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Sony α 9 III グローバルシャッターが切り開くフラッシュ撮影の新境地

トッパングラフィックコミュニケーションズ チーフフォトグラファー 南雲暁彦

コマーシャル・フォト掲載記事の転載

グローバルシャッターの搭載、これはカメラにとって悲願とも言える革新だ。写真はリアルタイムにその場を記録するメディアの代名詞となっているが、既存のフォーカルプレーンシャッターは、本当の意味で同一の瞬間を正確なフォルムで収めることができず、ローリングシャッター現象やフラッシュ撮影時のシンクロスピードという足枷から逃れられないでいた。完全なる同一瞬間の記録、それがもたらすフルシンクロフラッシュ撮影が新しい表現を生み出していく。

α9 III,FE 24-70mm F2.8 GM II 50mm,F3.5,1/16000秒,ISO3200

解説・撮影:南雲暁彦(なぐも・あきひこ)トッパングラフィックコミュニケーションズ チーフフォトグラファー1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。世界約300都市以上での撮影実績を持つ。日本広告写真家協会(APA)会員。多摩美術大学、長岡造形大学非常勤講師。モデル:櫻井彩日撮影協力:深堀雄介・圡方悠輝・ICONS

フラッシュ撮影の概念を超えて

α9 III,FE 24-70mm F2.8 GM II 50mm,F5.6,1/20000秒,ISO6400

超高速連写やローリングシャッター現象のない表現が可能なグローバルシャッター搭載機、というα9 IIIの認識は間違ってはいない。ただそれはカメラ任せに撮影すれば誰もが手にできる、想像の範囲内にある超絶性能だと言える。これだけでも素晴らしい進化なのだが、撮影機材を高度に使いこなし、時代ごとに新たな表現を行なってきたコマーシャルフォトの分野において、このグローバルシャッターはもっと大きな意味を持っている。今までもFP発光で行なうフルシンクロフラッシュというフォーカルプレーンシャッターのスリットが走っている間、パルス状に連続小発光するタイプのフラッシュはあったが、あれは本当の意味のシンクロではなく、光量も少なければ瞬間を止められるものでもなかった。α9 IIIのグローバルシャッターがもたらす全速同調は本物だ。

シンクロスピードからの解放

α9 IIIに搭載されたグローバルシャッターは最高速1/80,000秒で、この驚くべき高速シャッタースピードにおいて全画面に瞬間光がシンクロする。これは今まで非常に高額で特殊機材だったハイスピードストロボを使用することでしかできなかった表現を、自由にカメラのシャッタースピードプライオリティで実現することを意味する。今回撮影した水飛沫やスモーク、また飛び散るパウダーなどは1/20,000秒あたりでしっかりと止めて撮ることができるが、これはフォーカルプレーンシャッター機ではシャッタースピードが足りず、そういったカメラを使用する場合は電源の整った環境光のないスタジオの中で、ハイスピードストロボを使うことが必須となっていた。その後、初代α9のような高速電子シャッターを搭載した機種が登場し、強い定常光を使って1/32,000秒という瞬間を連続的に切り取ることが可能になっていった。当時もひとつ革新が起きたと感じたが、やはりHMIのような強力な光源が必要であり、その撮影にはまだ足枷がぶら下がっていたと言ってもいいだろう。しかし、α9 IIIに搭載されたグローバルシャッターにおけるフルシンクロフラッシュ撮影は、この足枷をちぎり捨て、クリエイターに新たな表現の海をもたらすことになった。

日中ハイスピードシンクロのベースライト

α9 III,FE 24-70mm F2.8 GM II 50mm,F3.5,1/16000秒,ISO3200

超高速シャッターで自然光があたっている部分を暗く落とし、被写体にフラッシュでライティングをして浮かび上がらせる。これが日中ハイスピードシンクロ撮影におけるひとつの基本形となる。まずはこのベースライトを作ってから、スモークや水飛沫の演出を足していった。

連写シークエンス

昼間の明るい状態での撮影なので、フォーカスも楽々と人物を捉えて瞳に合焦するし、セッティングやスタイリングもスムーズに行なえるという利点もある。明るい現場の雰囲気と実際の仕上がりとの差が大きく、ライティング技術が大事な撮影だ。

大型ストロボからの解放

今回撮影した作品は、α9 IIIと単三電池を電源とするSony純正のクリップオンフラッシュ4灯(内1灯はリモート発光のための送信機として使用)だけを使用し、小雨の降る昼間の屋外で撮影したものだ。この手の撮影を経験したフォトグラファーならばこれを聞いただけで「嘘だろ?」と思うかもしれないが、メイキング動画をご覧になって愕然としていただければと思う。簡単に説明すると、1/20,000秒前後のシャッタースピードで環境光を暗く落とし、そこにカラーセロファンを巻き付けたフラッシュを左右と奥から発光させ、それを15コマ/秒程度で連写して撮影したものだ(この連写スピードはフラッシュのチャージタイムに依存する)。そっけない背景をダークに叩き落とし、スモークと水飛沫をピタッと止め、バイクと女性を立体的にライティングしたドラマチックなシーンに仕上がったと思う。これをズームレンズ1本と単三電池で発光するフラッシュ3灯で、しかも屋外で撮影するというのはグローバルシャッターを搭載したα9 III登場以前では到底不可能なことだった。FP発光に比べてしっかりと光量も稼げるのも大きな特徴で、そのおかげで被写体にしっかりとライティングをしつつ、フラッシュを浴びない背景を暗く落とすことができるのだ。何せライティング機材が小さくて軽く、電源コードもないのでセッティングもとてもスムーズで、調整も非常に手軽だ。現在、この撮影方法と表現が可能なカメラは世界にα9 IIIただひとつだけなのだ。この存在意義は無視できない。しかも現像処理を上手く調整すれば、高感度でも掲載作品レベルの画質を書き出せるので、実用にしっかりと耐えうると言っていいだろう。

クリエイティブを切り開く技術

今後フラッシュの進化は、グローバルシャッターとの親和性を中心として行われていくのではないだろうか。今回はあえて極端なほどミニマムなセットでグローバルシャッターの作り出す世界を表現したが、小型でも光量やバッテリーの進化で、より低感度で高速連写の撮影が可能になっていくだろう。α9 IIIの連写速度は120コマ/秒なので懐はまだまだ深い。つまりフォトグラファーのクリエイティビティーに追従した、更なる写真のクオリティアップが可能なことは想像に難くないということだ。グローバルシャッターはライティング機材の進化に方向性をもたらす指針にもなっていくだろう。全画素読み出しを行なうグローバルシャッターは、フリッカーの影響も受けないことも付け加えておく。

進化の鍵

今までも写真はカメラの進化とそれを操るフォトグラファーの技術の両輪で新しい表現を生み出してきた。レンズやシャッター、絞りやフォーカス、もちろんデジタル化など、進化の度にその表現の自由度は増し、フォトグラファーとの協業により時代を彩る写真が生まれてきたように思う。今回のグローバルシャッターはそんな進化の中でも、相当大きな扉が開いたとこの作品制作を通じて感じた。普段の生活や今までやってきた撮影において必要かと言われたら、そうではないと答える人もいるだろう。けれども今この進化の鍵を手にしたクリエイターとして、人が行なう表現を進化させ、より豊かで文化的な楽しみや想像力を育んでいく指針を示す義務があるとすら思う。そんなことができる可能性は充分にここに存在する。

α9 III,FE 24-70mm F2.8 GM II 46mm,F8,1/20000秒,ISO3200

想像する距離を伸ばす

上のオフロードバイクの写真は、初めてフルシンクロフラッシュ撮影の威力を思い知った時のカットだ。自宅のガレージに置いてあるバイクを引っ張り出し、アシスタントにタライで水をかけてもらいながら、Sony純正のクリップオンフラッシュを2灯使って連写撮影した。頭ではどうなるかわかっていて、「こうなるはず」という絵も思い浮かべながら撮ったのだが、ちょっと笑ってしまうくらいシンプルなセッティングで、このカットが生まれたことに驚いたことを覚えている。とあるスタッフがこの写真を持って撮影プロダクションに行き、こういう作品が撮りたいと言ったところ、「これは何百万もかかる撮影ですよ」と言われたらしい。それには笑ってしまった。そんな時代はもう終わった、いやこの進化の鍵とも言えるグローバルシャッターを駆使して終わらせてやったのだ。「シンクロスピードが~」としたり顔で語っていた時代はもう終焉を迎えるはずだ。その分、解放された時間と光のコントロール領域にフォトグラファーは踏み込み、撮影に何百万もかけるならばもっとすごい写真を撮ればいい。「想像を超えた表現領域を作り出す技術」、僕はグローバルシャッターをそう捉えている。この時代は始まったばかりだが、是非とも自らのクリエイティビティーをα9 IIIにぶつけてみてほしいと思う。その行為がきっと写真文化の進化をもたらすはずだ。

Sony α 9 III

主なスペックレンズマウント:Eマウント撮像素子:35mmフルサイズ、Exmor RS CMOSセンサー有効画素数:最大約2,460万画素(静止画時)連続撮影速度:最高約120コマ/秒ISO感度:ISO250~25600 (拡張:ISO125~51200、静止画撮影時)ファインダー:0.64型電子式ビューファインダー(Quad-XGA OLED)液晶モニター:3.2型TFT駆動、タッチパネル対応重さ:約703g(バッテリー、メモリーカード含む)大きさ:約136.1×96.9×72.8 mm(グリップからモニターまで)詳細:www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-9M3/

CP+2025で体験可能!

2月27日~3月2日に開催されるCP+2025では、Sonyブース内にフラッシュ撮影体験コーナーが用意される。実際にα9 IIIを使用して、本記事で紹介した撮影を体験できるといったものだ。グローバルシャッターならではの撮影を楽しんでほしい。本稿筆者の南雲暁彦氏も同コーナーに登壇する。

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