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「ROOTS 日本の原景」 撮影記 Vol.6
カムイミンタラ・北海道の旅-2

北海道にはアイヌの他にもまた違った民族が住んでいた。北海道北岸、オホーツク海沿岸に広く集落を作り、主に海獣を捕って生活していたモヨロの人たちだ。彼らは北海道よりなお北の海から来たのだという。ただアイヌの人たちがその言語をしっかり残し、後世に伝えたのに対し、モヨロは何の記録も残さず消えてしまった。モヨロというその名もアイヌ語で、湾にある集落といった意味の言葉のようだ。しかしモヨロの集落はちゃんとした形で発掘されその生活の様子が詳しく復元されて居る。それによるとその竪穴式住居はアイヌの住居にも多くの影響を与えていたらしい。アイヌが樺太を超えアムール川を遡って交易権を広げていったのも、モヨロの知識と関係が深いのかもしれないと思う。 アイヌの伝説にコロボックルという小人の話がある。裏摩周湖を訪ねた時、神の子池の近くはいかにもコロボックルがいそうな野生の蕗の茂みだった。コロボックルとは「蕗の葉の下の人」という意味だが、北海道には人の背より高い巨大な蕗も多くある。コロボックルは小人ではなかったのかもしれない。コロボックルは北から来たといい、千島の人たちであるという説が有力だが、ひょっとしたらモヨロの人たちのことだったのかもしれないと思った。

摩周湖の霧

摩周湖には小さな島が浮かんでいる。カムイシュというのがその名だが、これはアイヌ語で、神様+老婆という意味。孫を連れた老婆が部族同士の争いから逃れ、行き所を失い、雪の降るなか行き倒れていると、カムイヌプリ(摩周岳)にこの湖の主となれと言われて島になった、という。霧の中に、孫を抱いてうずくまる老婆の丸い背中が浮かんでいた。正面に見えるのが神の山・摩周岳。

α7R II,F7.1,1/1250秒,ISO100

モヨロの竪穴住居跡

網走市の街はずれ、オホーツク海に面した丘の上にモヨロ貝塚館がある。ここにはモヨロ族の集落と貝塚があった。1600年前のその住居は見事に発掘され、六角形をなす竪穴式の住居跡が再現されている。囲炉裏が真ん中にあり、一番奥には熊の頭蓋骨が積み上げられていたという。これはどれもアイヌの風習ではなく、モヨロ独自のものだったようだ。また墓地も独特で、死者は膝を抱いた形で埋葬され、頭部には植木鉢のような土器をかぶせてそれを土中から外に出している。死しても何かこの世とのつながりを持たせているような不思議な埋葬である。

α7R II,Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS,F5.6,1/60秒,ISO200

モヨロの女神

海獣捕獲民族であったモヨロは、捕獲したトドやオットセイの骨でモリの先や釣り針などを作り、また数々の装飾品も作っていた。その中でも頭部のない女性像は、プリミティブで端正な美しさを持ち、モヨロの女神と呼ばれていまでも輝きを失わない。博物館の人の話では頭部がないものがいくつも出土しているので、何か儀式に使われたのではないか、ということであった。この形は地球上どこでもありそうな非常にグローバルな形のような気がする。同じものがアフリカで出土しても、南米で出土しても違和感はない。狩猟採集時代の人々は、世界中でそれほど生活の違いはなく、今よりずっとグローバルな文化だったと言えるのかもしれない。

α7R III,FE 24-105mm F4 G OSS,F4,1/80秒,ISO800

オホーツクに沈む夕日。

遥けき夕日の方角に、モヨロ達や他の幾多の北方民族達が活躍した海の舞台が広がる。そしてアイヌ達もまたこの海を越えて大陸との交易を盛んにしたという。アイヌは単なる狩猟採集民族ではなく、優秀な交易文化も持っていた。毛皮や鉱石などを輸出し、大陸の鉄器や進んだ道具などを手に入れる。大陸がモンゴル人の元王朝だった頃、あの九州で神風が吹いたという元寇のずっと前に、アイヌはアムール川流域で数万の元の軍勢と戦って、勝ったり負けたりしている。これもまた知られざるアイヌの一面である。

α7R III,F5,1/400秒,ISO200

大雪山旭岳の雪渓

大雪山は一つの山の名前ではなく、いくつもの山々の総称で、写真はそのうちの一つ旭岳、標高2,291m。ここは標高1600mまでロープウェイで行かれるので、そして緯度が高く気温が低いので本州なら3000m級の山で見るような光景や高山植物が気軽に見られる。写真は6月末に撮ったがこれだけの雪がある。そしてここはカムイミンタラ、神々が、そしてヒグマたちが遊ぶ地上の楽園だ。実際大雪山のどこかに分け入ると、熊を見かけることがある。もちろん危険なので即撤収である。

α7R III,FE 24-105mm F4 G OSS,F8,1/6400秒,ISO200

一昔前ならいざ知らず、最新のズームレンズの解像力は目を見張るものがある。昔はズームレンズは単焦点に比べて大きく劣るとされていたが、今はよっぽどの悪条件が重ならなければ全く問題なく使えるようになった。α7R系の高解像度カメラでも十分使えるので、荷物を増やせない旅先では積極的に使って行きたい。ただし前にも書いたが、初心者の方は、ついテレ端とワイド端だけを使いがちだ。よくファインダーの中を見て、中間の焦点距離も意識して使って行きたい。ズームは便利だが、絵作りの選択肢は増える。ちょっと寄ったか、ちょっと引いたかで、全く効果が変わってしまうこともあるのだ。シンプルに作画する単焦点と違って、画角決定に細心の注意を払って欲しい。

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