黒が実際の色(黒)に近く、また暗い部分でも色が見えるということは映像に奥行き感があり、実際に見ている顕微鏡の3次元映像に近い。有機ELにはそういった特性がある。 脳外科手術は操作が平面的になる傾向がある。例えば腫瘍がどこまで侵入しているかなど、進入角度(見る角度)が1度ずれても最終的な方向が全然違うところにいってしまう。かつそれを拡大して見ているため、3次元的に把握することが非常に重要である。
MRIやCT画像、血管造影画像においては、医師が頭の中で再構築して実際の手術の術野と照らし合わせて考えている。脳外科医の教育において、その訓練に非常に時間がかかる。奥行き間がある映像は脳神経外科手術教育の意味においてもメリットがある。
手術の時にどの程度色が再現できていれば「見えている」ということになるかは分からないが、テレビのハイビジョン放送を見た時に、実際に見ているものよりも綺麗だという印象があった。手術の映像においても目で実際見ている以上の物を認識できるようなレベルの画像が得られれば大きなメリットはある。
応答性が良いにこしたことはないが、脳外科の手術においてはもともとの動きが少ないので動きに関する画像応答はさほど問題とならないのではないか。
前後方向の動きがある場合の手術においては立体感が必要なため有機ELが生きてくる。また、手術ごとの色の出し方などは今後も検証が必要である。例えば血の出ない乾いた部分の手術で平面的な手術を映像にする場合と、血が多く出てかつ立体感がある箇所(鼻の穴など)の映像での色の出し方などは今後も引き続き検証を行いたい。
脳下垂体や脳室内の内視鏡手術には奥行きが必要なため有効である。また後頭蓋窩の手術(脳腫瘍、三叉神経痛の減圧術など)も術野が深いため有効である。またその他に脊髄外科などにも有効ではないか。
内視鏡と顕微鏡の両方を使う手術において、2つの映像が同時に見えると有効である。慣れていない術者が両方を別々に見ると危険な場合がある。顕微鏡の画像はすぐに頭に入るが内視鏡の画像は一瞬どこを見ているかがわからなくなることがある。顕微鏡と連動した画像表現、これらに解剖学的指標を与える画像やマクロ画像などを加味したモニタリングなど多彩な機能を備えたモニターも今後は期待したい。