長時間露光で撮影した渓流の写真。「いままでNDフィルターを使う場合、フィルターを付けたり、外したりしながら構図を決めていたのですが、このカメラでは画面が明るいままなので、フィルターを外す必要がなく、そのまま構図を確認できます」。三好氏はフィルターを付けているのを忘れてしまいそうだったという。「このカメラならNDフィルターやPLフィルターを簡単に使えるので、新しいテクニックも試せますね」。常に第一線で活躍しながら、さらにテクニックを磨きたいと語る三好氏の向上心に驚く。
葉っぱの水滴を写しているように見えるが、実は苔の上の水滴。実際の大きさは1mmにも満たないという。「等倍マクロ撮影は、なかなかアングルを探すのが大変なのですが、このファインダーでは虫眼鏡でのぞいているようにフォトジェニックなものが自然と見えてきます。肉眼ではほとんど見えない被写体も、ファインダーに拡大されてまるで新しい世界を見つけたような感じでした。これまで撮ることのなかった被写体にも、ついその世界に引きこまれてシャッターを押してしまう、そんな感じでしたね」。三好氏は、時間を忘れてマクロ撮影に没頭していたという。
靄の立ちこめる湖畔の森。「ピントを拡大して見ると、樹々の至るところにクモの巣が張っているのですが、そこに水滴が付いているところまで見える。拡大表示しているとは思えないほどシャープに写っていて、その解像力に驚きました」。新しいDT 16-50mm F2.8 SSMのレンズで撮ったそうだが、「このレンズの解像力も優れていると言えますね。霧の中でも、長時間露光のときも、目に見えないものまで写る、そんな驚きを体感しました。実際にカールツァイスレンズを使うつもりだったけど、後半はこのレンズ1本だけで通したからね」。三好氏はボディとのバランスもいいねと、カメラをぐっと握りながら答えてくれた。カメラ同様に解像力が高く、描写力にも優れたレンズであることを証明してくれた。
三好氏を興味津々に見つめる、2匹の子鹿。「ファインダーでバックのぼけ具合を変えて何枚か撮影した一枚です。鹿がいた時間は、10秒か20秒ぐらいなのですが、その短い時間でも指先の感覚だけで絞りをコントロールできましたね」。今回の“α77”では、背面ボタンの配置も工夫されている。「ボタンのレイアウトがとても考えられていて、すぐに覚えましたね。前後のダイヤルで直感的に操作できて、ボタンごとも感触が違うので、指の感覚を頼りに操作できます。それに、ファインダーに必要な情報が表示されるので、ファインダーから目を離さなくても一連の操作ができるし、いままでのようにファインダーで見てから液晶モニターで確認する必要がない。眼鏡を外さなくてもいいのも楽ですね」。
1958年生まれ。東海大学文学部広報学科卒業。同年、株式会社「楽園」設立。13歳の時に沖縄を訪ねて以来、タヒチ、モルディブ、サハラ、ヒマラヤ、南極など世界各地で「楽園」をテーマに撮影を続けている。27歳の時、写真集『RAKUEN』で木村伊兵衛賞を受賞。最近は故郷吉野川を始め、富士山、屋久島など国内での撮影にも力を入れている。作品はニューヨーク・ジョージ・イーストマンハウス国際写真博物館に永久保存されている。