JA北海道厚生連 帯広厚生病院 様
1945年(昭和20年)に開院された帯広厚生病院は診療科目24科、651床で北海道十勝地域の広域中核病院です。2018年11月に新築移転して、手術室11室とハイブリッド手術室1室の12室体制となり、年間約3,300件の全身麻酔手術を行っています。
JA北海道厚生連 帯広厚生病院
医療技術部 臨床工学技術科 係長
丸山 雅和 様臨床工学技士 修士(工学) 臨床ME専門認定士 呼吸療法認定士
臨床工学技士は各種医療機器の操作や保守管理を行う専門職です。高度化、複雑化が進む医療機器の性能を十分に発揮し安全に使用するためには、それぞれの機器についての知識・技術の習得や、機器のメンテナンスが必要です。臨床工学技士はドクターの指示のもと医療機器を操作し診療を補助する臨床業務と、医療機器の保守点検の実施、操作方法や安全情報の収集・発信・教育などを行う医療機器管理業務の2本の柱で病院機能に貢献しています。臨床工学科の手術チームは10名程のメンバーで12室の手術室、ICU、救急救命を担当しています。20代後半〜30歳代が中心の若いチームです。
・手術室12室にそれぞれに術野カメラ(MCC-S40MD)とモニター(LMD-2760MD)などを設置。
・内1室の脳外科手術室には4K内視鏡、4Kレコーダー(HVO-4000MT)、モニター(LMD-X550MD)などを設置。
・術野映像は術中に場内の天吊モニターなどに切り替え表示される。
2018年11月に現在の新しい病院に移転しました。医療機器やシステムなど大幅な見直しをして、最新のものに入れ替え導入しました。映像システムの入れ替えもその中の一つの取り組みで、3社のメーカーのモニターを比較検討しました。それぞれのモニターの映りを試すデモンストレーションを実施して、外科を中心にドクターに見てもらいました。ドクターにとって術野映像がモニターでも鮮明に見えることは、とてもシビアなポイントです。3社のメーカーの中でソニー製モニターは、明るさと発色が最も優れていました。個人的にはソニー製モニターの筐体デザインの質の高さも気に入っています。
術野カメラについてもモニター同様、ソニー製を選定しました。以前の旧病棟で使っていた他メーカーのカメラは画質が粗く、細部を視認することができませんでした。当時はカメラシステムが配備されていることを知らないドクターもいたほどです。今回の新しい映像システムの導入にあたっては説明会を開催して、利用することによるメリットや操作方法を広めました。稼働から半年が過ぎましたが、トラブルもなく安定的に運用しています。外科手術の多くで使用しており、その他の科目では必要に応じて使用している状況です。ドクターたちは、ソニー製のモニターとカメラを「画角が広く、ズームしても映像が鮮明」と評価しています。以前とは比べようもないと、カルチャーショックを受けたドクターもいたほどです。(笑)導入したことが話題になり、北海道内の他の病院や技師から、見学を依頼されることも増えてきました。
2018年は病院全体で年間約3,300件の全身麻酔手術を行い、その内、腹腔鏡やカメラで収録した手術が1,000件ぐらいでした。1日にすると5件ぐらいの運用をしていることになります。臨床工学技士は、術前の巡回点検を行ってカメラの撮影画角を定めて、ピントフォーカスを固定するまで立ち会っています。術中に無影灯を動かす際、たまにアーム同士がぶつかってカメラポジションがずれてしまうこともありますが、その際は手術スタッフが操作して正しい位置に直してくれています。コントローラーによるカメラの操作は軽々しい動きではなく、スムーズで粘りのあるしっかりとした動作で優れています。
手術室内のそれぞれのモニターに表示する内容は簡単に切り替えることができます。天吊モニターの2台には術野映像、もう1台には生体情報を表示させることが多いようです。スタッフは、執刀医の後ろから覗き込むのではなく、モニターの映像を通して執刀医の手元の動きがわかるので、器械出しの適切なタイミングを見計らって対応できます。
教育のために研修医や実習生が手術室内に4名ぐらい見学で入ることがあります。その場合、手術室のスペースが狭くなるので、執刀医の手元を直接覗き見ることは難しいのですが、モニターであれば細部まで詳細なポイントを見ることができます。実際に手術に立ち会って現場のリアルな雰囲気や進行を体験できる貴重な機会になります。
通常はHD映像で配信と収録をしており、4K映像は脳外科手術の顕微鏡映像の場内表示でのみ利用しています。現在、使用している他メーカーの配信システムが4K映像の配信に対応しておらず、今後は鮮明な4K映像配信を取り入れて活用していければと考えています。
現在は、院内映像配信を利用して、手術室外にいる医師と術者がスマートフォン越しに協議するというような場面もありますが、将来的にはテレビ電話や映像にポイントを書き込むなど、わかりやすくて正確なコミュニケーションができるようになると良いと思います。広い北海道の中で遠隔での手術サポートや病理診断が進歩することも地域病院や患者にとって有効なことです。
現在の課題は、臨床工学技士にとっての医療映像活用のノウハウや教科書が世の中に少ないことです。ますます進化する映像技術に現場スタッフの知識やスキルを高めていく必要があります。例えば、「映像の精度や発色が手術にどう影響するか」「どんな端子やケーブルを使用することが最適なのか」「高画質化に伴い、必要なストレージ容量はどのレベルなのか」など、将来に向けての知識を現場は必要としています。ソニーには、医療映像のノウハウや知識を提供していただくとともに、我々自身も技術進歩にあわせて研鑽していかなければならないと感じております。