まるで絵画のような写真を三好氏はどのように撮るのだろうか。「これはDレンジオプティマイザーを使っているのですが、水面が光っている部分と手前のシャドー部まできれいに描写されていますね。ファインダーの中をのぞきながら、モネの睡蓮を想像してブルーの色調で絵画のように仕上げました」。撮る前から作品のイメージがあるのか聞いてみると、「だいたいのイメージは頭の中にあって、ファインダーをのぞきながらイメージに近い色を表現する感じですね。有機ELファインダーだと、シャッターを切る前に自分の理想の色を突き詰めて、それを完結できるのはすばらしいですね」。
「飛んでいるカモメを撮るのは難しいのですが、“α77”ではミラーアップしないので、AFがカモメをずっと追いかけてくれるし、約12コマ/秒の連写と合わせることで、とても気持ちよく撮影できました。かなりの時間撮影したにもかかわらず、その間一度もバッテリーを交換せずに撮影できたので、相当スタミナもアップしていますね」。約12コマ/秒の連写をどんな場面で使ったらいいか聞くと、「連写枚数が限られているので、『ここだ!』という感覚を自分で磨いていく必要がありますね」。連写に頼るだけではなく、カメラを自分で使いこなしていくことが重要だという。「ただ、その感覚を磨くことで、写真を撮る手応えを感じさせてくれるカメラだと思います」。
知床に沈む美しい夕日。太陽が沈む直前に、緑色に輝く珍しいグリーンフラッシュという現象が見られたという。「私も初めて出会ったのですが、グリーンフラッシュを見ると幸せになれるなんていわれていますね。淡い光なので、マニュアルに設定して撮りました。」マニュアル操作でも、「自分の感性のままに撮れるカメラですね。自分の指先とカメラと一体感がありました。ここまで一体感の持てるカメラは、あまりなかったと思います。表現が常に試せるし、そのまま本番になる。写真を撮るのが楽しくなるし、創作意欲を掻き立てられるカメラですね」。2430万画素、約12コマ/秒の連写、XGA有機ELファインダーと、カメラの進化に感嘆しながら、三好氏は「頼もしい限りですね」と話してくれた。
「地球照」といって月の欠けた部分がうっすらと見える現象。「望遠ズームレンズで撮ったのですが、一般的に望遠側では開放値が暗くなるので、こういう月を撮るときにはピントを合わせにくいのですが、この液晶モニターでは、明るいレンズ、暗いレンズ関係なく、明るいまま映し出されるので、ピント合わせが気持ちよく行えましたね。レンズの暗さを感じないので、たとえばSTFレンズなんかを使うとおもしろいと思いましたね。きっと、それぞれのレンズの描写力を存分に楽しめるはずです」。
最後に、三好氏はこう話してくれた。「ひと言でいうと、写真家の本能を刺激するカメラではないでしょうか。普段見過ごしてしまいそうな被写体の中にも、また新しい発見がある。そして、新しい発見をすぐに自分のものにできる。撮れる世界がものすごく広がっていく。これまで知床には何度も行っているのに、また新しい知床を発見できた、そんな感じがしました」。
1958年生まれ。東海大学文学部広報学科卒業。同年、株式会社「楽園」設立。13歳の時に沖縄を訪ねて以来、タヒチ、モルディブ、サハラ、ヒマラヤ、南極など世界各地で「楽園」をテーマに撮影を続けている。27歳の時、写真集『RAKUEN』で木村伊兵衛賞を受賞。最近は故郷吉野川を始め、富士山、屋久島など国内での撮影にも力を入れている。作品はニューヨーク・ジョージ・イーストマンハウス国際写真博物館に永久保存されている。