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ソニーでは、初の業務用HDV1080iカムコーダーHVR-Z1Jの発売に合わせて、HDV記録に適した業務用記録メディア「DigitalMaster」シリーズを発売している。同テープならば、HDVに付き物のドロップアウト現象をほぼなくすことができるし、耐久性も高いので信頼性は抜群だ。しかし、民生用テープに比べて高価格に設定されていることから、予算の都合上、使用を断念せざるをえないこともあるだろう。
しかし昨年12月、ソニーはDigitalMasterと同じ蒸着技術「ハイパーエバーティクルⅣ」を採用しながらも、価格を抑えた業務用記録メディア「Professional HDV」シリーズを発表し、今年1月から出荷を開始している(写真1)。
本稿では、このProfessional HDVの特性について、DigitalMasterとの違いを交えつつ、ご紹介したい。
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ハイパーエバーティクルⅣとは、高密度・高効率記録が可能な磁性体蒸着技術だ。実際に信号が記録される磁区構造を微細化しており、磁性体を高密度化させることで、高出力・高CN比を実現している。また、磁性表層の非磁性粒子の生成をコントロールすることで、スペーシングロスとなる非磁性の厚みを可能な限り薄くし、従来と比べて高出力も実現した。
DigitalMasterでは、CN比と出力をさらに向上させるため、蒸着を2層にして、磁性体密度の高い部分を多く生成させているのだが、Professional HDVでは、蒸着を1層にすることで、高出力・高CN比と低価格化を両立している。ここがDigitalMasterとの大きな違いだ。 |
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エラーレートマージンとは、電気特性、ドロップアウトなどをミックスした総合性能のことを指す。
図2は、ProfessionalHDV、DigitalMaster、他社製DVカセットのエラーレートマージンを比較したグラフである。山が左にいくほどエラーレートが低く、また山の幅が狭いほど、個体差が少なくなる。ProfessionalHDVの特性は良好で、DigitalMasterにはわずかに及ばないものの、他社製DVカセットと比べると、高いエラーレートマージン特性となっているとがわかるだろう。エラーレートマージンを高くすることによって、悪条件でも映像・音声記録の余裕を
確保しているのである。
もちろん、ドロップアウトの発生も低く抑えられている。具体的には、他社製DVカセットと比べて、約1/3となっている(DigitalMasterは約1/4)。これは、製造品質管理プロセスを改善することにより実現したものである。
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業務用カセットにおいて、耐久性が高いことは必須条件である。耐久性が高いテープを使用しなければ、テープに傷が付く、さらにはテープが切れてしまうなどの目に見えやすいアクシデントを招いてしまうだけでなく、耐久性の低いテープを使ったために、カムコーダー/VTR側のヘッドを汚してしまい、被害をほかのテープに広げることに繋がりかねない。
ProfessionalHDVでは、ソニー独自の技術により、DLC保護層の厚みと膜質を最適化することで耐久性を向上させた。さらに安定した走行性を実現するため、DLC保護層にDigitalMasterと同様の潤滑剤を塗布している。これらにより、同社製民生用テープに比べて、テープの耐摩耗性の向上とともに、VTRヘッドの摩耗の抑制を達成している。
図3に、ポーズモードによる耐久テスト結果のグラフを示した。結果として、他社製DVカセットの4倍以上の耐久性が確保できていることがわかる。特に低温環境での差が大きく、シビアな環境下においても問題なく使用することができるだろう。 |
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写真2 ProfessionalHDVのラインアップ。記録時間をDigitalMasterと比べると、スタンダードサイズ64分の代わりに同96分が用意されている
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表1 Professional HDVの記録時間と価格 |
型名 |
カセットサイズ |
HDV記録時間 |
DVCAM記録時間 |
価格(税抜き) |
PDV-276HD |
スタンダード |
276分 |
184分 |
4,100円 |
PDV-186HD |
スタンダード |
186分 |
124分 |
3,250円 |
PDV-124HD |
スタンダード |
124分 |
82分 |
2,700円 |
PDV-96HD |
スタンダード |
96分 |
64分 |
2,250円 |
PDVM-63HD |
ミニ |
63分 |
41分 |
1,650円 |
PDVM-34HD |
ミニ |
34分 |
22分 |
1,300円 |
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Professional HDVは、クォリティ&低価格化の両立から、業務用HDV制作の標準テープに位置付けられている。ソニーでは、想定ユーザーとして、予算の都合でDigitalMasterを購入できず民生用テープを使用しているユーザー、もしくは他社製DVテープを使用しているユーザーを考えているようだ。一方のDigitalMasterは、放送局もしくは制作プロダクションといった、クォリティ優先のユーザーを想定している。
Professional HDVのラインナップとそれぞれの記録時間をDigitalMasterと比べると、スタンダードサイズの64分の代わりに同96分が用意されている(写真2)。 価格はそれぞれ、DigitalMasterに比べ、約75%ほどになっている(表1)。
表2 Professional HDVの主な仕様 |
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■物理特性 |
カセット外形寸法:スタンダード;縦78×横125×厚15mm、ミニDV;縦48×横66×厚12mm |
ケース外形寸法:スタンダード;縦94×横139×厚20mm 、ミニDV;縦78×横108×厚20mm |
ベース厚:6.3μm |
バックコート厚:0.5μm |
磁性層厚:0.2μm |
テープ全厚:7μm |
テープ幅:6.35mm |
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■磁気特性 |
保磁力(Hc):115kA/m |
残留磁束密度(Br):525mT |
角形比(Br/Bm):0.78 |
■ビデオ/オーディオ特製 |
RF再生出力:+1.0dB |
CN比:+1.0dB |
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