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新世代のα9 IIIが切り拓く野生の世界

自然写真家 野口純一 氏

α Universe editorial team

自然写真家の野口純一氏に「CP+2024」にてお話しいただいた内容や、発表作品をα Universeで特別にご紹介。「α9 III」で撮影した野生動物の作品を紹介しながら、連写性能やこのモデルならではの機能などを、解説動画を交えながらわかりやすく語ります。

野口 純一/自然写真家 1968年、埼玉県生まれ。沖縄県在住。2輪・4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道に惹かれ、2000年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに2002年より写真家として活動を開始。写真は自然の中に生きる生命の姿を師として独学で学ぶ。北海道の野生生物を中心に始まった撮影対象は、美しい野生の姿を追い求めて世界中にそのフィールドを広げている。幅広い媒体に作品を提供しながら、昨年より北海道と沖縄県の2拠点生活で活動している。

革新的に進化を遂げて待望のリリース。
欲しい機能がすべて詰まった「α9 III」

みなさん、こんにちは。写真家の野口純一です。私のセミナーでは「新世代のα9 IIIが切り拓く野生の世界」というタイトルでお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 「α9 III」は高速連写を得意とする「α9」シリーズの3世代目で、今回、革新的な進化を遂げました。まずフルサイズミラーレスでグローバルシャッターを採用し、有効約2460万画素すべてを生かして1秒間に120コマの高速連写ができる。そして、この高速連写機にAIによる被写体認識のAFが搭載されました。その他、4軸マルチアングル液晶モニターや4K120Pの動画撮影など、欲しい機能が全部詰まった、待ちに待った1台が誕生したと非常に喜んでいます。 さらに、数字に表れない部分も進化しています。特にうれしかったのはグリップ周りの造形が変わり、極寒地で手袋をしたままでも扱いやすくなったところです。今回は、酷暑で乾燥したアフリカ大陸のケニア、湿度が高く激しい雨が降りやすい沖縄県の離島、厳冬期の流氷が訪れる北海道の海と、かなり過酷な環境下で撮影してきましたが、まったくトラブルなく無事に帰ってくることができました。絶対的な信頼性が写真家にとっては何よりも大事な部分になりますが、この新しい「α9 III」も過酷な環境で十分に働いてくれるのを確認できたわけです。

激しく動きまわる野鳥撮影でも高いAF精度を発揮。
驚くほどの高確率で瞳にピントを合わせてくれる

それでは、実際に「α9 III」の機能が撮影でどういった働きをしてくれたのかをお話ししていきたいと思います。

α9 III,FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 419mm,F6.3,1/2500秒,ISO3200

これはケニアで撮影したサンショクウミワシです。ワシが魚をつかんで飛び去っていくシーンを秒間120コマの連写で撮影しました。撮影したカットをソニーの純正ソフト「Viewer」で確認すると、フォーカスポイントも表示することができます。下の写真はViewerの画面を写したものですが、鳥の目のところに緑色の四角が写っているのを確認できますよね。

この緑の四角がピントを合わせたところです。激しい動きの中でもしっかりとワシの瞳を認識して、ピントを合わせてくれています。この1枚だけでなく、一連の動きの中で姿勢が変わって、翼の形や目の位置が変わっても、瞳を逃さずに追いかけてくれるのが素晴らしいところです。 AFの精度は今までよりも2段、3段と一気に進化したように感じますね。上のような写真も、以前は1枚撮れたらラッキーでしたが、「α9 III」では何十枚も撮れてしまいますから。ただ、連写した120枚すべてが瞳にぴったりとピントが合ったとは言いません。それでも、良いところだけを抜き出して見せているわけではない、ということを動画でご覧いただきたいと思います。

わかりやすいようにスローモーションで見て頂くとこんな感じ。一連の激しい動きの中でもかなりの確率で瞳にピントが合っている。数えてみたら90%を超えるくらいの確率で合っているからすごいですよね。使った私も驚くほどの高精度で、おそらくこれだけ複雑な飛び方をする鳥の瞳だけを、ピンポイントで狙い続けることができるカメラは現状「α9 III」だけだと思います。

秒間120コマの連続撮影とプリ撮影で
野鳥のすべての動きを捉えることができる

そして「α9 III」のもう一つの特徴の120コマの高速連写です。今までは撮影していて翼の角度や風切羽の開き具合など、「もうちょっとこうだったらな」と思うこともありましたが、「もうちょっと」がないんです。鳥の翼の動きのすべてを記録できる。それが、秒間120コマの高速連写です。 さらに、「α9 III」には新たに搭載された「プリ撮影」という機能があります。

α9 III,FE 600mm F4 GM OSS + 2X Teleconverter 1200mm相当,F8,1/6400秒,ISO3200

ケニアで撮影したライラックニシブッポウソウですが、この小さな鳥が飛び立って最初に翼が大きく開くまで、動き始めてから約0.1秒。これは反応できません。目で見て、認識して、指が動くまで、訓練された人でも0.2秒くらいはかかってしまいます。普通の人だと0.3秒くらいかかるので、2回目の羽ばたきも撮ることができず、3回目の羽ばたきでやっとシャッターを切ることができる感じですね。その時にはもう飛び立つ樹の枝はフレームアウトしてしまいます。ですから、まさに飛び立つ瞬間の1回目の羽ばたき、翼が広がったきれいな瞬間は、人間の反射神経では絶対に間に合わず撮影することができないのです。 そこで活躍してくれるのがプリ撮影です。プリ撮影とは、シャッターを切る直前から撮影できる機能で、どのくらい前から撮るかは自分で細かく設定することができます。感触としては0.2秒、慣れていない人は0.3秒に設定しておけばまず撮り逃すことはないと思います。このプリ撮影を活用するだけで、誰でも上の写真のような飛び立つ瞬間の一番翼がきれいに広がった瞬間を撮ることができる。本当に楽な時代になりました。

連写性能×高精度AF×プリ撮影で
不意に訪れる決定的瞬間も撮り逃さない

「α9 III」は素晴らしいAF性能を持っていますが、野生の世界ではいろいろな光の条件で撮影することになります。例えば下のような写真は、非常に光が強い太陽の中にトムソンガゼルのシルエットが包まれている。

α9 III,FE 600mm F4 GM OSS + 2X Teleconverter 1200mm相当,F11,1/8000秒,ISO160

こういったシーンではピントがスコスコと往復して大きくぼやけてしまうこともあり、トムソンガゼルにピントが合わないこともあります。バシッとうまくフレーミングできた時にそれが起こると、もう泣きたくなってしまうんです。しかもこの時は「FE 600mm F4 GM OSS」に2倍のテレコンバーターを付けて1200mmの画角で撮っていますから、ファインダーを覗いているうちに太陽はどんどん動いてしまいます。これだけきれいにセンターに被写体が納まる瞬間は、1日に日の出と日没の1回ずつしかありません。ほんの数秒しかないタイミングでピントが外れてしまうと本当に泣きたくなります。でも「α9 III」は、この写真でもわかる通り、トムソンガゼルが頭を下げて草を食べている段階からピントを合わせ続けてくれて、周囲を警戒するためにふっと顔を上げた瞬間もしっかり撮影することができました。 今まで説明してきた120コマの超高速連写、精度が増したAIによる被写体認識、そして人間の反射の限界を超えた撮影を可能にするプリ撮影。それらが連動することで絶対に撮りたい決定的瞬間を撮り逃すことがなくなったと、私は思います。

シャープさとぼけ味を両立し、優れた質感表現を実現
基本性能を突き詰めた「FE 300mm F2.8 GM OSS」

そしてもうひとつご紹介したいのが、「α9 III」と同時に発表された新しいレンズ「FE 300mm F2.8 GM OSS」です。最新の光学設計でつくられていて、なんと重量が1,470gととても軽いです。ボディにつけていても本当に軽くて、初めて持ったときには「レンズがついてないんじゃないか」と思うほどでした。 しかも素晴らしい描写性能を持っています。ファインダーを覗いただけでわかるくらいシャープで、その描写力は感動するほどです。そしてAFもこのクラスでは最速ですから、「FE 300mm F2.8 GM OSS」はレンズとしての基本性能を究極まで突き詰めた素晴らしい高性能レンズになっていると思います。 「FE 300mm F2.8 GM OSS らしい写真を何とか撮れないかな」と思っていろいろ試して撮ってみた写真がこちらになります。

α1,FE 300mm F2.8 GM OSS 300mm,F2.8,1/800秒,ISO400

ケニアで撮影した1枚で、群のリーダーであるオスライオンが群れの安全を確認するためにスクッと立ち上がり周囲を見渡しているところです。そこに、後ろからトコトコと走ってきた子供のライオンが身をすり寄せて、一瞬甘えるような仕草を見せてくれた瞬間を撮影したものですが、注目していただきたいのがシャープネスです。大画面で見ていただくとよりわかりますが、ライオンのたてがみ、ヒゲ、あるいは子供のライオンと大人のオスライオンの顔の毛質の違いまではっきりとわかります。とにかく質感描写が優れていて、シャープさだけではなく美しいぼけと両立しているのも見事です。 ぼけと言うと背景に注目しがちですが、前ぼけがきれいなことも大事。前後のぼけが自然で美しいことによってライオンの存在が浮かび上がり、サバンナの自然の中に生きる生命感や2頭の親仔の絆のようなものまでしっかりと写し込めたのではないかと思います。私自身、とても気に入っている1枚です。 また、厳しい光の条件でも、素晴らしい解像感やぼけの美しさを発揮してくれることが大事です。

α1,FE 300mm F2.8 GM OSS 300mm,F2.8,1/400秒,ISO200

上の写真は太陽が少し高い位置にあるので、輝きがまだ強い段階です。このように肉眼で見るのが厳しい状況でもゴーストやフレアが一切出ていません。非常にクリアで抜けのいい描写をしてくれる。どんな光の状況でも最高性能と言えるシャープネスとぼけの美しさは保たれています。

テレコンバーターを使えば機動力のある超望遠レンズに。
新たな撮影への挑戦など楽しみも広がる

これは沖縄で撮影した深い森に佇むカンムリワシ。木漏れ日がちらちらと動いていたので、顔や目に当たった瞬間に撮影しました。

α9 III,FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X Teleconverter 600mm相当,F5.6,1/500秒,ISO400

こういうシーンで大事なのが、静かに撮影することです。森自体が非常に静かなので、ガシャガシャとシャッター音やモーターの駆動音がすると、ワシに気付かれてしまいます。しかし「E 300mm F2.8 GM OSS」は強力なモーターでも音が静かで、「α9 III」の電子シャッターで撮るとまったく音を立てずに撮影することができます。

α9 III,FE 300mm F2.8 GM OSS + 2X Teleconverter 600mm相当,F5.6,1/1600秒,ISO400

上の写真はカンムリワシの幼鳥です。どこまで近づけるかと2倍のテレコンバーターを装着して撮影しました。テレコンバーターを使うと「描写性能が落ちてしまうのではないか」と敬遠される人も多いですが、見てください。羽根の繊維1本1本までしっかり解像しています。これだけ描写性能が良ければ、2倍のテレコンバーターをつけっぱなしにして600mm F5.6のレンズとして考えても面白いかなと思います。実際テレコンバーターつけても元々のレンズが1.5kgを切っているので、1.7kgほどで600mmのF5.6。これなら機動力が桁違いに上がると思うので、もしかしたら新しい撮影の仕方にチャレンジができるのではないかと、これからも楽しみにしています。 下の写真はあえてグッと寄らずに、ワシが生活している環境を含めて写すような意識で撮りました。

α9 III,FE 300mm F2.8 GM OSS + 1.4X Teleconverter 420mm,F4,1/1250秒,ISO800

実は、流氷の一番奥の山との境目に町並みが写っているんです。これもぼけが柔らかく自然なので違和感のない作品に仕上げることができました。引いても面白い画が撮れるので、いろいろな撮りかたができる1本だと思います。野鳥を撮る時は望遠でアップだけではなく、生活環境も含めて撮影するのも楽しいものです。

初心に戻って純粋に撮影を楽しめる「α9 III」。
脅威の性能でも人に寄り添う優しいカメラ

ここからは余談になりますが、北海道で撮影したオジロワシの写真を見ていただきながらお話ししたいと思います。

α9 III,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/5000秒,ISO800

今回アフリカへ撮影に行きましたが、ケニアの取材は実は最悪の状況だったんです。事前に入ってきた情報と現地の状況がまったく変わってしまっていて、狙っていた被写体そのものがいないという状況に陥ってしまいました。大きな責任を背負って、一人でアフリカまで来たのに撮るはずのものがいない。しかもベースキャンプとなる場所もとんでもないところになってしまった。このような辛い状況になると、早朝、暗闇の中、キャンプを出る時は悲壮感に包まれてしまい、「今日1日どうしよう。やばいやばい」という気持ちになってしまうんです。でも、今回は不思議と明るい気持ちでスタートできました。それは「α9 III」があったからです。厳しい状況の中、限られた期間で出会えるチャンスが少ない被写体を絶対に撮って帰らなければならない。逃したら大変なことになるはずですが、「α9 III」を使っていると「大丈夫だ。チャンスにさえ出会えれば俺は撮れる」という不思議な自信に満ちて、毎日を過ごすことができました。 不安を払拭してくれる頼もしさがあり、撮影を失敗するかもしれない、という要素がこのカメラにはないんです。ふだんは「タイミングが合わないのではないか」、「とっさに起こった絶好のシーンを逃してしまうのではないか」と不安はつきものですが、そういった不安をすべてこのカメラが解消してくれたので、本当に楽しく過ごすことができました。

α9 III,FE 600mm F4 GM OSS 600mm,F4,1/5000秒,ISO400

私は野生動物全般を撮影していますが、野鳥に関してはウミワシが原点です。当時は何もわからずに、ワシを見てただ「すごい、すごい」とフィルムカメラのシャッターを押しまくり、家に帰って現像したらゴミの山ができるという悲惨な状況でした。でもカメラの設定や操作に気を回す事なく夢中になって撮影した時間はとても楽しいものでした。そしていま、必ず良い写真を撮るという前提のなかでも、今回は「α9 III」のおかげで不安がまったくなかったので、初めてワシを撮りに行った時のように、ひたすらに楽しく、毎日をワクワクしながら過ごしていました。カメラとレンズで、こんなにも気持ちが変わるなんてすごいことですよね。 最新技術でつくられたモンスターマシンのようなカメラとレンズで、ソニーの技術は改めて撮る人に寄り添ってくれる技術なんだな、と実感しました。「α9 III」は化け物みたいなカメラですが、信じられないくらい簡単で人に優しいカメラです。ですから、みなさんもぜひ新世代のαを使って、ただひたすらに「楽しいだけの撮影」というのを体験してみて欲しいと思います。本日はありがとうございました。

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