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ゲーミングモニター「INZONE M9」開発者に聞く ゲーミングモニター『INZONE M9』/『INZONE M3』

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価格には理由あり。テレビ技術の応用で実現した、ゲームに没入しながら快適にプレイするための「画質」

照沼:価格についてのお話がありましたが、「M9」のレビューを見ると「競合他社の同スペック製品に対して値段が高い」という意見が見られましたね。

竹田:たしかに決して安い製品ではないのですが、「M9」は数値的なスペックに表れない部分での性能に力を入れているため、付加価値を伝えられていないのではないかとも感じています。

照沼:数値に表れない性能?

竹田:具体的には、バックライトへの「直下型LED」採用ですね。直下型LEDによって高コントラストを実現でき、没入体験を向上させるのは勿論、例えば暗い場所にいる敵も見つけやすいというメリットがあります。これは「ブラビアで培ったノウハウを、ゲーミングモニターに持って来れないだろうか?」と考えて採用した技術です。実際にかつてブラビア開発の中核を担っていたスタッフも「M9」に参加しています。

ELDEN RING: ©Bandai Namco Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.

照沼:やはり「M9」最大の特徴である「画質」へのこだわりが、価格につながっているわけですね。

竹田:そうです。そしてスペック上は「M9」のバックライト制御は96分割で行なっているのですが、その裏側には384個もの直下型LEDを搭載しています。そこにコストがかかっているほか、さらにはそのLED自体にも広色域のKSF蛍光体という高価な部品を使うことで「高コントラスト」に加えて「高い色再現性」を実現しています。

照沼:発色の良さもやはり高級な部品によるものなのですね。

竹田:具体的には、KSFは従来LEDの弱点だった赤色と緑色の再現性が改善されています。レビューにおいて「『M9』は赤がキツい」というご意見を見かけるのですが、これはむしろ従来のモニターが赤色を表現できていなかったということでもあります。

照沼:つまり、従来のモニターは「青っぽい映像」を見せていたということですか?

竹田:その通りです。我々がリサーチした限り、画質を重要視されているゲーミングモニターは少なかったです。

照沼:決して安くはない価格帯の「M9」ですが、そこにはしっかりと理由があるわけですね。

竹田:はい。できるだけ多くの方にお買い求めいただきたいと思いながらも、やはり画質へのこだわりによるコストの増加や、為替の影響もあって現在の価格設定となりました。

「ゲームに没頭するためのデザイン」と
「オールインワンモニター需要」とのズレ

照沼:続いて、竹田さんも「批判的な意見が寄せられている」とおっしゃっていたデザインについて伺えればと思います。まず「M9」のデザインコンセプトを教えていただけますか?

竹田:第一に「ゲームを快適にプレイできる」ことを目指してデザインしました。そのためにはゲーミングデスクの業界標準である奥行き60cmに収まるサイズが前提となります。ただし現実的にはケーブルなどが背面に散らかっている可能性が高いので、それよりもかなり余裕を持たせようと思いました。よく「他社のゲーミングモニターと比べて奥行きが広い」とレビューでご指摘いただくのですが、傾斜のある中央スタンドの印象によって大きく感じるだけで、数字的には特別スペースを取ることはありません。

ELDEN RING: ©Bandai Namco Entertainment Inc. / ©2022 FromSoftware, Inc.

照沼:その中央スタンドについて「手前に飛び出しているのが邪魔」とのレビューも多く見られましたが、いかがですか?

竹田:PCゲームではマウスとキーボードを使うことが多いのですが、他社製モニターではV字型のスタンドが流行しており、大きめのマウスパッドを置くことができないというゲーマーの不満があるんです。そこで「M9」では今回の三脚型のスタンドを考案して採用しました。実際にプロゲーマーの方々には大変好評をいただいています。ただ、やはりPCゲーム以外の用途で使う方が多く、使いづらいと思われてしまった印象です。

照沼:やはり「オールインワン」を求める発想が、ここでもバッティングしてしまったわけですね。

竹田:画面の高さ調整をすると同時に距離も前後する仕様についても「他のディスプレイと高さと距離が合わせにくい」とご批判をいただいているのですが、我々としては「M9」を「机の中央に設置して、1枚単品で集中してゲームプレイする」ためのディスプレイと考えていました。横チルト機構も一度は検討していたのですが、安定性を確保するために体積が大きくなってしまう問題がありました。そこで改めて「M9」のターゲット層がプレイに集中するゲーマーであることを考え「横チルトは誰か他の人に映像を見せるときに使う機能なので、ゲームに集中される方はそこまで必要としていないだろう」と判断して採用を見送りました。

照沼:しかし、思った以上にゲーム以外の用途で使う方が多く、デュアルディスプレイや横チルトさせたいという声が多かった、と。

竹田:そうですね。後ろ側のスタンドが横に2本伸びている点について「机から落ちそうで不安」との声もありますが、これもゲーミングモニターは机の角ではなく中央正面に置いて使うことを想定してのデザインでした。

照沼:設置場所といえば「電源アダプターが大きくて邪魔」という意見も目にします。「M9」は極薄のモニターというわけでもないので、たしかに「内蔵できたのでは?」と思ってしまいましたが、いかがですか?

竹田:アダプターの大きさについては、十分な電力性能と安全性を重視した結果なんです。熱をこもらせず、液漏れを防ぐための余裕を持った設計にしています。

照沼:モニター本体にアダプターを内蔵することもできたのでしょうか?

竹田:それはできないですね。「M9」には2枚の基板が入っており、直下型LEDも内蔵しているため、電源基板を内蔵することはできませんでした。もしも内蔵するとしたら、熱が液晶パネルに影響するため、性能が制限されてしまいます。また、本体がかなりの奥行きとなって重量も増すためスタンドが大きくなってしまい、コンセプトである大きめのマウスパッドを置くということが叶わなくなってしまいます。

照沼:なるほど。ゲーミングデスク環境からも、M9最大の特徴である「画質」の面からも、アダプターの内蔵は不可能との判断だったわけですね。とはいえアダプターが大きいことは変わりないのですが、開発側としてはアダプターはどこに設置する想定だったのでしょうか?

竹田:床です。デスクトップのゲーミングPCは床に置かれるケースが多いのでそれと一緒に設置していただくことを想定していました。あるいはゲーマーの方は机の後ろにアダプターなどを収納するラックを使われている方が多いので、そこに納めてもらうことになるだろうと考えていました。

レビューを受け止めた「M9」改善と、今後の「INZONE」展開

照沼:私自身レビューを書くことが多い立場として、「製品レビューについての、製品開発者の声を聞いてみたい」と考えていたので、今日は竹田さんのお話を聞くことができてよかったです。

竹田:こちらこそありがとうございます。メディアのレビューも各ディーラーさんの個人のレビューやYouTube動画レビューやネットフォーラムの書き込みも含めて、いただいたご意見は本当にありがたく拝見しています。

照沼:私が想像していた以上に、開発者の方々が製品レビューをチェックして、その声を製品に反映させていることがわかりました。

竹田:我々が想像もしなかった活用方法や、ご指摘をいただけるので本当に助かりますね。ただ、「M9」では当初ソフトウェアのバグがあったため、早期にご購入いただいた皆さんにはご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。我々もさまざまな環境で「M9」のテストをしていたのですが、見積もりが甘かったと反省しています。

照沼:「ソニー初のゲーミングモニター」という新領域への挑戦ゆえに起こった問題だったわけですね。

竹田:世の中の自作PCは、私たちの想像以上に幅広い新旧パーツの組み合わせで作られていることがわかりました。さらにはUSBハブなどの周辺機器との組み合わせ次第でもエラーが起きてしまうことが判明しました。現在はファームウェアのアップデートで対応できましたが、よりさまざまなパーツの組合せのPCとのテストを行うべきでした。次のINZONE製品である「M3」はフルHDでハイリフレッシュレートに対応したFPS向きにゲーミングモニターですが、こちらは「M9」の反省を活かしてより綿密にテストしていますので、ぜひご安心してご検討いただければと思っています。

そして、現在のINZONEラインナップはまだまだ第一弾です。今後も皆様からいただいた声をしっかり受け止め、新しい製品を検討・開発してまいります。是非ご期待ください。

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