αシステムで描き出す飛行機の世界
写真家 佐々木豊 氏
写真家の佐々木豊氏に「CP+2024」にてお話しいただいた内容や、発表作品を一部抜粋してα Universe記事で特別にご紹介。さまざまなシーンで撮影した航空機の写真を紹介しながら、撮影時の状況やエピソード、こだわりのポイント、カメラやレンズの魅力などを語ります。
佐々木豊/写真家 1966年京都府生まれ。これまでモータースポーツやさまざまなスポーツ競技を撮影。雑誌などに作品を発表。その経験を活かし、現在は航空機撮影を主に行う。どんなシーンでも自分独自の視点とエッセンスを散りばめることに主眼を置いて撮影に挑む。伊丹空港を中心に全国各地の空港で活動。日本航空写真家協会(JAAP)準会員ソニープロサポート会員。αアカデミー講師。 https://www.instagram.com/yutaka747/
主力のカメラはブラックアウトフリーで撮れる「α1」と
被写体認識の飛行機モードを活用できる「α7R V」
本日はご来場いただきありがとうございます。写真家の佐々木です。作品をご覧いただく前に、まずは私が使っている機材の紹介をしたいと思います。 メインに使っているカメラは「α1」です。みなさんご存じの通り、ブラックアウトフリーで非常にストレスなく撮れるカメラです。応答性も素晴らしく、有効約5010万画素の解像度でフラッグシップモデルらしい性能を備えています。そして、もう1台が「α7R V」。このカメラの最大の魅力は、AIプロセッシングユニットの被写体認識が搭載されていること。被写体認識の中には飛行機モードがあり、私も実際に使っていますが非常に素晴らしくて頼りになる機能です。有効約6100万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用していて、高精細な画像を撮ることができるのも特長です。 レンズは、「G Master」の望遠系、「FE 600mm F4 GM OSS」、「FE 400mm F2.8 GM OSS」、新しい「FE 300mm F2.8 GM OSS」のほか、ズームレンズの「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」。あとは標準の「FE 50mm F1.2 GM」と広角系の「FE 16-35mm F2.8 GM」と「FE 24-70mm F2.8 GM II」を使用しています。 それでは作品をご覧いただきながらお話をしていきたいと思います。
上の作品は冬の朝に伊丹空港で撮影したシーンです。この日は羽田行きの一番機に777-300型機がアサインされていて、珍しいと思い撮影に行きました。翼の後ろに露が飛んでいくようなシーンが撮れましたが、このように撮るには基本的に雲がなく、放射冷却のように冷え切った状態であることが条件になります。 これは7時5分発の飛行機ですが、冬場の日の出も7時5分ぐらいになるので、飛行機が定刻で出るとちょうど山の上から太陽が出てくる形になります。この画面でいうと左後方から太陽が差すわけです。でも7時5分の日の出だと太陽が出てくるのはだいたい7時15分ぐらいになってしまいますから、残念ながら離陸する時には太陽の光が滑走路に当たらない時もあります。うまくタイミングが合えば光が当たってこのように素晴らしいシーンを撮ることができるわけです。
小型軽量でも圧倒的な解像性能を発揮。
機動性の高い「FE 300mm F2.8 GM OSS」
上の作品は「FE 300mm F2.8 GM OSS」で撮影しました。とてもクリアで高解像な映像を撮ることができるのに、非常にコンパクトです。今までの300mm F2.8のレンズをご存知のかたはビックリするくらいサイズ感が違います。もう1つ驚いたのは、普通300mm以上の望遠レンズになると三脚座にストラップを入れる穴が付いていますが、このレンズには穴がありません。つまり、「カメラボディを持ってください」というくらいの軽さ、ということです。 小型軽量で機動性が高いですし、テレコンバーターを使っても高画質を維持してくれる、とても便利な1本です。これに1.4倍や2倍のテレコンバーターを持っていくだけの軽装備にもできるので、かなり重宝すると思います。
次も「FE 300mm F2.8 GM OSS」で撮っていますが、F2.8の良さはやはり暗所での撮影だろう、ということで夜にボーイング767を撮影してみました。基本的に長玉を使う時は三脚を使うことが多いですが、この時は機動力を生かして手持ちで撮影しています。1/250秒の絞りは開放ですが、驚きの解像度で搭乗しているお客さんの顔まで見えるんですよね。そのくらい、夜でもバッチリ撮ることができました。
時期や風向き、風速など、条件が合わなければ
狙い通りに撮れないシーンがたくさんある
これは松山空港近くの有名な撮影ポイント、垣生山の上から撮っています。3月と9月にこの太陽の位置になり、キラリと光る海を背景に飛行機を撮ることができるのですが、撮影データを見てください。「α7R V」で1/8000秒です。これ以上のシャッタースピードはないので、照り返しがどれだけ強いかわかりますよね。こんな逆光でも「α7R V」の飛行機認識でしっかりピントを合わせることができました。高性能な機材だからこそ撮れた良い作品だと思います。
都心でも低空飛行で撮れるチャンスがある航空機。
広角レンズでは飛行機の形が崩れないように注意を
これは太陽に入ったボンバルディア DHC-8です。太陽に入っている飛行機を撮る人もいらっしゃると思いますが、ミラーレスは基本的にセンサーに映したデータを見ているので直接太陽光が目に入ることはありません。目に優しいのですがセンサーにはあまり良くないので、私は肉眼で見えるくらいの明るさの太陽でなければレンズを向けないようにしています。
上の作品は羽田空港の新しい南風運用ルートを飛ぶ飛行機を撮ったものです。おそらくみなさんもご覧になっていると思いますが、街の中でもけっこう低空を飛んでいるので渋谷や品川など、撮れる場所はいろいろあります。これは新宿の高層ビルとともに「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」で捉えたものです。街中でも面白い写真を撮ることができるので、みなさんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
これも伊丹空港ですね。千里川から着陸シーンを撮った作品です。「FE 16-35mm F2.8 GM」で撮影しましたが、千里川では広角レンズを使ってもこのサイズで撮れるのがいいところ。ただ、ワイド端で撮ると翼が短く、長細い機体に写ってしまうので注意が必要です。あまり短くせずに20mm、24mmくらいで撮ったほうが飛行機の形としては美しいと思います。
これは羽田空港のランウェイ22上りの787を、富士山をバックに撮影した1枚です。羽田でも富士山がこれだけきれいに見えるのはすごいですよね。私が飛行機を撮影する時は常に光を意識して、光のあるポイントをどう持っていくかを主眼に撮影しています。色合いや光によって、飛行機はいろいろな表情や姿を見せてくれますから。
季節ごとに天候を問わず撮影に出かければ
その時にしか出会えない航空機のシーンがある
これは私の大好きな「FE 50mm F1.2 GM」で撮っています。「FE 50mm F1.4 GM」と間違えるくらいコンパクトなのに高解像で画質も素晴らしいレンズです。 撮影場所は伊丹空港の千里川ですが、土砂降りでヴェイパーをかなり引っ張っていました。ストロボライトが点灯していたのは、正直たまたまです。「α1」を使って連写で撮影していますが、狙って撮れるものではありません。でも「α9 III」の秒間120コマで撮ったら、けっこう当たりが出るのではないかと思ったりもしますね。撮っている時はビニールかぶせていて撮影画像を確認できなかったのですが、家に持って帰ってパソコンで見て「すごいのが撮れてる」と驚いたことを覚えています。
上の作品は千歳空港のA10というポイントで離陸後に撮りました。画角を決めて固定し、飛び立った瞬間に被写体認識の飛行機モードでピントを合わせたので、本当にカメラ構えてシャッターを押しただけで撮れた1枚です。本当にバッチリ認識してくれます。
最後は桜の写真で終わりたいと思います。桜とともに航空機を撮影できるのは「成田市さくらの山」が有名ですが、上の作品は伊丹です。アプローチの時に撮ることができる公園があり、そこで撮影しました。飛行機写真は背景で季節感を出すこともできるので、みなさんも四季折々の風景を求めて、αを片手に撮影に出かけていただければと思います。 今日はありがとうございました。
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