グローバルシャッターと120コマ連写が叶える
新次元のスポーツ撮影
スポーツフォトグラファー 水谷たかひと 氏
スポーツフォトグラファーの水谷たかひと氏にCP+2024セミナーにてお話しいただいた内容や、発表作品を一部抜粋してα Universe記事で特別にご紹介。新しく発売された「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」で撮影した作品を中心に、それぞれの魅力や使用感を語ります。
水谷 たかひと/スポーツフォトグラファー 1968年東京生まれ。1990年東京総合写真専門学校卒業と同時に渡仏。様々なスポーツイベントを撮影し、3年後に帰国。拠点を日本に移しスポーツイベントを追いかける。写真展・企画展等を多数開催。スポーツ関連の報道写真集も多数発刊。 公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員 一般社団法人日本スポーツ写真協会(ANSP)会長 国際スポーツプレス協会(AIPS)会員 株式会社マイスポーツ出版代表取締役
抜群の機動力に高い解像性能を併せ持つ
小型軽量な「FE 300mm F2.8 GM OSS」
本日は、皆さん待ち焦がれていたと思われる、新しく発売されました「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」のご紹介をさせていただきたいと思います。私は2023年5月にフィールドホッケーチーム「ソニーHC BRAVIA Ladies」のオフィシャルフォトグラファーに就任し、以来、チームの写真を撮り続けています。ここでご紹介する作品は、チームの選手たちを撮影したものです。 まずは「FE 300mm F2.8 GM OSS」の話をさせていただきます。見ただけで小さくコンパクトで、取り回しがいいレンズだということが分かると思います。そのため、手持ちでの撮影も可能です。小さく軽く、を追求しているため、「解像感や描写力はどうなの?」と思ってしまう人も多いと思いますが、有効約5010万画素の「α1」に装着してもAFはしっかり働きますし、歪みも少ない。カメラが持つポテンシャルをしっかり受け止めてくれるレンズです。実際にこのレンズがどのくらいいいのか、作品を見ながらお話したいと思います。
上の写真は「α1」に「FE 300mm F2.8 GM OSS」をつけて撮影したものです。このような逆光で撮ると、顔や影の部分がアンダーになってディテールがはっきり出ないことが多くありました。でも「FE 300mm F2.8 GM OSS」は素晴らしい描写力で、顔のディテールも、影の部分のユニフォームのシワもしっかりと描写しています。僕がふだんメインで使っている「FE 400mm F2.8 GM OSS」と比べると、暗部の表現は1、2段分くらい上がった感じ。今後は僕の常用レンズに仲間入りするほどの実力でした。 次の写真は顔の部分に注目してください。撮っている写真はRAWデータからTIFFに現像しただけで、ほとんど手を加えていません。
汗の質感まではっきり表現できるようになり、撮った画像を背面モニターで確認するだけでも「なんか凄いものが撮れちゃったな」と思うほどの表現力です。このレンズを使うことで、競技中の選手のリアルな汗の一つまで表現できるようになりました。 下の写真は、日陰にいる選手の顔に薄く光が当たった瞬間を撮影したものです。見ていただきたいのは、顔のエッジの部分。おでこから鼻を通ってアゴの部分まで、うっすらと光が当たっている部分の解像感が素晴らしい。目やシワのところもものすごくリアルに描写しています。
絞りは開放のF2.8で撮っていますが、僕は基本的にすべて解放で撮影します。なぜかというと、スポーツの撮影は背景がうるさくなることが多いので、開放にして背景をぼかして選手を際立たせたいからです。AFを活用すれば100%に近い確率で自分が思っているところにピントがいくので、被写界深度が浅くても素早くピントを合わせることができます。
グローバルシャッターとAIプロセッシングユニットで
捉えられる瞬間が広がった「α9 III」
ここからは「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」で撮ったものをお見せしていきたいと思いますが、まずは「α9 III」の魅力についてお話しましょう。一番のトピックは、なんといってもグローバルシャッターが搭載されたことです。これは写真に関わる我々にとっては夢のようなカメラなんですよ。 グローバルシャッターについて簡単に説明すると、今までのカメラはローリングシャッターといって、上から順に記録していく仕組みでしたが、グローバルシャッターはそれを一発でタイムラグなく記録することができる。そのおかげで、今までは動き速いものを撮ると歪んで写っていたものが、一切歪まなくなったんです。電子シャッターで撮ると歪んでしまうものはメカシャッターにして歪みを抑えていたのですが、これは電子シャッターのままで歪みのない写真が撮れる。さらに、シャッタースピードも1/80000秒まで上げることができるし、最高約120コマ/秒の連続撮影も可能になりました。動画さながらもコマ速をたたき出している上に、ブラックアウトフリーで被写体が見えなくなることもありません。これをすべて実現したのは、本当にすごいことです。 また、AIプロセッシングユニットが搭載されたことで、被写体の認識能力が爆上がりしたもの大きなニュースです。これは「α7R V」にも搭載されていて、人物と瞳、そのほか飛行機、鉄道、車、動物、鳥などのジャンルがあり、撮りたいものに設定するだけその被写体にピントを合わせてくれます。さらに、ホワイトバランスをはじめとしたカメラの「撮る力」も上がりました。下の写真を見ると、蛍光ピンクのユニフォームに青いコート、相手の選手は紫のユニフォームと色が転びそうな場面ですが、オートホワイトバランスで撮っても色転びがありません。
オートで撮れる範囲がこれだけ増えて、信用できるようになったのは、AIプロセッシングユニットのおかげかなと思っています。 フィールドホッケーはほぼ下を向いてプレーをしているので、顔をグッと上げた瞬間はあまり撮ることができません。他のスポーツでも表情をしっかり捉えたい場合、顔認証や瞳認証がしっかり機能するかはとても重要です。上の写真はフレキシブルスポットで1点を選び測距していますが、顔が画面の上のほうに来ることを見越して、真ん中より上のほうにAFポイントを合わせています。
こちらは、自分の中でけっこう気に入っている写真です。シュートを打った瞬間で、選手の目を見ていただくと、本当に瞳に力が宿っている感じがしますよね。こういう写真がとても好きで、点を取りにいく気迫あふれる瞬間を切り取れたのではないかと思います。通常「α9 III」のISO感度は250スタートなのですが、拡張で125から設定できるようになっていて、上の写真もISO160で撮っています。多少ダイナミックレンジが狭くなるかもしれませんが、自分は拡張を使って低感度で撮影することも多いです。
お気に入りのレンズ「FE 400mm F2.8 GM OSS」は
高い追従性能と豊かな表現力が魅力
ここからは、私が愛してやまない「FE 400mm F2.8 GM OSS」についてお話したいと思います。私は、このレンズと「α1」があったからこそソニーへの乗り換えを決意しました。そのくらい素晴らしいレンズになります。 「FE 400mm F2.8 GM OSS」は下の写真のように、顔がアップになった時の追従性能が高く、記録された映像がとてもきれい。選手が顔を上げた瞬間に「α9 III」が顔と瞳をしっかり認識してくれて撮影できたものになります。
先ほど「グローバルシャッターになり歪みがなくなった」というお話をしましたが、フィールドホッケーでは振り切った時のスティックやボールがよく歪んでいました。下の写真ではボールが丸く写っていますが、歪んでしまうカメラも多いです。
グローバルシャッターになったことでそういった不満や不安がまったくなくなり、思い切ってシャッターを押せるのは大きなメリットだと感じます。 下の写真も「FE 400mm F2.8 GM OSS」で撮影したものです。フィールドホッケーは大人数で競り合う競技なので、やはり選手の表情が見えている写真が好きですね。これは相手の選手が必死になってボールを奪いに行っているところを捉えることができたので、自分の中でも良い写真だなと、と感じます。
次の写真は、このままではボールがコートから出てしまう、というシチュエーションでソニーHC BRAVIA Ladiesの選手が一生懸命ボールを追いかけているシーンです。両足とも宙に浮いている状態で、緊張感のある瞬間を撮ることができました。
秒間60コマの連続撮影で抑えた1枚で、光の具合を見ながらシャッタースピード、絞り、ISO感度を自分で設定していますが、ホワイトバランスはすべてオートで撮影しています。このシーンも適正なホワイトバランスを出すのが難しいはずなのですが、理想通りの色を出してくれました。そういうシーンでも不安なくカメラに委ねられるのは素晴らしいことです。
見えなかった世界が見えてくる。
決定的瞬間を逃さない秒間120コマの連続撮影
次は、秒間120コマの世界を見ていただきたいと思います。今までは野球でバッドにボールが当たった瞬間や、テニスでラケットにボールが食い込んでいる瞬間を撮りたい、と思っている人に対して「うまく撮るには運しかない」と話していましたが、「α9 III」で秒間120コマ撮ることができれば、そんな瞬間も難なく撮れてしまう。
上の写真はボールがスティックに当たった瞬間を捉えたものです。これも秒間120コマで撮影したもので、連続写真をお見せするとこんな感じです。
最初のほうのコマは全然ボールが動いていないように見えて、9コマ目くらいでようやく食いついて動き出します。いかがですか。もう、120コマは強烈です。本当に見えなかった世界が見えてくる、夢のようなカメラだと思います。 さらに、「α9 III」にはプリ撮影という機能も搭載されています。この機能は、シャッターボタンを半押ししながら被写体を捉えた後に全押しすると、半押ししていた最大1秒前までの連写画像を記録することができる、というもの。取り逃した瞬間があっても、後で引っ張り出すことができる、という非常に便利な機能です。僕はあまり使わないと思いますが、鳥の撮る人などはかなり活用できると思います。
度肝を抜く先進機能を次々に搭載する
技術力の高いソニーに今後も期待したい
もうひとつ、顔や瞳を認識できるAIプロセッシングユニットの実力がわかる写真もお見せしたいと思います。 下の写真は手前にいる相手選手のスティックが主役となる選手の顔の近くに入っているので、本来ならば手前にあるスティックにフォーカスが持っていかれるシーンです。でも、顔認識をしているおかげでどんなシチュエーションでもピントを外すことはありません。
2024年は早々に「α9 III」と「FE 300mm F2.8 GM OSS」を発売しましたが、毎回、度肝を抜くような機能を搭載してくるのがソニーです。グローバルシャッターなんて絶対に無理だと思っていましたし、開発には多くの苦労があったと思いますが、しれっとすごいものを出してしまう技術力の高さがある。いつもビックリするような先進技術を詰め込んだものを出してくれるので、この先ももっといろいろなことをやってくれると思っています。ぜひ新製品も手に取って触ってみてください。そして、ここに登場している選手のように、いい表情で写真撮影を楽しんでもらえることを願っています。
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