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「カメラグランプリ2024」贈呈式リポート

α Universe editorial team

2024年5月17日に「カメラグランプリ2024」の各賞が発表され、ソニーの「α9 III」が1年間に国内で新発売されたスチルカメラの中からもっとも優れたカメラが選ばれる「大賞」と、一般ユーザーの投票で選ばれる「あなたが選ぶベストカメラ賞」をダブル受賞しました。5月31日に行われた贈呈式ではソニーの担当者が受賞の喜びと開発秘話を披露。カメラグランプリ実行委員の代表者に受賞理由や今後のソニーに期待することなどもお聞きしました。

贈呈式で語られた受賞の喜びと開発秘話

贈呈式では、カメラグランプリ2024実行委員長の永原耕治氏から「大賞」の賞状とトロフィーが授与されました。代表して受賞の喜びを語ったのはソニー株式会社 イメージングエンタテインメント事業部 事業部長 大島正昭です。

革新的なグローバルシャッター方式のフルサイズイメージセンサー
最先端技術を詰め込んだカメラで新たな感動を

昨年、「α7R V」がカメラグランプリの大賞をいただいた時は、AIプロセッシングユニットと4軸マルチアングル液晶モニターを搭載し、エポックメイキングなカメラを作ったことで受賞させていただきました。今年の「α9 III」はその2つに加えて、グローバルシャッター方式のイメージセンサーを採用し、このモンスターのようなイメージセンサーを、いかにカメラに収めて、プロが使う道具として世の中に出すか、というパッケージングの部分でさまざまな苦労がありました。この後、カメラ用のイメージセンサーの開発責任者である木村と、プロジェクトを牽引した齋藤から実際にはどのようなやりとりがあり、どのような困難や障壁があったのかをお話します。

ソニーとしては、賞をいただいたところで立ち止まらず、引き続き皆さまがたとイノベーションを起こしていきたいと考えています。新しいエンターテイメントへ、さらに感動を広げることができるように取り組んでいきたいと思っていますし、今も現在進行形で進めておりますので、楽しみにしていただければと思います。

グローバルシャッターへの対応や画質の担保など
イメージセンサーの開発は難易度が高かった

開発秘話を披露したのは、『α9 III』のイメージセンサーの開発を担当した、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 モバイルシステム事業部 副事業部長 木村匡雄です。 私は元々CCDのイメージセンサーのエンジニアだったので、このセンサーをつくり上げるにあたりCCDからCMOSへの移り変わりを振り返りました。CMOSに変わったことで撮像性能と機能は飛躍的に向上しましたが、民生用カメラの分野においてグローバルシャッターを入れ込むことは非常に難易度が高かった。何とか打破して、プロやクリエイターの方々、ならびに映像を愛するすべての人に「一瞬を切り取る価値」を提供したい。その強い思いのみで、関係者が一丸となってセンサーをつくり上げました。

単にグローバルシャッターを積むだけならばできなくはなかったのですが、皆さまにご納得いただける画質を実現することは1番難しい部分でした。今回、新しいアーキテクチャーを導入して、弊社の強みでもある画素技術をうまく合わせることで商品として結実させ、この「α9 III」に搭載することができました。 もう1つ、高速シャッターもこのカメラの特長となっています。この高速シャッターを実現するには、新しいアーキテクチャーと読み出し速度を組み合わせ、駆動でタイミングを合わせなければなりません。これが非常に難しかったのですが、開発チームと協力して形にすることができました。 これからも皆さまのクリエイティビティに貢献するとともに、感動していただけるような商品をつくっていきたいと思っておりますので、引き続きご期待ください。

新時代の映像表現を楽しんでもらうために
欠かせなかったソフト・ハードの両面から進化

さらに、「α9 III」のプロジェクトリーダーを務めた、ソニー株式会社 技術センター 商品設計第3部門 商品設計2部 4課 齋藤靖好も、違う立場から開発秘話を披露。 「α9 III」は設計当初から「新時代の映像表現を提供できるカメラをつくる」と宣言して開発を進めてきました。革新的なイメージセンサーを積んでいることが大きな特長ですが、それ以外にソフト、ハード両面も飛躍的に進化しています。 まず、ソフト面で特長となるのは、α9シリーズならではのスピードの部分に関わる研ぎ澄ました120fps、AF/AE連動の高速連写という部分になります。1/120秒という非常に短い時間の中ですべての処理を終わらせなければならないため、ソフトの制御を変えて最適化を図りました。各デバイスのスタートと終了に関する部分や、CPUやメモリの使いかたやその割り当てなどを、1つ1つ詳細に調査・分析してチューニングしました。特に制御チームは関係する部分が非常に多岐に渡るため、全員が同じ認識を持ち、足並みを揃えて進めていくことで実現できたと考えております。

ハードの面に関しては、グリップを中心に進化しています。人間工学に基づいた設計、さらにお客様の感性という部分にも重点を置いて設計を行いました。グリップのホールド感に関しては、手の大きさや指の長さなどを数値化し、それを基に各ポジションの寸法の最適値を導き出して設計しています。またシャッターボタンの感触もこだわったところです。よく「キレのいい感触」といいますが、キレのいい感触とはどのようなものだろう、ということを各要素で分解・分析して、どのような数値であれば実現できるのかというところまで熟考しました。数十ミクロン部品がずれるだけで感触が変わってしまう、ということは初期の段階でわかっていましたので、その誤差を詰め、各部品の構成を見直し、よりシンプルでバラつきの少ない構成に進化させています。 イメージセンサーをはじめ、ソフト面やハード面も進化し、あらゆる方が使いやすいカメラになっておりますので、多くの皆さまに新時代の映像表現を楽しんでいただきたいと思います。

「カメラの新時代を切り拓いた」と多くの選考委員が支持

続いて、カメラグランプリ2024実行委員長の永原耕治氏(雑誌『風景写真』編集長)、カメラ記者クラブ代表幹事の柴田誠氏(雑誌『CAPA』)のお二人に、受賞理由についてお聞きしました。

――「α9 III」はどのような点が評価されて大賞を獲得できたと思いますか? 永原:今回は47人の選考委員のうち41人が「α9 III」を1位に選んでいて、さらに理由も「世界初のグローバルシャッター搭載によりカメラの新しい時代を切り拓いた」、ほぼその1点だったため、大賞は非常にスムーズに決定しました。このほか、「シャッタースピードが1/80000秒まで全速でフラッシュ同調が可能になったことで、今まで見たことのない画が撮れるのではないか」、という期待感も寄せられていました。 柴田:やはり撮れなかったものが撮れるようになった、と表現の可能性を広げたところが1番評価された点だったように思います。

――昨年に引き続き、ソニーの連続受賞についてはどう思われますか? 永原:2年連続大賞受賞で、圧倒的、という印象ですね。より広い視野で未来を具体的に見据えてしっかりとしたビジョンを持っているところが、グローバルシャッター搭載の開発にも繋がったと思います。また、ここ数年は長いスパンで開発しているものが評価されての受賞というイメージがあり、その技術力も大賞受賞に大きく貢献していると感じます。

柴田:ソニーはカメラだけでなく、スマートフォンやテレビ、ゲーム機などさまざまな機器を扱っているので、総合的な情報・技術をカメラに落とし込んだところが連続受賞の大きな理由のように思います。カメラ以外のところからも吸収するものがあり、大きなものになっていくという流れを感じます。 永原:グローバルシャッターはまさにその一つですよね。ソニーのビデオカメラの技術が今回の開発に役立ったと聞いていますから。

――「α9 III」は大賞と同時に「あなたが選ぶベストカメラ賞」も受賞しています。一般ユーザーからの投票の結果や寄せられたコメントを聞かせてもらえますか? 永原:大賞とあなたが選ぶベストカメラ賞を同時受賞することもありますが、当然別々のカメラが受賞することもあります。でも今回は、一般ユーザーからの投票も2位のカメラにダブルスコアをつけるほどの差があり、プロと一般ユーザー、どちらからの評価も完全に一致した年でした。なかでも「ソニーの新しい技術は世界に誇れる技術だ」という一般ユーザーからのコメントは、「そういう観点で見ている方もいるのか」という意外性もあり印象に残っています。 柴田:僕は「比較的安価で出してくれた」という意見が印象的でした。これだけの技術をコンスーマーが使えるようなレベルの製品にまとめ上げた、というところもユーザーは魅力に感じたようです。

一歩先の未来を見せてくれるカメラに今後も期待

――お二人が「α9 III」で撮影するなら、どんなものを撮ってみたいですか? 永原:僕は風景を撮るので、1/80000秒でのフラッシュ同調で渓流や滝を撮ってみたいです。水のしぶきなどがどんな表情を見せるのかワクワクしますし、おそらく「見たことのない画」を見ることができると思います。まだフィールドでは使ったことがないので、実際に撮影するのが楽しみです。 柴田:僕は街のスナップ、ランドスケープよりはシティスケープを撮ることが多いので、街中ではどんな表現ができるのか、可能性をいろいろ試してみたいと思っています。人やバスを流して撮影しても面白そうなので、ぜひ永原さんとは違うフィールドで今までにない画を見てみたいです。

――今後、ソニーにはどのようなことを期待していますか? 永原:今回の「α9 III」もそうですが、一歩先の未来を見せてくれるのがソニー製品の魅力です。今年は十分にその真価を見せてくれたと感じますが、来年も、その先も、ビジュアル業界に新しいビジョンを見せてもらいたいと思っています。 柴田:ソニーには、可能性を形にする、つまり、今まではやりたくてもできなかったことができるようになる、期待を形にしていくことが求められていると思うので、これからも革新的なカメラをつくり続けて欲しいです。

カメラグランプリとは 写真・カメラ雑誌の担当記者の集まりであるカメラ記者クラブが主催し、カメラグランプリ実行委員会の運営のもと1984年から開催されており、組織された選考委員が1年間(毎年4月1日から翌3月31日まで)に日本国内で新発売されたスチルカメラ・レンズ・カメラ機材の中から各賞に値するカメラや撮影機材を選出します。各賞は、最も優れたカメラ1機種を選ぶ「大賞」、交換レンズの中からも最も優れた1本を選ぶ「レンズ賞」、一般ユーザーがWebサイトから投票する「あなたが選ぶベストカメラ賞」、さらにカメラグランプリが40周年を迎えた今年、「あなたが選ぶベストレンズ賞」が新たに制定されました。 また、大賞を受賞したカメラを除くすべてのカメラと写真製品・機材を対象に大衆性・話題性・先進性に特に優れた製品を選ぶ「カメラ記者クラブ賞」の5部門があります。

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