法人のお客様メディカル関連機器 メディカル関連機器 導入事例 愛知医科大学 眼科クリニックMiRAI 様

愛知医科大学 眼科クリニックMiRAI 様

眼科 網膜硝子体手術はモニターで行う時代に
ー現場のフィードバックを徹底的に取り込み、
作り上げたHeads-Up Surgery(HUS)システムー
瓶井 資弘 教授
愛知医科大学病院 眼科 教授
 瓶井 資弘 

私の専門分野である網膜硝子体は、眼の奥の部分で一般に眼底と呼ばれる部位です。眼底出血や網膜剥離、加齢黄斑変性などがよく知られた病気です。網膜硝子体疾患の治療の中でも特に手術治療を得意としており、網膜剥離、糖尿病網膜症、黄斑疾患(黄斑円孔・黄斑前膜・黄斑浮腫など)に対する手術を、30年以上に渡り3,000件以上執刀してきました。基本的な手術である白内障手術はその倍以上の執刀経験があります。愛知医科大学病院 眼科を「網膜硝子体手術で日本をリードする施設にしていきたい」という想いで治療に取り組んでいます。

「愛知医科大学 眼科クリニックMiRAI」について

2022年7月に本院のある長久手市から離れた名古屋市中心部の新栄駅近くに、大学病院と同等の最先端治療が受けられる日帰り手術専門クリニック「MiRAI」を立ち上げました。 網膜硝子体専用オペ室にはソニーのカメラ/モニター/レコーダーを採用して、Heads-Up Surgery(以下:HUS)システムを構築しました。眼科手術において従来は顕微鏡を覗いて手術をしていましたが、HUSでは顔を上げて大型モニターで鮮明な3D映像を見ながら手術を行うことができます。

眼科手術はHUSで行う時代へ

「ロボット手術の普及にあわせて、将来的に手術はモニターを見ながら行う時代が来るだろうから、そのために少しでも早く慣れておこう」とHUSでの眼科手術実現に向けて私が基礎実験などに動き始めたのは2013年頃のことでした。HUSへの取り組みはドイツが先行しており日本でも早期に実現したいと思い、2015年に愛知医科大学に赴任したタイミングで検討を始め、勉強会や3D立体視のための作り込みを重ね、2017年に国内で先駆けてHUSシステムを導入しました。

HUSに関連する機器は海外製が主流でしたので、国内メーカーにもHUS分野で台頭して世界で活躍してほしいという強い思いがあり、2019年に全国から眼科手術技術が高く理論に詳しいドクターを集めて「眼科HUS研究会」を立ち上げ、ソニーとの協業を始めました。しかし、当初からうまくいった訳ではなく、眼科手術分野で経験のある海外システムと比較すると、ソニーは優れた個別技術は持っているが、トータルするとそのままでは現場の手術には適さないといった状態でした。

例えば、HD(2K)<4K<8Kというように解像度が高いほど良いと当初は思い込んでいたのですが、解像度が高くなるほどピント合わせがシビアになり、画面も暗くなるので、眼底の術野の状況を鮮明に映し出すことができませんでした。何度もデモ環境を見直して、開発中のプロトタイプ製品による動物実験、臨床評価を繰り返しては、精度を上げていきました。試行錯誤の後に実用に耐えうるレベルまで達し、2022年のMiRAIの開業にあわせて、作り上げたHUSシステムを導入することができました。

快適なHUSシステムが実現

HUSの主なメリットは、少ない光量でも術野が見やすいので、患者さんにとっては顕微鏡の強い光による負担が軽減されること。医師にとっては顕微鏡を覗き込まないので姿勢への負担が軽減され、大型モニターの鮮明な映像を確認できるので、執刀医自身の老視が進んでも手術がしやすく術者寿命が伸びること。また、立ち会いスタッフへの情報共有による効率化、振り返りや学習効果も高いことなどが挙げられます。これらを実現するには、術野映像を鮮明に映し出すシステムが必要となります。

今回導入したソニーの3D対応4K液晶モニター LMD-XH550MTは、ローカルディミング方式で、液晶パネルのLEDバックライトの発光量をエリア単位で個別に制御しており、OLED方式のモニターと比較しても遜色のない映像を映し出すことができます。さらに、画像をエンハンスするA.I.M.E.機能をONにすると表示色とコントラストが強調されて暗部の視認性が高まります。これにより術野細部の状況を正確に把握でき、繊細な眼科手術において効果を発揮しています。

MiRAI開業後の数ヶ月間は旧機種を使用していたのですが、新機種LMD-XH550MTに変更すると、角膜の明るい画像では大きな差がないのですが、硝子体のように光を届けにくい暗い画像では、階調表現と輝度の効果が発揮され手術の操作性が格段にアップしました。手元の器具の操作とHDビデオカメラ MCC-1000MDを通してモニターに映し出される映像との間で、遅延を感じることはありません。今回のHUSシステムにおいては一番少ない光量の照射で充分なため、患者さんが眩しい光源を見続けるストレスも軽減されました。

MiRAIでの手術中は常に術野が大型モニターに表示されているので、助手やスタッフも3Dアイシールドを装着してリアルな状況を把握することができ、その場で指導医が部位を指し示して細かく指示することもできます。3D HDビデオレコーダー HVO-3300MTに記録された録画映像を手術後に執刀医自身が見直して勉強することや、若手医師などへの指導にも活用しています。

モニターやカメラといったHUSシステムの技術は「人間の目に近づける」といったレベルから、鮮明な映像+αの「人間の目では見えないものを見せる」ものへと進化していくと思います。将来は、絞りや明るさ、色味など、AIで最適な環境を提供してくれるようになるとさらに便利になると思います。また、網膜の薄い表面をピンセットで摘むミクロン単位の判断を、現在は目で見て行っていますが、3D画面上にガイダンスや解析画像をオーバーレイ表示して、より正確な手術を実現したりすることも期待されます。

ソニーには放送技術やエンターテインメントなど幅広い分野で培った技術や経験があるので、それを医療分野でも生かして発展させていただきたいです。

導入機器の概要

LMD-XH550MT

55型3D対応4K液晶モニター
LMD-XH550MT

ソニー独自の画像処理技術で高輝度・高コントラストを実現した医療用3D対応4K液晶モニター

商品情報

MCC-1000MD

HDビデオカメラ
MCC-1000MD

3D左右撮影用に2台導入
高感度と広いダイナミックレンジを実現。リアルに近づく3CMOSセンサーカメラ

商品情報

HVO-3300MT

3D HDビデオレコーダー
HVO-3300MT

3G/HD/SD-SDIやDVI-Dなどのマルチインターフェースを標準装備し、手術映像と術場カメラの映像など2チャンネル同時記録に対応した3D対応のHDビデオレコーダー

商品情報

※本記事に記載されている製品は医療機器ではありません。