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撮影中ビューファーを覗くジョージ・ルーカス氏 |
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2005年、映画ファン待望の「スター・ウォーズ」シリーズ最新作であり、完結編ともなる「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」が公開され、世界的な大ヒットとなりました。また、この作品はHDCAM-SRのRGB4:4:4サンプリング記録で全編収録されており、デジタルシネマの新たな可能性を示したものとして、ハリウッドなど映画関係者の注目も集めました。
「スター・ウォーズ」シリーズの生みの親でもある映画監督ジョージ・ルーカス氏と新3部作すべてのプロデュースを担当したリック・マッカラム氏に、映画制作におけるHDCAM-SRフォーマットの魅力や、今後のデジタルシネマの可能性について伺いました。
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George Lucas●映画監督、脚本家、プロデューサー
1944年、米国生まれ。南カリフォルニア大学映画学科卒業。
1971年「THX-1138」で監督デビュー。
1973年「アメリカン・グラフィティ」でニューヨーク批評家協会賞受賞。
1977年より「スター・ウォーズ」3 部作等で、アカデミー賞(アーヴィング・タールバーグ記念賞)受賞。
1999年より「スター・ウォーズ」シリーズ新3部作を制作開始、2005年公開の「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」で同シリーズの終焉を宣言する。
Rick McCallum ●プロデューサー
1952年ドイツ生まれ。
コロンビア大学卒業後、主にイギリスをベースにプロデューサーとして活躍。
1990年代以降ジョージ・ルーカス氏と組んで映画プロデュースに注力し、「スター・ウォーズ」新3部作のすべての作品で唯一のプロデューサーとして参画してきた。
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ジョージ・ルーカス氏 |
―ソニーのデジタルシネマ制作CineAlta(シネアルタ)を映画制作に採用するときに、関係者、あるいはスタッフの反応はどのようなものだったのでしょう?
映画界では、デジタル撮影については誤解している人が多い。実際に使ってみようともせずに、「デジタルはダメだ。問題が起こるに決まっている」と頭から否定している。
使ってみれば問題など何もないと分かるはずだ。デジタル撮影も、現場での手順や流れはフィルムカメラと何ら変わりない。俳優たちにとってもメリットがある。2〜3テイクを続けて撮影できるので、演技がしやすいと喜んでいるよ。
はじめは彼らも「メイクの跡が映るのでは」と心配していたけど、気になる点があれば映像を修正することもできるし、メイク担当者も着実に新しい技術を学んでいるので、そうした心配も解消されたようだ。撮影が進むとともに、彼らだけでなくクルー全体がCineAltaの導入を喜んでくれたよ。
監督という立場から見ても、問題はまったく感じなかった。というより、CineAltaを採用して本当に良かったと思っている。最大のメリットは、いろいろなことが簡単になったことだ。ポストプロダクションの作業でも、デジタルだから必要な素材をすぐに見つけ出すことができる。撮影の時もこれまでより身軽に動けるようになったし、様々な角度から何テイクも撮影することができるのは、大きな魅力だよ。
CineAltaのおかげで映画制作が簡単になったのは間違いない。準備にかかる時間も以前よりずっと短縮できたし、撮影上、不便を感じることは一つもなかった。これからは、映画制作もデジタルの時代だよ。
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―今回の作品「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」で、HDCAM-SRを採用された理由は何でしょうか?
前作「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの逆襲」では、HDCAM 24Pを採用した。ソニーが最初に作ったCineAlta(HDW-F900)を使って撮影した。この時にクルーから出た画質やスピードなどについての意見をソニーにフィードバックした。
その成果が、HDCAM-SRというフォーマットに結実し、今回の作品で採用することができた。我々が特に期待したのは、ダイナミックレンジやRGB4:4:4サンプリングによる分解能の向上、そして、カメラの小型化といった点だったが、HDCAM-SRというフォーマットやCineAltaのカムコーダーというカメラはそれらの要望を見事にクリアしてくれた。最近では他社も参入しているが、やはりソニーが一番だ。使い勝手の良さも最高だし、コストメリットも他社より優れている。CineAltaがベストチョイスだね。
―映画の撮影にHDフォーマットを使うメリットは何でしょうか?
最初にも言ったけど、1テイクごとにいちいち俳優の動きを止めないで済むという点がある。カメラを回したままにしておけるから、続けて何テイクも撮影することができる。フィルムが足りなくなることを心配する必要もない。
それと、必要な映像を手元に置いておくことができるのもデジタルならではの大きなメリットだ。今回の作品でもリテイクしたシーンが少なくないが、前回撮った映像をその場で確認できるので、リテイクの際に照明やヘアメイクの調整を簡単に行うことができる。つまり、そのシーンを簡単に、しかも正確に再現することができる。シーンによっては、1年後にリテイクするといったこともあるので、前の状況を素早く再現できるというのは、本当に大きな魅力なんだ。
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リック・マッカラム氏 |
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―CineAltaによる映画制作を実現された背景、狙いは何だったのでしょうか?
ルーカスと私が長年抱えてきた不満として、撮影後、フィルムの確認までに大金がかかってしまう点があった。特に「スター・ウォーズ」シリーズでは全編に特殊効果を施すから、それだけで数百万ドルになってしまう。要は、デジタル映像をどう取り入れ、その加工や編集をいかに簡略化するかということ。ところが映画制作の手法というのは、19世紀から何も進歩していない。これほどバカげた話もないと思っていた。しかも問題点と、それを克服するのに必要な技術と情報は揃っているのに、誰も手を出さない。
そこでルーカスと2人で、ソニーをはじめとした各メーカーに相談したんだ。私たちと一緒に新しい映画制作ツールを開発してくれないか、と。唯一手を上げてくれたメーカーがソニーで、その成果がCineAltaなんだよ。
―CineAltaの導入で、期待されていた成果を得ることができたということですか?
もちろんだよ。「スター・ウォーズ」シリーズは、地球を舞台にした映画と違って、ルーカスのアイデアに従ってすべてを最初からデザインする必要がある。乗り物から惑星の数々、登場人物が着る服やテーブルウェア、照明も例外ではない。あらゆる物を作る必要がある。すべてのセットを実寸大で作るのは物理的に無理だからミニチュアセットで撮影することも少なくない。当然ながら、コンピューター画像の取り込み、クロマキー処理による合成シーンもたくさんある。
CineAltaを採用することで、こうした膨大な作業が非常に楽に、しかも簡単になった。これは非常に大きなメリットといえる。「スター・ウォーズ」シリーズでは、つねに写実的なシーンを創り上げるために総力を結集している。このことはファンもよく知っているが、実はもう一つ、そうした努力の陰でコストパフォーマンスも非常に大切にしている。
CineAltaは、そうした表現とコストパフォーマンスの両面で私たちの要望を叶えてくれたツールだったと言える。
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―今回の作品は、HDCAM-SRのRGB4:4:4サンプリング記録で全編収録されていますが、その魅力が最も発揮されたのはどんなシーンの撮影だったでしょう?
一つ例を挙げよう。火山の惑星での闘いのシーンがあるんだけど、実はあれもミニチュアセットを作り、ソニーが作った超小型カメラで撮影しているんだ。流れてくる溶岩は、当初はコーヒーを流して色づけしようと考えていたんだけど、撮影の半年前にエトナ山の噴火の映像がCNNで放送されたんだ。それは、大自然の圧倒的な力を感じさせる映像だった。早速、山にセットを組んで流れる溶岩を撮影して使うことにした。
時間的に噴火の撮影はできなかったので、溶岩の映像だけを切り出して、エトナ山の映像の背景に組み込んだけど、RGB4:4:4サンプリング記録のおかげで、驚くほど簡単にできた。通常の合成にかかる10分の1の時間でできたんだ。
そこで闘う人物の方もブルーバックで撮影して背景と合成したが、RGB4:4:4サンプリング記録はクロマキー処理がとてもきれいで簡単にできた。フィルムだったら、こうはいかない。ブルーバックを抜くだけでも人件費や機材の費用がかさむし、さらに3D環境への組み込み作業もあるので、莫大な予算がかかってしまうことになる。
HDCAM-SRのRGB4:4:4サンプリング記録は、映画制作の新しい時代の扉を開けてくれた。少なくとも「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」をあの形で完成できたのは、HDCAM-SRのおかげだと思っている。
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