内視鏡手術では平面のモニター画面から立体感を認知する必要があり、有機ELモニターの高いコントラストはこの点で有用である。
脳神経外科領域で言えば、例えば脳室内手術において脳室壁は全体に白く光沢をもって平面的に認知されやすいが、有機ELモニターは従来の液晶モニターと比べると実に凹凸感が得やすい。また水頭症手術などでは内視鏡そのものを術野の手前から奥に進める必要があり、手前の構造(血管や脈絡叢)が浮き出るように描出されることでビジュアルキューを得やすく、これが距離感の認知に役立っている。
(赤の色再現性に関して)脳室内で薄い脳室壁や膜構造を穿孔する際、薄い膜の向こう側にある血管が膜越しにも非常に分りやすい。血管損傷の回避に有用で手術の安全性を高める期待がある。また、Narrow band image(NBI)モード使用時においても、赤と同様に濃い緑色が強調され(色の再現性が良いため)、細い脳室上衣の血管も強調される。
神経内視鏡の支援が必要な、比較的奥行のある手術(例えば経鼻頭蓋底手術、脳室内手術、Key holeからの後頭蓋窩手術など)で有効性が発揮されるものと思われる。
一方白黒の強調が有利な点から、白黒モニター画面の高いクオリテイーを求めた脳血管内手術や、ICGを使用する顕微鏡手術(血管吻合術、脳動脈瘤クリッピング術)にも有用と考える。
更に、モニターの視野角も良好なので、手術室内で助手、看護師、ME、医学生など複数が色々な角度から画面を見る際にもメリットがあると思われる。
有機ELモニターにより大きなサイズのものがあれば、より没入感が増すであろう。
また、有機ELパネルの薄い構造を利用して、どの手術室でも容易に設置でき、持ち運びが出来るようなモニターの開発など、今後の更なる発展に期待したい。