作を続けてくれたらうれしいです。
――後進の育成について思っていることや、映像クリエイターを目指している人に向けて伝えたいことがあればお願いします。 Ussiy:今後、映像クリエイターはまだまだ増えていくと思います。僕は今、教える立場にもなっていますが、教えるばかりだと自分がクリエイターとして成長しない、という側面があるのも事実です。でもそれではダメなんですよね。自分たちの作品を見て「映像クリエイターを目指したい」「こういう作品をつくってみたい」と思ってくれる人が増えるように、僕らも一生懸命がんばるので、みなさんも一緒にがんばりましょう! DIN:僕らが映像始めた4、5年前は「映像制作をやりたい」という若者はそんなに多くなかったと思います。でも今はバンタンのような専門のスクールもあって、コンテストに参加できるなど表に出るための道筋がたくさんあるので、そういった場を僕らも提供できたらと思っています。今、SNSなどに動画を投稿する場合はアルゴリズムやマーケティング要素も少しは必要になると思いますが、そういった観点でもどんどん映像をつくって、自分の強みや映像をつくる楽しさを感じて、クオリティを上げていって、映像クリエイターとして生活できるようになってくれたらうれしいです。
映像クリエイター / Ussiy 福島県で生まれ育ち、高校卒業後は工場に就職。友人と結婚式余興ムービーを制作したことをきっかけに映像へ興味を持ち、独学で映像制作スキルを習得し、2018年末に工場を退職。 現在は独自の世界観を表現する映像クリエイターとして活動し、日本だけでなく海外企業とのタイアップも数多くこなす。 2022年にはスタジオジブリからのオファーを受け、愛知県観光動画『風になって、遊ぼう。』や、ジブリパーク公式映像ディレクターも務める。 https://www.youtube.com/@UssiyFilms
映像クリエイター / DIN YouTubeにて本物の映画のような映像作品を作り続けている若手映像クリエイター。グラフィックデザイナーを経験した後に、独学で映像制作技術を習得。 独特な世界観と色味で構成された映像は日本人離れした作品が多く、日本だけではなく海外からも注目を集めている。 現在は美しく再現度の高いカラーグレーディングが評価され、国内外問わずカラリストとしての地位も築き上げている。 https://www.youtube.com/@DIN_FILMSp
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