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最先端「リモート撮影」の極意を見る!キツネツキさんの夜景ポートレート撮影に密着
αシステムの一部として活躍する「Creators’ App」活用法

写真家 キツネツキ 氏

デジカメ Watch掲載記事の転載

ソニーが運営しているクリエイター向けの撮影・映像プラットフォーム「Creators’ Cloud」。様々な機能を備えたサービスで、無料でも使えることからソニーユーザーであれば使わない手は無いサービスだ。 ただ、できることが豊富で対応アプリも複数リリースされているだけに、「Creators’ Cloudは気になっているけど、どこから使い始めれば良いかわからない」という人も多いのではないだろうか。

そんなソニーカメラユーザーにまずオススメなのが、Creators’ Cloudのスマホアプリ「Creators’ App」だ。カメラのリモコンとして使えるほか、クラウドストレージを活用しシームレスにデータをアップロードすることもできる。 基本的にはクラウドもアプリも無料なので、「リモコン撮影なんてしないな……」という人もぜひ使ってみてほしい。というのも、写真表現の幅がグッと広がるからだ。

Creators’ Appのトップ画面。リモート撮影機能は上の「カメラを操作する」から行う

キツネツキさんの撮影に密着

そこで、Creators’ Appを使うと具体的にどういったことができるのかをフォトグラファーのキツネツキさんの撮影に同行して詳しく教えてもらった。

キツネツキ 東京と関西を拠点に活動するフリーランスのフォトグラファー・映像作家。映像作家としてミュージックビデオなどを制作。フォトグラファーとしてサイバーパンク的な極彩色な夜の風景写真をしている。 Instagramのアカウントは海外を中心に9.8万フォロワーを獲得。神戸元町海岸通りに店舗を構えるオリジナルアパレルブランド"Nenuphar"にグラフィックとして写真提供。Disney, Pixar作品『私ときどきレッサーパンダ』(原題: TurningRed)のリファレンス画像として選出、佐藤航陽著書『世界2.0』の表紙画像に起用される。22年10月、自費出版で写真集を制作するためにクラウドファンディングをkickstarterにて実施し、545万円・650名以上を集め「L8r2020+1」を刊行、そして23年3月には渋谷ヒカリエにて写真展を開催した。 自身の活動の他に、CYBERXPUNKERという冊子を制作しサイバーパンクというジャンルの啓蒙にも力を入れている。 Instagram: @kitsunetsuki.jp

キツネツキさんといえば都市の印象的な夜景写真が有名で、Instagramのフォロワーも10万人に迫る人気だ。今回は夜の新宿を舞台にロケが行われた。アシスタントなどは無く、すべて1人で撮るのがキツネツキさんのスタイルだ。

撮影:キツネツキ

撮影:キツネツキ

撮影:キツネツキ

撮影:キツネツキ

撮影:キツネツキ

しかし、作品を見るとセルフポートレートなどはとても1人で撮ったとは思えない仕上がりに驚く。こうした撮影が楽に行えるのが、Creators’ Appの真骨頂なのだろうか。

背面モニターが見えないシーンでアプリが活躍

ロケ当日は19時頃から撮影を開始した。まずは日が沈みつつある新宿・歌舞伎町の通りを狙うところから始まった。 撮影に使うカメラは「α7 IV」。そしてレンズは「FE 24-70mm F2.8 GM II」1本で撮影した。

α7 IVにFE 24-70mm F2.8 GM IIを装着。今回はこのセットとCreators’ AppをインストールしたXperia 1 VIを使用した

キツネツキさんのInstagramを見ると広角レンズや超広角レンズを多用しているように見えるが、広く写している作品の多くは標準域から中望遠で離れて撮影しているものだそうだ。今回のレンズで言うと、50-70mmといった焦点域で撮る方が圧縮効果を得られて独特の世界観を表現しやすいという。 もともと、「マトリックス」や「ブレードランナー」、「攻殻機動隊」、「AKIRA」などの映画に憧れて映像制作を志していたというキツネツキさん。いつしか自分がしたい表現は映像よりも写真だと気づき、フォトグラファーとして活躍する方向に進んだそうだ。 それだけに、映画に出てくるようなサイバーパンクな世界観にはこだわりがある。都市といっても綺麗な部分では無く、裏路地や古めの建物などを組み合わせた”ディストピア感”を現存する街並みから写し取り仕上げる技術は素晴らしく、「これが見慣れたあの街なのか?」としばし見とれてしまう。

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 51mm,F5.0,1/50秒,ISO200

撮影:キツネツキ

この写真は焦点距離を51mmにして、一脚に付けたカメラを高く掲げて撮影したものだ。適度な圧縮効果で、両脇の看板が迫る様子が有数の繁華街としてよく表現されている。 撮影時のカメラの位置はかなり高いところにあり、背面モニターで構図をチェックするのは難しい。そこでCreators’ Appの出番となる。 Creators’ Appの機能の1つ「リモート撮影」を使えば、対応カメラとペアリングしておくことで、スマートフォンのモニターに映るライブビューを見ながらワイヤレスでシャッターを切ることができるのだ。

Creators’ Appの「リモート撮影」を活用。カメラの背面モニターと同じ映像がリアルタイムで確認できる

撮影するとスマートフォンで確認できる

以前はこうした撮影のとき、ノーファインダーで撮影していたそうだ。それが、Creators’ Appのリモコンを使うようになって手元で構図を決められるようになり、ノーファインダーでトライ&エラーを繰り返す必要がなくなった。「撮影がかなり効率的に進むようになりました」とキツネツキさんは話す。 夕暮れ時は特にサクサク撮らないと、空の明るさの変化が大きいので狙った写真にするのが難しくなる。そういう意味でもアプリを使った撮影はメリットが大きいと言えそうだ。 こういった街中の夜景撮影で意外と重要なポイントがシャッタースピードだそうだ。写真とは言えシャッタースピードが速すぎるとフリッカーの影響が出てしまい、看板などの明るさにムラが生じてしまうとのこと。 そこで、シャッター速度を1/50秒か1/100秒に設定することでこの問題を解消している。カメラの手ブレ補正が効いているので、不安定な撮り方でも写真がブレているということは無かった。

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 24mm,F5.0,1/50秒,ISO200

撮影:キツネツキ

なお、今回はいずれのシーンもマニュアル露出モードを使用していた。同じ場所で色々なバリエーションを撮るので、AEで露出が意図しない方向に変わってしまうのを避けるためとのこと。 キツネツキさんの作品はレタッチが前提のため、撮って出しの適正露出ではなく、白飛びが起きない程度のアンダー目に撮るのが重要だそうだ。

水溜まりは絶好の撮影ポイント

続いての作品は細い路地で撮影した1枚。路地と言ってもビルとビルの隙間という感じで、普段気にも留めない場所だ。あまり綺麗な所でもないので、「これが絵になるのだろうか?」と思ったが、できあがりを見ると見事に”退廃した都市のイメージ”が表現されていて驚いた。

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 24mm,F2.8,1/25秒,ISO800

撮影:キツネツキ

こうした作品のポイントは「水溜まり」とのこと。水面の反射がとても重要なのだそうだ。キツネツキさんによると、撮影で理想的なのは雨上がりのタイミングという。地面が濡れているのでリフレクションを使った表現がしやすいわけだ。

撮影中のキツネツキさんを後ろから

ただし、この日は雨は降っておらず水溜まりは見つからない。どうするのかな? と思っていたら、「雨が無くても、エアコンの室外機付近には水溜まりができていることが多いので探してみるんです」とこの場所を見つけた。 暑い季節ならではの水溜まりと言うことだが、その室外機も絵作りに使って作品に仕上げている。 こうしたリフレクションを使った撮影で重要になるのは「ローポジション」。すなわち、低い位置から撮影するということだそうだ。この写真も水溜まりの上ギリギリの高さから撮影することで、リフレクションを大きく取り入れることができている。 こうした撮影でもCreators’ Appのリモート撮影が大活躍する。撮影状況を見てもらうとわかるとおり、カメラをかなり下に突き出しているのでやはり背面モニターでの構図確認はしづらい。

ここでもCreators’ Appのリモート撮影を活用している

その点スマートフォンのライブビュー画面を確認しながらであれば、楽な姿勢でこうしたダイナミックな構図を切り取れる。 こういった構図ではピント位置も重要だそうで、きちんと合わせたい場所にピントが来ているかもスマートフォンの画面の方が確認しやすいとのこと。 ちなみに、カメラのモニターを覗くこともできなくは無いそうだが、「顔をカメラに近づけると湿っている地面に服が付きそうになります。こういう場所ではスマホを見ながら撮った方が安全でしょう」ということだった。 次に別の場所に移動したところ、打ち水で道路の端に水溜まりができていた。これもさっそく活用して看板のリフレクションを作品に取り入れることになった。

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 34mm,F3.2.,1/25秒,ISO400

撮影:キツネツキ

この頃にはだいぶ暗くなり、シャッター速度は1/25秒と低速に。こうなると手ブレ補正機能があるとは言え、カメラブレも心配になってくる。カメラブレは、シャッターボタンを押した動きでカメラが動いてしまうことも原因の1つだ。 その点アプリでシャッターを切れば、手持ち撮影とは言えカメラは比較的安定して静止させておける。夜景撮影のブレ対策にもCreators’ Appが有効なのを知ることができた。

映える自撮りにはぴったりのアプリ

キツネツキさんはセルフポートレートも良く撮るとのことで、今回も日が落ちたところで”夜景セルフポートレート”の撮影となった。

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 24mm,F3.2.,1/13秒,ISO800

撮影:キツネツキ

この場所もなかなか狭い路地だが、広角域を使って広く周りを入れ込みつつ、中央人物を置いた構図にしている。カメラは三脚にセットし、Creators’ Appのリモート機能で構図を確認して、スマートフォンをしまう時間を作るためにセルフタイマーでシャッターを切っている。

ここでは世界観を表現するために、小型のLEDライト3灯を使っている。1つはメインの照明を白色で三脚から照らす。残りの2つは人物の左右斜め前方向から1灯ずつ照らしている。この左右の照明はそれぞれ緑と紫に色を変えているのがポイントだ。

Creators’ Appを見ながら細かく構図や立ち位置を調整した結果、左右対称に建物が迫り、奥に抜けていく中心に人物が配置されるという美しい構図を実現できていた。 「以前トライした香港ではまだCreators’ Appを使っておらず、カメラの上に外部モニターを付けて構図を確認していました。外部モニターは背面モニターよりも大きいですが、それでも離れてしまうとよく見えず、撮影しては結果を見て調整するという繰り返しが必要で、撮影に長時間かかってしまいました」とキツネツキさんは振り返る。 その苦労を考えると、今回のロケではセッティングから撮影までが非常に早く進んでいた。ライブビューを見ながら撮影前に露出の設定などができるので、撮り直しも発生しなかった。撮影画像もすぐにアプリに転送されて見られるので、取り直すにしてもその場を動かずに迅速に対応できる。 旅先などで自撮りをする人も少なくないと思うが、ライブビューを手元で確認できることで、あたかも別のカメラマンが撮影したようなクオリティのセルフポートレートが撮れるというのが印象的だった。 ちなみに、色が変えられる小型LEDライトは最近安価に売られているので、ぜひとも活用したいアイテムだ。定常光という点で、フラッシュよりもライブビュー映像の確認には適している。

こんな夜景ポートレート作品も

手に持った色つきのライトをモデルに動かしてもらい、それを長時間露光で撮影。Creators’ Appのリモート撮影で確認しながら、意図通りの軌跡になるようにした例。

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 34mm,F3.2,3秒,ISO100

撮影:キツネツキ

α7 IV,FE 24-70mm F2.8 GM II 49mm,F2.8,1/10秒,ISO100

撮影:キツネツキ モデル:せきぐちあいみ

有線接続での高速通信にも対応

さて、いくつかのシーンを紹介したがCreators’ Appの便利さが伝わっただろうか? Creators’ Appは無料なので、対応カメラを持っているならぜひインストールしたい。リモコン以外では、設定の確認などもできるのでなにかと撮影現場で役に立つことだろう。 Creators’ App対応カメラ FX3、FX30、α1、α9 III、α7R V、α7S III、α7 IV、α7CR、α7C II、α6700、ZV-E1、ZV-E10 II、ZV-1 II、ZV-1F、ILX-LR1 本体ソフトウェアアップデートにて対応 カメラへの接続もスムーズで、キツネツキさんによるとワイヤレスのライブビューでもさほど遅延などは問題にならないとのこと。実際、電波が混み合っているであろう今回のロケ地のような繁華街でも、途切れたりすること無くライブビューを確認できていた。 ただ、環境によっては電波状況が悪く接続が不安定というケースも考えられる。その場合は、USBケーブルでカメラとスマートフォンを接続することで安定した通信が可能になる。

スマートフォンと無線ではなく有線で接続することも。レスポンスが良くなり、表示フレームレートも上がってスムーズな表示になる

アプリ内で有線接続の方法を解説

有線接続の場合はライブビューのフレームレートも上がり、遅延も少なくなる。より背面モニターに近いイメージで被写体を確認可能だ。今回は止まっている風景なので無線接続で問題無かったが、動きものなどの場合は有線接続が向いているといえる。有線か無線を選べるのもCreators’ Appの良いところだ。 また、Creators’ Appを使うことでカメラ内の画像をスマートフォンに転送することが可能で、SNSへのアップロードなどで重宝する。この転送も無線でできるが、有線接続すれば大容量の転送を安定して行える。

ソニーのカメラユーザーは25GBのストレージが無料

そしてCreators’ Cloudには無料ストレージのプランがあるので、まずは登録をオススメしたい。 ソニーのカメラユーザーは対象カメラを登録することで、無料で25GBのクラウドストレージを使えるのが大きい。なお、カメラ登録が無い場合も無料で5GBが利用可能となっている。 このクラウドストレージにはCreators’ Appから写真をアップロードできるほか、アプリ操作でカメラから直接クラウドストレージにも転送できるのがポイント。

カメラからスマートフォンへ画像を転送

さらにそれをクラウドにアップロード
アップロード後は、スマートフォンとクラウドの両方の画像を確認できる
さっき撮影した画像をすぐにクラウドにアップロードできるのもスマートフォンアプリの強み

キツネツキさんもこのストレージを使っており、現場からアップロードしてクライアントやモデルに確認してもらうといった使い方をしているそうだ。 クラウドにアップロードした画像にURLを発行すれば、アカウントを持っていないユーザーもアクセスできるので、メッセージアプリなどで簡単に写真共有が可能になる。

クラウドにアップロードした画像にURLを発行。URLを伝えた相手とシェアできる

キツネツキさんの記録設定はRAW+JPEGで、作品の仕上げにはRAWを使っている。一方クラウドストレージには転送が速いJPEG画像をアップロードして確認用としている。JPEGより転送時間は掛かるが、RAWのアップロードにも対応しているので例えばクライアントがRAWを要求した場合なども現場から対応が可能ということだ。 そのほか、クラウドストレージにあらかじめLUT(Lookup Table)ファイルをPCなどからアップロードしておけば、Creators’ Appを使ってカメラにLUTファイルを転送することもできる。SDカードを使わずに現場で必要なLUTファイルを転送できるので、LUTを使った絵作りをしているユーザーには便利な機能になると思う。 また、カメラのファームウェアアップデートもCreators’ App経由で行える。これまでのようにPCを使わなくてもカメラ本体のアップデートができるといった利便性も見逃せないところだ。

Creators’ Appでステップアップ

キツネツキさんもCreators’ Appを高く評価しており、特にライブビュー撮影に関しては「かなり使いやすい。むしろ無いと困る」と言うほどだ。 無料でこれだけできると、もはやCreators’ Appはαシステムの一部という印象で、もう”カメラとスマホは一緒に使う”というのが新しい時代のカメラライフだと感じさせる。 カメラの目指すところは”撮影領域の拡大”とよく言われるが、スマートフォンを併用することで今まで難しかった撮影が簡単になった。まさに、Creators’ Appというツールによって新しい撮影にチャレンジできるようになったということだ。 写真愛好家であれば、常に良い写真を撮ることに腐心していると思うが、Creators’ Appをぜひステップアップのきっかけにしてほしい。 なお、ソニーより不定期でアプリ利用者限定の特典も提供されている。前回は動画クリエイターの実践型ワークショップイベントの先行予約特典があった。アプリをインストールし通知をONにしておけば情報を得られるため設定してみてはいかがだろうか。

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